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死後のスキル
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ロッシュの残党狩りへは影響していなかったが、グレイスを中心としたその周辺では、船長の突然の重症に、気が動転したのかパニックを起こしていた。直ぐにシルヴィが彼らに指示を出し、ロッシュの身体の拘束を命じ、その間回復班がグレイスの身体から折れた刃物を引き抜きながら治療を行う。
傷の箇所から、即死や命に関わる重大な損傷ではなかったものの、かなりの深傷になってしまったことに変わりはない。他の船員達の手当も必要だったが、グレイスの安全確保が最優先、手の空いている者から重傷者の手当てを始め、その場の慌ただしさは一旦収束した。
「そいつの身体を縛り上げておけッ!無闇に切断なんかするなよ?何が起こるか分からねぇからねぇ・・・動けなくさせておくだけで良い」
シルヴィの判断は的確だった。首から上を無くしても尚動くというのならば、他のどの部位を切断しても、独立し動き出さないとも限らない。ここは一旦動けなくし、動向を伺ってから処理の方法を考えた方が無難だろう。
「姉さんの容態はどうだ?」
「シルヴィさん・・・えぇもう大丈夫ですよ、危険な状態は脱しました。貴方が直ぐに刃を両断してくれたおかげですよ。動かされていたらどうなっていたか・・・」
「そいつぁ良い報告だ、ありがとよ。手が空いたらアイツの治療もしてやってくれ」
彼女はシンの方を指差し、回復班を向かわせた。まだ完全には動けるようになっていないシンに肩を貸してくれ、安全な場所まで移動させてくれた回復班の船員に、ロッシュから受けた肉体の疲労を取り除いてもらうことで、再び彼は自力で動けるくらいに回復した。
治療をしてくれた船員に感謝を伝え、シンはロッシュの身体を見張るシルヴィの元へと向かう。こちらに気付いたシルヴィが手を挙げて合図を出している。彼らが捕らえたロッシュの身体は無数のロープで縛り上げられており、一切の身動きを封じられていた。それでも尚、動き出そうとロッシュの身体はもがいている。
ロッシュ軍の掃討はそのほとんどを完了し、降伏してきた者達を縛り一時的に捕虜とした。財宝や物質、レースのことで知り得ている出来る限りの情報を聞き出していく。その中でロッシュの事にも触れていったが、どうやら彼らもロッシュのミラーニューロンによる操縦のことについては何も知らされていなかったようだ。
「お前のおかげでロッシュの野郎に勝利する事が出来た・・・。俺からも感謝するよ、ありがとう」
「いや、俺は何も・・・。結局ロッシュを倒したのはアンタや、グレイスの活躍があってこそだ。一人でロッシュを如何にかしてやろうなんて、やはり上手くいくものではなかった・・・」
彼女は、自分も相手の主戦力を一人も倒すことが出来なかったと悔やみながら、シンを励ました。このフォリーキャナルレースにおいて、何故少数の部隊が上位に入ることが出来ないのか、シンは身を持って理解した。
ロッシュやその仲間達を倒すだけでこれだけの消耗とダメージがあった上で、更に残りの残党とも戦わなければならないのだ。ロッシュの毒に動きを封じられた時点で、本来であれば死んでいてもおかしくなかった。
これは一重に、グレイス達の奮闘とロッシュの気まぐれがあってこその結果だ。シルヴィが彼に感謝するよりも、彼はシルヴィやグレイス海賊団の人達への感謝を忘れないだろう。
「それと、丁度お前が来てくれたおかげで呼ぶ手間が省けたぜ。コイツと戦ってる間、身体が妙な感覚に陥った。なんつうか、その・・・自分の身体じゃねぇみてぇに思い通りに動かなかった・・・。お前にはそのカラクリが分かってたんだろ?きっと今のコイツも、それで動いてるんじゃねぇか?」
シルヴィは、首のないロッシュの身体は彼のミラーニューロンによって動いているのではないかと考察した。しかし、ロッシュはグレイスとの戦闘の最後、そのミラーニューロンの弾切れによって敗北した。故に残弾による行動とは考えられない。
あるとするならば、ロッシュ自身の身体にあるミラーニューロンを発動させるくらいのものだが、そもそも死んだ後にスキルの発動など聞いた事がない。それこそアンデッドや死霊系に関するクラスやモンスターであれば何かそういったスキルがあるのかもしれないが。
