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合流と追跡
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ロロネーの海賊船とは違った意味で不気味なその船は、波に煽られながらもしっかりとした舵をとっているようだった。きっと恐らく、優秀な操縦士が乗っているに違いない。
「おい、あの船は一体・・・」
「ロロネーの海賊船・・・じゃぁないのか?」
「見ろ!あの塗装・・・間違いない、俺達の船だって!」
亡霊とハオランの襲撃で手を焼いていた彼らに、更なる問題がやって来る。とても彼らだけで決められるようなことではない。だが主人であるチン・シーと連絡をとる手段が絶たれてしまっている。
何もせぬまま、事が起きるのを待っていても後手に回ってしまうばかりで良い事はないと、彼らは近づいて来るボロボロの海賊船を迎え入れる準備を始める。それはただ受動的に迎え入れる準備ではなく、その船から出て来るのが敵か味方か分からない以上、いつでも攻撃を仕掛ける事が出来るように能動的な準備を進めた。
迫り来る亡霊を撃撃する人員をある程度に絞り、事情を話しながら船員を集める。そしてボロボロの海賊船は、彼らの船の隣でゆっくりと止まると、船内から何者かが上がって来る足音が聞こえ始めた。
「来るぞ・・・、いつでもいけるよう構えておけ」
一人の船員が小声で、集まった者達に警戒態勢をとるよう伝える。彼らは各々剣やナイフを構え、弓を手にしている者は様々な角度から狙い撃ち出来るよう、物陰や段差に身を隠して、その時が来るのを待った。
しかし、階段を上がり姿を現した者の姿に彼らは拍子抜けした。一応ではあるが、こんな時彼らは最悪の事態を想定して時を待つ。それはメデューズやクトゥルプスのような怪物が、新たに攻め込んで来るような想像をしていた。
最悪この海賊船が罠で、別働隊の彼らの態勢を一気に崩壊させるための策だとするならば、姿を現すのは相当腕に自身のある引き付け役であるだろう。そんな彼らの不安を振り払うように、その海賊船から出てきたのは彼らと同じ、チン・シー海賊団の者だったのだ。
彼らは、チン・シーの能力による濃霧の捜索に引っかかることのなかった、合流できなかった海賊船だった。そして、ボロボロになったチン・シーの海賊船から現れた船員は、彼らにとって嬉しい誤算をもたらした。
それはこの戦場における、ロロネーの想定していない部外者である者達。ミアと同じく目下で彼の企みを阻止していたシン達の存在だ。
元々、濃霧を発生させハオランを引き剥がしたチン・シーの船団を孤立させていき、迷える船をメデューズとクトゥルプスの二人に始末させ戦力を削ぎ、残る本船をハオランをモノにしたロロネーの本船が合流した総力で、一気に叩き潰す手筈だった。
実際、ツクヨや後から合流したシンがいなければ、クトゥルプスを倒すことは出来なかったことだろう。そしてメデューズとクトゥルプスが、チン・シー海賊団の本船で合流し連携していたのなら、メデューズ一人の時よりも苦戦していたことだろう。
ロッシュとグレイスの戦いと同じように、彼らの意に削ぐわない部外者の存在が、彼らの運命を大きく変え始めている。
ボロボロの海賊船から現れた船員から事情を聞き、直ぐに船の中にある使えそうなものを積み込ませ、中にいる全員を迎え入れると、彼らを仲間の元へ送り届ける役目を果たした海賊船に別れを告げ、別働隊が今置かれている状況を彼らと共有する。
治療を行える部隊の増強と、戦闘に特化した部隊の戦力強化を得た彼らは、今以上に負傷者の戦線復帰が早まり、回転率が上がった。物資は多めに積み込んである。亡霊の迎撃だけなら最早、後顧の憂いは絶ち過ぎるほどに絶った。
そこで彼らは、シン達の持っていたボードに目をつける。今、この状況において自由に動ける彼らに、チン・シー海賊団の本船へ行ってもらい、別働隊に起きたことと現状を報告して貰おうというのだ。
シンとツクヨは彼らの申し出を受ける代わりに、ツバキの治療を頼んだ。勿論、ツバキを一人にしておくのもどうかと思ったが、ミアとの合流とこれから此処よりも危険な戦場へ向かうのに、負傷者を連れていてはクトゥルプス戦の時と同様、弱点になりかねない。
ましてや、ハオランが向かって行ったということは、ロロネー海賊団の総力が集中する場所なのかもしれない。つまり、いよいよロロネーは全力を持ってして、チン・シー海賊団を滅ぼしに来ている可能性が高いということだ。
二人は到着早々、直ぐに準備を済ませると必要な物資を受け取りボードに乗り込む。ハオランは既にもう片翼の、ミアのいる戦場へと向かっている。後を追うようにして向かうシン達は、手遅れになる前に辿り着くことができるのだろうか。
しかし、どうやらツクヨには考えがあるようだった。ただでさえ一人用で狭いボードの上で体勢を低くし、海面に何かをしているようだった。
「ツ・・・ツクヨ?何をしているんだ?」
ボードの操縦で後ろを振り返れないシンの服を引っ張りながら、手にした剣を水中に刺しじっとしている。
「大丈夫、私に考えがあるから・・・」
