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最終局面
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ミラーニューロンによって、自身の動かした方向へ腕や足が動かせず、一方的に攻撃をもらってしまうグレイス。立っているのがやっとだったが、バランスを崩し膝をつくと、ロッシュはそんな彼女の髪を掴み強引に立ち上がらせ、アッパーのように顎へ拳を入れることで、倒れることを許さない。
これでは、シンがロッシュのミラーニューロンを排除したところで、グロッキーな状態のグレイスに現場を打開出来るだけの力が残されているのか分からない。それでも、シンはスキルの使用範囲に入る為、二人の戦う戦場へと這って行く。
「もう少し・・・もう少しなんだッ・・・!耐えてくれ、グレイスッ・・・」
やっとの思いで潜影の届く範囲にまで近づくと、シンは朦朧としているグレイスの反撃に合わせ、彼女の身体からミラーニューロンを影で包み込み排除した。
「グレイスッ・・・!」
シンの声が彼女に届いたのか、拳を握る手に力が入るのが見えた。グレイスの放った拳に、ロッシュは恐れることなく迎え撃つように拳を彼女の顔面に向けて振るう。
本来であればグレイスの拳の方が先にロッシュへ辿り着くであろう速度だが、ロッシュはミラーニューロンによって彼女の拳が空を切ると、確信している。故にこの男には、身を守ろうとする防御の素振りや、いざとなれば避けようとする体勢など見られない。全てを攻撃の為に集約させているようだった。
しかし、グレイスの拳は軌道を変えることなくロッシュ目掛けて進んで行き、彼がその異変に気付いた時には、既に避けられるような攻撃ではなくなっていた。
「なッなにぃぃぃッ!」
二人の放つ拳は互いの顔面を捉え、大きく横へと弾かせる。当たる筈がないと思っていたロッシュはその寸前に動揺し、勢いを僅かに遅らせてしまっていたのだ。散々拳を叩き込まれ、意識がハッキリしているのかも怪しかったグレイスだが、未だその攻撃力はロッシュを上回っており、彼を怯ませるだけの威力を誇っていた。
そしてロッシュに隙が生まれたことに気付いたグレイスは、此処ぞとばかりに次なる拳を彼に放つ。しかし、シンも手負いの身。スキル連続使用できるだけの魔力も体力もなく、このままでは再びロッシュにミラーニューロンを使われ、カウンターを受けてしまう。
「ダメだ、グレイスッ!反撃が来るッ・・・!まだ、次は無いんだッ・・・!」
グレイスには、先程の攻撃がシンのスキルによる援護があったおかげで命中したのだと知る由もない。故に彼女には、反撃の好機に見えていたのだろう。例え相手が手負いであろうと、しっかり見極めれば避けられてしまうようなグレイスの大振りの一撃。
だが、シンのスキルによる妨害であることをロッシュも気付いていなかった。自分の技に絶対の自信があった彼は避けることなど考えず、再びミラーニューロンを放ち、返り討ちにしてやると、グレイスと同じく全身の勢いを使った全力の一撃を彼女に放つ。
如何に己自身の身体能力で優っているとはいえ、今の体力でロッシュの全力の一撃をもらえば、取り返しのつかない事になるかもしれない。ロッシュはまたグレイスの身体を操縦し、攻撃を逸させようとミラーニューロンを彼女身体に放つ。
二人の攻撃はまるでスローモーションの様に見えた。互いの拳がそれぞれの着弾地点へと向かって行く。そしてロッシュの表情が目論み通り事が運んだことを喜ぶ様に、不適な笑みへと変わる。スキルを使ったに違いない。
「グレイスーーーッ!!」
ロッシュの方が一枚上手だった。最期まで奥の手を明かす事なく、不利な状況やダメージさえも利用し相手を騙す。シンがグレイスの敗北から目を背けようとしたその時。
大きな殴打音と共に床に倒れたのは、ロッシュだった。
「あぁッ・・・ぁ・・・何故・・・?」
予期せぬ結果に、唖然とするシン。そして誰よりも驚いていたのはロッシュ自身だろう。何故グレイスの攻撃が逸れなかったのか、何故ミラーニューロンが発動しなかったのか。それは、用心深く観察眼の肥えたロッシュが何故気付かなかったのかと疑うほど、至ってシンプルな理由だった。
暫くして漸くその原因に気が付いたロッシュが、ゆっくり首を動かして周囲を眺めながら、苦虫を噛んだ様に歯軋りをさせて睨みつける。そんな彼の視線は、シンの方へも向けられた。
「きッ・・・貴様らぁッ・・・!!」
グレイス海賊団との戦闘の中で、彼は幾度となくミラーニューロンを使った、物や人の操縦をしてきた。砲弾の弾や模型の戦闘機、シンとの二度に渡る戦闘やシルヴィとの戦闘。
戦いの前に補充を済ませたロッシュであれば、十分に足りる筈だった。彼にとっての想定外の出来事は、シンという部外者の参戦。二度に渡る彼との戦闘が、ロッシュの計画と自信を狂わせたのだ。
ロッシュの前に敗れていった者達の健闘は、決して無駄なものではなかった。度重なる戦闘でロッシュは、ミラーニューロンの“弾切れ”を起こしていたのだ。
これでは、シンがロッシュのミラーニューロンを排除したところで、グロッキーな状態のグレイスに現場を打開出来るだけの力が残されているのか分からない。それでも、シンはスキルの使用範囲に入る為、二人の戦う戦場へと這って行く。
「もう少し・・・もう少しなんだッ・・・!耐えてくれ、グレイスッ・・・」
やっとの思いで潜影の届く範囲にまで近づくと、シンは朦朧としているグレイスの反撃に合わせ、彼女の身体からミラーニューロンを影で包み込み排除した。
「グレイスッ・・・!」
シンの声が彼女に届いたのか、拳を握る手に力が入るのが見えた。グレイスの放った拳に、ロッシュは恐れることなく迎え撃つように拳を彼女の顔面に向けて振るう。
本来であればグレイスの拳の方が先にロッシュへ辿り着くであろう速度だが、ロッシュはミラーニューロンによって彼女の拳が空を切ると、確信している。故にこの男には、身を守ろうとする防御の素振りや、いざとなれば避けようとする体勢など見られない。全てを攻撃の為に集約させているようだった。
しかし、グレイスの拳は軌道を変えることなくロッシュ目掛けて進んで行き、彼がその異変に気付いた時には、既に避けられるような攻撃ではなくなっていた。
「なッなにぃぃぃッ!」
二人の放つ拳は互いの顔面を捉え、大きく横へと弾かせる。当たる筈がないと思っていたロッシュはその寸前に動揺し、勢いを僅かに遅らせてしまっていたのだ。散々拳を叩き込まれ、意識がハッキリしているのかも怪しかったグレイスだが、未だその攻撃力はロッシュを上回っており、彼を怯ませるだけの威力を誇っていた。
そしてロッシュに隙が生まれたことに気付いたグレイスは、此処ぞとばかりに次なる拳を彼に放つ。しかし、シンも手負いの身。スキル連続使用できるだけの魔力も体力もなく、このままでは再びロッシュにミラーニューロンを使われ、カウンターを受けてしまう。
「ダメだ、グレイスッ!反撃が来るッ・・・!まだ、次は無いんだッ・・・!」
グレイスには、先程の攻撃がシンのスキルによる援護があったおかげで命中したのだと知る由もない。故に彼女には、反撃の好機に見えていたのだろう。例え相手が手負いであろうと、しっかり見極めれば避けられてしまうようなグレイスの大振りの一撃。
だが、シンのスキルによる妨害であることをロッシュも気付いていなかった。自分の技に絶対の自信があった彼は避けることなど考えず、再びミラーニューロンを放ち、返り討ちにしてやると、グレイスと同じく全身の勢いを使った全力の一撃を彼女に放つ。
如何に己自身の身体能力で優っているとはいえ、今の体力でロッシュの全力の一撃をもらえば、取り返しのつかない事になるかもしれない。ロッシュはまたグレイスの身体を操縦し、攻撃を逸させようとミラーニューロンを彼女身体に放つ。
二人の攻撃はまるでスローモーションの様に見えた。互いの拳がそれぞれの着弾地点へと向かって行く。そしてロッシュの表情が目論み通り事が運んだことを喜ぶ様に、不適な笑みへと変わる。スキルを使ったに違いない。
「グレイスーーーッ!!」
ロッシュの方が一枚上手だった。最期まで奥の手を明かす事なく、不利な状況やダメージさえも利用し相手を騙す。シンがグレイスの敗北から目を背けようとしたその時。
大きな殴打音と共に床に倒れたのは、ロッシュだった。
「あぁッ・・・ぁ・・・何故・・・?」
予期せぬ結果に、唖然とするシン。そして誰よりも驚いていたのはロッシュ自身だろう。何故グレイスの攻撃が逸れなかったのか、何故ミラーニューロンが発動しなかったのか。それは、用心深く観察眼の肥えたロッシュが何故気付かなかったのかと疑うほど、至ってシンプルな理由だった。
暫くして漸くその原因に気が付いたロッシュが、ゆっくり首を動かして周囲を眺めながら、苦虫を噛んだ様に歯軋りをさせて睨みつける。そんな彼の視線は、シンの方へも向けられた。
「きッ・・・貴様らぁッ・・・!!」
グレイス海賊団との戦闘の中で、彼は幾度となくミラーニューロンを使った、物や人の操縦をしてきた。砲弾の弾や模型の戦闘機、シンとの二度に渡る戦闘やシルヴィとの戦闘。
戦いの前に補充を済ませたロッシュであれば、十分に足りる筈だった。彼にとっての想定外の出来事は、シンという部外者の参戦。二度に渡る彼との戦闘が、ロッシュの計画と自信を狂わせたのだ。
ロッシュの前に敗れていった者達の健闘は、決して無駄なものではなかった。度重なる戦闘でロッシュは、ミラーニューロンの“弾切れ”を起こしていたのだ。
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