464 / 1,646
吹き飛ぶ海賊船
しおりを挟む
船団を連れ上空を飛ぶエイヴリー海賊団を見上げるキング。いち早く大波を抜けたエイヴリーに対し、キングの船団はまだこれから大波を迎える。そしてその時間は長くはない。
その中でもキングの乗る船は一番大波に近く、移動でどうにか出来るような状況ではない。そして彼の船はまだ友軍の船には合流出来ていない。だが、こんな中でもキングは、取り乱す様子など微塵も見せず、素直に目に映る光景を楽しんでいるようだった。
「はぁ~ッ!やっぱエイヴリーのおっさんとこは、すげぇこと考えんねぇ~・・・。今度俺ちゃんの船に、羽でも生やしてもらおっかなぁ~?」
「ボスッ!もう波がそこまでッ・・・!呑気なこと言ってる場合じゃないっスよ!?」
キングの余裕とは相反し、船員達は慌ただしく波に飲まれた後の為の準備を進めていた。彼らの様子を見渡し漸くその気になったのか、肩をぐるぐると回し首を鳴らしなら準備運動を始めると、キングは船員が動き回る甲板を歩き、船の後方で波が追いかけて来る方へ向かう。
そして後方で放置されていた大砲を、軽々しく一人の力だけで向きを変えると、砲身は俯くように海面へと向けられる。まるでバスケットボールでも掴むかのように大砲の弾を込め、海面へ向けて砲撃の準備を整えるキング。
「お~い、皆さ~ん?船内に入るか、しっかり掴まってないと振り落とされちゃうんで・・・よろしくぅッ!!」
船長が何をしようというのか、全く分からないまま船員達は彼の言う通り急ぎ船内に逃げ込む。まだ船内に入っていない者もいる中、キングは大砲の導火線に火をつける。その光景を見てしまった船員達が顔を青ざめ、近くにある物に死に物狂いでしがみ付く。
暫くすると、鼓膜を震わせる轟音が発せられる。すると彼らを乗せた船は、何かに弾き飛ばされたように前方へ加速した。そして荒れ狂う波に激しく打ちつけられた船底が跳ね上がり、船が大きく飛び上がった。
キングの放った大砲の弾一発で、彼らの船は勢いよく大波から逃げるように、エイヴリー海賊団の船と一緒とまではいかなくとも、別の形で空を飛んだのだ。
エイヴリーやヘラルトが、まるで奇跡のようなことを起こすように、キングの周りでも常識ではありえないようなことが度々起こる。それはまるで、彼らの周りだけ物理の法則から解き放たれたかのように。
「フゥゥゥーーーーーッ!!でもやっぱり、おっさんの発想じゃぁスリルが足んねぇんだよねぇ。飛ぶならもっと風を感じないとねぇッ!」
彼らの船は一気に距離を稼ぎ、ジャウカーン等幹部の船団を飛び越えて行くと、大波から最も離れたダラーヒムの船団がいるところまで飛んで来た。放物線を描くようにゆっくり海面へ近づくキング達の船。このまま着水すれば、船がその衝撃に耐え切れずバラバラに砕け散ってしまう。
しかし、当然ながら何も考えていないキングではない。船は海面付近になると、一瞬重力を失ったかのようにふわりと宙に浮き、空を風の赴くままに旅する綿毛のように、優しくその船体を海面へと下ろしたのだ。
「ここまで来りゃぁどうにでもなるでしょぉ~?」
「しッ・・・しかし後方にはジャウカーンさんや、トゥーマーン様が・・・」
「あぁ・・・まぁ、この程度死んじまうような奴らなら、わざわざあんなポストに就かせちゃいないのよ~。自力で何とかするっしょぉ?」
一見、幹部物達を見放すような対応に思えるが、これはキングが彼らを信頼しきっているが故の対応だった。直接助けに行かなくとも、彼らであれば迫る大波を何とかすることくらいのことは造作もない筈と。
そして、そのキングの信頼を裏切らぬよう幹部等の船団もまた、それぞれの動きを見せる。最初に動き始めたのは、キングの船の次に大波との距離が近い、ジャウカーンの船団だった。彼らの頭上を、勢いよく飛び去って行くキングの船。風を切るその船体からは、何か大きな生き物の唸り声のような低い轟音が鳴っていた。
まるでそこだけが夜になったかのように暗くなるジャウカーンの船。何事かと上空を見上げると、そこには普段見ることのないような船の船底があった。目が飛び出しそうな程大きく見開く瞼。その刹那の一時だけは、例えキングの能力の秘密を知る幹部であっても、事態を把握するのに時間がかかった。
停止した思考が再び動き出すジャウカーン。そしてそれが、恐らくキングの能力でやって来た船であることに気が付くと、船が飛んで来た後方を見てその状況と、ボスである彼に遅れを取らぬようにと急かされる気持ちを胸に、すぐにこの場から離れる為の準備を船員達へ促す。
「まぁ~たボスの仕業かぁ!?相変わらず規模がぶっ飛んでんなぁッ!俺等も負けてらんねえーぞ!おいッ!アレの準備を始めろッ!」
ジャウカーンが自身の船団に指示を出すと、彼らの船の後方が開き、何やら大きな筒のような物が外へと伸びて行く。そして全ての船で準備が整うと、彼の合図で一斉にその大筒が火山が噴火するように激しい火を噴いた。
その中でもキングの乗る船は一番大波に近く、移動でどうにか出来るような状況ではない。そして彼の船はまだ友軍の船には合流出来ていない。だが、こんな中でもキングは、取り乱す様子など微塵も見せず、素直に目に映る光景を楽しんでいるようだった。
「はぁ~ッ!やっぱエイヴリーのおっさんとこは、すげぇこと考えんねぇ~・・・。今度俺ちゃんの船に、羽でも生やしてもらおっかなぁ~?」
「ボスッ!もう波がそこまでッ・・・!呑気なこと言ってる場合じゃないっスよ!?」
キングの余裕とは相反し、船員達は慌ただしく波に飲まれた後の為の準備を進めていた。彼らの様子を見渡し漸くその気になったのか、肩をぐるぐると回し首を鳴らしなら準備運動を始めると、キングは船員が動き回る甲板を歩き、船の後方で波が追いかけて来る方へ向かう。
そして後方で放置されていた大砲を、軽々しく一人の力だけで向きを変えると、砲身は俯くように海面へと向けられる。まるでバスケットボールでも掴むかのように大砲の弾を込め、海面へ向けて砲撃の準備を整えるキング。
「お~い、皆さ~ん?船内に入るか、しっかり掴まってないと振り落とされちゃうんで・・・よろしくぅッ!!」
