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水面を駆ける男達
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彼らが今最も必要としていた、魔獣の頭を海へと沈める事ができる人物が現れた。これでレールガンの射線へリヴァイアサンを引き摺り出す事が出来るようになった。
しかし、肝心のリヴァイアサンの頭部への道がなかったのだ。如何に跳躍力のあるハオランでも、不安定且つ狭い足場のボードの上では、本来の跳躍力を出すことは出来ない。
リヴァイアサンの首をよじ登っていこうとしても、風穴の穴の空いた身体の再生を留める為に放ったチン・シー海賊団の炎が行く手を阻み、登り切る事が出来ないのだ。
「おいッ、シーちゃんとこの兄ちゃん!このッ・・・デカブツの頭って登れるぅッ!?」
必死にリヴァイアサンとの力比べに興じているキングが、早速訪れたハオランに彼らの行おうとしている思惑を語る。目に現れた希望に縋るような眼差しを向けるキングに、彼は気まずそうに返答する。
「キング・・・。いえ、今の私には少々厳しいですね・・・」
「はぁッ!?だってアンタ、空を飛んでただろ?あれで軽々行けるじゃぁねぇか!?」
「言っておきますが、何も私は空を飛べる人間ではありません。韋駄天はエンチャントされた武具であり、その能力は無限に使える代物ではないのです」
彼の言う通り、エンチャントされた武器や防具には様々な能力が付与されるのだが、それは無制限に発動できるものではない。回数制限や特定の条件下でのみ発動するものもあれば、期限があるものもある。
ハオランの足に備えられた韋駄天は、シュユーによってエンチャントされた能力により飛行能力を得ていた。そしてその能力もまた有限であり、使用回数が定められていた。
「実はというと・・・、ここまで来る間に少々使い過ぎてしまいまして・・・」
「・・・アンタがそれほど苦戦を強いられたってことかい?」
「・・・・・」
キングはある情報網から、このレースでフランソワ・ロロネーが何かを企んでいる事を知っていた。その企みが、チン・シー海賊団へ対するものだと言うことも。
それを彼女らに知らせなかったのは、何も深い理由がある訳ではない。単純にキングのシー・ギャングとチン・シー海賊団が、仲間でも同盟を結んでいるわけでもなかったからだった。
無論、交渉を持ちかけられればその情報を取引材料にするつもりでいた。しかし、チン・シーのみならず誰しもキングの組織に借りを作りたいとは思わないのが普通。
例えロロネーの企てを知っていたとしても、チン・シーは彼に頼ることはなかっただろう。誤算があったとすれば、ロロネーが実力を隠していたことだ。
それまでのレースにも、フランソワ・ロロネーの名はあった。だが、順位も別段上位というわけでもなく、目立った活躍もなかったため情報量が少なく、どのような戦闘を得意とする海賊団であるかが分からなかった。
そこに関してはキングも同じで、ロロネーがシン達の探している黒いコートの男達と接触したことで、人智を超えた能力を手に入れていたことなど知る由もなかった。
これが図られたことなのかは分からないが、どちらにせよハオランの韋駄天が再び飛行能力を手に入れるには、シュユーの力が必要となるということだ。それをキングに説明すると、チン・シー海賊団がすぐ側まで来ていることをキングは彼に知らせ、急ぎエンチャントしてくるよう頼んだ。
「貴方の方は、どれくらい保つんです?」
「俺ちゃんを誰だと思ってんのよッ・・・!そんな心配してねぇで、さっさと戻ってちょうだいなぁ。多分、エイヴリーのおっさんの方は準備出来てっと思うからよッ・・・」
暫くキングの表情を見つめた後、ハオランはボードの向きを変え、チン・シーの元を目指し始めた。彼は気づいていた。キングが強がりをしていたことを。
余裕そうな態度をとってはいたが、その額に滲む汗や震える手足を見れば限界が近いであろうことなど、ハオランはお見通しだった。
それに、一人の人間があれほど巨大な生物を押さえ込むなど、常軌を逸しているのは一目瞭然。のんびりしている時間がないのは確実。ハオランは持てる力を尽くし、ボードを走らせる。
その途中で彼は、リヴァイアサンへと向かうシンとすれ違う。
「ハオランッ・・・!?」
「すみません、今は話している余裕がッ・・・」
止まることなく駆け抜けようとする彼に、シンは彼をリヴァイアサンの頭部まで連れていけば、風穴を広げ頭を千切落とすことも可能なのではないかと考え、急ぐ彼を呼び止めるように提案した。
「待ってくれ!これからあの魔物の頭に登る。アンタの力を借りられないか!?」
シンの言葉に急ブレーキをかけて止まるハオラン。ボードからは凄まじい勢いで水飛沫が跳ね上がる。そしてシンの口にしたリヴァイアサンを登る方法が、エンチャントのかけ直しよりも早いものかどうかを確認する。
通常、シュユーのエンチャントは事前に準備をして行うもの。彼の韋駄天に関しては、毎回出撃前に済ませている。戦闘の最中で再補給したことは一度もなかった。
故にハオランの中で、無視出来ない不安要素があった。もしこのままチン・シー海賊団の元へ辿り着き、シュユーの元を訪れても確実にエンチャントをしてもらえる確証がなかったのだ。
目的が一緒なら、シンのその方法を確認してからでも遅くはない。それに彼の言い方からすると、一度魔物の頭部に登ったかのような口ぶりであったのを見逃さなかったハオラン。
