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船上の迎撃戦
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降り注ぐ砲弾の雨を巧みに避けるツバキの船。隙を突いて水の魔法が彼らを襲おうとするが、渾身の攻撃は後方から放たれる炎の鳥が許さなかった。
「どうしてあなた方が邪魔をするのかしらね・・・!」
「ふん、我々が競り合うなど毎度のことだろう?」
その機動力から、ミア達の乗る船がただの砲撃では潰えぬことを悟ると、シー・ギャングによる魔法の攻撃に重点を置いて火矢を放つチン・シー海賊団。
甲板で指示を出すのは、鍛治師でエンチャントを行うチン・シー海賊団の参謀リー・シュユーだった。火矢を持たせた部下を綺麗に整列させ、チン・シーのリンク能力により寸分違わず放たれる矢は、空中で大きな鳥へと姿を変え、悉くシー・ギャングの魔力を帯びた攻撃を燃やし尽くす。
その様子はチン・シー海賊団の本船のみならず、周りに点在する各々の船の甲板でも行われていた。
船長の能力の欠点である効果範囲を広げるため尽力していたのは、妖術によりその効果を各船に届けるファン・フーファンの妖術部隊だ。
それぞれの船に彼女の部下である妖術しが乗っており、チン・シーの能力を要所要所に届ける重要な役目を担っている。これほど器用な真似をその歳でやってのけるのは、最早才能としか言いようがない。
複数の船からやって来る炎の鳥の対応に追われるのは、シー・ギャングの幹部を務めるジャウカーンの同僚達だった。
ハオランとも行動を共にしていたスユーフは、目にも止まらぬ剣捌きで斬撃を放つと、触れたものを斬り刻むかまいたちを生み出し、後方からやってく炎を纏った鳥の群れを撃ち落とす。
「お・・・お前の部隊も、す・・・少しは手を貸したら、ど・・・どうだ?」
「ん?俺ぁボスからあいつらを守れって言われてるからなぁ。それにお前らの魔力の暴発がこっちに飛んでこないとも限らねぇしな」
皮肉混じりに答えたのは、レース中常にキングの乗る船の周囲で守りを固めていた、土属性に特化した錬金術師のダラーヒムだった。
彼は、キングが離脱した本船に残された船員達の守りを命じられていた。何としても、何よりも優先して守れと。それもその筈。キングの本船に乗っていた船員というのは、彼が保護した奴隷として売り捌かれる筈の子供達なのだから。
キングの信念の為にも、ダラーヒムに下された命は順位などというものよりも絶対的に優先度が高かった。故にダラーヒムは攻撃に参加しない。万が一など許されないからだ。
そんな中でも、特にツバキの船を苛烈に責め立てていたのは、キングを襲ったデイヴィスの襲撃。その折に裏切り者のウォルターによって不意打ちを受け、気を失っていた水の精霊術師トゥーマーンだった。
暫くの間レイド戦に参加出来ていなかった彼女は、誰よりも魔力が有り余っていた。そして彼女の操る水は、後方からやって来るチン・シー海賊団の援護攻撃の影響を受けづらかったのだ。
それもその筈。彼女らの攻撃の相性は一目瞭然。水の魔法を得意とするトゥーマーンに炎の鳥による迎撃は、然程痛手ではなかった。やや力は衰えるものの止めるには至らず、ツバキの船を襲った。
だが、それに必死の抵抗を見せていたのはミアだった。このレースで新たな精霊の力を身につけた彼女は、同じ水の属性であるのなら争うことも可能なのではないかと、一人甲板へ赴きウンディーネと共にトゥーマーンの部隊の攻撃を防いでいた。
「クソッ・・・!もっと弾くことは出来ないのか!?」
「無理よ!向こうは本職の精霊術師よ!?どう足掻いても弾くなんて無理。軌道をそらせるので精一杯よ!」
ミアの手に入れた新たな力であるウンディーネは、あくまで錬金術師の扱う四大元素の精霊に過ぎず、本場の精霊術師のそれには敵わない。同じ技、同じタイミングでその差は歴然のものとなる。
何とかしてトゥーマーン部隊の攻撃から直撃は免れているものの、海面に衝突した衝撃で船が揺さぶられる。中で操縦しているツバキに、悪い影響を及ぼしてしまっているのではないかという懸念が、ミアの頭の中にチラついた。
「ツバキ!私も外に出て援護するよ」
「それは構わねぇが、振り落とされても拾ってやれねぇからな!?」
全身を使って舵を切るツバキ。船内でアシストをしていたツクヨが、外の様子を見兼ねてミアと自身の二人で迎撃することを提案する。
しかし、船内にいてもそうだったが船は左右に大きく揺られ、掴まっていないと真面に立っていることすら困難な状況にある。片手で攻撃が可能なミアならともかく、両手を使い尚且つ足場の悪い状態で斬撃を行うのは至難の技だろう。
それでも、ミア一人に危険な役割をさせていることに後ろめたさを感じていたツクヨも、急ぎ彼女のいる甲板へと向かう。
「ミアッ・・・!」
「ツクヨ・・・?何故出てきた!?こんなところに出てきても、今のお前じゃぁ使いものにならんぞ・・・!」
「ず・・・随分とはっきり言ってくれるじゃないの・・・。でもね、私だってこの戦いで成長したんだよ!?」
ツクヨは片手で船の縁に掴まりながら、腰に携えた剣を引き抜くと器用に手の上で回して逆手持ちに切り替えると、剣先を甲板の床に突き立て魔力を注ぐ。
