733 / 1,646
はじめてのおつかい
しおりを挟む
最後にイヅツに案内された場所は、彼の他にWoFのユーザーが数人集まるやや開けた広場だった。そこが彼らの部屋という訳ではないが、皆情報を共有する際はここに集まるのだという。
そこでシンは、イヅツの仲間達を紹介される。その場に居たのは彼を除き四人のユーザーだった。彼らもまた異変に巻き込まれ、何も分からぬまま組織の手引きを受けたのだという。
男性キャラクターの姿が二人おり、その内の一人が“Ashアッシュ“という、赤い髪色のウルフカットが印象的な、鋭い目つきをした男。クラスはガンナーで、赤黒いロングコートを羽織り革をベースにした服装をしている、クールなキャラクターデザインをしている。
もう一人の男は“ハル“といい、真ん中分けの髪にハットを被り、淡い色を基調とした優しい印象を受ける。クラスは吟遊詩人らしく、楽器ケースのようなものを背負っている。社交的でおっとりとした話し方をする、誰とでも距離を縮められそうな印象を与える雰囲気を醸し出している。
残りの二人は女性キャラクターで、一人は“にぃな“という如何にもオタサーの姫といった感じの容姿をしていた。白い可愛らしい魔術師のようなコートを羽織り、動物の耳のついたフードを被っている。クラスはヒーラー。パーティ構成を考える上でも、居るといないとでははっきりとした差がでる重要なクラスだろう。
そして最後の一人は、そんな彼女と対比になるような黒いロングドレスに不気味な装飾や、骨のデザインが施されている。僅かに見えるその肌は色白で、目の周りはナチュラルに黒いクマができている。クラスは見た目通りと言わんばかりのネクロマンサー。
「まぁ、他にも同じ境遇の仲間はいるんだが、今はみんな出払ってるのかな?」
粗方の紹介を終えたイヅツが、他の者達がどこへ行っているのかを、最も会話が上手そうなハルに質問する。
「みんな任務に出かけてるよ。僕達は丁度休憩中だ」
「そうか。それじゃぁそれ程忙しいって訳じゃないんだな。シン、暫くは自由行動にしよう。また何かあればWoFのメッセージ機能を使って連絡する。組織の人間達も、研究員達は比較的変な奴もいないから、今の内に色々と聞いてみるといい」
そういうとイヅツは、彼らと共に部屋に残り、シンは施設内を自由に見て回ることにした。
とは言ったものの、出入りできる部屋は限られており、それ程重要そうな情報は得られそうにない。既に紹介された部屋を見て回るのもいいが、シンは東京のセントラルシティ襲撃について気になり、施設へ来たポータルへと向かう。
すると、通路を歩いていたシンは、急足でどこかへ向かおうとしている研究員に話しかけられる。
「お、丁度いいところに・・・」
「・・・?」
「お前は確かスペクターさんと一緒にいた・・・」
「あぁ・・・そうだけど・・・」
「少し頼まれてくれないか?お前は東京という地に詳しいんだろ?」
研究員の話では、東京襲撃で新たなサンプルが手に入ったらしく、それを現地に行って取ってきて欲しいというものだった。
どうせやる事も決まってなく、東京の様子が気になっていたシンはこれを好都合と、そのお使いを引き受けることにした。研究員はポータルがどこにあるのかをシンに説明して、足早にその場を去っていった。
シンは言われた通り通路を進み、東京から来たポータルへ向かう。研究施設へ入って来た時と同様、ポータルとなっている扉の横には見張りの者が立っていた。
「待て。お前は・・・この世界の者か。要件はなんだ?」
「依頼を頼まれたんだ。現地でサンプルが手に入ったから、取りに行って欲しいって・・・」
事情を見張りの男に説明すると、意外にもあっさりと道を開けてくれた。ポータルの装置を起動し、見張りの男が顎で通れと指示を出す。
シンは再び現実世界の扉を通り、東京へと戻る。ポータルを抜けた先は、入って来た場所と同じだった。そこには施設内と同じく、前にも見た顔が数人立っていた。
一様に視線を向けられたが、彼らはシンに話しかける訳でも止める訳でもなく、すんなりと彼を通し作業へと戻った。
