World of Fantasia

神代 コウ

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モンスターテイマー

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 連絡のあった襲撃ポイントへ向かう為、アナベルのクラスでもあるモンスターテイマーの能力で、シン達の分も含めた三体のモンスターを呼び寄せる。

 彼女は何やら魔法陣のようなものが描かれた巻物を広げ、ポケットから液体の入った小瓶を取り出すと、魔法陣の中心において両手で忍術の印を結ぶ。

 「我が同胞達よ、主人の命に従い我が眼前に集えッ!」

 結んでた印を解き、両手を魔法陣の上に勢いよく着く。バンという大きい音が周囲に響き渡る。一体どうやってモンスターが現れるのかと、息を呑んで見守るシン達。

 しかし、暫くしても何も起こらない。次第に視線はアナベルから周囲へと移り、今度は視覚よりも聴力を研ぎ澄ませる。風に揺れる草木の音を感じながら、生き物の動きを探す。

 「どっ・・・何処から来るんだ・・・?」

 「あの巻物から出てくるんじゃない?」

 二人が小声で話すのを背に受け、それまで一切動かずしゃがんでいたアナベルがゆっくり立ち上がり、徐に指笛を吹く。

 すると、遠くの空から何体かの羽ばたくような音が聞こえ始めると、そのシルエットが現れ始めた。

 「あ・・・あれ?空から?」

 頭をポリポリと掻きながら二人の方を振り返ったアナベルは、申し訳なさそうにこちらを見て微笑んでいた。

 「いやぁ~、召喚士とは違うからさぁ。カッコ良く呼び出したかったんだけどねぇ~」

 「え?じゃぁさっきの行動の意味って・・・?」

 「ん?無いよ?」

 これまでの一連の行動は、アナベルが見栄を張りたかったがばかりの演技だったのだ。確かに言われてみれば、モンスターテイマーは召喚士とは違い何処でも魔物をすぐに呼び出せるクラスではない。

 拠点以外で連れて行けるモンスターのストックには限りがあり、それも召喚士ほどすぐに近くへ現れる訳ではない。そう聞くと召喚士の方が、クラスとして優れているのではないかと思われるが、一緒に戦えるモンスターの種類が豊富なのだ。

 召喚士は契約した魔物しか呼べず、数も少ない代わりに一体一体が強い。そして倒された時のデメリットも大きくなる。

 それに引き換えモンスターテイマーは、ストックできる分だけモンスターをテイムすることができ、倒されても同じモンスターの居る住処へ行けば、再び従えることができるのだ。

 要するに、替の効かない強い少数か、替の利く多数かといったところだろう。それに、戦闘に応じて有りなモンスターを選ぶことが容易な点も、召喚士との違いとも言える。

 「おいおい・・・仲間が襲われてるんじゃ・・・」

 「大丈夫さぁ。遊ぶ前に既に呼んでおいたし。到着するまでの余興って思ってくれればさぁ~」

 「モンスターテイマーってクラス、よくわからないんだけど召喚士の召喚みたいに、すぐには呼び出せないんですね」

 「そうなのよぉ~、困っちゃうわねぇ」

 そうこうしている間に、彼らの元に三体のドラゴンが降り立った。最初に乗せてもらったドラゴンに比べると、大分小柄になっており、背中に一人用の鞍が取り付けられている。

 「さぁ~出陣と行きますよ?皆さん」

 先陣を切ってその内の一体に乗ったアナベルは、徐々に浮上し二人の上空で旋回する。恐る恐るドラゴンに近づくシン達は、物音を立てて驚かさないように静かに手綱を握り、背中へと乗る。

 どう飛ばすのか分からないまま跨るシン達。二人がドラゴンに乗り込んだのを確認すると、アナベルが指笛を吹いて合図する。すると、それぞれを乗せたドラゴンはゆっくりと羽ばたき始め、アナベルの乗るドラゴンの後を追うように追従した。

 「ホビーエリアまではすぐ着くから、二人とも戦える準備を整えておいてねぇ」

 「苦戦しているとあったけど、仲間の人は大丈夫なんでしょうか?」

 旅の途中で辿り着いた、羽休めくらいのつもりで住居を構えたアナベルにとって、もしかしたらそれほど深い仲ではないのかもしれないが、それにしても心配する様子の見えない彼女の様子に、シンはどこか違和感を感じていた。

 「ん~。テイマーのクラスってさぁ、拠点とか住居があると、そこに何体かモンスターのストックを置いて置けるんだよねぇ~。んでさぁ、現実世界ではどうなんだろうと思ったら、結構簡単に拠点判定になるみたいなのよねぇ」

 突然、自分のクラスについて話し始めたアナベルは、何故こうも悠長にしていられるのかの理由を語った。

 「このリゾート地全体が拠点になってるみたいなのよ。つまりさぁ、拠点内であればストックの制限からも解放されてる訳さぁ」

 「って・・・ことは?」

 「既に別のモンスターがお仲間の援護をしてるんじゃないかなぁ~?その子らがまだやられてないって事は、どうやら間に合ったようだねぇ。ほら、見えてきたんじゃない?」

 そういってアナベルが指差す方へ視線を向けてみるシンとにぃな。人影こそまだ見えないが、一部の場所から土煙が上がっているのが見えてきた。
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