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町長の隠しもの
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民家を出てそう時間をおかずに、探そうとしていた豪勢な建物が見えてくる。曖昧な特徴しか告げられなかった、それだけで十分だということがよく分かる。
無論、ここが町長の家という訳ではなない。だが、先程の女性の口ぶりからすると、望まれて建てられたものではないだろう。もしかしたら、その町長という人物も、この町の者達からあまり良く思われていないのだろうか。
そんな事を考えながら、デイヴィスは入り口の戸を開ける。初めに入った民家と同様、建物の中は明かりが灯っていない。照明ばかり豪勢な作りのものを飾っているが、電気が通っていないのか故障しているのか、その役割を果たしていない。
「おい、誰かいねぇか?出てこねぇと、町の連中を片っぱしからあの世行きの船に連れてっちまうぞ!」
デイヴィスの声に反応したのか、奥の方から物音がすると同時に、誰かがこちらへやって来るのが分かった。壁にもたれかかりながら歩いているのか、足音と呼ぶにはやや高い位置から引きずるような音が聞こえる。
「町の者達に頼まれたのか?殺して楽にしてくれと・・・」
「アンタ町長か?」
「私はここの従者だ。海賊がこの町になんの用だ?」
従者がいる割には、乗り込んで来た余所者の襲撃に対し、全く人が集まって来ない。町長とその近辺の者達だからといって、病に見舞われていないという訳でもなさそうだ。
ただ、デイヴィスの元へ現れた従者の男は、何とか歩けるくらいの症状で止まっている。病の進行状況としては、まだ危険度は低いとも言える。
「用があるのは町長だ。どこにいる?早く口を割らねぇと、痛い目を見ることになるぞ・・・」
「まッ待て・・・。病を中に持ち込む訳にはいかんのだ!用なら私が聞く。要求があるのなら、私が町長に交渉してくる。だからここでは、乱暴な真似はしないでくれ!」
この者の病があまり進行していない理由が分かった。どうやら町長は、ここに籠り病から自らを守るために隔離しているのだろう。病にかかればどうなるか知っている。そしてそれが伝染する可能性があると判断し、極力外との接触を避けようと、全ての事を従者にやらせているのだ。
「そうか・・・。じゃぁ町長に伝えろ。医者の男を殺して、薬は今全て俺の元にある。姿を見せるというのなら、それを全てくれてやるから出てこい、とな・・・」
「薬がッ・・・!?わッ分かった、直ぐに伝えて来るから少し待っててくれ!」
従者の男は、目の前に差し出された餌に飛びつく家畜のように、デイヴィスの言葉に反応した。どうやら彼らも、医者のスミスがこの病に効く何らかの薬を所持していると思っているのだろう。
明らかにスミスとアンスティスの、病の進行が遅い事を彼らも把握していたのだ。だからこそ、それを町の為に使うようスミスに要求していたが、一向にスミスは薬を渡すことはなかった。
不信感は募り、彼らもまたスミスが病の特効薬を作りながら、それを独占しているのではないかと思っているようだ。
壁にもたれながら奥へと戻っていく従者の男。デイヴィスはその場で待つふりをしながら、従者の後を気づかれぬように追う。しかし従者の男は、そのまま廊下を進み、正面にある大広間への扉へとは行かず、何処かの部屋を経由していく。
町長がこの建物の何処かに隠れていることは確かだ。それも別の部屋に隠れているなどではなく、隠された通路まで作られている建築が、更にデイヴィスの不信感を募らせる。
部屋の棚をどかし、通路が出てくると一人分の幅の短い通路を進み、行き止まりにやってくると、従者の男は壁を拳をそっと添えて、優しく壁を叩く。すると、行き止まりになっていた通路の先の壁が動き、照明の灯った明かりが差し込んでくる。
従者の男が通り抜けようとしたところで、デイヴィスは一気に走り出し、壁を蹴破り町長の隠れている部屋と思しき場所に出る。
「なッ・・・!何だお前は!?」
「ついて来ていたのか!もっ申し訳ありません・・・」
「手の込んだことしやがって・・・。普通に合わせりゃこんなことしねぇってのに」
部屋には照明の明かりがついている。ここは病の影響を受けていないようだった。従者の男が謝った人物も、デイヴィス海賊団の船員がかかったような病の症状と同じ段階にある。
この病の初期症状である、皮膚が鉄のように変色し硬くなる状態で止まっているのだ。だが、外部との接触をここまで拒んでいれば当然だろう。
町の者達を蔑ろにし、自分ばかり安全なところに居ようとは見上げた町長だ。命の危機とあらば保身に走るのは生き物として当然のこと。しかし、町を納める立場でありながら、その民を見殺しにしているなど、同じく人をまとめる者として溜め息しか出てこないデイヴィス。
「町があんな状態だというのに、見上げた町長様だな・・・」
「何を言う!私には私の考えがあってッ・・・!」
町長の言い訳など聞くに堪えない。デイヴィスは部屋を見渡し、別のところへと通じる扉を見つけると、そちらの方へと歩いていく。すると町長は必死にデイヴィスを止めようと、扉の前に立ちはだかる。
「よせ!要件は何だ!何でも聞いてやるから、とっととこの町を出ていてくれッ!」
「要件・・・?そうだな、じゃぁ“先ずは“そこを退いてもらおうか」
町長の肩を掴み、力づくで退かすデイヴィス。こんなところに籠って居るような人間に、海賊の力に抵抗できる筈もなく、最も容易く床に倒される。
そして、デイヴィスがその扉を蹴破ると、そこには二人の争う声に身を震わせた人達の姿があった。
「・・・ぁあ?何だこりゃぁ・・・」
そこに居る者達は、町長と同じく病の初期段階で止まっている。見渡す限り、まだ外の住人達のように錆にまで進んでいる者はおらず、部屋の中もいたって病の影響を受けていないようだった。
無論、ここが町長の家という訳ではなない。だが、先程の女性の口ぶりからすると、望まれて建てられたものではないだろう。もしかしたら、その町長という人物も、この町の者達からあまり良く思われていないのだろうか。
そんな事を考えながら、デイヴィスは入り口の戸を開ける。初めに入った民家と同様、建物の中は明かりが灯っていない。照明ばかり豪勢な作りのものを飾っているが、電気が通っていないのか故障しているのか、その役割を果たしていない。
「おい、誰かいねぇか?出てこねぇと、町の連中を片っぱしからあの世行きの船に連れてっちまうぞ!」
デイヴィスの声に反応したのか、奥の方から物音がすると同時に、誰かがこちらへやって来るのが分かった。壁にもたれかかりながら歩いているのか、足音と呼ぶにはやや高い位置から引きずるような音が聞こえる。
「町の者達に頼まれたのか?殺して楽にしてくれと・・・」
「アンタ町長か?」
「私はここの従者だ。海賊がこの町になんの用だ?」
従者がいる割には、乗り込んで来た余所者の襲撃に対し、全く人が集まって来ない。町長とその近辺の者達だからといって、病に見舞われていないという訳でもなさそうだ。
ただ、デイヴィスの元へ現れた従者の男は、何とか歩けるくらいの症状で止まっている。病の進行状況としては、まだ危険度は低いとも言える。
「用があるのは町長だ。どこにいる?早く口を割らねぇと、痛い目を見ることになるぞ・・・」
「まッ待て・・・。病を中に持ち込む訳にはいかんのだ!用なら私が聞く。要求があるのなら、私が町長に交渉してくる。だからここでは、乱暴な真似はしないでくれ!」
この者の病があまり進行していない理由が分かった。どうやら町長は、ここに籠り病から自らを守るために隔離しているのだろう。病にかかればどうなるか知っている。そしてそれが伝染する可能性があると判断し、極力外との接触を避けようと、全ての事を従者にやらせているのだ。
「そうか・・・。じゃぁ町長に伝えろ。医者の男を殺して、薬は今全て俺の元にある。姿を見せるというのなら、それを全てくれてやるから出てこい、とな・・・」
「薬がッ・・・!?わッ分かった、直ぐに伝えて来るから少し待っててくれ!」
従者の男は、目の前に差し出された餌に飛びつく家畜のように、デイヴィスの言葉に反応した。どうやら彼らも、医者のスミスがこの病に効く何らかの薬を所持していると思っているのだろう。
明らかにスミスとアンスティスの、病の進行が遅い事を彼らも把握していたのだ。だからこそ、それを町の為に使うようスミスに要求していたが、一向にスミスは薬を渡すことはなかった。
不信感は募り、彼らもまたスミスが病の特効薬を作りながら、それを独占しているのではないかと思っているようだ。
壁にもたれながら奥へと戻っていく従者の男。デイヴィスはその場で待つふりをしながら、従者の後を気づかれぬように追う。しかし従者の男は、そのまま廊下を進み、正面にある大広間への扉へとは行かず、何処かの部屋を経由していく。
町長がこの建物の何処かに隠れていることは確かだ。それも別の部屋に隠れているなどではなく、隠された通路まで作られている建築が、更にデイヴィスの不信感を募らせる。
部屋の棚をどかし、通路が出てくると一人分の幅の短い通路を進み、行き止まりにやってくると、従者の男は壁を拳をそっと添えて、優しく壁を叩く。すると、行き止まりになっていた通路の先の壁が動き、照明の灯った明かりが差し込んでくる。
従者の男が通り抜けようとしたところで、デイヴィスは一気に走り出し、壁を蹴破り町長の隠れている部屋と思しき場所に出る。
「なッ・・・!何だお前は!?」
「ついて来ていたのか!もっ申し訳ありません・・・」
「手の込んだことしやがって・・・。普通に合わせりゃこんなことしねぇってのに」
部屋には照明の明かりがついている。ここは病の影響を受けていないようだった。従者の男が謝った人物も、デイヴィス海賊団の船員がかかったような病の症状と同じ段階にある。
この病の初期症状である、皮膚が鉄のように変色し硬くなる状態で止まっているのだ。だが、外部との接触をここまで拒んでいれば当然だろう。
町の者達を蔑ろにし、自分ばかり安全なところに居ようとは見上げた町長だ。命の危機とあらば保身に走るのは生き物として当然のこと。しかし、町を納める立場でありながら、その民を見殺しにしているなど、同じく人をまとめる者として溜め息しか出てこないデイヴィス。
「町があんな状態だというのに、見上げた町長様だな・・・」
「何を言う!私には私の考えがあってッ・・・!」
町長の言い訳など聞くに堪えない。デイヴィスは部屋を見渡し、別のところへと通じる扉を見つけると、そちらの方へと歩いていく。すると町長は必死にデイヴィスを止めようと、扉の前に立ちはだかる。
「よせ!要件は何だ!何でも聞いてやるから、とっととこの町を出ていてくれッ!」
「要件・・・?そうだな、じゃぁ“先ずは“そこを退いてもらおうか」
町長の肩を掴み、力づくで退かすデイヴィス。こんなところに籠って居るような人間に、海賊の力に抵抗できる筈もなく、最も容易く床に倒される。
そして、デイヴィスがその扉を蹴破ると、そこには二人の争う声に身を震わせた人達の姿があった。
「・・・ぁあ?何だこりゃぁ・・・」
そこに居る者達は、町長と同じく病の初期段階で止まっている。見渡す限り、まだ外の住人達のように錆にまで進んでいる者はおらず、部屋の中もいたって病の影響を受けていないようだった。
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