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倫理による進化の抑制
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異変に巻き込まれたことで、RIZAもモンスターや異世界の者達を目にすることが出来るようになった。それにより、東京が一体どんなことになっているのか、シンとにぃなはその目で見てきた現状を語った。
「どうするって言われても、私一人で決められることじゃないよ・・・。家に帰らなかったら心配するだろうし・・・」
「それについては心配いらないわ」
にぃなは何かを知っている風な雰囲気で答える。それについてシンも心配していたことだった。彼自身、今まではWoFの世界へ転移していた為、現実世界の時間の流れとは違う時間軸を過ごしていた。
それが今、現実の世界へ帰ってきたことにより、姿こそ変われど時間の経過は現実のものと同じになるはず。
いくら必要最低限の外出しかしない身とはいえ、シンが部屋にいないとなれば、彼の家族も何かしらのアクションをとるはずだろう。
まだ警察に捜索依頼を願い出るほどの時間や日数は経っていないが、それも時間の問題。
彼らWoFのユーザーが、現実でありながら現実とは隔離された存在となって過ごしたことによる、現実世界への影響はどのように出てくるのか。
それは、にぃなの口から俄に信じがたいこととして語られる。
「私達がこの姿になっている間は、私達の存在はなかったこととして扱われてるの」
「え?それはどう言うことだ?」
「あれ?シンさんも知らなかったんだ。私達がこの姿でいる間、私達のことを知っている家族や友達とか、普通の人達は私達をいなかったものとして普通に生活してるの」
要するに、異変に巻き込まれたWoFのユーザーが、自身のキャラクターを投影すると、現実世界には存在しないものとして世界から弾かれるのだという。
そして、彼らがキャラクターの投影を解き元の姿へ戻ると、何事もなかったかのようにその空白の時間をなかったものとするのだ。
つまり現実世界の普通の人達は、彼らが何処かへ居なくなってしまったなどとは思ってもいないし、問題にもしないと言うのだ。
「それって、俺達の感じている異変は、俺達だけの異変じゃないんじゃないか?」
「詳しいことは誰も知らないの。もし知ってる人がいるのなら、それは異変について知っている人物だってことになると思う」
「じゃぁ、その“異変について知っている“人物を探せば、私達は元に戻れるってこと?」
そんな人物が居ればの話だ。そもそもこの異変が、誰かによって引き起こされた事であるという証明はない。単なるシステムのバグなのかもしれないし、そうではないのかもしれない。
「どうだろう・・・。何にしても、私達は何も知らなすぎるんだよ。だから、同じ境遇にある人やこの世界の人じゃない人達と協力していかなきゃ、真実に辿り着けないんじゃないかなって、私は思うよ?」
にぃなのいう通り、自分達だけではこの異変について調べるのには限界がある。様々な角度から物事を見ることが重要なのかもしれない。そう言った点では、フィアーズに属することは決して無駄ではないのだ。
彼らも元の世界へ戻る手立てを探しているのは事実。やり方は褒められたものではないが、技術の進化には倫理などと言っている場合ではないのかもしれない。
人間の身につけた技術力の進化の過程と似ている。言うなればそれは、医術に於ける解剖実験と同じなのかもしれない。
人間の身体をバラして調べるなど、当時では倫理に反する行為だったに違いない。解剖を行う者も、解剖される対象者も、対象者の家族や友人に大切な人々も、良い気はしなかったことだろう。
しかし、倫理によって人間の身体の構造を調べなければ、医術は前へ進まなかった。先の未来の、多くの命を救う為にも、時には倫理を無視した非道と呼ばれるようなことも、真実に辿り着くには必要なことなのかもしれない。
にぃなの話を聞き終えた後、RIZAは少し考えた様子で答えた。
「一度、家に帰ってから考えてみる・・・」
まだ彼女も、今の状況を受け入れられずにいるのかもしれない。少女が考える問題としては難し過ぎるようにも思える。
娯楽として遊んでいたゲームが、日常へ侵食してくることへの恐怖や不安が、まだ彼女の心を決心させるには至っていないのだ。
少し厳しいようだが、実際に命の危険に直面しない限り、なかなか決められる事ではない。今回はたまたまシンやにぃなといった味方がいてくれたが、一人の時にモンスターと対峙し、死ぬほどの思いをすれば考えが決まる事だろう。
シン達にとっても強制は出来ないし、無理矢理仲間に引き摺り込んだとしても、後の作戦の不安要素になり得る事態を招き入れたくはない。
「そっか・・・そうだよな。一度日常に戻ってみる方が良いかもしれない。それから自分の気持ちを確かめる方が、君にとって本当に必要な決断になると思う」
「でも、もし迷ってる間に死んじゃったら?この子の話だと、周りに私達のような境遇の人は居ないんでしょ?」
にぃなの言いたいことも分かる。異変に巻き込まれ、WoFのキャラクターを投影し戦える人間は、そう多くはない。ましてや、その大半がキャラクターを投影出来るとも知らずに殺されてしまうケースが殆どだ。
