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噂のハッカー一味
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中にはもう一人、仲間と思われる人物がおり、帰って来た男と会話を始める。
「うぃ~、たっだいま~」
「おぅ、おかえりぃ~。あれあった?新作のエナドリ!」
「あったあった。めっちゃあったわぁ~。目立つとこにクソ程置いてあったわ。マジでうめぇの?コレ」
「わっかんねぇ。でもぉ、これがねぇと始まんねぇってなってんのよ、俺の身体ぁ」
「じゃぁいつものでよくね?チャレンジ精神旺盛かって」
「味変だよ味変。おんなじモンばっかとってっと、インスピレーション沸かねぇだろぉ?」
帰ってきた男は袋の中から一本の缶お取り出すと、待っていた男の机に置いた。外との気温差で缶は汗を掻いているかのように、水滴をつけていた。
音のした方向と、視界の端に写った缶を手に取る待っていた男は、手に伝わる冷たさと水滴に思わず一度手を離す。湿った手をズボンで適当に拭うとプルタブを開け、これを待っていたのかと言わんばかりの飲みっぷりで一口頂く。
「くあぁ~ッ!やっぱコレだわぁ~。期待通り、新作もうめぇじゃんよ」
その間に帰って来た男は、自分の机に広げられたテリトリーに着くと、待っていた男とは別のエナジードリンクの缶を袋から取り出し、お洒落なタンブラーに移し替える。
「何、そんなうめぇの?俺も一本くらい買っときゃよかったかなぁ・・・」
「お前はいつも置きに行き過ぎなんよ。定番ばっかだと飽きんべ?」
「俺、ペース崩したくない派だから。リスク冒すんは、こっちの時だけで十分なんだわぁ~」
そう言って男が指さしたのは、ステッカーや独自のセンスで選んだパーツでデコレーションされたノートパソコンだった。そのついでに、男は買い物帰りに出会った謎の男のことについて、仲間に話した。
「あ!んでよぉ、帰りにNAについて知ってっか?って聞いてきた奴がいてよぉ~」
「は?そういう大事なこと、先に言えし!んで?何か言ったわけ?」
二人の男の会話から、後をつけて来ていた男の口にしたNAと呼ばれるものについて、何か知っている様子が伺える。どうやら彼は、男の尋ねる事について知っていながら、知らないフリをしていたようだった。
「言うわけねぇじゃん。言ったら俺らもヤベェことになんだろ」
「ですよねぇ~。クビっつぅ~かぁ、リアルに首飛ばされそうだし」
何気ないやりとりをする二人だったが、突然その空間に聞き慣れない声が飛び込んでくる。それが何処からやって来たのか、如何やって入って来たのか。インターホンは勿論、ここまで足音や気配すら感じさせることなく、それは二人の背後にまで近づいていた。
「仲間がいたんだな・・・」
不意を突かれたように驚く二人の男は、椅子から飛び上がりその何者かの方を向く。
「なッ・・・!?」
「お前つけられたのかよッ!」
部屋に入ってきた男は、二人の男のように普通の人間ではなかったのだ。その姿は現代のファッションではなく、まるで某有名ゲームのキャラクターのような姿をしていた。
そのビジョンが徐々に剥がれていき、現実世界でよくみるようなスタンダードな服装をした男が、二人の前に現れる。
その有名なゲームこそ、WoF。男をつきて来ていたのは、ここ京都のセントラルシティに構成員がいるという情報を掴んだフィアーズの配下、イヅツだった。
彼らがその存在に気づけなかったのは、イヅツがWoFのキャラクターデータを自身の身体に反映していたからだった。
イヅツは現実世界の姿に戻ることを気にすることはなく、任務では度々その本来の姿を晒すこともしばしばあるようだ。
外で話しかけた際にすぐに身を引いたのは、彼の作戦だった。もし仲間がいるのなら、そのNAと呼ばれるものについて尋ねられたことを仲間に報告する筈。その時を待っていたのだった。
「お前らがハッカーチーム、“ナイトメア・アポストル“ことNAのメンバーって訳か」
