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込められた殺意
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早速スキルを放ち、周囲にフラッシュを焚くにぃな。見ようによっては雷の演出にも見えなくはないその光は、施設内の高い天井を数回に渡り照らし出す。
何処からどのようなリアクションが来るか分からない中、シンは周囲一帯へ神経を張り巡らせる。
更には、アサシンのクラス特有のパッシブスキルで、シンとにぃなの二人を対象として距離を詰めてくる気配を探す。
そして最後に保険をかけると言う意味で、にぃなの影に自身の影を忍ばせ万が一警戒の包囲網を突破された場合の対処を準備しておく。
現実世界とWoFでの世界で、魔力の消費にどの程度の差が生まれるのか、まだ体感として経験していないシンにとって初めての、魔力枯渇が発生するかもしれない戦いとなる。
暫くの間、フラッシュによる様々な反応は何処にも見られなかった。何か起きることを望んでいた訳ではないが、あまりにも拍子抜けの事態に二人は呆気に取られた。
地味な作業になるのは初めから分かっていたが、こうも何の反応も見られないと、いつまでこれを続けるのかという先が見えない道のりが、二人の脳裏にチラついた。
だが、彼らのそんな心配はすぐに打ち砕かれることになる。
初め数回の内は全く反応が見られず、二人の緊張感は徐々に薄れていた。何度かにぃながスキルを撃ち疲労の色が見え始めた頃、それは起きた。
シンの張り巡らせた罠、蜘蛛の糸の様に広がる近づく者を検知する罠に、獲物が掛かったのだ。
「ッ・・・!」
何者かの接近に気が付いているのは、術者であるシンだけだった。相手側も、まさかこちらにアサシンのクラスが居るとは思っていなかったのだろう。警戒はしているものの、まだ罠に掛かったことに気が付いていない様子で、慎重にスキルを放つにぃなへと近づいていた。
「にぃな、敵が釣れた・・・」
「ぇ・・・!?」
彼女の影に忍ばせた自身の影を使い、声をにぃなの耳元へ届ける。急に聞こえてきたシンの声に、彼女自身も驚きながら、接近するという何者かを探すように周囲へ視線を送ろうとした時、影の中から彼女を静止させる声が聞こえる。
「しッ・・・!静かに。にぃなはこのまま気づいてない風を装って、スキルを撃ち続けてくれ」
「でも、もうあんまり撃てないよ?あと二回・・・三回くらい撃ったら一旦回復しないと・・・」
「大丈夫。相手に気づかれない様に、俺が何とかする。だからスキルが撃てなくなったら、予定通り回復を挟んで続行してくれ」
「了解。信用するからね・・・」
最後に彼女は、シンにプレッシャーをかけた。悪気があった訳ではない。ただどうしようもない状況の中、彼女の心の声が漏れたのだ。
しかし、この状況はアサシンにとって最も優位に立てる、本来あるべき状況。こちら側が一方的に状況を把握し、相手は何者かも分からぬ者に近づく緊張感と、知らず知らずの内に自身の情報を相手に与えてしまっていると言う状況を把握するのは、極めて困難なことだ。
とはいえ、こちらも相手側がどの様な手を使って接近、或いは攻撃を仕掛けてくるのかは分からない。その為に、何かが起ころうとしたらすぐに彼女を影の中へ引き摺り込み、撤退させられるような準備もしてある。
「さぁ、どうする?お前の手の内を見せてみろ・・・」
静かに息を殺し、暗闇に紛れてチャンスを伺うシン。相手は彼の期待通り、にぃなと言う餌に釣られ徐々にその距離を詰めている。
気配は建物の物陰で止まり、開けた道へ姿を晒すことに対し警戒している様子だった。そして相手側に動きが見られなくなる代わりに、別のものがにぃなへ向けられる。
「・・・!?そこから仕掛けるつもりか?」
シンが捉えたその気配は、にぃなのいる場所から遠過ぎず、また近くもないといった位置で彼女に向け、“殺意“を込めて始めたのだ。つまり、何らかの攻撃を仕掛けようとしている。
「中距離クラス・・・。武器は?銃か弓か・・・それとも投擲か?」
にぃなに接近せず止まったのは、警戒心から来るものあるだろうが、相手がその位置からにぃなを仕留める手段があるといことを示唆している。
近づいて仕留める手段しかないのであれば、言わずもながら近距離にて彼女を攻撃するしかない。逆に遠距離から彼女を仕留めることが可能であれば、何もここまで接近する必要性がない。
つまり、相手にとってあの位置がにぃなを仕留める際に最もベストな距離である、或いはサブウェポンで仕留められる最良の位置であることが分かる。
力量の分からぬ相手を、不意の一撃にて仕留めようとするならば、最も実力を発揮出来て確実に仕留められる自信のあるメインクラスで仕掛けようとするのが、一般的だろう。
もしくは、圧倒的に自信があるのかもしれないが、その場合わざわざコソコソと隠れながら接近してくるだろうか。自信家というのは、相手に自分の方が優れているという余裕を見せたがるもの。今回の相手からは、そのような仕草も挙動も伺えない。
