596 / 1,646
血海を越えた先へ
しおりを挟む
海賊達の奮闘の末、巨大な魔物は遂に倒された。全ての思いを乗せた雷撃に頭部を撃ち抜かれた魔物は、その強烈な一撃に頭を千切られえたように失い、おの全ての能力を停止した。
首からは大量の血が、噴火した火山のマグマのようにドロドロと海へと流れ落ちていく。リヴァイアサンの身体から流れ出る血液は、レイド戦の戦地となった海域一帯を赤黒く染め上げる。
その光景は宛ら、地獄を航海す禁忌に触れた呪縛に囚われる海賊かのような気分にさせらた。
消えゆくリヴァイアサンの身体へ向かうシンとウンディーネとは逆に、海賊達は赤黒い海を同じ方向へ向かって動き出す。いつまでも勝利の余韻には浸っていられない。何故ならレースはまだ終わっていないのだから。
だが、リヴァイアサンの血に舵を取られ思うように進むことが出来ず、足止めを食らっている海賊船が多数見受けられる。その中でも、沼のようにまとわりつく海水に影響を受けずに海面を駆け抜ける者がいた。
それは三大海賊の一人、キングだった。
シンから奪ったツバキのボードは、リヴァイアサンの血に染まる海域に足を取られることなく、存分にその性能を見せつけたのだ。頭ひとつ抜き出たキングは他の者達を置き去りにし、一人レースの終着点である大陸を目指す。
「本当にいい出会いをしたもんだねぇ~!まさかこんな贈り物まで貰えるたぁ~、俺ちゃんはやっぱり勝利の女神に愛されてんだね!」
しかし、ツバキのボードを手にしているのは何もキングだけではない。器用にリヴァイアサンの身体を滑り降りていく一人の男に、何者かの声が脳内に染み込んでくるように伝わる。
「ハオランよ、先に行けッ!我々はもう少し時間が掛かる。その間にお前だけでもここを抜けるのだ。何としてもあの若造に先を越されるな!」
「我が主人・・・。かしこまりました。お先に失礼しますッ!」
チン・シー海賊団最強の矛であるハオランは、ある程度海面にまで降りてくると海へ飛び降り、キングと同じくツバキの創作したボードで血の海を颯爽と駆け抜け、先を越されたキングの後を追う。
そして、キングやハオランの猛進を黙って見送るエイヴリー海賊団ではない。再三見せつけられてきていたキングやハオラン、そしてシンが乗っているボード。
エイヴリーはそれを、話に聞くだけではなくその目で見てきた。役割を果たした戦艦の一部を使い、エイヴリーはそのクラフト能力で、本物と瓜二つのボードを作り上げた。何より彼らは、そのボードに使われている貴重な素材が何なのか知っている。
何を隠そう、その素材を調達してきたのは彼らエイヴリー海賊団なのだから。エイヴリーはボードを作り上げると、海賊団の中で最も軽快な身のこなしが可能な人物を抜粋し、二人の後を追わせる。
「マクシム、今奴らに追いつけるのはお前しかいない。行け!」
「了解しましたぜ、旦那。後は任せて下さいな!」
駆け足でボードを手にすると、甲板から勢いよく飛び降り空中でボードに乗り込む。着水と同時にエンジンを全開にし、水飛沫を噴き上げてキングとハオランの後を追いかけるマクシム。
彼らがそれぞれ動き出す少し前。
シンは消えゆくリヴァイアサンの背に見つけた、転移ポータルを作り出すアイテムを入手せんと向かっていた。
血の雨が降り頻る中、下降していたウンディーネの水球から新たな道を繋げ、急ぎボードに乗りリヴァイアサンの背中に移動する。
範囲を縮小してはいるものの、ヘラルトが飲み込まれた何処へ通じるとも知らぬ穴の側に、転移ポータル作成の為のアイテムがある。今も尚、沈みゆくその揺れで穴に落ちそうになっている。
シンが今から向かっても入手できるかどうか、かなり際どいというところだろう。少し離れた位置に着地したシンは、急ぎ周囲を見渡して先程見つけたアイテムの場所を確認する。
探し当てるのにそれほど時間は掛からなかった。すぐに駆け寄っていくシンだったが、アイテムを目前にしてリヴァイアサンの身体が大きく揺れた。その衝撃でアイテムが転がってしまい、閉じようとする穴に落ちそうになっていた。
「クソッ!折角ここまで来たんだ!手ぶらじゃ戻れねぇだろッ!」
「ダメよッ!あの穴がどうなっているのか分からないままじゃ危険だわ!」
ウンディーネの静止を振り切り、シンはそのまま穴に落ちるアイテムへ手を伸ばそうとした。
すると、何かが真っ暗な穴の中から手を伸ばしているのが見えた。思わず伸ばした手を止めてしまうシン。しかしその一瞬の躊躇いが決めてとなり、アイテムは穴の中の手によって回収されてしまったのだ。