「だから知らねぇって!何こんなとこまでついて来てるわけぇ!?」
「シラを切っても無駄だ。既にお前がNAに属している証拠はあるんだよ」
だが、それまで動揺していたように見えた二人の男は、何故か突然落ち着きを取り戻したかのように大人しくなり、そっと側にあったゴーグルのようなものを手に取り、装着し始める。
「だってよ、どうする?」
「どうってそりゃぁ・・・逃げるしかないでしょ」
一人の男が机に置かれたキーボードに指を乗せ、何かのキーを押す。すると、室内に強烈なフラッシュのような光が焚かれ、イヅツは視界を奪われる。どうやら男らの部屋には、あちこちに小型のカメラのようなものが仕掛けられており、そこから閃光弾のような光が放たれたのだった。
「じゃぁ~ねぇ~、お兄さん。敵地に乗り込む時は、もっと警戒しなきゃダメっしょ!」
二人組の男はノートパソコンを手に取り、そのまま部屋を後にすると裏口から抜け出し外に出る。
彼らはノートパソコンの他にも、幾つかのデバイスを持ち出しており、二人でそれを確認していた。
「どう?忘れモンない?」
「オールおっけぇ~。こんなん初めてじゃないし、余裕っしょ!」
「アイツどうする?一応追跡できるようにはして来たけどよぉ~?」
「とりま報告っしょ。その後の事は流れに任せるっつぅことで」
「りょ」
室内に残されたイヅツは、不覚にも閃光をくらい視力を奪われていた。すぐに慣れた手付きで、自身のポケットからスマートフォンを取り出すと、自身にキャラクターのデータを反映させる。
「チッ・・・!こっちでも状態異常になってやがる・・・」
彼が陥っていたのは、暗闇の状態異常。視界が塞がれ、移動や攻撃に支障がでると言うものだったが、イヅツはすぐにアイテムによりこれを解除。二人の男がいた部屋を見渡すも、既にそこに姿はなく痕跡もない。
しかし、室内には多くの機材が取り残されており、イヅツはそこから男達に関する情報や、ハッカー集団ナイトメア・アポストルの情報を得ようと、探りを入れる。
その間にも、逃げた二人は何やら誰かに連絡を入れているようだった。
「うぃ~、たっだいま~」
「おぅ、おかえりぃ~。あれあった?新作のエナドリ!」
「あったあった。めっちゃあったわぁ~。目立つとこにクソ程置いてあったわ。マジでうめぇの?コレ」
「わっかんねぇ。でもぉ、これがねぇと始まんねぇってなってんのよ、俺の身体ぁ」
「じゃぁいつものでよくね?チャレンジ精神旺盛かって」
「味変だよ味変。おんなじモンばっかとってっと、インスピレーション沸かねぇだろぉ?」
帰ってきた男は袋の中から一本の缶お取り出すと、待っていた男の机に置いた。外との気温差で缶は汗を掻いているかのように、水滴をつけていた。
音のした方向と、視界の端に写った缶を手に取る待っていた男は、手に伝わる冷たさと水滴に思わず一度手を離す。湿った手をズボンで適当に拭うとプルタブを開け、これを待っていたのかと言わんばかりの飲みっぷりで一口頂く。
「くあぁ~ッ!やっぱコレだわぁ~。期待通り、新作もうめぇじゃんよ」
その間に帰って来た男は、自分の机に広げられたテリトリーに着くと、待っていた男とは別のエナジードリンクの缶を袋から取り出し、お洒落なタンブラーに移し替える。
「何、そんなうめぇの?俺も一本くらい買っときゃよかったかなぁ・・・」
「お前はいつも置きに行き過ぎなんよ。定番ばっかだと飽きんべ?」
「俺、ペース崩したくない派だから。リスク冒すんは、こっちの時だけで十分なんだわぁ~」
そう言って男が指さしたのは、ステッカーや独自のセンスで選んだパーツでデコレーションされたノートパソコンだった。そのついでに、男は買い物帰りに出会った謎の男のことについて、仲間に話した。
「あ!んでよぉ、帰りにNAについて知ってっか?って聞いてきた奴がいてよぉ~」
「は?そういう大事なこと、先に言えし!んで?何か言ったわけ?」