そしてシンは、ミアの精霊ウンディーネの力を借り、ボードで駆け上がれる道を登る事を説明すると、ハオランは二つ返事で了承し、すぐに今も耐え続けているキングの元へ急行する。
しかし、肝心のリヴァイアサンの頭部への道がなかったのだ。如何に跳躍力のあるハオランでも、不安定且つ狭い足場のボードの上では、本来の跳躍力を出すことは出来ない。
リヴァイアサンの首をよじ登っていこうとしても、風穴の穴の空いた身体の再生を留める為に放ったチン・シー海賊団の炎が行く手を阻み、登り切る事が出来ないのだ。
「おいッ、シーちゃんとこの兄ちゃん!このッ・・・デカブツの頭って登れるぅッ!?」
必死にリヴァイアサンとの力比べに興じているキングが、早速訪れたハオランに彼らの行おうとしている思惑を語る。目に現れた希望に縋るような眼差しを向けるキングに、彼は気まずそうに返答する。
「キング・・・。いえ、今の私には少々厳しいですね・・・」
「はぁッ!?だってアンタ、空を飛んでただろ?あれで軽々行けるじゃぁねぇか!?」
「言っておきますが、何も私は空を飛べる人間ではありません。韋駄天はエンチャントされた武具であり、その能力は無限に使える代物ではないのです」
彼の言う通り、エンチャントされた武器や防具には様々な能力が付与されるのだが、それは無制限に発動できるものではない。回数制限や特定の条件下でのみ発動するものもあれば、期限があるものもある。
ハオランの足に備えられた韋駄天は、シュユーによってエンチャントされた能力により飛行能力を得ていた。そしてその能力もまた有限であり、使用回数が定められていた。
「実はというと・・・、ここまで来る間に少々使い過ぎてしまいまして・・・」
「・・・アンタがそれほど苦戦を強いられたってことかい?」
「・・・・・」
キングはある情報網から、このレースでフランソワ・ロロネーが何かを企んでいる事を知っていた。その企みが、チン・シー海賊団へ対するものだと言うことも。
それを彼女らに知らせなかったのは、何も深い理由がある訳ではない。単純にキングのシー・ギャングとチン・シー海賊団が、仲間でも同盟を結んでいるわけでもなかったからだった。
無論、交渉を持ちかけられればその情報を取引材料にするつもりでいた。しかし、チン・シーのみならず誰しもキングの組織に借りを作りたいとは思わないのが普通。
例えロロネーの企てを知っていたとしても、チン・シーは彼に頼ることはなかっただろう。誤算があったとすれば、ロロネーが実力を隠していたことだ。
それまでのレースにも、フランソワ・ロロネーの名はあった。だが、順位も別段上位というわけでもなく、目立った活躍もなかったため情報量が少なく、どのような戦闘を得意とする海賊団であるかが分からなかった。
そこに関してはキングも同じで、ロロネーがシン達の探している黒いコートの男達と接触したことで、人智を超えた能力を手に入れていたことなど知る由もなかった。
これが図られたことなのかは分からないが、どちらにせよハオランの韋駄天が再び飛行能力を手に入れるには、シュユーの力が必要となるということだ。それをキングに説明すると、チン・シー海賊団がすぐ側まで来ていることをキングは彼に知らせ、急ぎエンチャントしてくるよう頼んだ。
「貴方の方は、どれくらい保つんです?」
「俺ちゃんを誰だと思ってんのよッ・・・!そんな心配してねぇで、さっさと戻ってちょうだいなぁ。多分、エイヴリーのおっさんの方は準備出来てっと思うからよッ・・・」
暫くキングの表情を見つめた後、ハオランはボードの向きを変え、チン・シーの元を目指し始めた。彼は気づいていた。キングが強がりをしていたことを。
余裕そうな態度をとってはいたが、その額に滲む汗や震える手足を見れば限界が近いであろうことなど、ハオランはお見通しだった。
それに、一人の人間があれほど巨大な生物を押さえ込むなど、常軌を逸しているのは一目瞭然。のんびりしている時間がないのは確実。ハオランは持てる力を尽くし、ボードを走らせる。
その途中で彼は、リヴァイアサンへと向かうシンとすれ違う。
「ハオランッ・・・!?」
「すみません、今は話している余裕がッ・・・」
止まることなく駆け抜けようとする彼に、シンは彼をリヴァイアサンの頭部まで連れていけば、風穴を広げ頭を千切落とすことも可能なのではないかと考え、急ぐ彼を呼び止めるように提案した。
「待ってくれ!これからあの魔物の頭に登る。アンタの力を借りられないか!?」
シンの言葉に急ブレーキをかけて止まるハオラン。ボードからは凄まじい勢いで水飛沫が跳ね上がる。そしてシンの口にしたリヴァイアサンを登る方法が、エンチャントのかけ直しよりも早いものかどうかを確認する。
通常、シュユーのエンチャントは事前に準備をして行うもの。彼の韋駄天に関しては、毎回出撃前に済ませている。戦闘の最中で再補給したことは一度もなかった。
故にハオランの中で、無視出来ない不安要素があった。もしこのままチン・シー海賊団の元へ辿り着き、シュユーの元を訪れても確実にエンチャントをしてもらえる確証がなかったのだ。
目的が一緒なら、シンのその方法を確認してからでも遅くはない。それに彼の言い方からすると、一度魔物の頭部に登ったかのような口ぶりであったのを見逃さなかったハオラン。
そしてシンは、ミアの精霊ウンディーネの力を借り、ボードで駆け上がれる道を登る事を説明すると、ハオランは二つ返事で了承し、すぐに今も耐え続けているキングの元へ急行する。
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