ふと我に帰ったシンの身体を、どこから現れたのか水の触手が絡めとり、後方へ投げ飛ばす。シンが穴に落ちる前に、ウンディーネが彼を助けようとしてくれたのだ。
「全くッ・・・。無茶しないでちょうだい!ミアに頼まれているんだから・・・」
「・・・あぁ、ごめん・・・」
彼女の言葉で、出発前にミアから言われた言葉を思い出す。そしてその時自分が言った言葉が、すっかり忘れていた彼の中に蘇り、踏みとどまることができた。
リヴァイアサンの背に広がっていた穴は綺麗さっぱりその姿を消し、何音もなかったかのような体表と鱗がシンの前に現れる。
「さぁ、戻りましょう。みんなが待ってるわ」
ウンディーネの言葉に従い、シンは余計なことを考えるのを止め、今はただ無事にミア達のいる船に戻ることだけを考えるようにした。
目標を目の前にすると、人は周りが見えなくなる。それは例え事前に決意していたとしても、感情に飲み込まれてしまい優先度が変化してしまう。意思があり感情のある人間ならば、誰しもにあり得ることで、その感情が大きければ大きいほど、自制心だけではどうにもならない事である。
首からは大量の血が、噴火した火山のマグマのようにドロドロと海へと流れ落ちていく。リヴァイアサンの身体から流れ出る血液は、レイド戦の戦地となった海域一帯を赤黒く染め上げる。
その光景は宛ら、地獄を航海す禁忌に触れた呪縛に囚われる海賊かのような気分にさせらた。
消えゆくリヴァイアサンの身体へ向かうシンとウンディーネとは逆に、海賊達は赤黒い海を同じ方向へ向かって動き出す。いつまでも勝利の余韻には浸っていられない。何故ならレースはまだ終わっていないのだから。
だが、リヴァイアサンの血に舵を取られ思うように進むことが出来ず、足止めを食らっている海賊船が多数見受けられる。その中でも、沼のようにまとわりつく海水に影響を受けずに海面を駆け抜ける者がいた。
それは三大海賊の一人、キングだった。
シンから奪ったツバキのボードは、リヴァイアサンの血に染まる海域に足を取られることなく、存分にその性能を見せつけたのだ。頭ひとつ抜き出たキングは他の者達を置き去りにし、一人レースの終着点である大陸を目指す。
「本当にいい出会いをしたもんだねぇ~!まさかこんな贈り物まで貰えるたぁ~、俺ちゃんはやっぱり勝利の女神に愛されてんだね!」
しかし、ツバキのボードを手にしているのは何もキングだけではない。器用にリヴァイアサンの身体を滑り降りていく一人の男に、何者かの声が脳内に染み込んでくるように伝わる。
「ハオランよ、先に行けッ!我々はもう少し時間が掛かる。その間にお前だけでもここを抜けるのだ。何としてもあの若造に先を越されるな!」
「我が主人・・・。かしこまりました。お先に失礼しますッ!」
チン・シー海賊団最強の矛であるハオランは、ある程度海面にまで降りてくると海へ飛び降り、キングと同じくツバキの創作したボードで血の海を颯爽と駆け抜け、先を越されたキングの後を追う。
そして、キングやハオランの猛進を黙って見送るエイヴリー海賊団ではない。再三見せつけられてきていたキングやハオラン、そしてシンが乗っているボード。
エイヴリーはそれを、話に聞くだけではなくその目で見てきた。役割を果たした戦艦の一部を使い、エイヴリーはそのクラフト能力で、本物と瓜二つのボードを作り上げた。何より彼らは、そのボードに使われている貴重な素材が何なのか知っている。
何を隠そう、その素材を調達してきたのは彼らエイヴリー海賊団なのだから。エイヴリーはボードを作り上げると、海賊団の中で最も軽快な身のこなしが可能な人物を抜粋し、二人の後を追わせる。
「マクシム、今奴らに追いつけるのはお前しかいない。行け!」
「了解しましたぜ、旦那。後は任せて下さいな!」
駆け足でボードを手にすると、甲板から勢いよく飛び降り空中でボードに乗り込む。着水と同時にエンジンを全開にし、水飛沫を噴き上げてキングとハオランの後を追いかけるマクシム。
彼らがそれぞれ動き出す少し前。
シンは消えゆくリヴァイアサンの背に見つけた、転移ポータルを作り出すアイテムを入手せんと向かっていた。
血の雨が降り頻る中、下降していたウンディーネの水球から新たな道を繋げ、急ぎボードに乗りリヴァイアサンの背中に移動する。
範囲を縮小してはいるものの、ヘラルトが飲み込まれた何処へ通じるとも知らぬ穴の側に、転移ポータル作成の為のアイテムがある。今も尚、沈みゆくその揺れで穴に落ちそうになっている。
シンが今から向かっても入手できるかどうか、かなり際どいというところだろう。少し離れた位置に着地したシンは、急ぎ周囲を見渡して先程見つけたアイテムの場所を確認する。
探し当てるのにそれほど時間は掛からなかった。すぐに駆け寄っていくシンだったが、アイテムを目前にしてリヴァイアサンの身体が大きく揺れた。その衝撃でアイテムが転がってしまい、閉じようとする穴に落ちそうになっていた。
「クソッ!折角ここまで来たんだ!手ぶらじゃ戻れねぇだろッ!」
「ダメよッ!あの穴がどうなっているのか分からないままじゃ危険だわ!」
ウンディーネの静止を振り切り、シンはそのまま穴に落ちるアイテムへ手を伸ばそうとした。
すると、何かが真っ暗な穴の中から手を伸ばしているのが見えた。思わず伸ばした手を止めてしまうシン。しかしその一瞬の躊躇いが決めてとなり、アイテムは穴の中の手によって回収されてしまったのだ。
ふと我に帰ったシンの身体を、どこから現れたのか水の触手が絡めとり、後方へ投げ飛ばす。シンが穴に落ちる前に、ウンディーネが彼を助けようとしてくれたのだ。
「全くッ・・・。無茶しないでちょうだい!ミアに頼まれているんだから・・・」
「・・・あぁ、ごめん・・・」
彼女の言葉で、出発前にミアから言われた言葉を思い出す。そしてその時自分が言った言葉が、すっかり忘れていた彼の中に蘇り、踏みとどまることができた。
リヴァイアサンの背に広がっていた穴は綺麗さっぱりその姿を消し、何音もなかったかのような体表と鱗がシンの前に現れる。
「さぁ、戻りましょう。みんなが待ってるわ」
ウンディーネの言葉に従い、シンは余計なことを考えるのを止め、今はただ無事にミア達のいる船に戻ることだけを考えるようにした。
目標を目の前にすると、人は周りが見えなくなる。それは例え事前に決意していたとしても、感情に飲み込まれてしまい優先度が変化してしまう。意思があり感情のある人間ならば、誰しもにあり得ることで、その感情が大きければ大きいほど、自制心だけではどうにもならない事である。
0
お気に入りに追加
295
あなたにおすすめの小説
【修正中】ハズレ勇者の鬼畜スキル 〜ハズレだからと問答無用で追い出されたが、実は規格外の歴代最強勇者だった?〜
水先 冬菜
ファンタジー
「こんなハズレ勇者など、即刻摘み出せ!!!」
某大学に通う俺、如月湊(きさらぎみなと)は漫画や小説とかで言う【勇者召喚】とやらで、異世界に召喚されたらしい。
お約束な感じに【勇者様】とか、【魔王を倒して欲しい】だとか、言われたが--------
ステータスを開いた瞬間、この国の王様っぽい奴がいきなり叫び出したかと思えば、いきなり王宮を摘み出され-------------魔物が多く生息する危険な森の中へと捨てられてしまった。
後で分かった事だが、どうやら俺は【生産系のスキル】を持った勇者らしく。
この世界では、最下級で役に立たないスキルらしい。
えっ? でも、このスキルって普通に最強じゃね?
試しに使ってみると、あまりにも規格外過ぎて、目立ってしまい-------------
いつしか、女神やら、王女やらに求婚されるようになっていき…………。
※前の作品の修正中のものです。
※下記リンクでも投稿中
アルファで見れない方など、宜しければ、そちらでご覧下さい。
https://ncode.syosetu.com/n1040gl/
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。
生産職から始まる初めてのVRMMO
結城楓
ファンタジー
最近流行りのVRMMO、興味がないわけではないが自分から手を出そうと思ってはいなかったふう。
そんな時、新しく発売された《アイディアル・オンライン》。
そしてその発売日、なぜかゲームに必要なハードとソフトを2つ抱えた高校の友達、彩華が家にいた。
そんなふうが彩華と半ば強制的にやることになったふうにとっては初めてのVRMMO。
最初のプレイヤー設定では『モンスターと戦うのが怖い』という理由から生産職などの能力を選択したところから物語は始まる。
最初はやらざるを得ない状況だったフウが、いつしか面白いと思うようになり自ら率先してゲームをするようになる。
そんなフウが贈るのんびりほのぼのと周りを巻き込み成長していく生産職から始まる初めてのVRMMOの物語。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第二章シャーカ王国編
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる