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夢を見る人
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最後に彼女が口にした私達にも出来るかも知れないという言葉。それは否定的だった彼女の言葉の中で唯一、希望を感じさせる言葉だった。ミアも心の何処かで求めているのだろう。本当に信じられる、仲間と呼べる存在を。
二人が会話をしていると、誰かが甲板の方へと上がってくるような足音がした。しんみりとした空気を悟られまいと、慌てて平常心を作り出そうとするシン。その様子を見て、心なしかミアの表情も穏やかなものになったような気がした。
「ん?邪魔しちまったかぁ?」
「デイヴィスか・・・。ウィリアムの話はもういいのか?」
船内でツバキからウィリアムの話を聞いていた筈のデイヴィスが、甲板へと上がって来た。シンプソンに続き、流石に同じような話を二度に渡り求められ、彼に追い払われてしまったのだろうか。
「いや、これ以上彼の邪魔をしちゃぁ悪いかなと思っただけさ。あぁやって話を聞いていると、やっぱり子供だなって思ったよ」
デイヴィスはツバキとの会話を思い出し、笑みを浮かべる。シンが見た限り、彼とツバキとの会話に笑みを浮かべるような様子は窺えなかった。それに子供扱いされる事を嫌うツバキが、そんな子供っぽい態度を取るだろうか。
彼の笑みを見て不思議そうな表情を浮かべるシンに、デイヴィスが彼らも知らなかったツバキの一面を語ってくれた。
「アイツ、師匠の話をしている時、どんな顔をしてたと思う?作業しながらもアイツは、自慢げにウィリアムのことを語ってたんだ。瞳を輝かせて嬉しそうによぉ・・・。表面上はあんな態度をとってはいるが、誰よりもウィリアム・ダンピアという男を尊敬しているんだろうな・・・」
シン達はツバキの反応から、一度もウィリアムの事について彼に尋ねたことはなかった。それはあまり追求すべきことではないように感じたからだ。しかし、本当に嫌っているのなら一緒に暮らしてなどいないだろう。
師匠の一番近くでその技術を学び、人としての生き方を学び、彼の人柄を知った。ツバキにとってウィリアムは、越えるべき対象であると同時にこう在りたいという、憧れの対象でもあったのだ。
一緒に居ながら彼のことを知ろうともせず、これではただ互いの目的の為に行動を共にしているに過ぎない。レースに紛れ込んだ異物、異世界への転移ポータルさえ入手出来ればそれでいいのかも知れない。
だが、これまで出会って来たサラやアーテムのように、彼らは彼らなりの事情を抱え、時には命がけでシン達に力を貸してくれた。そしてそれはツバキも同じこと。洗礼を乗り越えられたのは、彼の知識と技術力があってこそのものだ。
デイヴィスの行いを見て、自分達のことばかりではなくもう少し周りの者達への関心を持つべきなのかも知れないと、シンは改めてこの世界での身の振り方を学んだ。
「そうか・・・。ツバキがそんなことを・・・」
「今回の件が終わったら、俺ももう一度海に出てみようと思うんだ・・・。やっぱり俺は海が好きだ。またアイツらのような仲間を集めて、何のしがらみもない自由な世界で旅がしてぇなぁ・・・」
遠い目をして海の先を見つめる彼の表情は、ミアの言っていた“夢を見る人“の姿そのものだった。キングを殺し、彼の妹を見つけ出すことが出来れば、デイヴィスもまたシンプソンやロバーツのように、本来のあるべき姿に帰れるのだろうか。
「出来るさ。アンタには、アンタの身を案じてくれる“仲間“がいるじゃないか」
シンは柄にもなく、それっぽい言葉をデイヴィスに掛けると急に冷静になり恥ずかしくなる。そんな彼を、ミアは何を言っているんだと冷たく罵ったが、元気のなかったシンがいつもの調子に戻ったようで一安心していた。
現実の世界でこんなことを言えば、それこそ変人扱いされるかも知れない。だがこの世界では違う。芝居じみた臭い台詞も、芝居じみた大袈裟な演技も、全てがこの世界に暮らす者達の心へ響く言葉として伝わる。
シンの励ましの言葉に、柄にもなく弱気な一面を出してしまったと鼻で笑うデイヴィス。辛気臭い雰囲気を吹き飛ばすように高らかに笑うと、彼はまるで計画を完璧にこなすのではないかと思わせるほど、力強く返した。
「はははッ!当然だ!俺の計画は完璧よぉ!それにシン。お前のいう通り、俺には信頼している仲間がいる。見せてやるよ・・・デイヴィス海賊団の力ってやつおよぉッ!」
