523 / 1,646
品質管理
しおりを挟む
回りくどい話は抜きに、デイヴィスは早速本題へ入る。キングの反応は予想外だったが、この際そんなことはどうでもいい。今は何よりも、追い続けてきた真実を、この男に尋ねる時。
「単刀直入に聞く。お前は人身売買の事業に手を染めているか?」
「奴隷貿易のことか?あぁ、してるよ。一部の国では人手が足りてねぇようでな。若けりゃ若いほど、良い額で売れるぜぇ?」
デイヴィスの予想は当たっていた。やはりキングは人の命を金で取引する下衆な者であることを再確認する。そして彼の船で、今も尚働いている船員達に視線を送る。
彼らはまだこの事態に気付いていない。それだけキングの命令に、命懸けで働いているかのような危機せまるものを感じた。彼らも脅されてこんなことをさせられているのかと思うと、知らぬ者とはいえ不憫に思える。
「それでか?お前の周りの船員達がこんなに若いのは・・・」
「勿論それもある。それに他の連中に、大事な商品を傷つけられちゃぁ敵わねぇからな」
「クズ野郎がッ・・・。人の命をなんだと・・・」
思わず心の中で思っていた言葉が漏れてしまう。人を物のように扱うことに、この男は何も感じないのだろうか。否、こんな狂人を理解しようという方が間違っている。
「おいおい。目の付け所が他の奴らと違うってだけだろぉ?俺ちゃんは他の奴隷商人共とは違って、高品質なものを提供することで有名な訳よ。信頼を得るには教育も重要ってわけぇ~」
「何処まで狂ってやがるんだ・・・。お前っていう人間はッ・・・!」
話を聞かされるだけでも虫唾が走る。到底理解できないような話ほど、つまらないものはない。それどころか、こんな男に妹が売られたかもしれないと思うと、今すぐにでもその手にした短剣を喉に突き刺し、身体に流れるその血の色を確かめたくなる程だ。
怒りを鎮め、デイヴィスは少し躊躇いながらも、妹のことについて遠回しにゆっくりと聞いていく。
「奴隷の中には、女や小さな子供もいるのか?」
「当然だ。だがその辺の男共と違って管理が大変でな。女を求める連中は、より品質にうるせぇからな。飯や肌の手入れに必要なものがあったりで、金がかかる。その点、男は楽で良い。飯を食わせて適当に働かせときゃぁ、それなりにいい体つきになってくる」
聞きたくもない奴隷の管理について、ベラベラと言葉を連ねるキング。デイヴィスはうんざりするように目を背け、大きく息を吐く。
「もういい!子供はどうなんだ?ここにいる者達よりももっと若いのは?」
「・・・場合によるな。仕入れる時もある。幼い子供や赤子を欲しがる客もいる。だが、そう簡単に手に入るものでもねぇからなぁ・・・」
子供の話になると、少しだけだがキングの表情が曇ったように感じ、声のトーンも下がった。流石に幼い命には、僅かばかりの良心が痛んでいるのか。だが、このようなことに手を染めている以上、許されることではない。どんな態度を取られようと、デイヴィスの気が変わることはない。
「それらを踏まえて・・・。お前、俺の名を知っているな?」
「・・・デイヴィスだろ?海賊狩りの海賊、“ハウエル・デイヴィス“」
いよいよ最も知りたかったことを、この男に尋ねる時が来た。幸か不幸か、ここまでの話を聞く限り、デイヴィスが集めた情報通り、キングは様々な国や土地で奴隷を集め、商品として客に売り飛ばしている事が分かった。
そしてその中には幼い子供や、赤子までいる事を告げられ、デイヴィスの心臓はその鼓動を早める。胸を強く打ち付け、キングに動揺しているのが聞こえてしまいそうな程に。
「奴隷の中に・・・“レイチェル“という少女はいたか?」
意を決して口にした妹の名前、“レイチェル“。レイチェル・デイヴィスという名こそ、彼の探し求めていた妹の本名。もしかしたら奴隷として仕入れた時に、名前すら剥奪された可能性もある。
いちいち一人一人の名など覚えていよう筈もないかもしれない。だが、デイヴィスはそれを確かめない訳にはいかなかった。例えキングがその名を知らずとも。
