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運命の歯車、逸れた歯車
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キングの暗殺以前に、蟒蛇との戦闘に手を焼いていたロバーツと会話をする中でも、デイヴィスの胸中には妹の事しか頭になかった。漸く手繰り寄せたチャンスをみすみす見逃す訳にはいかない。
例え彼らの協力を得られずとも、レースで出会ったまさに天の導きと言わんばかりに有力なシンの能力。アサシンの影を用いた移動があれば、どんな状況でもキングの船に誰にも気取られる事なく忍び込むことが出来る。
最悪の場合、キングから真実を聞き出しその内容如何では、刺し違えてでもその首を討ち取らんと決意していた。その結果、この戦場がどんな惨状になろうとも、もしキングが妹を手に掛けた主犯であるならば、自尊心を維持できる自信は彼にはなかった。
デイヴィス達を乗せたツバキの船が、ロバーツの本船に合流する頃、蟒蛇にある異変が起き始める。引き続き、各所に姿を現す蟒蛇に身体に、各々の海賊達が攻撃を仕掛ける中、突如鼓膜を震わせる程の雄叫びが、海域一帯に轟々と響き渡った。
思わぬ事態に海賊達の手が止まる。攻撃を中断し、どこから聞こえるのかもわからない雄叫びの発生源を探す。明らかに人のものではない。それに誰かの召喚獣にしては余りにも大きな雄叫びで、巨大な召喚獣を呼び出していたヴェインのものでもない。
一同が可能性を潰していくと、行き当たる答えは皆同じだった。その場にいる誰よりも大きく、意のままに海を動かし、風を操り天候さえも味方につけていた、彼らの討伐目標である蟒蛇しかいなかった。
これまでの攻撃では、蟒蛇に悲鳴を上げさせられるような一撃をまだ与えられていない。ではこの雄叫びは一体何によるものなのか。誰が引き起こしたものなのか。いくら探せど、その答えは誰の目にも届くことはなかった。
それもその筈。如何なる攻撃にも怯むことのなかった蟒蛇を唸らせたのは、たった一人の人物だったのだから。その人物は、雲海を泳ぐ蟒蛇の頭部に短剣を突き刺し張り付いていた。
強靭な外皮をもろともせず突き刺さった短剣からは、呪術のものだろうか象形文字のようなものの羅列が、次々に蟒蛇の頭部へと広がっていく。
「本来、ここにあるまじき者であるのは私も同じだ・・・。共にこの戦場から退場してもらおう。そして運命の歯車は定められた道を辿り、逸れた歯車はお前達へ近づく為の道を辿ることになる」
剣を突き立てていたのは、黒いコートに身を包んだ何者かだった。その声は男のもので、姿や顔はその漆黒の生地に覆われ確認できない。だが、その者はどうやら敵ではないようだった。
黒コートの男によって掛けられた呪術のようなものにより、蟒蛇の起こしていた海流が弱まり、雲海では風や雨が弱まり、攻撃を妨げていた雷が発生しなくなっていった。
突然の出来事に、レイド戦へ臨んでいた全ての者が驚いた。それは世界を見て回る大海賊であっても、凡ゆる裏家業に通じようという組織の者であっても変わらない。
レールガンによって千切れ飛んだ身体を再生させた蟒蛇に、再びエイヴリーが文明の叡智の力をその身体に撃ち込む。これまでの雷撃にに比べると、やや充填不足ではあったが、その威力は見劣りしない。
閃光のような一撃が蟒蛇の身体を捉えると、その強固な鱗を破壊し、肉の壁に風穴を開ける。すると、これまでになかった蟒蛇による反応が現れたのだ。激痛に悶えるように、悲鳴のような声を上げて暴れ出す蟒蛇。
しかし、何より彼らを驚かせたのは、その霊撃による傷口だった。ここまで、切断されても風穴を開けられても元通り再生してきたその身体が、現状を保ち失われた部位を戻すことはなかったのだ。
海賊達による攻撃が通じるようになった。それはまるで、落ちているかも分からない汚れが、突然綺麗に無くなったかのような達成感。自身の行いが、意味のあるものだと分かった時のような喜び彼らの中に湧き上がる。
「雷撃が・・・通った・・・。傷口が再生しないッ!」
「何故だ?何故突然、通じるようになった?あの怪物に一体何が起きたんだ・・・?」
思わず目を見開き驚愕するアルマンと、蟒蛇に起きた突然の異変に困惑するエイヴリー。一体何が引き金となって攻撃が通じるようになったのか。これまでの戦いをいくら思い返そうと、心当たりが全くと言っていいほど思い当たらない。
だがこの機を逃すことは出来ない。直ぐに次なる雷撃の準備に取り掛からせるエイヴリー。そして味方の船を更に集め戦艦を拡張すると、主砲となるレールガンとまではいかないが、別の兵器をクラフトし始めると、レールガンのチャージが完了するまでの間に、砲撃を浴びせていく。
「何だ・・・?おっさんとこの攻撃が通じてるじゃねぇか・・・」
上空の蟒蛇を攻撃するエイヴリーの様子を見ていたキングが、それならば海上の蟒蛇はどうかと再び剣をその手に取り、鋭い斬撃を撃ち放つ。海を裂くように放たれた斬撃は、海面に浮かぶ蟒蛇の身体を深々と斬りつけた。
雲海の蟒蛇と同じく、その身体は再生することなくキングの与えた傷跡を刻み、目に見える形で蟒蛇にダメージを与えた。
「一気に勝機が見えてきたな・・・。さぁて!また変なことが起きる前に片付けちまうか!」
時を同じくして、海上で蟒蛇の身体へ砲撃を浴びせていた、ロバーツの船に乗るウォルターも雄叫びの後の異変を感じ取り、再び自身のスキルで弾数を増やし、砲弾の雨を浴びせる。
それまで、少しでも攻撃の手を緩めると再生されていた蟒蛇の身体は、彼の爆撃を受け鱗を剥がし、体表を焦がす。蟒蛇は嫌がるように身体を海中へと潜らせていくと、追撃をさせないよう小型のモンスターを複数送り込んでくる。
「今までと違う・・・?明らかにダメージが入っている。いけるぞ!この調子なら・・・!」
勝機を見出したウォルターと船員達が一気呵成に畳み掛ける。そしてロバーツの船に合流したデイヴィスが彼の元へと向かい、ツバキの船を離れ周囲で起きている異変を見て、今後の計画を二人で話し合う。
例え彼らの協力を得られずとも、レースで出会ったまさに天の導きと言わんばかりに有力なシンの能力。アサシンの影を用いた移動があれば、どんな状況でもキングの船に誰にも気取られる事なく忍び込むことが出来る。
最悪の場合、キングから真実を聞き出しその内容如何では、刺し違えてでもその首を討ち取らんと決意していた。その結果、この戦場がどんな惨状になろうとも、もしキングが妹を手に掛けた主犯であるならば、自尊心を維持できる自信は彼にはなかった。
デイヴィス達を乗せたツバキの船が、ロバーツの本船に合流する頃、蟒蛇にある異変が起き始める。引き続き、各所に姿を現す蟒蛇に身体に、各々の海賊達が攻撃を仕掛ける中、突如鼓膜を震わせる程の雄叫びが、海域一帯に轟々と響き渡った。
思わぬ事態に海賊達の手が止まる。攻撃を中断し、どこから聞こえるのかもわからない雄叫びの発生源を探す。明らかに人のものではない。それに誰かの召喚獣にしては余りにも大きな雄叫びで、巨大な召喚獣を呼び出していたヴェインのものでもない。
一同が可能性を潰していくと、行き当たる答えは皆同じだった。その場にいる誰よりも大きく、意のままに海を動かし、風を操り天候さえも味方につけていた、彼らの討伐目標である蟒蛇しかいなかった。
これまでの攻撃では、蟒蛇に悲鳴を上げさせられるような一撃をまだ与えられていない。ではこの雄叫びは一体何によるものなのか。誰が引き起こしたものなのか。いくら探せど、その答えは誰の目にも届くことはなかった。
それもその筈。如何なる攻撃にも怯むことのなかった蟒蛇を唸らせたのは、たった一人の人物だったのだから。その人物は、雲海を泳ぐ蟒蛇の頭部に短剣を突き刺し張り付いていた。