彼と海を渡り、苦楽を共にして来た一団が再び一堂に会する。それも当時より心身共に成長し、力をつけ、新たな仲間達を引き連れ、大きな苦難へと立ち向かう光となって。
二人が会話をしていると、誰かが甲板の方へと上がってくるような足音がした。しんみりとした空気を悟られまいと、慌てて平常心を作り出そうとするシン。その様子を見て、心なしかミアの表情も穏やかなものになったような気がした。
「ん?邪魔しちまったかぁ?」
「デイヴィスか・・・。ウィリアムの話はもういいのか?」
船内でツバキからウィリアムの話を聞いていた筈のデイヴィスが、甲板へと上がって来た。シンプソンに続き、流石に同じような話を二度に渡り求められ、彼に追い払われてしまったのだろうか。
「いや、これ以上彼の邪魔をしちゃぁ悪いかなと思っただけさ。あぁやって話を聞いていると、やっぱり子供だなって思ったよ」
デイヴィスはツバキとの会話を思い出し、笑みを浮かべる。シンが見た限り、彼とツバキとの会話に笑みを浮かべるような様子は窺えなかった。それに子供扱いされる事を嫌うツバキが、そんな子供っぽい態度を取るだろうか。
彼の笑みを見て不思議そうな表情を浮かべるシンに、デイヴィスが彼らも知らなかったツバキの一面を語ってくれた。
「アイツ、師匠の話をしている時、どんな顔をしてたと思う?作業しながらもアイツは、自慢げにウィリアムのことを語ってたんだ。瞳を輝かせて嬉しそうによぉ・・・。表面上はあんな態度をとってはいるが、誰よりもウィリアム・ダンピアという男を尊敬しているんだろうな・・・」
シン達はツバキの反応から、一度もウィリアムの事について彼に尋ねたことはなかった。それはあまり追求すべきことではないように感じたからだ。しかし、本当に嫌っているのなら一緒に暮らしてなどいないだろう。
師匠の一番近くでその技術を学び、人としての生き方を学び、彼の人柄を知った。ツバキにとってウィリアムは、越えるべき対象であると同時にこう在りたいという、憧れの対象でもあったのだ。
一緒に居ながら彼のことを知ろうともせず、これではただ互いの目的の為に行動を共にしているに過ぎない。レースに紛れ込んだ異物、異世界への転移ポータルさえ入手出来ればそれでいいのかも知れない。
だが、これまで出会って来たサラやアーテムのように、彼らは彼らなりの事情を抱え、時には命がけでシン達に力を貸してくれた。そしてそれはツバキも同じこと。洗礼を乗り越えられたのは、彼の知識と技術力があってこそのものだ。
デイヴィスの行いを見て、自分達のことばかりではなくもう少し周りの者達への関心を持つべきなのかも知れないと、シンは改めてこの世界での身の振り方を学んだ。
「そうか・・・。ツバキがそんなことを・・・」
「今回の件が終わったら、俺ももう一度海に出てみようと思うんだ・・・。やっぱり俺は海が好きだ。またアイツらのような仲間を集めて、何のしがらみもない自由な世界で旅がしてぇなぁ・・・」
遠い目をして海の先を見つめる彼の表情は、ミアの言っていた“夢を見る人“の姿そのものだった。キングを殺し、彼の妹を見つけ出すことが出来れば、デイヴィスもまたシンプソンやロバーツのように、本来のあるべき姿に帰れるのだろうか。
「出来るさ。アンタには、アンタの身を案じてくれる“仲間“がいるじゃないか」
シンは柄にもなく、それっぽい言葉をデイヴィスに掛けると急に冷静になり恥ずかしくなる。そんな彼を、ミアは何を言っているんだと冷たく罵ったが、元気のなかったシンがいつもの調子に戻ったようで一安心していた。
現実の世界でこんなことを言えば、それこそ変人扱いされるかも知れない。だがこの世界では違う。芝居じみた臭い台詞も、芝居じみた大袈裟な演技も、全てがこの世界に暮らす者達の心へ響く言葉として伝わる。
シンの励ましの言葉に、柄にもなく弱気な一面を出してしまったと鼻で笑うデイヴィス。辛気臭い雰囲気を吹き飛ばすように高らかに笑うと、彼はまるで計画を完璧にこなすのではないかと思わせるほど、力強く返した。
「はははッ!当然だ!俺の計画は完璧よぉ!それにシン。お前のいう通り、俺には信頼している仲間がいる。見せてやるよ・・・デイヴィス海賊団の力ってやつおよぉッ!」
彼と海を渡り、苦楽を共にして来た一団が再び一堂に会する。それも当時より心身共に成長し、力をつけ、新たな仲間達を引き連れ、大きな苦難へと立ち向かう光となって。
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