仲間として行動を共にするか、プレジャーフォレストでコウらのように拠点を築き生きているのなら、いずれは彼らとも協力できるかもしれないが、死んでしまってはみすみす可能性を無駄にするようなものなのだから。
「どうするって言われても、私一人で決められることじゃないよ・・・。家に帰らなかったら心配するだろうし・・・」
「それについては心配いらないわ」
にぃなは何かを知っている風な雰囲気で答える。それについてシンも心配していたことだった。彼自身、今まではWoFの世界へ転移していた為、現実世界の時間の流れとは違う時間軸を過ごしていた。
それが今、現実の世界へ帰ってきたことにより、姿こそ変われど時間の経過は現実のものと同じになるはず。
いくら必要最低限の外出しかしない身とはいえ、シンが部屋にいないとなれば、彼の家族も何かしらのアクションをとるはずだろう。
まだ警察に捜索依頼を願い出るほどの時間や日数は経っていないが、それも時間の問題。
彼らWoFのユーザーが、現実でありながら現実とは隔離された存在となって過ごしたことによる、現実世界への影響はどのように出てくるのか。
それは、にぃなの口から俄に信じがたいこととして語られる。
「私達がこの姿になっている間は、私達の存在はなかったこととして扱われてるの」
「え?それはどう言うことだ?」
「あれ?シンさんも知らなかったんだ。私達がこの姿でいる間、私達のことを知っている家族や友達とか、普通の人達は私達をいなかったものとして普通に生活してるの」
要するに、異変に巻き込まれたWoFのユーザーが、自身のキャラクターを投影すると、現実世界には存在しないものとして世界から弾かれるのだという。
そして、彼らがキャラクターの投影を解き元の姿へ戻ると、何事もなかったかのようにその空白の時間をなかったものとするのだ。
つまり現実世界の普通の人達は、彼らが何処かへ居なくなってしまったなどとは思ってもいないし、問題にもしないと言うのだ。
「それって、俺達の感じている異変は、俺達だけの異変じゃないんじゃないか?」
「詳しいことは誰も知らないの。もし知ってる人がいるのなら、それは異変について知っている人物だってことになると思う」
「じゃぁ、その“異変について知っている“人物を探せば、私達は元に戻れるってこと?」
そんな人物が居ればの話だ。そもそもこの異変が、誰かによって引き起こされた事であるという証明はない。単なるシステムのバグなのかもしれないし、そうではないのかもしれない。
「どうだろう・・・。何にしても、私達は何も知らなすぎるんだよ。だから、同じ境遇にある人やこの世界の人じゃない人達と協力していかなきゃ、真実に辿り着けないんじゃないかなって、私は思うよ?」
にぃなのいう通り、自分達だけではこの異変について調べるのには限界がある。様々な角度から物事を見ることが重要なのかもしれない。そう言った点では、フィアーズに属することは決して無駄ではないのだ。
彼らも元の世界へ戻る手立てを探しているのは事実。やり方は褒められたものではないが、技術の進化には倫理などと言っている場合ではないのかもしれない。
人間の身につけた技術力の進化の過程と似ている。言うなればそれは、医術に於ける解剖実験と同じなのかもしれない。
人間の身体をバラして調べるなど、当時では倫理に反する行為だったに違いない。解剖を行う者も、解剖される対象者も、対象者の家族や友人に大切な人々も、良い気はしなかったことだろう。
しかし、倫理によって人間の身体の構造を調べなければ、医術は前へ進まなかった。先の未来の、多くの命を救う為にも、時には倫理を無視した非道と呼ばれるようなことも、真実に辿り着くには必要なことなのかもしれない。
にぃなの話を聞き終えた後、RIZAは少し考えた様子で答えた。
「一度、家に帰ってから考えてみる・・・」
まだ彼女も、今の状況を受け入れられずにいるのかもしれない。少女が考える問題としては難し過ぎるようにも思える。
娯楽として遊んでいたゲームが、日常へ侵食してくることへの恐怖や不安が、まだ彼女の心を決心させるには至っていないのだ。
少し厳しいようだが、実際に命の危険に直面しない限り、なかなか決められる事ではない。今回はたまたまシンやにぃなといった味方がいてくれたが、一人の時にモンスターと対峙し、死ぬほどの思いをすれば考えが決まる事だろう。
シン達にとっても強制は出来ないし、無理矢理仲間に引き摺り込んだとしても、後の作戦の不安要素になり得る事態を招き入れたくはない。
「そっか・・・そうだよな。一度日常に戻ってみる方が良いかもしれない。それから自分の気持ちを確かめる方が、君にとって本当に必要な決断になると思う」
「でも、もし迷ってる間に死んじゃったら?この子の話だと、周りに私達のような境遇の人は居ないんでしょ?」
にぃなの言いたいことも分かる。異変に巻き込まれ、WoFのキャラクターを投影し戦える人間は、そう多くはない。ましてや、その大半がキャラクターを投影出来るとも知らずに殺されてしまうケースが殆どだ。
仲間として行動を共にするか、プレジャーフォレストでコウらのように拠点を築き生きているのなら、いずれは彼らとも協力できるかもしれないが、死んでしまってはみすみす可能性を無駄にするようなものなのだから。
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