そう言うとツクヨはゆっくりと目を閉じる。するとボードは加速し、海面をまるで川などで石を投げて弾ませる水切りのように進み、徐々に二人を乗せたボードは宙を浮き始める。
「おい、あの船は一体・・・」
「ロロネーの海賊船・・・じゃぁないのか?」
「見ろ!あの塗装・・・間違いない、俺達の船だって!」
亡霊とハオランの襲撃で手を焼いていた彼らに、更なる問題がやって来る。とても彼らだけで決められるようなことではない。だが主人であるチン・シーと連絡をとる手段が絶たれてしまっている。
何もせぬまま、事が起きるのを待っていても後手に回ってしまうばかりで良い事はないと、彼らは近づいて来るボロボロの海賊船を迎え入れる準備を始める。それはただ受動的に迎え入れる準備ではなく、その船から出て来るのが敵か味方か分からない以上、いつでも攻撃を仕掛ける事が出来るように能動的な準備を進めた。
迫り来る亡霊を撃撃する人員をある程度に絞り、事情を話しながら船員を集める。そしてボロボロの海賊船は、彼らの船の隣でゆっくりと止まると、船内から何者かが上がって来る足音が聞こえ始めた。
「来るぞ・・・、いつでもいけるよう構えておけ」
一人の船員が小声で、集まった者達に警戒態勢をとるよう伝える。彼らは各々剣やナイフを構え、弓を手にしている者は様々な角度から狙い撃ち出来るよう、物陰や段差に身を隠して、その時が来るのを待った。
しかし、階段を上がり姿を現した者の姿に彼らは拍子抜けした。一応ではあるが、こんな時彼らは最悪の事態を想定して時を待つ。それはメデューズやクトゥルプスのような怪物が、新たに攻め込んで来るような想像をしていた。
最悪この海賊船が罠で、別働隊の彼らの態勢を一気に崩壊させるための策だとするならば、姿を現すのは相当腕に自身のある引き付け役であるだろう。そんな彼らの不安を振り払うように、その海賊船から出てきたのは彼らと同じ、チン・シー海賊団の者だったのだ。
彼らは、チン・シーの能力による濃霧の捜索に引っかかることのなかった、合流できなかった海賊船だった。そして、ボロボロになったチン・シーの海賊船から現れた船員は、彼らにとって嬉しい誤算をもたらした。
それはこの戦場における、ロロネーの想定していない部外者である者達。ミアと同じく目下で彼の企みを阻止していたシン達の存在だ。
元々、濃霧を発生させハオランを引き剥がしたチン・シーの船団を孤立させていき、迷える船をメデューズとクトゥルプスの二人に始末させ戦力を削ぎ、残る本船をハオランをモノにしたロロネーの本船が合流した総力で、一気に叩き潰す手筈だった。
実際、ツクヨや後から合流したシンがいなければ、クトゥルプスを倒すことは出来なかったことだろう。そしてメデューズとクトゥルプスが、チン・シー海賊団の本船で合流し連携していたのなら、メデューズ一人の時よりも苦戦していたことだろう。
ロッシュとグレイスの戦いと同じように、彼らの意に削ぐわない部外者の存在が、彼らの運命を大きく変え始めている。
ボロボロの海賊船から現れた船員から事情を聞き、直ぐに船の中にある使えそうなものを積み込ませ、中にいる全員を迎え入れると、彼らを仲間の元へ送り届ける役目を果たした海賊船に別れを告げ、別働隊が今置かれている状況を彼らと共有する。
治療を行える部隊の増強と、戦闘に特化した部隊の戦力強化を得た彼らは、今以上に負傷者の戦線復帰が早まり、回転率が上がった。物資は多めに積み込んである。亡霊の迎撃だけなら最早、後顧の憂いは絶ち過ぎるほどに絶った。
そこで彼らは、シン達の持っていたボードに目をつける。今、この状況において自由に動ける彼らに、チン・シー海賊団の本船へ行ってもらい、別働隊に起きたことと現状を報告して貰おうというのだ。
シンとツクヨは彼らの申し出を受ける代わりに、ツバキの治療を頼んだ。勿論、ツバキを一人にしておくのもどうかと思ったが、ミアとの合流とこれから此処よりも危険な戦場へ向かうのに、負傷者を連れていてはクトゥルプス戦の時と同様、弱点になりかねない。
ましてや、ハオランが向かって行ったということは、ロロネー海賊団の総力が集中する場所なのかもしれない。つまり、いよいよロロネーは全力を持ってして、チン・シー海賊団を滅ぼしに来ている可能性が高いということだ。
二人は到着早々、直ぐに準備を済ませると必要な物資を受け取りボードに乗り込む。ハオランは既にもう片翼の、ミアのいる戦場へと向かっている。後を追うようにして向かうシン達は、手遅れになる前に辿り着くことができるのだろうか。
しかし、どうやらツクヨには考えがあるようだった。ただでさえ一人用で狭いボードの上で体勢を低くし、海面に何かをしているようだった。
「ツ・・・ツクヨ?何をしているんだ?」
ボードの操縦で後ろを振り返れないシンの服を引っ張りながら、手にした剣を水中に刺しじっとしている。
「大丈夫、私に考えがあるから・・・」
そう言うとツクヨはゆっくりと目を閉じる。するとボードは加速し、海面をまるで川などで石を投げて弾ませる水切りのように進み、徐々に二人を乗せたボードは宙を浮き始める。
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