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神代 コウ

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機械の獣

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 一台目の攻撃を躱したことにより、速度を落としてしまった慎達の車。後続に続く鉄塊の豹は、次々に距離を縮め本物の群れのよう迫り来る。

 二人の少年の能力により車体は持ち直し、朱影は窓から身を乗り出し座っている。その手には何処から持ち出したのか、シンプルな作りの槍が握られていた。

 「俺が数を減らしてやる。まぁ見てな」

 そう言うと朱影は、手にした槍を振り上げ迫りくる豹の群れの中へと投げ放った。慎のスキルで言うところの投擲が、彼の標準スキルとして備わっているのだ。

 しかし、頼りになる姿と言動を見せた朱影だったが、槍は豹の群れの手前に突き刺さり、不発に終わってしまった。

 「えっ・・・?ちょっと!減らすどころか擦りもしてないがッ・・・!」

 「馬鹿!あんなデケェ的を外すかよッ!本領はこっからだぜぇ!」

 すると、道路に突き刺さった朱影の槍が光を放ち、豹の群れが彼の槍を取り囲むように通り過ぎたところで、周囲の道路から様々な形状をした槍が無数に突き出したのだ。

 「あえて外したんだ。あ・え・て!」

 彼の言葉もあながち間違いや失敗を誤魔化すものではないようだ。あの手のスキルは、WoFの世界で見たことがあったのだ。技の発動限となる槍が、地面に突き刺さることによって、そこから一定の範囲内の地面から同じ系統の武具を出現させることが出来る。

 故に、直接敵の身体に突き刺さってしまったら、槍が出現するスペースがその対象者の身体のみに絞られてしまい、有効的なダメージを与えられなくなってしまう。

 機械の獣は、朱影のスキルにより罠にかかった獲物のように何体も串刺しにされ、火花を上げながら黒い煙をあげていた。

 車がその場を大きく離れると槍は消え去り、機械の獣達は自分の身体から溢れたガソリンの上に落ちる。すると、火花から引火したのか爆発を引き起こし、大きな炎で辺りを照らしていた。

 「たっ助かったぁ・・・」

 「・・・どうやら、そうでもねぇみてぇだな・・・」

 後方で大きく燃え上がる炎を見て、追手は振り切れたと安堵した慎に、朱影が油断するのはまだ早いと言わんばかりに言葉をかける。

 彼の言葉を聞いて、すぐにバックミラーを確認する慎。するとそこには、真っ赤に燃え盛る炎と黒々とした煙を天に向けて伸ばす煙の中から、数体の先ほどと同じ機械の獣が飛び出してきた。

 「でも、こっちにはこれだけの戦力がある。またさっきのをお見舞いしてやれば・・・」

 慎の言うことも最もだろう。先ほど見せた朱影のスキルがあれば、集団戦において大きな力となる範囲攻撃が可能。それに加え、高速道路という限られたスペース内であれば、その効果も絶大。

 道を塞ぐように範囲攻撃ができるあのスキルは、彼らの命運を担うと言っても過言ではない。

 しかし朱影は、慎の方を振り返ることなく後方を見続けている。表情が見て取れないので何とも言えないが、その姿から彼が何を言わんとしているのか伝わってくるようだった。

 「あー・・・その、お前の転移してる世界ってのは、今みたいな技が撃ち放題の世界なのか?」

 「・・・?いや、そんなことはない。この車と同じで、ガソリンがなければ走れないのと同等に、魔力と呼ばれる燃料がなければスキルは撃てない。・・・え、もしかして・・・」

 慎の頭に過ったことが、まるで正しいと言わんばかりにゆっくりと車内に戻ってくる朱影。少し目線を泳がせ悩んだ後、正直に伝えておかねば今後の為にならないと思ったのだろう。朱影は再度すぐにスキルを使わなかった理由を話した。

 「話が早くて助かるぜ。・・・あれは連続して使えるものじゃぁない。それに万全じゃなけりゃ、さっきよりもグレードも落ちるだろうしな・・・」

 やはり強力な攻撃には、それなりのデメリットがあるもの。現実世界で彼らがスキルを使用することによって何を消費しているのかは分からないが、朱影のような性格の者が、感情に任せスキルを連発しないということは、それなりに負担となるデメリットを抱えているのかもしれない。

 慎と朱影が次の迎撃手段について悩んでいると、切羽詰まった様子で瑜那が口を開く。

 「打ち解けてきたところすみませんが、そろそろ次が来ますよ!」

 瑜那の言葉にミラーを確認すると、炎の壁の中を突き抜けてきた機械の獣達がすぐ側にまで迫っていた。その様子からは、さっきまでのハンドル操作よりもより高度な技術が要求されるであろうことが予想できた。
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