シンは早速研究員の男から言い渡された現場の住所を、スマートフォンのナビアプリに入力する。そしてナビを見ながらシンは、建物の合間を軽い身体で駆け抜けていく。
目的の地点へ到達すると、そこは大きな建物の地下にある駐車場らしい。しかし、入口らしき扉には認証用のモニターが設置されており、強引に開けようものなら警報が鳴るようになっている。
「おいおい、これじゃぁ入れなッ・・・!」
現実世界の光景を目の当たりにしてると、時折自分の身体がWoFのキャラクターを投影していることを忘れてしまう。通常なら認証コードやハッキングが必要になるところだが、今のシンにはその必要はない。
外から中を覗けるスペースさえあれば、影のスキルを使って通りぬけることが出来る。
そこでシンは、イヅツの仲間達を紹介される。その場に居たのは彼を除き四人のユーザーだった。彼らもまた異変に巻き込まれ、何も分からぬまま組織の手引きを受けたのだという。
男性キャラクターの姿が二人おり、その内の一人が“Ashアッシュ“という、赤い髪色のウルフカットが印象的な、鋭い目つきをした男。クラスはガンナーで、赤黒いロングコートを羽織り革をベースにした服装をしている、クールなキャラクターデザインをしている。
もう一人の男は“ハル“といい、真ん中分けの髪にハットを被り、淡い色を基調とした優しい印象を受ける。クラスは吟遊詩人らしく、楽器ケースのようなものを背負っている。社交的でおっとりとした話し方をする、誰とでも距離を縮められそうな印象を与える雰囲気を醸し出している。
残りの二人は女性キャラクターで、一人は“にぃな“という如何にもオタサーの姫といった感じの容姿をしていた。白い可愛らしい魔術師のようなコートを羽織り、動物の耳のついたフードを被っている。クラスはヒーラー。パーティ構成を考える上でも、居るといないとでははっきりとした差がでる重要なクラスだろう。
そして最後の一人は、そんな彼女と対比になるような黒いロングドレスに不気味な装飾や、骨のデザインが施されている。僅かに見えるその肌は色白で、目の周りはナチュラルに黒いクマができている。クラスは見た目通りと言わんばかりのネクロマンサー。
「まぁ、他にも同じ境遇の仲間はいるんだが、今はみんな出払ってるのかな?」
粗方の紹介を終えたイヅツが、他の者達がどこへ行っているのかを、最も会話が上手そうなハルに質問する。
「みんな任務に出かけてるよ。僕達は丁度休憩中だ」
「そうか。それじゃぁそれ程忙しいって訳じゃないんだな。シン、暫くは自由行動にしよう。また何かあればWoFのメッセージ機能を使って連絡する。組織の人間達も、研究員達は比較的変な奴もいないから、今の内に色々と聞いてみるといい」
そういうとイヅツは、彼らと共に部屋に残り、シンは施設内を自由に見て回ることにした。
とは言ったものの、出入りできる部屋は限られており、それ程重要そうな情報は得られそうにない。既に紹介された部屋を見て回るのもいいが、シンは東京のセントラルシティ襲撃について気になり、施設へ来たポータルへと向かう。
すると、通路を歩いていたシンは、急足でどこかへ向かおうとしている研究員に話しかけられる。
「お、丁度いいところに・・・」
「・・・?」
「お前は確かスペクターさんと一緒にいた・・・」
「あぁ・・・そうだけど・・・」
「少し頼まれてくれないか?お前は東京という地に詳しいんだろ?」
研究員の話では、東京襲撃で新たなサンプルが手に入ったらしく、それを現地に行って取ってきて欲しいというものだった。
どうせやる事も決まってなく、東京の様子が気になっていたシンはこれを好都合と、そのお使いを引き受けることにした。研究員はポータルがどこにあるのかをシンに説明して、足早にその場を去っていった。
シンは言われた通り通路を進み、東京から来たポータルへ向かう。研究施設へ入って来た時と同様、ポータルとなっている扉の横には見張りの者が立っていた。
「待て。お前は・・・この世界の者か。要件はなんだ?」
