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力の酷使
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ロロネー攻略の糸口を見つけたハオランは、それまで以上に細心の注意を払い、手数を増やしていく。彼の武術を避けきれなくなったロロネーは、手や足を使い彼の攻撃を捌くようになった。
表情は依然笑みを浮かべたままだが、口数は少なくなり動きは精錬され始めている。だが体術においては、彼の方が一枚も二枚も上手。当然、その動きについて来られる筈もなく、ロロネーの身体を擦っていく。
「ありゃりゃぁ・・・。やっぱりこのままじゃ抑えられる筈もねぇか・・・」
ハオランの執拗な細かい攻撃を嫌って、一度後方へ飛び退き距離を空けるロロネー。しかし、彼が手繰り寄せたチャンスを見過ごす筈もなく、今度は同じ轍を踏まぬよう男の着地に合わせ、遠距離から拳を振るい槍のように鋭い衝撃波を放つ。
「おっ・・・!」
すると、腹部に手を当てた後、掌を確認するロロネー。その手にはべっとりと男の身体から流れ出た赤い液体でいっぱいになっていた。ハオランの放った一撃が男の腹部を貫き、拳サイズ程の風穴を空けていた。
ロロネー本人はそれ程驚いた様子はなかったが、それ以上にハオランの方が彼よりも自分の攻撃が命中した事に驚いていた。てっきりまた、身体が蒸気となりダメージを与えられないと思い込んでいたからだ。
ならば何故、彼の攻撃が突然通り出したのか。きっとロロネーの蒸気は、常に彼の身体を守ってはくれないのだろう。その攻撃が通る条件さえ掴めれば、この男を攻略することができるのかもしれない。
そしてそれは、この海域一帯を覆う濃霧を晴らすことに繋がる。傷口から滴る血を眺め、ロロネーが呆けている内にと、ハオランは畳み掛けるように追撃を行う。
未だ動かず、ハオランを無視して自らの身体を見たままのロロネーに、再度素早く鋭い衝撃波を生む正拳突きを放つ。先程の咄嗟に放った一撃とは違い、十分な力を溜める時間があった今度の一撃は、比べ物にならない程の威力を見せた。
しかし今度の一撃はロロネーの身体を擦り抜け、そこからは煙のような蒸気が血の代わりに吹き出した。より精度と威力、そしてスピードまでもが上回っている筈の攻撃の方が、外れてしまった。
「ッ・・・!?」
空かさずロロネーの懐に飛び込んだハオランは、拳と蹴りの連撃を数回叩き込むが、二発目の衝撃波で我に返ったロロネーは、素早いスウェーとステップでこれを躱し、五月蝿い虫を払うかのように初めて、反撃らしい反撃を行ってきた。
今までにないパターンの動きに、思わず距離を取るハオラン。すると、男は小声で何か不思議そうな表情で言葉を漏らす。
「・・・酷使させ過ぎちまったか・・・?」
もうこの男の言葉に耳を傾けてはいけない。分からないからこそ、入ってくる情報が彼の思考を惑わせる。ロロネーの身体の事、海賊の亡霊の事、そして濃霧の事。真相を確かめるには、自分の目で確かめるしかない。
空いた穴が塞がり、ロロネーの戯けた表情が少しだけ引き締まったように思えた。すると、今度はロロネーの方からハオランとの距離を詰めて来る。そして力一杯握りしめた拳を、脇に抱え前方へ大きく突き出す。
ハオランのコンパクトな攻撃に比べ、予備動作のあるロロネーの攻撃は、武術を心得た者達であれば容易く避けられる程度のものではあるのだが、自ら攻撃してくるロロネーを探ろうと、ギリギリまで男の拳を目で追っていた。
拳が突き出されると、向かってくる段階でその異変は起きた。何とロロネーの拳は蜃気楼のように揺らめいていたのだ。それに気付いたハオランは、紙一重で避けようと思っていたが、急遽サイドステップを踏んで少し大げさに避けた。
「・・・?」
彼が自分の拳に警戒したのを見て、ロロネーは笑う。この男も、通常の攻撃方法ではハオランに敵わぬことは理解していた。だからこそ、使役するモンスターについては語ったものの、自らのことについてはお茶を濁している。
「いい判断だが・・・それじゃぁ俺ぁ倒せねぇぜ?」
ハオランの顔を覗き込み、舌を垂れ流し左右に振って挑発する。憎たらしいその顔面に拳を叩き込もうと、下から顎を跳ね上げるアッパーを放つ。しかし、読んでいたとばかりにタイミングを合わせ、上半身を反らして躱すロロネー。
スウェーで避けたという事は、下半身がある程度固定される。ハオランは右のアッパーが空を切る一打に終わると、その勢いを利用し回し蹴りで前方を薙ぎ払う。ロロネーの脇腹へと迫る蹴り。
本来であれば、このまま男を蹴り飛ばしているところだが、ロロネーは避ける素振りも無く、蹴りは男の身体を擦り抜けていく。そして彼の蹴りの後を追うように煙が付いていく。
