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一時の綻び
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当時のシンには、使い方や見せ方は違って見えたものの、その本質ではシンのアサシンとしてのクラスが扱えるスキルを、タイミングや状況を利用して上手く別の能力でも使っているかのように見せかけていたのだった。
「影・・・。それってもしかして・・・」
今まで沈黙を貫いていた慎が、思わず心の声を言葉にする。恐る恐る慎重に、しかし確かに真実へと近づくように慎は口を開いたのだった。
そして、彼に質問を投げかけられた白獅は、慎の期待と真実を知った時に受ける衝撃を想定して用意していた答えに酷似したものが、白獅から慎へと伝えられる。
「あぁ、お前と同じく影のスキルを使っている。それも、特別強力なスキルって訳でもなさそうだ。多分、お前も多様しているような基礎的なスキルなんじゃないか?」
白獅に言われるまで考えもしなかったこと。自分と同じ能力、スキルを使っているのではないかということだ。意識して漸く気づくこともあった。物が突然消え、全く別の場所から現れたり、完全に捉えたと思っていたら忽然と姿を眩ます。
それらは全て、シンが戦闘で相手にしてきたことだった。不意をついたり、後ろを取りバックアタックを仕掛けるのは、重い一撃を入れ相手のペースを狂わせるアサシン特有の戦い方だったのだ。
「・・・・・」
「思い当たる節があるだろう。俺もお前の映像を見て驚いた。お前が戦ったこの黒いコートの男。恐らくはアサシンなんじゃないか?いや・・・単純に同じスキルを所持していただけの可能性もあるが・・・。どちらにせよ、俺達を意識して意図的にやっているようにしか思えんな」
「・・・意図的に・・・」
そう考えると、何故“異変“に巻き込まれた慎達以外のユーザーの元にはあまり姿を現さないのか、という疑問が湧いてくる。
白獅らアサシンギルドの者達も、保護したり協力を買って出てくれたWoFのユーザーの記録データを調べる中で、こうもWoF内の“異変“に遭遇し黒いコートの者達の情報を得られるユーザーも少なかった。
ましてや、直接対決をするなどシンが初めてのことだった。確定的なことではないのかもしれないが、少なくとも白獅らが現実世界に転移してきて、WoFのユーザーを保護するようになってからは初めての出来事だった。
「俺達も正直驚いている。何せ初めての事なんでな・・・」
「初めて・・・?」
「得体の知れないこの者達と、直越戦う者が現れる人間がいたことがだ。だが、思っていた以上に情報は少ないかも知れない・・・。この映像データから分かるのは、あくまでアサシンのスキルを使っているということだけだ」
彼はそう慎に告げるが、それだけでも今後の対策はしやすいのかも知れない。これまで黒いコートの者達は、どのような戦い方をしどのような能力やクラススキルを使ってくるのか、全くの未知だった。
それが割れた今、次に同じような事があった時の対処が彼らには出来る。そして何より、自分自身の使っているスキルとなれば、その弱点や用途、使用のタイミングもある程度予測がつく。
まるで自分自身を相手にするかのように、自らのスキルの弱点を意識して戦えば先手を打つことも可能だろう。
確かにシンとデイヴィスが戦った黒いコートの男のデータだけでは、参考にするにはあまりに情報や参照データと呼べるほどの例も少ないかも知れない。
それでも、全く未知の相手に挑むよりも遥かに今後の動きが変わってくるのは確かだった。
「だが、これで少しは気が楽になる」
「楽に・・・?」
少しホッとしたように息を吐く慎を見て、彼が続けて問いかける。
「全く知らない相手と、少しでもどんな戦い方をするのか分かった方が、対策がしやすいだろ?ましてそれが、自分と同じスキルであるならば尚の事」
現状、実際に黒いコートの者達と接点があるのは慎達のようなWoFのユーザーであり、あちら側の世界だけだった。この件に関してはWoFのユーザーの彼らに任せるしかない白獅らは、これで少しでも慎達のモチベーションにつながるのであればと、表情を僅かに和らげ答える。
「そうだな。何も準備がないよりかは遥かにマシだ。あまりお前達の能力やスキルについて詳しく調べようと意識したことはなかったが、今後はより良いサポートができるように、調べなくてはな・・・」
「ぁ・・・でもあまり個人情報を調べられるのは・・・」
人に知られるにはあまり芳しくない過去を持つ慎は、自身のことを調べられるのではないかと焦り、白獅の熱意を引き止めようとするが、端から彼にそんなつもりはなかったようだった。
「馬鹿をいえ。調べるのはあくまでお前達の戦闘データだ。個人の事情など興味はない」
「・・・そっか、なら良かった」