強靭な外皮をもろともせず突き刺さった短剣からは、呪術のものだろうか象形文字のようなものの羅列が、次々に蟒蛇の頭部へと広がっていく。
「本来、ここにあるまじき者であるのは私も同じだ・・・。共にこの戦場から退場してもらおう。そして運命の歯車は定められた道を辿り、逸れた歯車はお前達へ近づく為の道を辿ることになる」
剣を突き立てていたのは、黒いコートに身を包んだ何者かだった。その声は男のもので、姿や顔はその漆黒の生地に覆われ確認できない。だが、その者はどうやら敵ではないようだった。
黒コートの男によって掛けられた呪術のようなものにより、蟒蛇の起こしていた海流が弱まり、雲海では風や雨が弱まり、攻撃を妨げていた雷が発生しなくなっていった。
突然の出来事に、レイド戦へ臨んでいた全ての者が驚いた。それは世界を見て回る大海賊であっても、凡ゆる裏家業に通じようという組織の者であっても変わらない。
レールガンによって千切れ飛んだ身体を再生させた蟒蛇に、再びエイヴリーが文明の叡智の力をその身体に撃ち込む。これまでの雷撃にに比べると、やや充填不足ではあったが、その威力は見劣りしない。
閃光のような一撃が蟒蛇の身体を捉えると、その強固な鱗を破壊し、肉の壁に風穴を開ける。すると、これまでになかった蟒蛇による反応が現れたのだ。激痛に悶えるように、悲鳴のような声を上げて暴れ出す蟒蛇。
しかし、何より彼らを驚かせたのは、その霊撃による傷口だった。ここまで、切断されても風穴を開けられても元通り再生してきたその身体が、現状を保ち失われた部位を戻すことはなかったのだ。
海賊達による攻撃が通じるようになった。それはまるで、落ちているかも分からない汚れが、突然綺麗に無くなったかのような達成感。自身の行いが、意味のあるものだと分かった時のような喜び彼らの中に湧き上がる。
「雷撃が・・・通った・・・。傷口が再生しないッ!」
「何故だ?何故突然、通じるようになった?あの怪物に一体何が起きたんだ・・・?」
思わず目を見開き驚愕するアルマンと、蟒蛇に起きた突然の異変に困惑するエイヴリー。一体何が引き金となって攻撃が通じるようになったのか。これまでの戦いをいくら思い返そうと、心当たりが全くと言っていいほど思い当たらない。
だがこの機を逃すことは出来ない。直ぐに次なる雷撃の準備に取り掛からせるエイヴリー。そして味方の船を更に集め戦艦を拡張すると、主砲となるレールガンとまではいかないが、別の兵器をクラフトし始めると、レールガンのチャージが完了するまでの間に、砲撃を浴びせていく。
「何だ・・・?おっさんとこの攻撃が通じてるじゃねぇか・・・」
上空の蟒蛇を攻撃するエイヴリーの様子を見ていたキングが、それならば海上の蟒蛇はどうかと再び剣をその手に取り、鋭い斬撃を撃ち放つ。海を裂くように放たれた斬撃は、海面に浮かぶ蟒蛇の身体を深々と斬りつけた。
雲海の蟒蛇と同じく、その身体は再生することなくキングの与えた傷跡を刻み、目に見える形で蟒蛇にダメージを与えた。
「一気に勝機が見えてきたな・・・。さぁて!また変なことが起きる前に片付けちまうか!」
時を同じくして、海上で蟒蛇の身体へ砲撃を浴びせていた、ロバーツの船に乗るウォルターも雄叫びの後の異変を感じ取り、再び自身のスキルで弾数を増やし、砲弾の雨を浴びせる。
それまで、少しでも攻撃の手を緩めると再生されていた蟒蛇の身体は、彼の爆撃を受け鱗を剥がし、体表を焦がす。蟒蛇は嫌がるように身体を海中へと潜らせていくと、追撃をさせないよう小型のモンスターを複数送り込んでくる。
「今までと違う・・・?明らかにダメージが入っている。いけるぞ!この調子なら・・・!」
勝機を見出したウォルターと船員達が一気呵成に畳み掛ける。そしてロバーツの船に合流したデイヴィスが彼の元へと向かい、ツバキの船を離れ周囲で起きている異変を見て、今後の計画を二人で話し合う。
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