するとキングは、デイヴィスの思いもしない行動を取り始める。キングは彼の突きつけている短剣の剣先に、喉元を僅かに刺しながら後ろを振り返ったのだ。
キングの首は半円を描くように切り傷が刻み込まれ、ぱっくりと開いた傷口からはドロリとした赤い血液が溢れ、首元を真っ赤に染め上げていく。そしてキングは目を見開き、デイヴィスの問いに答える。
「・・・さぁ・・・。どうだったかなぁ・・・?」
それまでとは別人のような口調で答えたキングは、その狂気じみた目でデイヴィスの視線を釘付けにする。あまりの迫力押し黙るデイヴィス。二人の間に僅かな沈黙が訪れると、漸く気付いたのか甲板と船室から数名の船員達が、人質に取られるキングの元へと走り、集まって来た。
「単刀直入に聞く。お前は人身売買の事業に手を染めているか?」
「奴隷貿易のことか?あぁ、してるよ。一部の国では人手が足りてねぇようでな。若けりゃ若いほど、良い額で売れるぜぇ?」
デイヴィスの予想は当たっていた。やはりキングは人の命を金で取引する下衆な者であることを再確認する。そして彼の船で、今も尚働いている船員達に視線を送る。
彼らはまだこの事態に気付いていない。それだけキングの命令に、命懸けで働いているかのような危機せまるものを感じた。彼らも脅されてこんなことをさせられているのかと思うと、知らぬ者とはいえ不憫に思える。
「それでか?お前の周りの船員達がこんなに若いのは・・・」
「勿論それもある。それに他の連中に、大事な商品を傷つけられちゃぁ敵わねぇからな」
「クズ野郎がッ・・・。人の命をなんだと・・・」
思わず心の中で思っていた言葉が漏れてしまう。人を物のように扱うことに、この男は何も感じないのだろうか。否、こんな狂人を理解しようという方が間違っている。
「おいおい。目の付け所が他の奴らと違うってだけだろぉ?俺ちゃんは他の奴隷商人共とは違って、高品質なものを提供することで有名な訳よ。信頼を得るには教育も重要ってわけぇ~」
「何処まで狂ってやがるんだ・・・。お前っていう人間はッ・・・!」
話を聞かされるだけでも虫唾が走る。到底理解できないような話ほど、つまらないものはない。それどころか、こんな男に妹が売られたかもしれないと思うと、今すぐにでもその手にした短剣を喉に突き刺し、身体に流れるその血の色を確かめたくなる程だ。
怒りを鎮め、デイヴィスは少し躊躇いながらも、妹のことについて遠回しにゆっくりと聞いていく。
「奴隷の中には、女や小さな子供もいるのか?」
「当然だ。だがその辺の男共と違って管理が大変でな。女を求める連中は、より品質にうるせぇからな。飯や肌の手入れに必要なものがあったりで、金がかかる。その点、男は楽で良い。飯を食わせて適当に働かせときゃぁ、それなりにいい体つきになってくる」
聞きたくもない奴隷の管理について、ベラベラと言葉を連ねるキング。デイヴィスはうんざりするように目を背け、大きく息を吐く。
「もういい!子供はどうなんだ?ここにいる者達よりももっと若いのは?」
「・・・場合によるな。仕入れる時もある。幼い子供や赤子を欲しがる客もいる。だが、そう簡単に手に入るものでもねぇからなぁ・・・」
子供の話になると、少しだけだがキングの表情が曇ったように感じ、声のトーンも下がった。流石に幼い命には、僅かばかりの良心が痛んでいるのか。だが、このようなことに手を染めている以上、許されることではない。どんな態度を取られようと、デイヴィスの気が変わることはない。
「それらを踏まえて・・・。お前、俺の名を知っているな?」
「・・・デイヴィスだろ?海賊狩りの海賊、“ハウエル・デイヴィス“」
いよいよ最も知りたかったことを、この男に尋ねる時が来た。幸か不幸か、ここまでの話を聞く限り、デイヴィスが集めた情報通り、キングは様々な国や土地で奴隷を集め、商品として客に売り飛ばしている事が分かった。
そしてその中には幼い子供や、赤子までいる事を告げられ、デイヴィスの心臓はその鼓動を早める。胸を強く打ち付け、キングに動揺しているのが聞こえてしまいそうな程に。
「奴隷の中に・・・“レイチェル“という少女はいたか?」
意を決して口にした妹の名前、“レイチェル“。レイチェル・デイヴィスという名こそ、彼の探し求めていた妹の本名。もしかしたら奴隷として仕入れた時に、名前すら剥奪された可能性もある。
いちいち一人一人の名など覚えていよう筈もないかもしれない。だが、デイヴィスはそれを確かめない訳にはいかなかった。例えキングがその名を知らずとも。
するとキングは、デイヴィスの思いもしない行動を取り始める。キングは彼の突きつけている短剣の剣先に、喉元を僅かに刺しながら後ろを振り返ったのだ。
キングの首は半円を描くように切り傷が刻み込まれ、ぱっくりと開いた傷口からはドロリとした赤い血液が溢れ、首元を真っ赤に染め上げていく。そしてキングは目を見開き、デイヴィスの問いに答える。
「・・・さぁ・・・。どうだったかなぁ・・・?」
それまでとは別人のような口調で答えたキングは、その狂気じみた目でデイヴィスの視線を釘付けにする。あまりの迫力押し黙るデイヴィス。二人の間に僅かな沈黙が訪れると、漸く気付いたのか甲板と船室から数名の船員達が、人質に取られるキングの元へと走り、集まって来た。
0
お気に入りに追加
295
あなたにおすすめの小説
【修正中】ハズレ勇者の鬼畜スキル 〜ハズレだからと問答無用で追い出されたが、実は規格外の歴代最強勇者だった?〜
水先 冬菜
ファンタジー
「こんなハズレ勇者など、即刻摘み出せ!!!」
某大学に通う俺、如月湊(きさらぎみなと)は漫画や小説とかで言う【勇者召喚】とやらで、異世界に召喚されたらしい。
お約束な感じに【勇者様】とか、【魔王を倒して欲しい】だとか、言われたが--------
ステータスを開いた瞬間、この国の王様っぽい奴がいきなり叫び出したかと思えば、いきなり王宮を摘み出され-------------魔物が多く生息する危険な森の中へと捨てられてしまった。
後で分かった事だが、どうやら俺は【生産系のスキル】を持った勇者らしく。
この世界では、最下級で役に立たないスキルらしい。
えっ? でも、このスキルって普通に最強じゃね?
試しに使ってみると、あまりにも規格外過ぎて、目立ってしまい-------------
いつしか、女神やら、王女やらに求婚されるようになっていき…………。
※前の作品の修正中のものです。
※下記リンクでも投稿中
アルファで見れない方など、宜しければ、そちらでご覧下さい。
https://ncode.syosetu.com/n1040gl/
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。
生産職から始まる初めてのVRMMO
結城楓
ファンタジー
最近流行りのVRMMO、興味がないわけではないが自分から手を出そうと思ってはいなかったふう。
そんな時、新しく発売された《アイディアル・オンライン》。
そしてその発売日、なぜかゲームに必要なハードとソフトを2つ抱えた高校の友達、彩華が家にいた。
そんなふうが彩華と半ば強制的にやることになったふうにとっては初めてのVRMMO。
最初のプレイヤー設定では『モンスターと戦うのが怖い』という理由から生産職などの能力を選択したところから物語は始まる。
最初はやらざるを得ない状況だったフウが、いつしか面白いと思うようになり自ら率先してゲームをするようになる。
そんなフウが贈るのんびりほのぼのと周りを巻き込み成長していく生産職から始まる初めてのVRMMOの物語。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第二章シャーカ王国編
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる