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消失を見通す眼
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布都御魂剣をその手に、シンへ剣を振り下ろそうとしたロロネーに一撃を入れる。そして何より驚いたのは、ツクヨの攻撃がロロネーに通ったということだ。
これまで散々剣を振るい続けてきたシン達だったが、その一切を通さず疲労する様子もなかったロロネー。その身体からは彼らと同じ、人間の血が流れている。何よりロロネー自身も、信じられない出来事に驚いているようだった。
「攻撃が・・・通った・・・?」
床に尻餅をつき呆気に取られるシンとは打って変わり、危険を察したロロネーがすぐさまツクヨとの距離を空ける。ツクヨも続けて追い討ちを仕掛けるが、一撃目の不意打ちとは違い、攻撃を当てるには至らなかった。
心なしかロロネーの回避行動が大袈裟に見える。決してギリギリのところで避けようとはせず、しっかりと確実に避けられるところまで移動している。彼もツクヨの予想だにしない攻撃を警戒しているのだ。
何故、物理攻撃を通さない身体に刃を通すことが出来たのか。これまで実体のない亡霊や霧で作られたゴーストシップには、魔力の込められた攻撃、或いはエンチャントを施した武器による属性ダメージのみが通っていた。
しかし、ツクヨの剣にエンチャントがされている様子はない。そしてロロネーの傷口にも、属性攻撃によるダメージの形跡はなく、明らかに実物の切り傷がついていた。
「妙なことを・・・。何故刃が通る・・・?」
不可思議な出来事にロロネーと同様、何故物理的な攻撃が通るのか考えると、シンはツクヨのある様子に注目した。それは彼が海上で見せた、目を閉じて剣を握る姿だ。
「あの時の・・・!確か、何かが見えていると言っていたな。それと関係があるのだろうか・・・」
霧で姿を眩まそうとするも、ロロネーの移動経路をツクヨは瞼の裏の世界で見ている。本体を見るというよりも、この男のドス黒いオーラを捉えているので、目視で見失っても僅かに残るオーラと、次の移動先である出現ポイントに集まるオーラを先に探知できる。
故にツクヨの攻撃は、ロロネーの霧の能力に惑わされることがなく、後手に回ることもない。ロロネーにとって不可解なことが立て続けに起こり、余裕だった表情に暗い影を落とす。
「シンッ!ここは私達に任せて、君は彼女の援護を・・・!」
ツクヨはチン・シーへ続く経路に立ちはだかり、ロロネーの進行を許さない。船員の二人も、ロロネーを休ませまいと鍛え上げた剣技を振るい、霧化を促進させる。
ツクヨ達の煩わしい攻撃に、思わず大雑把な攻撃になるロロネーに対し、攻勢よりも回避に重点を置く三人は、軽やかな動きで男を翻弄する。
「クッ・・・!この程度の奴らにッ・・・。落ち着け、落ち着け・・・。今までにだって、攻撃を透過出来ない奴に出会したことがあるッ!コイツは更に俺の姿が見えているだけだ。探知されているのなら、それなりのやり方ってもんがあるだろ・・・」
ブツクサと独り言を口にし出し、自身を落ち着かせようとするロロネー。まるで自己暗示のように冷静さを取り戻していくと、静かに呼吸を整え、避けるのではなく向かっていく姿勢に変わる。
それまでと明らかに違った雰囲気を醸し出すロロネーに、思わずツクヨ達の足が止まる。迂闊に踏み込めば命を落とすような緊張感が、その肌にピリピリと伝わってくる。
「いいのか・・・?来ねぇんならこっちからいくぜぇ?」
そう言うとロロネーは、ゼロからの急加速で目を瞑るツクヨへ突進のように迫り、剣を振り下ろす。オーラで見えていたツクヨは辛うじてその一撃を受け止めるも、余りにも重たい攻撃に床の木材が割れ、足が沈んだ。
ツクヨを助けるように二人の船員が剣技による連携をとり、次々にロロネーの身体に刃を突き立てていく。
その一撃一撃でロロネーの身体は徐々に霧へと変わっていき、ある程度斬り刻んだところで彼は全身を霧に変え姿を消した。
「またかッ・・・!今度は一体何処へ・・・」
船員の二人が辺りを見渡し、ロロネーの出現に警戒する中、唯一彼の動きを探知していたツクヨが二人にロロネーの居場所を指差し声を上げる。
「後ろだッ!足元にいる。何か仕掛けてくるぞ!」
その声に反応した二人は一度ツクヨの方を見ると、彼の指差す方向へ向き直りロロネーの現れるのを待った。するとその箇所に僅かに濃い霧が立ち込め、何かの形に変わろうとしていた。
二人はその霧が姿を象る前に剣を振るい、先手を打つ。だがそこに現れたのは、ロロネーの下半身だけで、低い体勢から二人の足を払おうと、紙に円を描くコンパスのように床を滑らせ一回転する。
咄嗟に身体を捻り、強引に宙へ足を浮かせる二人だったが、そこへロロネーの上半身が現れ宙に舞う二人の頭部を鷲掴みにしようと狙っている。そうはさせまいと、ツクヨが布都御魂剣を振るう。
しかし、ロロネーはツクヨの透過しない攻撃を器用なスキル技術で避けて見せた。それも、彼らには避けたと言うより、宛も透過したように見えていた。
男はなんと、攻撃が当たる寸前、その攻撃が当たるであろう箇所だけを霧状に変え、擦り抜けさせていたのだった。
これまで散々剣を振るい続けてきたシン達だったが、その一切を通さず疲労する様子もなかったロロネー。その身体からは彼らと同じ、人間の血が流れている。何よりロロネー自身も、信じられない出来事に驚いているようだった。
「攻撃が・・・通った・・・?」
床に尻餅をつき呆気に取られるシンとは打って変わり、危険を察したロロネーがすぐさまツクヨとの距離を空ける。ツクヨも続けて追い討ちを仕掛けるが、一撃目の不意打ちとは違い、攻撃を当てるには至らなかった。
心なしかロロネーの回避行動が大袈裟に見える。決してギリギリのところで避けようとはせず、しっかりと確実に避けられるところまで移動している。彼もツクヨの予想だにしない攻撃を警戒しているのだ。
何故、物理攻撃を通さない身体に刃を通すことが出来たのか。これまで実体のない亡霊や霧で作られたゴーストシップには、魔力の込められた攻撃、或いはエンチャントを施した武器による属性ダメージのみが通っていた。
しかし、ツクヨの剣にエンチャントがされている様子はない。そしてロロネーの傷口にも、属性攻撃によるダメージの形跡はなく、明らかに実物の切り傷がついていた。
「妙なことを・・・。何故刃が通る・・・?」
不可思議な出来事にロロネーと同様、何故物理的な攻撃が通るのか考えると、シンはツクヨのある様子に注目した。それは彼が海上で見せた、目を閉じて剣を握る姿だ。
「あの時の・・・!確か、何かが見えていると言っていたな。それと関係があるのだろうか・・・」
霧で姿を眩まそうとするも、ロロネーの移動経路をツクヨは瞼の裏の世界で見ている。本体を見るというよりも、この男のドス黒いオーラを捉えているので、目視で見失っても僅かに残るオーラと、次の移動先である出現ポイントに集まるオーラを先に探知できる。
故にツクヨの攻撃は、ロロネーの霧の能力に惑わされることがなく、後手に回ることもない。ロロネーにとって不可解なことが立て続けに起こり、余裕だった表情に暗い影を落とす。
「シンッ!ここは私達に任せて、君は彼女の援護を・・・!」
ツクヨはチン・シーへ続く経路に立ちはだかり、ロロネーの進行を許さない。船員の二人も、ロロネーを休ませまいと鍛え上げた剣技を振るい、霧化を促進させる。
ツクヨ達の煩わしい攻撃に、思わず大雑把な攻撃になるロロネーに対し、攻勢よりも回避に重点を置く三人は、軽やかな動きで男を翻弄する。
「クッ・・・!この程度の奴らにッ・・・。落ち着け、落ち着け・・・。今までにだって、攻撃を透過出来ない奴に出会したことがあるッ!コイツは更に俺の姿が見えているだけだ。探知されているのなら、それなりのやり方ってもんがあるだろ・・・」
ブツクサと独り言を口にし出し、自身を落ち着かせようとするロロネー。まるで自己暗示のように冷静さを取り戻していくと、静かに呼吸を整え、避けるのではなく向かっていく姿勢に変わる。
それまでと明らかに違った雰囲気を醸し出すロロネーに、思わずツクヨ達の足が止まる。迂闊に踏み込めば命を落とすような緊張感が、その肌にピリピリと伝わってくる。
「いいのか・・・?来ねぇんならこっちからいくぜぇ?」
そう言うとロロネーは、ゼロからの急加速で目を瞑るツクヨへ突進のように迫り、剣を振り下ろす。オーラで見えていたツクヨは辛うじてその一撃を受け止めるも、余りにも重たい攻撃に床の木材が割れ、足が沈んだ。
ツクヨを助けるように二人の船員が剣技による連携をとり、次々にロロネーの身体に刃を突き立てていく。
その一撃一撃でロロネーの身体は徐々に霧へと変わっていき、ある程度斬り刻んだところで彼は全身を霧に変え姿を消した。
「またかッ・・・!今度は一体何処へ・・・」
船員の二人が辺りを見渡し、ロロネーの出現に警戒する中、唯一彼の動きを探知していたツクヨが二人にロロネーの居場所を指差し声を上げる。
「後ろだッ!足元にいる。何か仕掛けてくるぞ!」
その声に反応した二人は一度ツクヨの方を見ると、彼の指差す方向へ向き直りロロネーの現れるのを待った。するとその箇所に僅かに濃い霧が立ち込め、何かの形に変わろうとしていた。
二人はその霧が姿を象る前に剣を振るい、先手を打つ。だがそこに現れたのは、ロロネーの下半身だけで、低い体勢から二人の足を払おうと、紙に円を描くコンパスのように床を滑らせ一回転する。
咄嗟に身体を捻り、強引に宙へ足を浮かせる二人だったが、そこへロロネーの上半身が現れ宙に舞う二人の頭部を鷲掴みにしようと狙っている。そうはさせまいと、ツクヨが布都御魂剣を振るう。
しかし、ロロネーはツクヨの透過しない攻撃を器用なスキル技術で避けて見せた。それも、彼らには避けたと言うより、宛も透過したように見えていた。
男はなんと、攻撃が当たる寸前、その攻撃が当たるであろう箇所だけを霧状に変え、擦り抜けさせていたのだった。
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