船長が何をしようというのか、全く分からないまま船員達は彼の言う通り急ぎ船内に逃げ込む。まだ船内に入っていない者もいる中、キングは大砲の導火線に火をつける。その光景を見てしまった船員達が顔を青ざめ、近くにある物に死に物狂いでしがみ付く。
暫くすると、鼓膜を震わせる轟音が発せられる。すると彼らを乗せた船は、何かに弾き飛ばされたように前方へ加速した。そして荒れ狂う波に激しく打ちつけられた船底が跳ね上がり、船が大きく飛び上がった。
キングの放った大砲の弾一発で、彼らの船は勢いよく大波から逃げるように、エイヴリー海賊団の船と一緒とまではいかなくとも、別の形で空を飛んだのだ。
エイヴリーやヘラルトが、まるで奇跡のようなことを起こすように、キングの周りでも常識ではありえないようなことが度々起こる。それはまるで、彼らの周りだけ物理の法則から解き放たれたかのように。
「フゥゥゥーーーーーッ!!でもやっぱり、おっさんの発想じゃぁスリルが足んねぇんだよねぇ。飛ぶならもっと風を感じないとねぇッ!」
彼らの船は一気に距離を稼ぎ、ジャウカーン等幹部の船団を飛び越えて行くと、大波から最も離れたダラーヒムの船団がいるところまで飛んで来た。放物線を描くようにゆっくり海面へ近づくキング達の船。このまま着水すれば、船がその衝撃に耐え切れずバラバラに砕け散ってしまう。
しかし、当然ながら何も考えていないキングではない。船は海面付近になると、一瞬重力を失ったかのようにふわりと宙に浮き、空を風の赴くままに旅する綿毛のように、優しくその船体を海面へと下ろしたのだ。
「ここまで来りゃぁどうにでもなるでしょぉ~?」
「しッ・・・しかし後方にはジャウカーンさんや、トゥーマーン様が・・・」
「あぁ・・・まぁ、この程度死んじまうような奴らなら、わざわざあんなポストに就かせちゃいないのよ~。自力で何とかするっしょぉ?」
一見、幹部物達を見放すような対応に思えるが、これはキングが彼らを信頼しきっているが故の対応だった。直接助けに行かなくとも、彼らであれば迫る大波を何とかすることくらいのことは造作もない筈と。
そして、そのキングの信頼を裏切らぬよう幹部等の船団もまた、それぞれの動きを見せる。最初に動き始めたのは、キングの船の次に大波との距離が近い、ジャウカーンの船団だった。彼らの頭上を、勢いよく飛び去って行くキングの船。風を切るその船体からは、何か大きな生き物の唸り声のような低い轟音が鳴っていた。
まるでそこだけが夜になったかのように暗くなるジャウカーンの船。何事かと上空を見上げると、そこには普段見ることのないような船の船底があった。目が飛び出しそうな程大きく見開く瞼。その刹那の一時だけは、例えキングの能力の秘密を知る幹部であっても、事態を把握するのに時間がかかった。
停止した思考が再び動き出すジャウカーン。そしてそれが、恐らくキングの能力でやって来た船であることに気が付くと、船が飛んで来た後方を見てその状況と、ボスである彼に遅れを取らぬようにと急かされる気持ちを胸に、すぐにこの場から離れる為の準備を船員達へ促す。
「まぁ~たボスの仕業かぁ!?相変わらず規模がぶっ飛んでんなぁッ!俺等も負けてらんねえーぞ!おいッ!アレの準備を始めろッ!」
ジャウカーンが自身の船団に指示を出すと、彼らの船の後方が開き、何やら大きな筒のような物が外へと伸びて行く。そして全ての船で準備が整うと、彼の合図で一斉にその大筒が火山が噴火するように激しい火を噴いた。
0
お気に入りに追加
297
あなたにおすすめの小説
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~
平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。
三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。
そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。
アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。
襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。
果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
全校転移!異能で異世界を巡る!?
小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。
目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。
周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。
取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。
「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」
取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。
そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。
戦闘職をしたくてVRMMOを始めましたが、意図せずユニークテイマーという職業になったので全力でスローライフを目指します
地球
ファンタジー
「え?何この職業?」
初めてVRMMOを始めようとしていた主人公滝沢賢治。
やろうと決めた瞬間、戦闘職を選んでいた矢先に突然出てきた職業は【ユニークテイマー】だった。
そのゲームの名はFree Infinity Online
世界初であるフルダイブ型のVRゲームであり、AIがプレイヤーの様子や行動を把握しイベントなどを考えられるゲームであった。
そこで出会った職業【ユニークテイマー】
この職業で、戦闘ではなくてスローライフを!!
しかし、スローライフをすぐにはできるわけもなく…?
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる