306 / 1,646
本当の目的
しおりを挟む
船同士の衝突により散乱していた、ロロネー海賊団の海賊船が規則性もなく消えて行く。だがそれは、彼の道を明るく照らす為に開かれるのではない。全くの逆。彼の進む道を閉ざし、退路を断ち、海面に浮かぶ足場が失われ、行動できる範囲が狭まり始める。
「船がッ・・・足場が・・・。まずい、ここから離れなければッ!」
足早に瓦礫を走り抜け、外側へ外側へと向かうハオラン。しかし、それを邪魔するかのように湧き出るモンスター達。流石の彼でも、足場の悪い中この数の相手をするのは難儀だった。
「邪魔を・・・するなッ!」
その細い腕に逞しく巡らされた血管を浮き出させ放つ拳は大気を震わせ、太刀のように鋭く研ぎ澄まされた蹴りは、閃光のように空間を裂く。大きく片足を上げた彼は、船の亡骸へその力を流動させる。
ハオランを中心に一気に広がる衝撃は、瞬く間に広範囲へ広がり、まるで火山の噴火を放出とさせるように、下から船の瓦礫や海水、そしてモンスター共々凄まじい勢いで上空へと跳ね上げた。
見渡す限りに無重力空間のような光景が広がる。彼の行く道を妨げていたものが宙を彷徨っている何とも不思議な光景が辺りに広がる。亡霊達もその例外ではない。足元から吹き抜ける衝撃に吹き飛ばされ、上空に巻き上げられると、遅れて飛ばされて来る船の残骸や、スケルトンの身体を構成していた骨が、投擲された武器のように亡霊達の身体をすり抜けて行く。
止むことなく身体を貫通され、姿を表せなくなってくなっているようだった。そして上昇が終わった後にやって来るものは、飛ばされたもの達の急降下。ハオランの起こした衝撃は、海面を僅かな間広範囲に渡って、クレーターのように凹ませ、周囲に巻き上げた海水で大雨を降らせた。
素早い身のこなしで、宙に舞う瓦礫を足場に窮地を脱しようとする。しかし、彼の起こした衝撃の範囲がには、依然かわらぬ光景が広がっており、状況は変わらなかった。それどころか、船の残骸が蒸気のような煙となったことで濃霧がより一層こくなってしまい、先程までよりも奥が見えなくなっていた。
「・・・一体どこまで続くんだ・・・」
すると再び、何処からともなくロロネーの声が聞こえて来る。だが姿はなく、霧に反響してしまっているせいか、その方角も分からない。
「無駄無駄ぁ!どんなに暴れようと、ここから逃れることは出来ない。・・・諦めるんだな」
その声に耳を傾けるため、一旦濃霧の向こうからやって来る海賊船に乗り込んだハオランは、ロロネーに声を掛けその居所を探ろうと試みる。
「コソコソしてないで出てきたらどうだ?・・・それとも、今更になって命が惜しくなったのか?貴様じゃ俺は倒せんぞ」
ハオランの口にした言葉に、一瞬間を置いて答えるロロネーの声は、まるで笑っているように震えていた。それは彼とロロネーの間で、この戦いにおける“結果“が違っていたからだった。
彼は元より、ここでロロネーを主人に接触させることなく始末することが目的だった。しかし、この男は違うのだ。何もハオランを倒せるなどとは初めから思っていない。チン・シー攻略の為、本隊から引き離し、危険を遠退けるといった理由で戦っている訳でもない。
では一体、ロロネーは何故ハオランと対峙しているのか。それは、この男らしく嫌らしくも下賤な理由があってのことだった。
「俺はなぁハオラン、いつでも強ぇ人材を求めてる。あの女を俺の物にしてぇのも、あの力を利用する為だ。そして・・・お前の体術は世界にも通用する程、恐ろしく強力だ。それをこんなところで腐らせておくには、勿体ねぇというもんだろうよ」
噂によると、ロロネー海賊団の構成員は倒した相手の仲間を吸収して大きくなっていったのだという。無論、無抵抗でこの男の配下になる者は少なかった。では、どうやってここまで大きな海賊団になっていったのか。
それはこの男の大船団を見れば、自ずと答えが出てくるものだった。
「船がッ・・・足場が・・・。まずい、ここから離れなければッ!」
足早に瓦礫を走り抜け、外側へ外側へと向かうハオラン。しかし、それを邪魔するかのように湧き出るモンスター達。流石の彼でも、足場の悪い中この数の相手をするのは難儀だった。
「邪魔を・・・するなッ!」
その細い腕に逞しく巡らされた血管を浮き出させ放つ拳は大気を震わせ、太刀のように鋭く研ぎ澄まされた蹴りは、閃光のように空間を裂く。大きく片足を上げた彼は、船の亡骸へその力を流動させる。
ハオランを中心に一気に広がる衝撃は、瞬く間に広範囲へ広がり、まるで火山の噴火を放出とさせるように、下から船の瓦礫や海水、そしてモンスター共々凄まじい勢いで上空へと跳ね上げた。
見渡す限りに無重力空間のような光景が広がる。彼の行く道を妨げていたものが宙を彷徨っている何とも不思議な光景が辺りに広がる。亡霊達もその例外ではない。足元から吹き抜ける衝撃に吹き飛ばされ、上空に巻き上げられると、遅れて飛ばされて来る船の残骸や、スケルトンの身体を構成していた骨が、投擲された武器のように亡霊達の身体をすり抜けて行く。
止むことなく身体を貫通され、姿を表せなくなってくなっているようだった。そして上昇が終わった後にやって来るものは、飛ばされたもの達の急降下。ハオランの起こした衝撃は、海面を僅かな間広範囲に渡って、クレーターのように凹ませ、周囲に巻き上げた海水で大雨を降らせた。
素早い身のこなしで、宙に舞う瓦礫を足場に窮地を脱しようとする。しかし、彼の起こした衝撃の範囲がには、依然かわらぬ光景が広がっており、状況は変わらなかった。それどころか、船の残骸が蒸気のような煙となったことで濃霧がより一層こくなってしまい、先程までよりも奥が見えなくなっていた。
