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リンクする武神の片鱗
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シュユーの話から、別の海賊船があったという言葉はなかった。襲撃を仕掛けて来た海賊船がボロボロであったことから、別の増援が来たのなら直ぐにわかる筈。それを確かめる意味でも、ミアは彼に別部隊の可能性を伺った。
「それだけの数が一海賊団のものであるなら、ロロネー海賊団というものはもっと強大な組織である筈では・・・?別の増援である可能性はないのか?」
しかし、流石にそんなことを見落とすほど冷静さは欠いていないと、シュユーは首を横に振る。霧の中で彼らを襲撃したのは全て一律し、ロロネーの海賊船で間違いないようだ。
「そんな馬鹿な・・・。あれだけ目立つ海賊船だ、レーススタート時にそれだけの数が来ていれば注目を集めない筈はないだろ?何処にそれだけの軍を隠していたんだ・・・」
「えぇ・・・。ですから我々も不意を突かれたのです。ロロネーの襲撃は事前に知り得た情報です。そしてその戦力も、到底我々の数に及ぶものではない筈でした。何かカラクリがあるようにしか思えません・・・」
シュユーの言う通り、何かしらのスキルや魔法などである可能性の方が強くなる。数を多く見せるスキルと言えば、幻術や忍術、彼らの使う妖術など、その手段は様々だ。
聖都ユスティーチを牛耳っていたシュトラールもまた、陰陽師のスキル式神によって無数の鎧を操り、日常生活に溶け込ませるといった芸当をしていた程だ。相当な魔力や準備があれば、相応の数を従えることも出来るのだろう。
「それなら・・・ロロネーのクラスは魔法職や術系統ということか?」
ミアの問いにシュユーは表情を曇らせ、暫く口を開くのを躊躇っていた。その反応から大体の想像がつく。
彼らの知るロロネーという男は、魔法や術を使うような人物ではないということだろう。そしてグラン・ヴァーグの店先で見た彼の言動や粗暴からも、器用な戦い方をするような者とは思えない。
「わかりません・・・。我々だけでは、あの男のカラクリを看破するには至らなかった・・・」
悔しそうに俯くシュユーであったが、直ぐにその表情は希望あるものへと変わり、それを自らの誇りのようにミアへ話し始めた。
「ですが、ハオランが戻ったのなら話は別です。どんな魔法や術であろうと関係ない・・・。彼の力があれば、戦場の盤面を引っくり返すことなど造作も無い。今からそれを、“彼ら”が証明して見せますよ」
何か策があるのか。その自信に溢れた表情をシュユーが浮かべた時、まるでチン・シー海賊団の逆転劇の前説が終わるのを待っていたかのように、船内へ再び号令が下される。
「準備は整った!今こそその武術を身に宿し、眼前に広がる悉くの障害を打ち払えッ!!」
再び高貴な女性の声が聞こえ始めたその時、複数の巨大な大砲でも撃ち放ったかのような衝撃が、ミア達の乗る船に響き渡る。船体は轟音の数と同じだけ大きく揺れ、中にいた彼らは倒れまいとバランスを取るため、身体を大きく揺さぶられた。
「なッ・・・何事だッ!?」
「外へ出てみましょう。直ぐに分かりますよ」
それまでロロネーの能力に悩んでいたのが嘘のように、態度がガラリと変わったシュユーが甲板へミアとツクヨを案内する。ツバキの治療を彼らに任せ、二人はシュユーの自信の訳を確かめに行く。
相も変わらず濃霧が立ち込める外へやって来ると、周りにあるボロボロの海賊船から、大砲でも撃ち込まれたかのような轟音が至る所から聞こえて来る。しかし、周囲に火薬の匂いなどしないことから、その音の正体が大砲や銃火器でないのは確か。なら、一体この音を響かせるものとは何なのか。
何もいわずシュユーが二人へ双眼鏡を手渡す。それで周囲を覗いてみろとでも言うのだろうか。二人は目にレンズを当て、音の鳴る方を覗いてみる。するとそこには、凡そ常識では考えられないような光景が広がっていた。
何と、ロロネーの海賊船を大砲のように轟音を響かせて破壊していたのは、ミアに刃を向けていたチン・シー海賊団の船員達だったのだ。それも、その手に武器も持たず己の拳のみで船体に風穴を空け、敵を一撃の元に葬り去り吹き飛ばしていた。
「お・・・おいおぃ・・・アイツら、あんなに強かったのか・・・?」
「凄い・・・まさに男のロマン!武術も鍛えればここまで強くなるのか!」
見ているだけでも豪快な戦闘に、気持ちが昂ったツクヨが目を輝かせる。だが、ミアは少し疑問に思えた。自分がこの船に乗り込み、刃を向けられた時はこれ程強い者達には、到底見えなかったのだ。
仮にもミアやツクヨ達も、自分達より格上の相手と戦って来たのだ。ある程度の戦力差は、対面すればその肌で感じるというもの。しかし、ミアは彼らにそれを感じなかった。
それが今目の前であれ程の武術を披露しているのが、不思議でならない。あの力は一体何処に隠していたのか。
「いえ、本来の彼らにあれ程の戦闘力はありません。あれはハオランの力の一部を体現しているのです」
「ハオランの力を・・・体現?何故そんな事が・・・!まさか・・・」
ミアはそこである事を思い出していた。船内に流されていた放送で、恐らくチン・シーのものと思われる声が言っていた“リンク”という言葉。あの時は全く意味の分からない言葉だったが、シュユーの言っていた“ハオランの力を体現”という言葉と繋がり、もしやとシュユーの方を見る。