「・・・迂闊だったな、二枚目ッ!」
すると、煙は熱を帯び始め水蒸気爆発を引き起こした。
表情は依然笑みを浮かべたままだが、口数は少なくなり動きは精錬され始めている。だが体術においては、彼の方が一枚も二枚も上手。当然、その動きについて来られる筈もなく、ロロネーの身体を擦っていく。
「ありゃりゃぁ・・・。やっぱりこのままじゃ抑えられる筈もねぇか・・・」
ハオランの執拗な細かい攻撃を嫌って、一度後方へ飛び退き距離を空けるロロネー。しかし、彼が手繰り寄せたチャンスを見過ごす筈もなく、今度は同じ轍を踏まぬよう男の着地に合わせ、遠距離から拳を振るい槍のように鋭い衝撃波を放つ。
「おっ・・・!」
すると、腹部に手を当てた後、掌を確認するロロネー。その手にはべっとりと男の身体から流れ出た赤い液体でいっぱいになっていた。ハオランの放った一撃が男の腹部を貫き、拳サイズ程の風穴を空けていた。
ロロネー本人はそれ程驚いた様子はなかったが、それ以上にハオランの方が彼よりも自分の攻撃が命中した事に驚いていた。てっきりまた、身体が蒸気となりダメージを与えられないと思い込んでいたからだ。
ならば何故、彼の攻撃が突然通り出したのか。きっとロロネーの蒸気は、常に彼の身体を守ってはくれないのだろう。その攻撃が通る条件さえ掴めれば、この男を攻略することができるのかもしれない。
そしてそれは、この海域一帯を覆う濃霧を晴らすことに繋がる。傷口から滴る血を眺め、ロロネーが呆けている内にと、ハオランは畳み掛けるように追撃を行う。
未だ動かず、ハオランを無視して自らの身体を見たままのロロネーに、再度素早く鋭い衝撃波を生む正拳突きを放つ。先程の咄嗟に放った一撃とは違い、十分な力を溜める時間があった今度の一撃は、比べ物にならない程の威力を見せた。
しかし今度の一撃はロロネーの身体を擦り抜け、そこからは煙のような蒸気が血の代わりに吹き出した。より精度と威力、そしてスピードまでもが上回っている筈の攻撃の方が、外れてしまった。
「ッ・・・!?」
空かさずロロネーの懐に飛び込んだハオランは、拳と蹴りの連撃を数回叩き込むが、二発目の衝撃波で我に返ったロロネーは、素早いスウェーとステップでこれを躱し、五月蝿い虫を払うかのように初めて、反撃らしい反撃を行ってきた。
今までにないパターンの動きに、思わず距離を取るハオラン。すると、男は小声で何か不思議そうな表情で言葉を漏らす。
「・・・酷使させ過ぎちまったか・・・?」
もうこの男の言葉に耳を傾けてはいけない。分からないからこそ、入ってくる情報が彼の思考を惑わせる。ロロネーの身体の事、海賊の亡霊の事、そして濃霧の事。真相を確かめるには、自分の目で確かめるしかない。
空いた穴が塞がり、ロロネーの戯けた表情が少しだけ引き締まったように思えた。すると、今度はロロネーの方からハオランとの距離を詰めて来る。そして力一杯握りしめた拳を、脇に抱え前方へ大きく突き出す。
ハオランのコンパクトな攻撃に比べ、予備動作のあるロロネーの攻撃は、武術を心得た者達であれば容易く避けられる程度のものではあるのだが、自ら攻撃してくるロロネーを探ろうと、ギリギリまで男の拳を目で追っていた。
拳が突き出されると、向かってくる段階でその異変は起きた。何とロロネーの拳は蜃気楼のように揺らめいていたのだ。それに気付いたハオランは、紙一重で避けようと思っていたが、急遽サイドステップを踏んで少し大げさに避けた。
「・・・?」
彼が自分の拳に警戒したのを見て、ロロネーは笑う。この男も、通常の攻撃方法ではハオランに敵わぬことは理解していた。だからこそ、使役するモンスターについては語ったものの、自らのことについてはお茶を濁している。
「いい判断だが・・・それじゃぁ俺ぁ倒せねぇぜ?」
ハオランの顔を覗き込み、舌を垂れ流し左右に振って挑発する。憎たらしいその顔面に拳を叩き込もうと、下から顎を跳ね上げるアッパーを放つ。しかし、読んでいたとばかりにタイミングを合わせ、上半身を反らして躱すロロネー。
スウェーで避けたという事は、下半身がある程度固定される。ハオランは右のアッパーが空を切る一打に終わると、その勢いを利用し回し蹴りで前方を薙ぎ払う。ロロネーの脇腹へと迫る蹴り。
本来であれば、このまま男を蹴り飛ばしているところだが、ロロネーは避ける素振りも無く、蹴りは男の身体を擦り抜けていく。そして彼の蹴りの後を追うように煙が付いていく。
「・・・迂闊だったな、二枚目ッ!」
すると、煙は熱を帯び始め水蒸気爆発を引き起こした。
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