「・・・一体どこまで続くんだ・・・」
すると再び、何処からともなくロロネーの声が聞こえて来る。だが姿はなく、霧に反響してしまっているせいか、その方角も分からない。
「無駄無駄ぁ!どんなに暴れようと、ここから逃れることは出来ない。・・・諦めるんだな」
その声に耳を傾けるため、一旦濃霧の向こうからやって来る海賊船に乗り込んだハオランは、ロロネーに声を掛けその居所を探ろうと試みる。
「コソコソしてないで出てきたらどうだ?・・・それとも、今更になって命が惜しくなったのか?貴様じゃ俺は倒せんぞ」
ハオランの口にした言葉に、一瞬間を置いて答えるロロネーの声は、まるで笑っているように震えていた。それは彼とロロネーの間で、この戦いにおける“結果“が違っていたからだった。
彼は元より、ここでロロネーを主人に接触させることなく始末することが目的だった。しかし、この男は違うのだ。何もハオランを倒せるなどとは初めから思っていない。チン・シー攻略の為、本隊から引き離し、危険を遠退けるといった理由で戦っている訳でもない。
では一体、ロロネーは何故ハオランと対峙しているのか。それは、この男らしく嫌らしくも下賤な理由があってのことだった。
「俺はなぁハオラン、いつでも強ぇ人材を求めてる。あの女を俺の物にしてぇのも、あの力を利用する為だ。そして・・・お前の体術は世界にも通用する程、恐ろしく強力だ。それをこんなところで腐らせておくには、勿体ねぇというもんだろうよ」
噂によると、ロロネー海賊団の構成員は倒した相手の仲間を吸収して大きくなっていったのだという。無論、無抵抗でこの男の配下になる者は少なかった。では、どうやってここまで大きな海賊団になっていったのか。
それはこの男の大船団を見れば、自ずと答えが出てくるものだった。
0
お気に入りに追加
297
あなたにおすすめの小説
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
鑑定能力で恩を返す
KBT
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。
彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。
そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。
この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。
帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。
そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。
そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。
虐げられた武闘派伯爵令嬢は辺境伯と憧れのスローライフ目指して魔獣狩りに勤しみます!~実家から追放されましたが、今最高に幸せです!~
雲井咲穂(くもいさほ)
ファンタジー
「戦う」伯爵令嬢はお好きですか――?
私は、継母が作った借金のせいで、売られる形でこれから辺境伯に嫁ぐことになったそうです。
「お前の居場所なんてない」と継母に実家を追放された伯爵令嬢コーデリア。
多額の借金の肩代わりをしてくれた「魔獣」と怖れられている辺境伯カイルに身売り同然で嫁ぐことに。実母の死、実父の病によって継母と義妹に虐げられて育った彼女には、とある秘密があった。
そんなコーデリアに待ち受けていたのは、聖女に見捨てられた荒廃した領地と魔獣の脅威、そして最凶と恐れられる夫との悲惨な生活――、ではなく。
「今日もひと狩り行こうぜ」的なノリで親しく話しかけてくる朗らかな領民と、彼らに慕われるたくましくも心優しい「旦那様」で??
――義母が放置してくれたおかげで伸び伸びこっそりひっそり、自分で剣と魔法の腕を磨いていてよかったです。
騎士団も唸る腕前を見せる「武闘派」伯爵元令嬢は、辺境伯夫人として、夫婦二人で仲良く楽しく魔獣を狩りながら領地開拓!今日も楽しく脅威を退けながら、スローライフをまったり楽しみま…す?
ーーーーーーーーーーーー
1/13 HOT 42位 ありがとうございました!
なろう370000PV感謝! 遍歴の雇われ勇者は日々旅にして旅を住処とす
大森天呑
ファンタジー
〜 報酬は未定・リスクは不明? のんきな雇われ勇者は旅の日々を送る 〜
魔獣や魔物を討伐する専門のハンター『破邪』として遍歴修行の旅を続けていた青年、ライノ・クライスは、ある日ふたりの大精霊と出会った。
大精霊は、この世界を支える力の源泉であり、止まること無く世界を巡り続けている『魔力の奔流』が徐々に乱れつつあることを彼に教え、同時に、そのバランスを補正すべく『勇者』の役割を請け負うよう求める。
それも破邪の役目の延長と考え、気軽に『勇者の仕事』を引き受けたライノは、エルフの少女として顕現した大精霊の一人と共に魔力の乱れの原因を辿って旅を続けていくうちに、そこに思いも寄らぬ背景が潜んでいることに気づく・・・
ひょんなことから勇者になった青年の、ちょっと冒険っぽい旅の日々。
< 小説家になろう・カクヨム・エブリスタでも同名義、同タイトルで連載中です >
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる