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実験の証拠と成果
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町長には、ここで匿っている者達の分を渡し、また後で町の住人達の分を持って来ると伝えるデイヴィス。すると、ハンクは彼を呼び止め、スミスが今どうしているのかと尋ねて来た。
「彼は今どうしている?」
デイヴィスは一瞬、本当のことを言おうかどう迷った。ここに直接本人が現れなかったのは、町長や町の住人達とのいざこざがあったが故に出てこれなかったで済む。
彼がもう助からないと知ったら、ハンクら町長サイドの人間や町の住人達はどう思うのだろう。彼の死を悲しむ人はここにいるのだろうか。最期に仲を取り持つべきか、死後に彼らがスミスの死を悲しみ、後悔する日が訪れるのを待たせておくべきか。
しかし、たまたま港にやって来た余所者の海賊が、そこまで気にすることでもないだろう。あくまで彼らの目的は、仲間の治療と回復にあった。後のことは、ここに住む町の者達の間で解決することだ。
思わず口を紡いだデイヴィスは、ハンク町長に事実をそのまま伝えた。
「彼は・・・スミスはもう助からない・・・。症状が身体の内部にまで及んでしまっているようだ。この薬ではもう、どうすることもできない・・・」
話を聞いたハンクは、思いの外悲しい顔をしていた。本当は彼らも、そこまでスミスのことを恨んでいる訳ではなかったのかもしれない。ただ、周りがそういう空気をしていたから、自分もそうしなければならないのだという風潮があったように思える。
「そうか・・・。彼は今、診療所にいるんだな?最期に言葉を送らせてもらっても良いだろうか・・・?」
「どうしてそれを俺に聞く?俺達ぁ部外者だ。これからのことを決めるのはアンタらなんじゃねぇのか・・・」
彼の返しに、ハンクはどうしてそんな当たり前のことにも気づけないのかと、鼻で笑って顔を逸らした。
「それもそうだ。だが、お前達にも感謝してるよ。ありがとう・・・」
デイヴィスは早く行けとばかりに、野良犬でも追い払うような手の素振りを取ると、ハンクは彼に背を向けて、診療所にいるスミスの元へと一人向かっていった。
一番の問題であった町長サイドの説得も上手くいき、デイヴィスは残りの漁師達の元へ、アンスティスの薬を届けにいく。
こちらは初めから、わりかし協力的であった為、ハンクら町長達よりは話を通しやすいだろう。しかし、当然ながら彼らにも、重症の者や内臓へ転移してしまった者は救えないという事実と、スミスが長くないことを伝えねばならない。
スミスへの恨みがある中、彼と取引をしていた漁師達にとっては、ハンクら以上に驚く結果を告げられることだろう。
ハンクがスミスを前にした時、どんな話をするのかと想像しながら、デイヴィスは港へとやってくる。だが、ログハウスに近づこうとも、ダミアンの賑やかな声が聞こえてこない。
人の出入りもないところを見ると、今日のところの仕事を終え安静にいているのだろうと、デイヴィスはログハウスの扉を開ける。すると、開口一番に放たれた言葉は、漁師達が何者かを探しているといったものだった。
「彼は見つかりましッ・・・えっ?」
「・・・?」
初め、何を言われているのか理解できなかったデイヴィス。同じく、中にいた漁師の男も思わぬ来客に驚いているようだった。別の誰かを待っていたのだろうか。
「アンタは確か・・・ハーマンさんと洞窟に行った筈の・・・」
「デイヴィスだ、ダミアンに話したいことがある」
しかし、中を見渡せど何処にもダミアンの姿はない。何処かへ出掛けているのだろうか。確か、デイヴィスらが洞窟へ向かう前、彼女は用事があるといい二人と別れた。その用事がまだ済んでいないのだろうか。
「・・・見た感じいないようだが・・・。まだ帰ってないのか?」
「アンタとハーマンさんが出てった後、直ぐに用事を済ませて帰って来たよ。いや、それどころじゃない。早く洞窟に行ってやってくれ。アンタを探してる筈だから」
「俺を・・・?」
何か用事でもあるのか。全く心当たりのないデイヴィスは、何故ダミアンが自分を探しているのか分からなかった。だが、直ぐにその理由に気づき始める。
もしかしたら彼女は、洞窟で起きた不足の事態を聞き、デイヴィスを探してくれているのかもしれない。直ぐに漁師の男に急かされるままログハウスを後にすると、入り江の洞窟の方へと向かった。
ハーマンに案内された時から、既に時間も進んでいるため、水位が僅かに上がって来ているのが見えた。それに、アンスティスによって押し流された水の量も相待って、洞窟が満たされるのが早くなっていた。
「おいおい・・・あの中に入って行ったんじゃねぇだろうな・・・」
水位は既に、彼の行動を躊躇わせる量に達していた。素人がこの水位の中、洞窟に入っていけば生きて帰ってこれないかもしれない。
だがそれでも、ダミアンは心配して捜索してくれているのだと思うと、早く戻ってきたことを知らせてやらないと、取り返しのつかないことになってしまう。
デイヴィスは意を決し、洞窟の入り口へとやって来る。すると突然、何者かに肩を掴まれる。心臓が飛び出そうなほど驚くデイヴィスが、その手の主人の方を振り返ると、そこには探しに来た筈のダミアンと、デイヴィスをここまで案内したハーマンが立っていた。
「無茶すんじゃねぇよ。ほら、戻るぞ」
「アンタら・・・!てっきり俺を探しに入っちまったのかと・・・」
「話は後だ。早く丘に上がろう。ここに居ては危険だ」
三人は直ぐにその場を離れ、ログハウスの方へ向かって戻っていく。その途中で、これまでの経緯を話してくれたハーマン。
洞窟の途中までデイヴィスを案内した彼は、その後入り口の方まで戻り、デイヴィスに告げた通り洞窟の外で彼の帰りを待っていた。すると、奥から突然洞窟内部を覆い尽くすほどの水が押し寄せて来るのを感じたハーマンは、一度洞窟から離れ、吐き出すように洞窟から溢れ出る水を見送った。
初めは突然の出来事に唖然といていたハーマンだったが、中にデイヴィスがいたことを思い出し、必死に彼の姿を探した。しかし、当然見つかるはずもなく、手に負えないと思った彼は、ロウハウスに戻りダミアンに事情を話すと、二人で洞窟へと戻り、デイヴィスを探したのだという。
だがその時には既に、デイヴィスは別の抜け道から洞窟を抜け出し、犯人の後を追っていた。
「無事で何よりだが、アンタが戻って来たということは、何か掴めたのか?」
「あぁ、だが掴めたのは昔の儀式の跡と、その痕跡だけだった・・・」
デイヴィスは嘘をついた。洞窟にはアンスティスが人体実験を行っていた証拠や、あろうことか彼を水死させようとした罠まで仕掛けられていた。
しかしその罠も、デイヴィスを殺そうとした時の水圧で壊れ、もう使われることはない。それに洞窟内部にあった証拠も、今となっては海へ流されてしまい、最早見つけることなど不可能。
そして何より、アンスティスを貶めるのが目的ではない。今となっては、彼の研究なくして病の治療薬など生み出されることはなかったのだから。
「彼は今どうしている?」
デイヴィスは一瞬、本当のことを言おうかどう迷った。ここに直接本人が現れなかったのは、町長や町の住人達とのいざこざがあったが故に出てこれなかったで済む。
彼がもう助からないと知ったら、ハンクら町長サイドの人間や町の住人達はどう思うのだろう。彼の死を悲しむ人はここにいるのだろうか。最期に仲を取り持つべきか、死後に彼らがスミスの死を悲しみ、後悔する日が訪れるのを待たせておくべきか。
しかし、たまたま港にやって来た余所者の海賊が、そこまで気にすることでもないだろう。あくまで彼らの目的は、仲間の治療と回復にあった。後のことは、ここに住む町の者達の間で解決することだ。
思わず口を紡いだデイヴィスは、ハンク町長に事実をそのまま伝えた。
「彼は・・・スミスはもう助からない・・・。症状が身体の内部にまで及んでしまっているようだ。この薬ではもう、どうすることもできない・・・」
話を聞いたハンクは、思いの外悲しい顔をしていた。本当は彼らも、そこまでスミスのことを恨んでいる訳ではなかったのかもしれない。ただ、周りがそういう空気をしていたから、自分もそうしなければならないのだという風潮があったように思える。
「そうか・・・。彼は今、診療所にいるんだな?最期に言葉を送らせてもらっても良いだろうか・・・?」
「どうしてそれを俺に聞く?俺達ぁ部外者だ。これからのことを決めるのはアンタらなんじゃねぇのか・・・」
彼の返しに、ハンクはどうしてそんな当たり前のことにも気づけないのかと、鼻で笑って顔を逸らした。
「それもそうだ。だが、お前達にも感謝してるよ。ありがとう・・・」
デイヴィスは早く行けとばかりに、野良犬でも追い払うような手の素振りを取ると、ハンクは彼に背を向けて、診療所にいるスミスの元へと一人向かっていった。
一番の問題であった町長サイドの説得も上手くいき、デイヴィスは残りの漁師達の元へ、アンスティスの薬を届けにいく。
こちらは初めから、わりかし協力的であった為、ハンクら町長達よりは話を通しやすいだろう。しかし、当然ながら彼らにも、重症の者や内臓へ転移してしまった者は救えないという事実と、スミスが長くないことを伝えねばならない。
スミスへの恨みがある中、彼と取引をしていた漁師達にとっては、ハンクら以上に驚く結果を告げられることだろう。
ハンクがスミスを前にした時、どんな話をするのかと想像しながら、デイヴィスは港へとやってくる。だが、ログハウスに近づこうとも、ダミアンの賑やかな声が聞こえてこない。
人の出入りもないところを見ると、今日のところの仕事を終え安静にいているのだろうと、デイヴィスはログハウスの扉を開ける。すると、開口一番に放たれた言葉は、漁師達が何者かを探しているといったものだった。
「彼は見つかりましッ・・・えっ?」
「・・・?」
初め、何を言われているのか理解できなかったデイヴィス。同じく、中にいた漁師の男も思わぬ来客に驚いているようだった。別の誰かを待っていたのだろうか。
「アンタは確か・・・ハーマンさんと洞窟に行った筈の・・・」
「デイヴィスだ、ダミアンに話したいことがある」
しかし、中を見渡せど何処にもダミアンの姿はない。何処かへ出掛けているのだろうか。確か、デイヴィスらが洞窟へ向かう前、彼女は用事があるといい二人と別れた。その用事がまだ済んでいないのだろうか。
「・・・見た感じいないようだが・・・。まだ帰ってないのか?」
「アンタとハーマンさんが出てった後、直ぐに用事を済ませて帰って来たよ。いや、それどころじゃない。早く洞窟に行ってやってくれ。アンタを探してる筈だから」
「俺を・・・?」
何か用事でもあるのか。全く心当たりのないデイヴィスは、何故ダミアンが自分を探しているのか分からなかった。だが、直ぐにその理由に気づき始める。
もしかしたら彼女は、洞窟で起きた不足の事態を聞き、デイヴィスを探してくれているのかもしれない。直ぐに漁師の男に急かされるままログハウスを後にすると、入り江の洞窟の方へと向かった。
ハーマンに案内された時から、既に時間も進んでいるため、水位が僅かに上がって来ているのが見えた。それに、アンスティスによって押し流された水の量も相待って、洞窟が満たされるのが早くなっていた。
「おいおい・・・あの中に入って行ったんじゃねぇだろうな・・・」
水位は既に、彼の行動を躊躇わせる量に達していた。素人がこの水位の中、洞窟に入っていけば生きて帰ってこれないかもしれない。
だがそれでも、ダミアンは心配して捜索してくれているのだと思うと、早く戻ってきたことを知らせてやらないと、取り返しのつかないことになってしまう。
デイヴィスは意を決し、洞窟の入り口へとやって来る。すると突然、何者かに肩を掴まれる。心臓が飛び出そうなほど驚くデイヴィスが、その手の主人の方を振り返ると、そこには探しに来た筈のダミアンと、デイヴィスをここまで案内したハーマンが立っていた。
「無茶すんじゃねぇよ。ほら、戻るぞ」
「アンタら・・・!てっきり俺を探しに入っちまったのかと・・・」
「話は後だ。早く丘に上がろう。ここに居ては危険だ」
三人は直ぐにその場を離れ、ログハウスの方へ向かって戻っていく。その途中で、これまでの経緯を話してくれたハーマン。
洞窟の途中までデイヴィスを案内した彼は、その後入り口の方まで戻り、デイヴィスに告げた通り洞窟の外で彼の帰りを待っていた。すると、奥から突然洞窟内部を覆い尽くすほどの水が押し寄せて来るのを感じたハーマンは、一度洞窟から離れ、吐き出すように洞窟から溢れ出る水を見送った。
初めは突然の出来事に唖然といていたハーマンだったが、中にデイヴィスがいたことを思い出し、必死に彼の姿を探した。しかし、当然見つかるはずもなく、手に負えないと思った彼は、ロウハウスに戻りダミアンに事情を話すと、二人で洞窟へと戻り、デイヴィスを探したのだという。
だがその時には既に、デイヴィスは別の抜け道から洞窟を抜け出し、犯人の後を追っていた。
「無事で何よりだが、アンタが戻って来たということは、何か掴めたのか?」
「あぁ、だが掴めたのは昔の儀式の跡と、その痕跡だけだった・・・」
デイヴィスは嘘をついた。洞窟にはアンスティスが人体実験を行っていた証拠や、あろうことか彼を水死させようとした罠まで仕掛けられていた。
しかしその罠も、デイヴィスを殺そうとした時の水圧で壊れ、もう使われることはない。それに洞窟内部にあった証拠も、今となっては海へ流されてしまい、最早見つけることなど不可能。
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