身体から力が抜けるのが見て取れるほどはっきり、慎の身体から緊張感が取り除かれるのが見てとれた。それを見て少し口角を上げた白獅からは、今彼らが置かれている現状からはかけ離れた笑みが垣間見えた。
「影・・・。それってもしかして・・・」
今まで沈黙を貫いていた慎が、思わず心の声を言葉にする。恐る恐る慎重に、しかし確かに真実へと近づくように慎は口を開いたのだった。
そして、彼に質問を投げかけられた白獅は、慎の期待と真実を知った時に受ける衝撃を想定して用意していた答えに酷似したものが、白獅から慎へと伝えられる。
「あぁ、お前と同じく影のスキルを使っている。それも、特別強力なスキルって訳でもなさそうだ。多分、お前も多様しているような基礎的なスキルなんじゃないか?」
白獅に言われるまで考えもしなかったこと。自分と同じ能力、スキルを使っているのではないかということだ。意識して漸く気づくこともあった。物が突然消え、全く別の場所から現れたり、完全に捉えたと思っていたら忽然と姿を眩ます。
それらは全て、シンが戦闘で相手にしてきたことだった。不意をついたり、後ろを取りバックアタックを仕掛けるのは、重い一撃を入れ相手のペースを狂わせるアサシン特有の戦い方だったのだ。
「・・・・・」
「思い当たる節があるだろう。俺もお前の映像を見て驚いた。お前が戦ったこの黒いコートの男。恐らくはアサシンなんじゃないか?いや・・・単純に同じスキルを所持していただけの可能性もあるが・・・。どちらにせよ、俺達を意識して意図的にやっているようにしか思えんな」
「・・・意図的に・・・」
そう考えると、何故“異変“に巻き込まれた慎達以外のユーザーの元にはあまり姿を現さないのか、という疑問が湧いてくる。
白獅らアサシンギルドの者達も、保護したり協力を買って出てくれたWoFのユーザーの記録データを調べる中で、こうもWoF内の“異変“に遭遇し黒いコートの者達の情報を得られるユーザーも少なかった。
ましてや、直接対決をするなどシンが初めてのことだった。確定的なことではないのかもしれないが、少なくとも白獅らが現実世界に転移してきて、WoFのユーザーを保護するようになってからは初めての出来事だった。
「俺達も正直驚いている。何せ初めての事なんでな・・・」
「初めて・・・?」
「得体の知れないこの者達と、直越戦う者が現れる人間がいたことがだ。だが、思っていた以上に情報は少ないかも知れない・・・。この映像データから分かるのは、あくまでアサシンのスキルを使っているということだけだ」
彼はそう慎に告げるが、それだけでも今後の対策はしやすいのかも知れない。これまで黒いコートの者達は、どのような戦い方をしどのような能力やクラススキルを使ってくるのか、全くの未知だった。
それが割れた今、次に同じような事があった時の対処が彼らには出来る。そして何より、自分自身の使っているスキルとなれば、その弱点や用途、使用のタイミングもある程度予測がつく。
まるで自分自身を相手にするかのように、自らのスキルの弱点を意識して戦えば先手を打つことも可能だろう。
確かにシンとデイヴィスが戦った黒いコートの男のデータだけでは、参考にするにはあまりに情報や参照データと呼べるほどの例も少ないかも知れない。
それでも、全く未知の相手に挑むよりも遥かに今後の動きが変わってくるのは確かだった。
「だが、これで少しは気が楽になる」
「楽に・・・?」
少しホッとしたように息を吐く慎を見て、彼が続けて問いかける。
「全く知らない相手と、少しでもどんな戦い方をするのか分かった方が、対策がしやすいだろ?ましてそれが、自分と同じスキルであるならば尚の事」
現状、実際に黒いコートの者達と接点があるのは慎達のようなWoFのユーザーであり、あちら側の世界だけだった。この件に関してはWoFのユーザーの彼らに任せるしかない白獅らは、これで少しでも慎達のモチベーションにつながるのであればと、表情を僅かに和らげ答える。
「そうだな。何も準備がないよりかは遥かにマシだ。あまりお前達の能力やスキルについて詳しく調べようと意識したことはなかったが、今後はより良いサポートができるように、調べなくてはな・・・」
「ぁ・・・でもあまり個人情報を調べられるのは・・・」
人に知られるにはあまり芳しくない過去を持つ慎は、自身のことを調べられるのではないかと焦り、白獅の熱意を引き止めようとするが、端から彼にそんなつもりはなかったようだった。
「馬鹿をいえ。調べるのはあくまでお前達の戦闘データだ。個人の事情など興味はない」
「・・・そっか、なら良かった」
身体から力が抜けるのが見て取れるほどはっきり、慎の身体から緊張感が取り除かれるのが見てとれた。それを見て少し口角を上げた白獅からは、今彼らが置かれている現状からはかけ離れた笑みが垣間見えた。
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