二人の男の会話から、後をつけて来ていた男の口にしたNAと呼ばれるものについて、何か知っている様子が伺える。どうやら彼は、男の尋ねる事について知っていながら、知らないフリをしていたようだった。
「言うわけねぇじゃん。言ったら俺らもヤベェことになんだろ」
「ですよねぇ~。クビっつぅ~かぁ、リアルに首飛ばされそうだし」
何気ないやりとりをする二人だったが、突然その空間に聞き慣れない声が飛び込んでくる。それが何処からやって来たのか、如何やって入って来たのか。インターホンは勿論、ここまで足音や気配すら感じさせることなく、それは二人の背後にまで近づいていた。
「仲間がいたんだな・・・」
不意を突かれたように驚く二人の男は、椅子から飛び上がりその何者かの方を向く。
「なッ・・・!?」
「お前つけられたのかよッ!」
部屋に入ってきた男は、二人の男のように普通の人間ではなかったのだ。その姿は現代のファッションではなく、まるで某有名ゲームのキャラクターのような姿をしていた。
そのビジョンが徐々に剥がれていき、現実世界でよくみるようなスタンダードな服装をした男が、二人の前に現れる。
その有名なゲームこそ、WoF。男をつきて来ていたのは、ここ京都のセントラルシティに構成員がいるという情報を掴んだフィアーズの配下、イヅツだった。
彼らがその存在に気づけなかったのは、イヅツがWoFのキャラクターデータを自身の身体に反映していたからだった。
イヅツは現実世界の姿に戻ることを気にすることはなく、任務では度々その本来の姿を晒すこともしばしばあるようだ。
外で話しかけた際にすぐに身を引いたのは、彼の作戦だった。もし仲間がいるのなら、そのNAと呼ばれるものについて尋ねられたことを仲間に報告する筈。その時を待っていたのだった。
「お前らがハッカーチーム、“ナイトメア・アポストル“ことNAのメンバーって訳か」
「だから知らねぇって!何こんなとこまでついて来てるわけぇ!?」
「シラを切っても無駄だ。既にお前がNAに属している証拠はあるんだよ」
だが、それまで動揺していたように見えた二人の男は、何故か突然落ち着きを取り戻したかのように大人しくなり、そっと側にあったゴーグルのようなものを手に取り、装着し始める。
「だってよ、どうする?」
「どうってそりゃぁ・・・逃げるしかないでしょ」
一人の男が机に置かれたキーボードに指を乗せ、何かのキーを押す。すると、室内に強烈なフラッシュのような光が焚かれ、イヅツは視界を奪われる。どうやら男らの部屋には、あちこちに小型のカメラのようなものが仕掛けられており、そこから閃光弾のような光が放たれたのだった。
「じゃぁ~ねぇ~、お兄さん。敵地に乗り込む時は、もっと警戒しなきゃダメっしょ!」
二人組の男はノートパソコンを手に取り、そのまま部屋を後にすると裏口から抜け出し外に出る。
彼らはノートパソコンの他にも、幾つかのデバイスを持ち出しており、二人でそれを確認していた。
「どう?忘れモンない?」
「オールおっけぇ~。こんなん初めてじゃないし、余裕っしょ!」
「アイツどうする?一応追跡できるようにはして来たけどよぉ~?」
「とりま報告っしょ。その後の事は流れに任せるっつぅことで」
「りょ」
室内に残されたイヅツは、不覚にも閃光をくらい視力を奪われていた。すぐに慣れた手付きで、自身のポケットからスマートフォンを取り出すと、自身にキャラクターのデータを反映させる。
「チッ・・・!こっちでも状態異常になってやがる・・・」
彼が陥っていたのは、暗闇の状態異常。視界が塞がれ、移動や攻撃に支障がでると言うものだったが、イヅツはすぐにアイテムによりこれを解除。二人の男がいた部屋を見渡すも、既にそこに姿はなく痕跡もない。
しかし、室内には多くの機材が取り残されており、イヅツはそこから男達に関する情報や、ハッカー集団ナイトメア・アポストルの情報を得ようと、探りを入れる。
その間にも、逃げた二人は何やら誰かに連絡を入れているようだった。
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