そして、何らかの獲物に込められた殺意は、膨張した後に爆発するようににぃなに向けて放たれた。
何処からどのようなリアクションが来るか分からない中、シンは周囲一帯へ神経を張り巡らせる。
更には、アサシンのクラス特有のパッシブスキルで、シンとにぃなの二人を対象として距離を詰めてくる気配を探す。
そして最後に保険をかけると言う意味で、にぃなの影に自身の影を忍ばせ万が一警戒の包囲網を突破された場合の対処を準備しておく。
現実世界とWoFでの世界で、魔力の消費にどの程度の差が生まれるのか、まだ体感として経験していないシンにとって初めての、魔力枯渇が発生するかもしれない戦いとなる。
暫くの間、フラッシュによる様々な反応は何処にも見られなかった。何か起きることを望んでいた訳ではないが、あまりにも拍子抜けの事態に二人は呆気に取られた。
地味な作業になるのは初めから分かっていたが、こうも何の反応も見られないと、いつまでこれを続けるのかという先が見えない道のりが、二人の脳裏にチラついた。
だが、彼らのそんな心配はすぐに打ち砕かれることになる。
初め数回の内は全く反応が見られず、二人の緊張感は徐々に薄れていた。何度かにぃながスキルを撃ち疲労の色が見え始めた頃、それは起きた。
シンの張り巡らせた罠、蜘蛛の糸の様に広がる近づく者を検知する罠に、獲物が掛かったのだ。
「ッ・・・!」
何者かの接近に気が付いているのは、術者であるシンだけだった。相手側も、まさかこちらにアサシンのクラスが居るとは思っていなかったのだろう。警戒はしているものの、まだ罠に掛かったことに気が付いていない様子で、慎重にスキルを放つにぃなへと近づいていた。
「にぃな、敵が釣れた・・・」
「ぇ・・・!?」
彼女の影に忍ばせた自身の影を使い、声をにぃなの耳元へ届ける。急に聞こえてきたシンの声に、彼女自身も驚きながら、接近するという何者かを探すように周囲へ視線を送ろうとした時、影の中から彼女を静止させる声が聞こえる。
「しッ・・・!静かに。にぃなはこのまま気づいてない風を装って、スキルを撃ち続けてくれ」
「でも、もうあんまり撃てないよ?あと二回・・・三回くらい撃ったら一旦回復しないと・・・」
「大丈夫。相手に気づかれない様に、俺が何とかする。だからスキルが撃てなくなったら、予定通り回復を挟んで続行してくれ」
「了解。信用するからね・・・」
最後に彼女は、シンにプレッシャーをかけた。悪気があった訳ではない。ただどうしようもない状況の中、彼女の心の声が漏れたのだ。
しかし、この状況はアサシンにとって最も優位に立てる、本来あるべき状況。こちら側が一方的に状況を把握し、相手は何者かも分からぬ者に近づく緊張感と、知らず知らずの内に自身の情報を相手に与えてしまっていると言う状況を把握するのは、極めて困難なことだ。
とはいえ、こちらも相手側がどの様な手を使って接近、或いは攻撃を仕掛けてくるのかは分からない。その為に、何かが起ころうとしたらすぐに彼女を影の中へ引き摺り込み、撤退させられるような準備もしてある。
「さぁ、どうする?お前の手の内を見せてみろ・・・」
静かに息を殺し、暗闇に紛れてチャンスを伺うシン。相手は彼の期待通り、にぃなと言う餌に釣られ徐々にその距離を詰めている。
気配は建物の物陰で止まり、開けた道へ姿を晒すことに対し警戒している様子だった。そして相手側に動きが見られなくなる代わりに、別のものがにぃなへ向けられる。
「・・・!?そこから仕掛けるつもりか?」
シンが捉えたその気配は、にぃなのいる場所から遠過ぎず、また近くもないといった位置で彼女に向け、“殺意“を込めて始めたのだ。つまり、何らかの攻撃を仕掛けようとしている。
「中距離クラス・・・。武器は?銃か弓か・・・それとも投擲か?」
にぃなに接近せず止まったのは、警戒心から来るものあるだろうが、相手がその位置からにぃなを仕留める手段があるといことを示唆している。
近づいて仕留める手段しかないのであれば、言わずもながら近距離にて彼女を攻撃するしかない。逆に遠距離から彼女を仕留めることが可能であれば、何もここまで接近する必要性がない。
つまり、相手にとってあの位置がにぃなを仕留める際に最もベストな距離である、或いはサブウェポンで仕留められる最良の位置であることが分かる。
力量の分からぬ相手を、不意の一撃にて仕留めようとするならば、最も実力を発揮出来て確実に仕留められる自信のあるメインクラスで仕掛けようとするのが、一般的だろう。
もしくは、圧倒的に自信があるのかもしれないが、その場合わざわざコソコソと隠れながら接近してくるだろうか。自信家というのは、相手に自分の方が優れているという余裕を見せたがるもの。今回の相手からは、そのような仕草も挙動も伺えない。
そして、何らかの獲物に込められた殺意は、膨張した後に爆発するようににぃなに向けて放たれた。
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