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好敵手
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彼はどのくらいの距離か具体的な数字を口にしたが、実際体感するのとは大分感覚が違うもの。シンのピンと来ていない表情を見て、俺が実際に距離を取るからついて来てくれと指示を出すマクシム。
何を企んでいるのか分からないが、彼の言うキングとハオランにまともに張り合うのは無謀だということには同意したシン。まだ詳細は語られていないが、とりあえず彼の後について行き様子を伺いことにした。
ある程度進むと、キングの後続を走るハオランのボードが近づく。運動神経のいい彼ならば、それほど乗り回さずとも直ぐに要領を掴み、見事シンと同様かそれ以上のテクニックを身につけているようだ。
だが、マシンの性能は同じはずなのに、何故そんな彼にシン達が追い付けたのか。それと言うのも、ハオランが前方を走るキングを止めようとちょっかいを出していたからだった。
ハオランはキングの姿を視界に捉えると、遠距離から器用に足技を繰り出し、鋭い刃のような衝撃波を放つ。
それをキングは、何かのアトラクションのように左右へ揺れながら避け、時には速度に緩急をつける。何と、ハオランの猛攻を一切能力を使うことなく、自らのボード捌きのみで対処していたのだ。
「本当にッ・・・!なんて御仁なんだ、貴方は・・・」
清々しいまでの見事な身のこなしに、感服せざるを得なかったハオランは、諦めるどころか俄然やる気に燃え上がっていた。自然と彼の表情は楽しいことへ打ち込むように明るいものとなり、攻撃の手数は更に増えていった。
「ひゅ~!流石は天下のチン・シー海賊団。その最強の矛と言われるだけのことはあるねぇ!でも、俺ちゃんを捉えるには至らないのかなぁ?」
何としても止めてやろうと手数の増えるハオラン。自身の能力をふんだんに使い、キングに追いつこうと試みるが、彼が武術で来るからか、キングは能力で振り払おうとはしなかった。
これは彼なりの武士道精神のようなものだろう。キングが能力を使えば、飛んで来る衝撃波を撃ち落とすことなど、造作もないことかもしれない。だがそれでは、あまりにつまらない。
倒されることなく、ボタン一つで何でも解決し無双してしまうゲームほどつまらないものはない。キングは、その恵まれた能力に感けて自分を腐らせたくなかったのだ。
それは経験者である彼ならではのものであり、地位や権力に溺れ腐っていく人間を数多見てきた彼は、そんなつまらぬ人間になりたくないと強く思うようになった。
勿論、不用意に多用できない能力であることもある。既にリヴァイアサン戦でこれまでにない程の魔力を消耗したキングは、如何しても使わざるを得ない場面に陥るまで使えないのも事実。
自力でどうにか出来るものは自力で何とかし、核心に迫る渾身の一撃を見定めているのだ。ただそれが、残された彼の力で抑え込めるほどのものなのかは、キングにも分からなかった。
そして、事態が急変する出来事は突然訪れる。
激しい攻防を繰り広げる内に、リヴァイアサンの血液によって汚染された海域をとうに抜けていた彼らは、清々しいほど気持ちのいい日差しと、漸く顔を覗かせた天色の空の下、まさにこれこそ水上レースだというようなせめぎ合いを見せる。
環境の変化が影響したのか、僅かに先を走っていたキングがその日差しに瞼を落とした際に、目を凝らさなければ気付かぬほどの小さな隙を、ハオランは見逃さなかった。
先に血海を抜けたキングに対し、僅かな一瞬ではあるが日差しにさらされるまでの間に、キングの見せた隙を突くように放ったハオランの衝撃波が、彼のボードの進路上に波を引き起こし、バランスを崩させたのだ。
「おっ・・・!?」
バランスを崩し失速するキングに合わせ、フルスロットルの加速見せるハオラン。それまで二人を隔てていた距離は一気に縮まり、遂にハオランがキングの前に出た。
「お先に失礼します」
追い抜き様に丁寧に頭を下げるハオラン。しかしその表情は、漸く追いつけたことに対する達成感と喜びが読み取れる。恐らく彼自身も、キングを煽るように声をかけたのだろう。
切磋琢磨するライバルのように、互いが互いの全力を引き出させようと相手を引き上げる。
キングがこの状況を楽しんでいたように、ハオランも殺し合いではない、全力でぶつかり合える好敵手を得て、心が弾むような心境だったのだろう。
これまでの暗い戦いで溜まった鬱憤を晴らすように、二人は全力でゴール直前のレースのせめぎ合いを楽しんでいた。
ハオランの奮闘が、遂にキングの残していた力を表に引き摺り出した。負けず嫌いのキングの感情が無意識に働き、身体が勝手にハオランの背に向けて手を伸ばし、僅かに能力を解き放った。
突如ハオランの進行速度が、ガクッと落ちる。自身のに起きる異変に、思わず目を丸くするハオランだったが、直ぐにそれがキングの仕業であることを悟る。
だが彼は、漸くキングの能力を引き摺り出すことができたと、不敵な笑みを見せていた。
「漸く本気になりましたか?キング・・・」
「使うつもりは無かったんよねぇ~。でもさぁ・・・やっぱ負けんのは嫌なんよ・・・!」
熱く燃え上がる闘志を剥き出しにする二人。