「依頼を頼まれたんだ。現地でサンプルが手に入ったから、取りに行って欲しいって・・・」
事情を見張りの男に説明すると、意外にもあっさりと道を開けてくれた。ポータルの装置を起動し、見張りの男が顎で通れと指示を出す。
シンは再び現実世界の扉を通り、東京へと戻る。ポータルを抜けた先は、入って来た場所と同じだった。そこには施設内と同じく、前にも見た顔が数人立っていた。
一様に視線を向けられたが、彼らはシンに話しかける訳でも止める訳でもなく、すんなりと彼を通し作業へと戻った。
シンは早速研究員の男から言い渡された現場の住所を、スマートフォンのナビアプリに入力する。そしてナビを見ながらシンは、建物の合間を軽い身体で駆け抜けていく。
目的の地点へ到達すると、そこは大きな建物の地下にある駐車場らしい。しかし、入口らしき扉には認証用のモニターが設置されており、強引に開けようものなら警報が鳴るようになっている。
「おいおい、これじゃぁ入れなッ・・・!」
現実世界の光景を目の当たりにしてると、時折自分の身体がWoFのキャラクターを投影していることを忘れてしまう。通常なら認証コードやハッキングが必要になるところだが、今のシンにはその必要はない。
外から中を覗けるスペースさえあれば、影のスキルを使って通りぬけることが出来る。
0
お気に入りに追加
295
あなたにおすすめの小説
トラップって強いよねぇ?
TURE 8
ファンタジー
主人公の加藤浩二は最新ゲームであるVR MMO『Imagine world』の世界に『カジ』として飛び込む。そこで彼はスキル『罠生成』『罠設置』のスキルを使い、冒険者となって未開拓の大陸を冒険していく。だが、何やら遊んでいくうちにゲーム内には不穏な空気が流れ始める。そんな中でカジは生きているかのようなNPC達に自分とを照らし合わせていった……。
NPCの関わりは彼に何を与え、そしてこのゲームの隠された真実を知るときは来るのだろうか?
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
生産職から始まる初めてのVRMMO
結城楓
ファンタジー
最近流行りのVRMMO、興味がないわけではないが自分から手を出そうと思ってはいなかったふう。
そんな時、新しく発売された《アイディアル・オンライン》。
そしてその発売日、なぜかゲームに必要なハードとソフトを2つ抱えた高校の友達、彩華が家にいた。
そんなふうが彩華と半ば強制的にやることになったふうにとっては初めてのVRMMO。
最初のプレイヤー設定では『モンスターと戦うのが怖い』という理由から生産職などの能力を選択したところから物語は始まる。
最初はやらざるを得ない状況だったフウが、いつしか面白いと思うようになり自ら率先してゲームをするようになる。
そんなフウが贈るのんびりほのぼのと周りを巻き込み成長していく生産職から始まる初めてのVRMMOの物語。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第二章シャーカ王国編
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
男女比崩壊世界で逆ハーレムを
クロウ
ファンタジー
いつからか女性が中々生まれなくなり、人口は徐々に減少する。
国は女児が生まれたら報告するようにと各地に知らせを出しているが、自身の配偶者にするためにと出生を報告しない事例も少なくない。
女性の誘拐、売買、監禁は厳しく取り締まられている。
地下に監禁されていた主人公を救ったのはフロムナード王国の最精鋭部隊と呼ばれる黒龍騎士団。
線の細い男、つまり細マッチョが好まれる世界で彼らのような日々身体を鍛えてムキムキな人はモテない。
しかし転生者たる主人公にはその好みには当てはまらないようで・・・・
更新再開。頑張って更新します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる