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運命の分岐点
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行き先も告げずにどこかへ行こうとするシンを呼び止めるミア。彼女の大分酒が入り、顔を赤らめてはいるが意識はしっかりしているような口ぶりだった。
その点に関しては、そこらの男や日頃から酒を飲んでいそうな海賊達よりもよっぽど強そうに見える。一体どこでこれだけ酒に強くなったのだろう。
「ん?トイレかぁ?」
「いや、その・・・キングに会いに行ってくる」
シンの言葉に頭を少しだけ傾けて、その真意を問う。仮にも彼はギャングのボス。組織のリーダーが、たかがレースにたまたま参加しただけの者に面会してくれるのだろうか。
「会えるのか?どうせ部下の奴らが周りを警備してるだろう」
「あぁ、それでも話しておきたいことがあるから・・・」
暫くの間があった後、彼女は何かを察したのか深くは聞かずに、まるで子供を送り出すかのような口調で言う。
「そっか・・・。まぁ迷わないようにな。初めての地だからな、何か目印でも決めて行くといい」
「ありがとう。ミアもあまり飲み過ぎるなよ?」
厄介者を追い払うように、手首をぶらぶらとさせるミア。僅かに聞こえてくるミアの小言を背に、シンはシー・ギャングが宴を繰り広げている場所へと向かう。
途中、スタッフらしき人などに道やキングの居場所を聞きながら、目的の場所へと向かう。すると、明らかにレースへ参加していた以上の人数を集めるキングの姿が見えた。
人だかりを避けながら進んでいくと、急に何かに腕を掴まれる。驚きと共に腕を掴んだものの方へ視線を送ると、そこには筋肉質で大柄の大男がシンの行く手を阻んでいた。
「アンタ、ここはシー・ギャングの貸し切りだぜ。それとも、それを知っててカチコミに来たんかねぇ?」
あまりに大きな姿と、身体に響くような低い声に思わず息を呑む。それほど荒っぽい口調ではなかったが、確実に牽制の意が込められている。
「おっ・・・俺はシンという。キングと話がしたくて来たんだ。彼に伝えてもらえないか?ダメならこのまま帰るから・・・」
暫くの間、大男の眼光がシンのことをじっと捉える。まるで蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる。緊張の汗が背中を伝う。すると大男は、近くにいた者に客がキングに会いたがっていることを伝えるように話す。
シンだけでなく、大男に呼ばれた者も同じく緊張に強張った様子だったことから、どうやらこの大男は立場の上の者なのだろう。
彼は知らなかったが、彼を引き止めた大男こそシー・ギャングの幹部が一人、ダラーヒムだったのだ。キングの守りについているとするならば、この男を置いて他にいない。
シンの方へ睨みつけるような鋭い視線がいくつも集まる。肌を刺すようなピリピリとした空気の中、人だかりの向こうからレースの時に何度も耳にした聞き馴染みのある声が、シンを呼んだ。
「シンちゃ~ん!来てくれたのぉ~?いいよいいよ、通しちゃって!」
人だかりが左右に分かれ、埋もれていた道が姿を現すようにキングの元へ続く道が出来上がる。恐る恐るその道へ足を進めるシン。それと同時に、彼の動きに合わせて周囲の者達の視線も、彼を追うようについてくる。
その後ろを、ピッタリと逃げ道を断つようにダラーヒムが後を追い、再び道が塞がれていく。そしてゴール間際で競り合ったキングと再会する。
「どうしたの、わざわざ会いに来てくれるなんてぇ。君もシー・ギャングに入りたくなっちゃったぁ~?」
相変わらず本気なのか冗談なのか分からないトーンで話しかけてくるキングに対し、至って真面目な話をする。彼が真摯に上止めてくれるかどうかは、分からないがせっかく来たのだ。言いたいことは全て伝えておくことにしたシン。
「デイヴィスって、知ってるか?どこを探しても見当たらないんだ・・・」
シンはデイヴィスがどうなったのかを知らない。暗殺を目論んでキングの船に侵入していったのだ。当然、キングがここにいるということは、彼らによって捕まっているか、或いは・・・。
その全てを知っているであろう本人から、直接聞きたかったのだ。そこで漸く思いを受け止められる。有耶無耶にしたまま、この地を去ることは出来ない。短い間だったが、デイヴィスからは色々なものを学んだ気がするシン。
勝手ではあるが、恩師と思っている人間がどうなったのか。一人の男の、一人の人間の運命を決める分岐点。それがどのような航路を辿るのか、見届けることで何か得るものがあるのかもしれない。
その点に関しては、そこらの男や日頃から酒を飲んでいそうな海賊達よりもよっぽど強そうに見える。一体どこでこれだけ酒に強くなったのだろう。
「ん?トイレかぁ?」
「いや、その・・・キングに会いに行ってくる」
シンの言葉に頭を少しだけ傾けて、その真意を問う。仮にも彼はギャングのボス。組織のリーダーが、たかがレースにたまたま参加しただけの者に面会してくれるのだろうか。
「会えるのか?どうせ部下の奴らが周りを警備してるだろう」
「あぁ、それでも話しておきたいことがあるから・・・」
暫くの間があった後、彼女は何かを察したのか深くは聞かずに、まるで子供を送り出すかのような口調で言う。
「そっか・・・。まぁ迷わないようにな。初めての地だからな、何か目印でも決めて行くといい」
「ありがとう。ミアもあまり飲み過ぎるなよ?」
厄介者を追い払うように、手首をぶらぶらとさせるミア。僅かに聞こえてくるミアの小言を背に、シンはシー・ギャングが宴を繰り広げている場所へと向かう。
途中、スタッフらしき人などに道やキングの居場所を聞きながら、目的の場所へと向かう。すると、明らかにレースへ参加していた以上の人数を集めるキングの姿が見えた。
人だかりを避けながら進んでいくと、急に何かに腕を掴まれる。驚きと共に腕を掴んだものの方へ視線を送ると、そこには筋肉質で大柄の大男がシンの行く手を阻んでいた。
「アンタ、ここはシー・ギャングの貸し切りだぜ。それとも、それを知っててカチコミに来たんかねぇ?」
あまりに大きな姿と、身体に響くような低い声に思わず息を呑む。それほど荒っぽい口調ではなかったが、確実に牽制の意が込められている。
「おっ・・・俺はシンという。キングと話がしたくて来たんだ。彼に伝えてもらえないか?ダメならこのまま帰るから・・・」
暫くの間、大男の眼光がシンのことをじっと捉える。まるで蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる。緊張の汗が背中を伝う。すると大男は、近くにいた者に客がキングに会いたがっていることを伝えるように話す。
シンだけでなく、大男に呼ばれた者も同じく緊張に強張った様子だったことから、どうやらこの大男は立場の上の者なのだろう。
彼は知らなかったが、彼を引き止めた大男こそシー・ギャングの幹部が一人、ダラーヒムだったのだ。キングの守りについているとするならば、この男を置いて他にいない。
シンの方へ睨みつけるような鋭い視線がいくつも集まる。肌を刺すようなピリピリとした空気の中、人だかりの向こうからレースの時に何度も耳にした聞き馴染みのある声が、シンを呼んだ。
「シンちゃ~ん!来てくれたのぉ~?いいよいいよ、通しちゃって!」
人だかりが左右に分かれ、埋もれていた道が姿を現すようにキングの元へ続く道が出来上がる。恐る恐るその道へ足を進めるシン。それと同時に、彼の動きに合わせて周囲の者達の視線も、彼を追うようについてくる。
その後ろを、ピッタリと逃げ道を断つようにダラーヒムが後を追い、再び道が塞がれていく。そしてゴール間際で競り合ったキングと再会する。
「どうしたの、わざわざ会いに来てくれるなんてぇ。君もシー・ギャングに入りたくなっちゃったぁ~?」
相変わらず本気なのか冗談なのか分からないトーンで話しかけてくるキングに対し、至って真面目な話をする。彼が真摯に上止めてくれるかどうかは、分からないがせっかく来たのだ。言いたいことは全て伝えておくことにしたシン。
「デイヴィスって、知ってるか?どこを探しても見当たらないんだ・・・」
シンはデイヴィスがどうなったのかを知らない。暗殺を目論んでキングの船に侵入していったのだ。当然、キングがここにいるということは、彼らによって捕まっているか、或いは・・・。
その全てを知っているであろう本人から、直接聞きたかったのだ。そこで漸く思いを受け止められる。有耶無耶にしたまま、この地を去ることは出来ない。短い間だったが、デイヴィスからは色々なものを学んだ気がするシン。
勝手ではあるが、恩師と思っている人間がどうなったのか。一人の男の、一人の人間の運命を決める分岐点。それがどのような航路を辿るのか、見届けることで何か得るものがあるのかもしれない。
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