そして、失速した二人に二つの影が近づく。虎視眈々とその時を待っていたかのように加速する二人は、キングとハオランを挟むように距離を空けながら左右に分かれ、表舞台へと身を乗り出す。
何を企んでいるのか分からないが、彼の言うキングとハオランにまともに張り合うのは無謀だということには同意したシン。まだ詳細は語られていないが、とりあえず彼の後について行き様子を伺いことにした。
ある程度進むと、キングの後続を走るハオランのボードが近づく。運動神経のいい彼ならば、それほど乗り回さずとも直ぐに要領を掴み、見事シンと同様かそれ以上のテクニックを身につけているようだ。
だが、マシンの性能は同じはずなのに、何故そんな彼にシン達が追い付けたのか。それと言うのも、ハオランが前方を走るキングを止めようとちょっかいを出していたからだった。
ハオランはキングの姿を視界に捉えると、遠距離から器用に足技を繰り出し、鋭い刃のような衝撃波を放つ。
それをキングは、何かのアトラクションのように左右へ揺れながら避け、時には速度に緩急をつける。何と、ハオランの猛攻を一切能力を使うことなく、自らのボード捌きのみで対処していたのだ。
「本当にッ・・・!なんて御仁なんだ、貴方は・・・」
清々しいまでの見事な身のこなしに、感服せざるを得なかったハオランは、諦めるどころか俄然やる気に燃え上がっていた。自然と彼の表情は楽しいことへ打ち込むように明るいものとなり、攻撃の手数は更に増えていった。
「ひゅ~!流石は天下のチン・シー海賊団。その最強の矛と言われるだけのことはあるねぇ!でも、俺ちゃんを捉えるには至らないのかなぁ?」
何としても止めてやろうと手数の増えるハオラン。自身の能力をふんだんに使い、キングに追いつこうと試みるが、彼が武術で来るからか、キングは能力で振り払おうとはしなかった。
これは彼なりの武士道精神のようなものだろう。キングが能力を使えば、飛んで来る衝撃波を撃ち落とすことなど、造作もないことかもしれない。だがそれでは、あまりにつまらない。
倒されることなく、ボタン一つで何でも解決し無双してしまうゲームほどつまらないものはない。キングは、その恵まれた能力に感けて自分を腐らせたくなかったのだ。
それは経験者である彼ならではのものであり、地位や権力に溺れ腐っていく人間を数多見てきた彼は、そんなつまらぬ人間になりたくないと強く思うようになった。
勿論、不用意に多用できない能力であることもある。既にリヴァイアサン戦でこれまでにない程の魔力を消耗したキングは、如何しても使わざるを得ない場面に陥るまで使えないのも事実。
自力でどうにか出来るものは自力で何とかし、核心に迫る渾身の一撃を見定めているのだ。ただそれが、残された彼の力で抑え込めるほどのものなのかは、キングにも分からなかった。
そして、事態が急変する出来事は突然訪れる。
激しい攻防を繰り広げる内に、リヴァイアサンの血液によって汚染された海域をとうに抜けていた彼らは、清々しいほど気持ちのいい日差しと、漸く顔を覗かせた天色の空の下、まさにこれこそ水上レースだというようなせめぎ合いを見せる。
環境の変化が影響したのか、僅かに先を走っていたキングがその日差しに瞼を落とした際に、目を凝らさなければ気付かぬほどの小さな隙を、ハオランは見逃さなかった。
先に血海を抜けたキングに対し、僅かな一瞬ではあるが日差しにさらされるまでの間に、キングの見せた隙を突くように放ったハオランの衝撃波が、彼のボードの進路上に波を引き起こし、バランスを崩させたのだ。
「おっ・・・!?」
バランスを崩し失速するキングに合わせ、フルスロットルの加速見せるハオラン。それまで二人を隔てていた距離は一気に縮まり、遂にハオランがキングの前に出た。
「お先に失礼します」
追い抜き様に丁寧に頭を下げるハオラン。しかしその表情は、漸く追いつけたことに対する達成感と喜びが読み取れる。恐らく彼自身も、キングを煽るように声をかけたのだろう。
切磋琢磨するライバルのように、互いが互いの全力を引き出させようと相手を引き上げる。
キングがこの状況を楽しんでいたように、ハオランも殺し合いではない、全力でぶつかり合える好敵手を得て、心が弾むような心境だったのだろう。
これまでの暗い戦いで溜まった鬱憤を晴らすように、二人は全力でゴール直前のレースのせめぎ合いを楽しんでいた。
ハオランの奮闘が、遂にキングの残していた力を表に引き摺り出した。負けず嫌いのキングの感情が無意識に働き、身体が勝手にハオランの背に向けて手を伸ばし、僅かに能力を解き放った。
突如ハオランの進行速度が、ガクッと落ちる。自身のに起きる異変に、思わず目を丸くするハオランだったが、直ぐにそれがキングの仕業であることを悟る。
だが彼は、漸くキングの能力を引き摺り出すことができたと、不敵な笑みを見せていた。
「漸く本気になりましたか?キング・・・」
「使うつもりは無かったんよねぇ~。でもさぁ・・・やっぱ負けんのは嫌なんよ・・・!」
熱く燃え上がる闘志を剥き出しにする二人。
そして、失速した二人に二つの影が近づく。虎視眈々とその時を待っていたかのように加速する二人は、キングとハオランを挟むように距離を空けながら左右に分かれ、表舞台へと身を乗り出す。
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