「どうだろうか・・・?死んでも尚、スキルを使うことなど出来るものなのかどうか・・・。少なくとも俺は聞いた事がない。取り敢えずロッシュの身体を調べてみる」
シンはロッシュの身体に恐る恐る近づくと、彼との戦闘で見た光りを探し始めた。
傷の箇所から、即死や命に関わる重大な損傷ではなかったものの、かなりの深傷になってしまったことに変わりはない。他の船員達の手当も必要だったが、グレイスの安全確保が最優先、手の空いている者から重傷者の手当てを始め、その場の慌ただしさは一旦収束した。
「そいつの身体を縛り上げておけッ!無闇に切断なんかするなよ?何が起こるか分からねぇからねぇ・・・動けなくさせておくだけで良い」
シルヴィの判断は的確だった。首から上を無くしても尚動くというのならば、他のどの部位を切断しても、独立し動き出さないとも限らない。ここは一旦動けなくし、動向を伺ってから処理の方法を考えた方が無難だろう。
「姉さんの容態はどうだ?」
「シルヴィさん・・・えぇもう大丈夫ですよ、危険な状態は脱しました。貴方が直ぐに刃を両断してくれたおかげですよ。動かされていたらどうなっていたか・・・」
「そいつぁ良い報告だ、ありがとよ。手が空いたらアイツの治療もしてやってくれ」
彼女はシンの方を指差し、回復班を向かわせた。まだ完全には動けるようになっていないシンに肩を貸してくれ、安全な場所まで移動させてくれた回復班の船員に、ロッシュから受けた肉体の疲労を取り除いてもらうことで、再び彼は自力で動けるくらいに回復した。
治療をしてくれた船員に感謝を伝え、シンはロッシュの身体を見張るシルヴィの元へと向かう。こちらに気付いたシルヴィが手を挙げて合図を出している。彼らが捕らえたロッシュの身体は無数のロープで縛り上げられており、一切の身動きを封じられていた。それでも尚、動き出そうとロッシュの身体はもがいている。
ロッシュ軍の掃討はそのほとんどを完了し、降伏してきた者達を縛り一時的に捕虜とした。財宝や物質、レースのことで知り得ている出来る限りの情報を聞き出していく。その中でロッシュの事にも触れていったが、どうやら彼らもロッシュのミラーニューロンによる操縦のことについては何も知らされていなかったようだ。
「お前のおかげでロッシュの野郎に勝利する事が出来た・・・。俺からも感謝するよ、ありがとう」
「いや、俺は何も・・・。結局ロッシュを倒したのはアンタや、グレイスの活躍があってこそだ。一人でロッシュを如何にかしてやろうなんて、やはり上手くいくものではなかった・・・」
彼女は、自分も相手の主戦力を一人も倒すことが出来なかったと悔やみながら、シンを励ました。このフォリーキャナルレースにおいて、何故少数の部隊が上位に入ることが出来ないのか、シンは身を持って理解した。
ロッシュやその仲間達を倒すだけでこれだけの消耗とダメージがあった上で、更に残りの残党とも戦わなければならないのだ。ロッシュの毒に動きを封じられた時点で、本来であれば死んでいてもおかしくなかった。
これは一重に、グレイス達の奮闘とロッシュの気まぐれがあってこその結果だ。シルヴィが彼に感謝するよりも、彼はシルヴィやグレイス海賊団の人達への感謝を忘れないだろう。
「それと、丁度お前が来てくれたおかげで呼ぶ手間が省けたぜ。コイツと戦ってる間、身体が妙な感覚に陥った。なんつうか、その・・・自分の身体じゃねぇみてぇに思い通りに動かなかった・・・。お前にはそのカラクリが分かってたんだろ?きっと今のコイツも、それで動いてるんじゃねぇか?」
シルヴィは、首のないロッシュの身体は彼のミラーニューロンによって動いているのではないかと考察した。しかし、ロッシュはグレイスとの戦闘の最後、そのミラーニューロンの弾切れによって敗北した。故に残弾による行動とは考えられない。
あるとするならば、ロッシュ自身の身体にあるミラーニューロンを発動させるくらいのものだが、そもそも死んだ後にスキルの発動など聞いた事がない。それこそアンデッドや死霊系に関するクラスやモンスターであれば何かそういったスキルがあるのかもしれないが。
「どうだろうか・・・?死んでも尚、スキルを使うことなど出来るものなのかどうか・・・。少なくとも俺は聞いた事がない。取り敢えずロッシュの身体を調べてみる」
シンはロッシュの身体に恐る恐る近づくと、彼との戦闘で見た光りを探し始めた。
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