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神代 コウ

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神速の弓技

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 連続しては放てないものの、ツクヨの斬撃は確実にミア達の手助けになっていた。それほど手に負える数ではなかったのだ

 だが、速度を落とすことなく走り続ける、ツバキの見事な操縦捌きによってミア達はゴールへと近づく。ツクヨの加勢を見たシュユーが主人であるチン・シーへ、妨害攻撃から追撃を行うことを提案する。

 ミア達の守りが硬くなったことにより、チン・シー海賊団の援護射撃が多少少なくなろうとも持ち堪えられるポテンシャルを得た。

 その隙に、シー・ギャングの特にトゥーマーン部隊の船にダメージを与えられれば、ミア達だけでなくチン・シー海賊団自体も順位を上げることに繋がる。

 約束のその姿勢は見せた。ミア達には暫しの間耐えてもらい、攻勢に出ようというのだ。信頼しているシュユーの進言であれば、断る理由などない。それに彼女も同意見だった。

 このまま勝負に出ないチン・シー海賊団ではない。火矢による攻撃を一時中断するチン・シー海賊団。ミア達の迎撃は一段と厳しいものになったが、その間にシュユー達はこれまでの炎の鳥よりも貫通力に特化した、火矢を一直線に連ねて放つ連繋弓技・炎槍えんそうを披露する。

 甲高い鳥の鳴き声が、砲撃や波の音、会場の歓声の中を突き抜ける一筋の光明のように突き抜ける。

 その音に気がついた一同は、何事かと周囲へ視線を送る。しかし、その時には鳴き声の主の姿は何処にもなく、トゥーマーンの乗る海賊船の後方に風穴を開けていた。

 穴の周囲には、焦げたような匂いと煙だけが残り、一体何がその穴を通ったのかさえ想像が出来ないほど壮絶なものだった。

 思わず声を飲み込んでしまう船員達。すぐに我へと帰った者達が、船に開いた穴からの被害状況を確認しに走る。穴は船内を突き抜けたかのように、一直線上に壁や床を貫いている。

 鋭い角度で撃ち込まれた火矢は船底に穴を開けており、そこから海水が流れ込んできていた。砲撃や魔法による攻撃を行なっていた船員達は、すぐにその手を止めて急ぎ船の修復作業に取り掛かる。

 他の箇所からは火の手も上がっている。じわじわと焼けるような匂いが船内に漂っている。

 シュユーの提案は、見事に想定以上の深傷をトゥーマーンの部隊に与えた。そして恐るべきは、彼らの放つ連繋弓技は単発の大砲にあらず、チン・シーのリンクによってすぐに次弾が放たれるところにあったのだ。

 チン・シー海賊団のそれぞれの船から、先ほどと同じような鳥の鳴き声が次々に聞こえてくる。まるで銃弾の雨を受けたかのように、トゥーマーンの船団は一気に窮地へと追い込まれる。

 「火はどうにでもなるわ!船に開いた穴を最優先に塞ぎなさい!・・・なんてこと。鼠を追っていたその隙を突かれるなんてッ・・・!不覚・・・」

 瞬く間に起きた出来事の一部始終を見ていたスユーフとダラーヒムも、その一変した光景に目を奪われていた。騒がしくなるトゥーマーンの船団にダラーヒムは、自身の部隊の船を数隻彼女の船の元へ向かわせる。

 「・・・スユーフ。悪りぃがやっぱり攻撃には参加出来ねぇな・・・。あんなのの標的にされたんじゃ、ボスの命令を全う出来ねぇ」

 「わ・・・分かっている。トゥ・・・トゥーマーンの方は任せた」

 そういうとスユーフは、自身の船団を従えダラーヒムの元を離れていく。そして、火矢を放ち続けるチン・シー海賊団の元へ船を向かわせる。

 「そ・・・そっちが直接、ふ・・・船を狙うなら。こ・・・こっちも狙うまでッ・・・!」

 スユーフは船尾の縁に立つと、抜刀術の構えをとり静かに瞼を閉じる。そして心の中に起きている波を沈めると、静寂を切り裂くように目にも止まらぬ一閃を放つ。

 彼の斬撃は、チン・シーの船団の中でも特に大きな船を、まるで中心に線を引いたかのように一刀両断した。その船はまさしく、総大将であるチン・シーが乗っている船だった。

 攻勢に乗っていたチン・シー海賊団の者達に、不穏な予感が走る。雷が光ったかのような刹那の光が彼らの視界をも両断するように駆け抜ける。

 「なッ・・・何だ・・・?今のは・・・」

 シュユーが忙しなく首を動かし、周囲に異変が起きていないかを確認する。しかし、見渡す限りこれといっておかしな事は起こっていないように見える。だがそれは、意識して見ていなければ気づかないような変化で、ゆっくりと姿を見せる。

 主人であるチン・シーが乗っている筈の船が、中心からゆっくりズレるように左右でそのシルエットを分けたのだった。
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