「ええ、これがあの方の・・・我らが船長の“能力”です」
「それだけの数が一海賊団のものであるなら、ロロネー海賊団というものはもっと強大な組織である筈では・・・?別の増援である可能性はないのか?」
しかし、流石にそんなことを見落とすほど冷静さは欠いていないと、シュユーは首を横に振る。霧の中で彼らを襲撃したのは全て一律し、ロロネーの海賊船で間違いないようだ。
「そんな馬鹿な・・・。あれだけ目立つ海賊船だ、レーススタート時にそれだけの数が来ていれば注目を集めない筈はないだろ?何処にそれだけの軍を隠していたんだ・・・」
「えぇ・・・。ですから我々も不意を突かれたのです。ロロネーの襲撃は事前に知り得た情報です。そしてその戦力も、到底我々の数に及ぶものではない筈でした。何かカラクリがあるようにしか思えません・・・」
シュユーの言う通り、何かしらのスキルや魔法などである可能性の方が強くなる。数を多く見せるスキルと言えば、幻術や忍術、彼らの使う妖術など、その手段は様々だ。
聖都ユスティーチを牛耳っていたシュトラールもまた、陰陽師のスキル式神によって無数の鎧を操り、日常生活に溶け込ませるといった芸当をしていた程だ。相当な魔力や準備があれば、相応の数を従えることも出来るのだろう。
「それなら・・・ロロネーのクラスは魔法職や術系統ということか?」
ミアの問いにシュユーは表情を曇らせ、暫く口を開くのを躊躇っていた。その反応から大体の想像がつく。
彼らの知るロロネーという男は、魔法や術を使うような人物ではないということだろう。そしてグラン・ヴァーグの店先で見た彼の言動や粗暴からも、器用な戦い方をするような者とは思えない。
「わかりません・・・。我々だけでは、あの男のカラクリを看破するには至らなかった・・・」
悔しそうに俯くシュユーであったが、直ぐにその表情は希望あるものへと変わり、それを自らの誇りのようにミアへ話し始めた。
「ですが、ハオランが戻ったのなら話は別です。どんな魔法や術であろうと関係ない・・・。彼の力があれば、戦場の盤面を引っくり返すことなど造作も無い。今からそれを、“彼ら”が証明して見せますよ」
何か策があるのか。その自信に溢れた表情をシュユーが浮かべた時、まるでチン・シー海賊団の逆転劇の前説が終わるのを待っていたかのように、船内へ再び号令が下される。
「準備は整った!今こそその武術を身に宿し、眼前に広がる悉くの障害を打ち払えッ!!」
再び高貴な女性の声が聞こえ始めたその時、複数の巨大な大砲でも撃ち放ったかのような衝撃が、ミア達の乗る船に響き渡る。船体は轟音の数と同じだけ大きく揺れ、中にいた彼らは倒れまいとバランスを取るため、身体を大きく揺さぶられた。
「なッ・・・何事だッ!?」
「外へ出てみましょう。直ぐに分かりますよ」
それまでロロネーの能力に悩んでいたのが嘘のように、態度がガラリと変わったシュユーが甲板へミアとツクヨを案内する。ツバキの治療を彼らに任せ、二人はシュユーの自信の訳を確かめに行く。
相も変わらず濃霧が立ち込める外へやって来ると、周りにあるボロボロの海賊船から、大砲でも撃ち込まれたかのような轟音が至る所から聞こえて来る。しかし、周囲に火薬の匂いなどしないことから、その音の正体が大砲や銃火器でないのは確か。なら、一体この音を響かせるものとは何なのか。
何もいわずシュユーが二人へ双眼鏡を手渡す。それで周囲を覗いてみろとでも言うのだろうか。二人は目にレンズを当て、音の鳴る方を覗いてみる。するとそこには、凡そ常識では考えられないような光景が広がっていた。
何と、ロロネーの海賊船を大砲のように轟音を響かせて破壊していたのは、ミアに刃を向けていたチン・シー海賊団の船員達だったのだ。それも、その手に武器も持たず己の拳のみで船体に風穴を空け、敵を一撃の元に葬り去り吹き飛ばしていた。
「お・・・おいおぃ・・・アイツら、あんなに強かったのか・・・?」
「凄い・・・まさに男のロマン!武術も鍛えればここまで強くなるのか!」
見ているだけでも豪快な戦闘に、気持ちが昂ったツクヨが目を輝かせる。だが、ミアは少し疑問に思えた。自分がこの船に乗り込み、刃を向けられた時はこれ程強い者達には、到底見えなかったのだ。
仮にもミアやツクヨ達も、自分達より格上の相手と戦って来たのだ。ある程度の戦力差は、対面すればその肌で感じるというもの。しかし、ミアは彼らにそれを感じなかった。
それが今目の前であれ程の武術を披露しているのが、不思議でならない。あの力は一体何処に隠していたのか。
「いえ、本来の彼らにあれ程の戦闘力はありません。あれはハオランの力の一部を体現しているのです」
「ハオランの力を・・・体現?何故そんな事が・・・!まさか・・・」
ミアはそこである事を思い出していた。船内に流されていた放送で、恐らくチン・シーのものと思われる声が言っていた“リンク”という言葉。あの時は全く意味の分からない言葉だったが、シュユーの言っていた“ハオランの力を体現”という言葉と繋がり、もしやとシュユーの方を見る。
「ええ、これがあの方の・・・我らが船長の“能力”です」
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