そして、船の揺れが収まった一瞬を見極め刹那の一閃を振るう。すると、彼の放った斬撃はスユーフの斬撃のように周囲の風を巻き込み、複数の斬撃となって迫り来る水の触手を両断する。
「どうしてあなた方が邪魔をするのかしらね・・・!」
「ふん、我々が競り合うなど毎度のことだろう?」
その機動力から、ミア達の乗る船がただの砲撃では潰えぬことを悟ると、シー・ギャングによる魔法の攻撃に重点を置いて火矢を放つチン・シー海賊団。
甲板で指示を出すのは、鍛治師でエンチャントを行うチン・シー海賊団の参謀リー・シュユーだった。火矢を持たせた部下を綺麗に整列させ、チン・シーのリンク能力により寸分違わず放たれる矢は、空中で大きな鳥へと姿を変え、悉くシー・ギャングの魔力を帯びた攻撃を燃やし尽くす。
その様子はチン・シー海賊団の本船のみならず、周りに点在する各々の船の甲板でも行われていた。
船長の能力の欠点である効果範囲を広げるため尽力していたのは、妖術によりその効果を各船に届けるファン・フーファンの妖術部隊だ。
それぞれの船に彼女の部下である妖術しが乗っており、チン・シーの能力を要所要所に届ける重要な役目を担っている。これほど器用な真似をその歳でやってのけるのは、最早才能としか言いようがない。
複数の船からやって来る炎の鳥の対応に追われるのは、シー・ギャングの幹部を務めるジャウカーンの同僚達だった。
ハオランとも行動を共にしていたスユーフは、目にも止まらぬ剣捌きで斬撃を放つと、触れたものを斬り刻むかまいたちを生み出し、後方からやってく炎を纏った鳥の群れを撃ち落とす。
「お・・・お前の部隊も、す・・・少しは手を貸したら、ど・・・どうだ?」
「ん?俺ぁボスからあいつらを守れって言われてるからなぁ。それにお前らの魔力の暴発がこっちに飛んでこないとも限らねぇしな」
皮肉混じりに答えたのは、レース中常にキングの乗る船の周囲で守りを固めていた、土属性に特化した錬金術師のダラーヒムだった。
彼は、キングが離脱した本船に残された船員達の守りを命じられていた。何としても、何よりも優先して守れと。それもその筈。キングの本船に乗っていた船員というのは、彼が保護した奴隷として売り捌かれる筈の子供達なのだから。
キングの信念の為にも、ダラーヒムに下された命は順位などというものよりも絶対的に優先度が高かった。故にダラーヒムは攻撃に参加しない。万が一など許されないからだ。
そんな中でも、特にツバキの船を苛烈に責め立てていたのは、キングを襲ったデイヴィスの襲撃。その折に裏切り者のウォルターによって不意打ちを受け、気を失っていた水の精霊術師トゥーマーンだった。
暫くの間レイド戦に参加出来ていなかった彼女は、誰よりも魔力が有り余っていた。そして彼女の操る水は、後方からやって来るチン・シー海賊団の援護攻撃の影響を受けづらかったのだ。
それもその筈。彼女らの攻撃の相性は一目瞭然。水の魔法を得意とするトゥーマーンに炎の鳥による迎撃は、然程痛手ではなかった。やや力は衰えるものの止めるには至らず、ツバキの船を襲った。
だが、それに必死の抵抗を見せていたのはミアだった。このレースで新たな精霊の力を身につけた彼女は、同じ水の属性であるのなら争うことも可能なのではないかと、一人甲板へ赴きウンディーネと共にトゥーマーンの部隊の攻撃を防いでいた。
「クソッ・・・!もっと弾くことは出来ないのか!?」
「無理よ!向こうは本職の精霊術師よ!?どう足掻いても弾くなんて無理。軌道をそらせるので精一杯よ!」
ミアの手に入れた新たな力であるウンディーネは、あくまで錬金術師の扱う四大元素の精霊に過ぎず、本場の精霊術師のそれには敵わない。同じ技、同じタイミングでその差は歴然のものとなる。
何とかしてトゥーマーン部隊の攻撃から直撃は免れているものの、海面に衝突した衝撃で船が揺さぶられる。中で操縦しているツバキに、悪い影響を及ぼしてしまっているのではないかという懸念が、ミアの頭の中にチラついた。
「ツバキ!私も外に出て援護するよ」
「それは構わねぇが、振り落とされても拾ってやれねぇからな!?」
全身を使って舵を切るツバキ。船内でアシストをしていたツクヨが、外の様子を見兼ねてミアと自身の二人で迎撃することを提案する。
しかし、船内にいてもそうだったが船は左右に大きく揺られ、掴まっていないと真面に立っていることすら困難な状況にある。片手で攻撃が可能なミアならともかく、両手を使い尚且つ足場の悪い状態で斬撃を行うのは至難の技だろう。
それでも、ミア一人に危険な役割をさせていることに後ろめたさを感じていたツクヨも、急ぎ彼女のいる甲板へと向かう。
「ミアッ・・・!」
「ツクヨ・・・?何故出てきた!?こんなところに出てきても、今のお前じゃぁ使いものにならんぞ・・・!」
「ず・・・随分とはっきり言ってくれるじゃないの・・・。でもね、私だってこの戦いで成長したんだよ!?」
ツクヨは片手で船の縁に掴まりながら、腰に携えた剣を引き抜くと器用に手の上で回して逆手持ちに切り替えると、剣先を甲板の床に突き立て魔力を注ぐ。
そして、船の揺れが収まった一瞬を見極め刹那の一閃を振るう。すると、彼の放った斬撃はスユーフの斬撃のように周囲の風を巻き込み、複数の斬撃となって迫り来る水の触手を両断する。
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