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剣闘士と盾闘士
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剣闘士、又の名をグラディエーター。
現実の世界にもあったとされている、見世物としての闘技会で戦ってきた戦士達。ローマ軍団の剣闘士達の間で主要な武器とされていた、グラディウスという刀剣がその名の由来ともされている。
円形の闘技場、アンフィテアトルムで行われていた剣闘士同士、或いは猛獣やモンスターとの戦いが繰り広げられていた。また闘技場内で様々な場面を想定した模擬戦を行う場所もあったとされ、人工池を使った海上戦や、木材を使って森での戦闘を模した闘技場などもあった。
武器も刀剣だけに留まらず、槍や弓、銃や大筒などWoFでの闘技場では凡ゆる武器が用いられた。対戦相手、武器、環境、凡ゆる場面を想定し最強の戦士を創り上げる目的もあったという。
「攻撃は最大の防御だ。攻めて攻めて、攻め倒すことで相手に何もさせない。それが俺の防御術だ」
ヴォルテルの父親は剣闘士だった。
今の彼とは真逆の、攻撃に特化した戦闘スタイルで当時の闘技場を大いに盛り上げていた。剣闘士達の訓練も兼ねていたが、当然見世物としての闘技ということもあり、会場には多くの観客がいた。
そして彼の行う死合いは、分かりやすく豪快で観る物を燃え上がらせるような戦いだった。剣闘士の行う闘いは、ただ勝つだけでは意味がないのだ。観客を盛り上げ、注目を集める、観ていて爽快で気持ちのいいものが好まれた。
それは様々な国からも人を集め、一つの競技ともなり、如何に名勝負を繰り広げたかで国の品格が印象付けられるものへとなっていく。故に例え負けようと、会場を沸かせることこそが彼らに求められていた。
多くの人々を魅了し人気を集める剣闘士達には、国から多くの手厚い施しが与えられた。ヴォルテルの父親は、当時では相当な腕前を持った剣闘士として人気であり、彼の家族は他の家柄に比べ、とても裕福であった。
特別な武器や訓練道具、当時では高価な食事や広い屋敷、多くの者達が彼を慕い共に切磋琢磨していた。
だが、当然闘いの中で負ければ命の保証はない。負けを認め棄権する事も出来るが、それは同時にその国や近隣諸国、闘技の文化がある場所で生きていけなくなる事を意味していた。恥知らずの臆病者として国を追放された者達に、最早未来などなかった。
人気の高い剣闘士には、多くの対戦申し込みが寄せられる。各国の屈強な強者や、珍しいモンスターなど、その闘い観たさに更に人が集まるのだ。
そんな父親の姿に憧れ、ヴォルテルも剣闘士の道を目指し始めるが、彼は父親からその才能を受け継いでおらず、剣闘士としての試験すら受かることがなかった。
しかし、父親は厳しい人でもあったがそんな彼を見捨てるようなこともなく、強くなりたいと望むヴォルテルに、空いた時間を使って稽古をつけてくれていた。剣闘士は命の危険が付きまとう厳しい世界。それ故に稽古では別人のように厳しくヴォルテルに接し、身の守り方をその身と心に刻みつけた。
父親の厳しい指導があっても、一行に結果を出せないでいる中で、周囲は彼を哀れんでいった。折角の天賦の才を受け継いでいないヴォルテルには目もくれず、別にもう一人子を儲けるべきだという声も少なくなかった。
彼を取り巻く周囲の環境が、徐々に彼の心を蝕んでいくことで、父親への憧れは少しずつ憎しみへと変わっていく。何処で何をしようとも父親と比べられ、才能がないことで蔑まれ、息の詰まる思いだった。
ある日、挑戦の多い父親はいつものように闘技場へ赴き、死合いを行いに向かった。ヴォルテルは一人、父親の授かった訓練道具を使い身体を鍛えていた。だが、いつになっても父親が帰ってくることはなかった。
ヴォルテルの父親は、その日の死合いで命を落としたのだ。
家族を守るため、名誉を守るため。父親は攻めの姿勢を変えることなく、攻めて攻めて攻め続けた。それでも勝ち続けることが難しい時というのは、必ずいつかやって来るものだろう。
そして国や世間はあまりに残酷だと、ヴォルテルは悟った。父親の死が知らされて間も無く、彼に与えられていた物は全て押収され、生活は一変した。家を追い出され、住む場所もなく、父親を慕っていた者達も彼らから去っていった。
父親がいなければ、彼らに存在価値など無い。世界からそう言われているような気がした。実際、彼らへの扱いもそうだった。
「守ってくれないじゃないか・・・。誰が俺や母さんを守ってくれるって言うんだ。アンタが居なくなって残ったものは、プラスで得た分のマイナスだ・・・」
大きな栄誉を授かっていた分、ヴォルテルと母親を襲ったのはその分を取り戻すかのようにやって来る、不幸や災難ばかり。環境の急変で体調を崩した母親は、不幸にも不治の病にかかり、彼を置いてこの世を去ってしまう。
残されたヴォルテルは国を後にし、誰も彼の事を知らない遠い地で生きていくことを決める。そこで鍛えた身体を活かし、軍隊へ加入する。そこでは魔導を中心とした戦闘を主に戦う訓練が行われており、彼が今まで観てきた戦いとは真逆と言っていいほどの戦い方だった。
だが驚くことに、剣闘士としての才能は無かったが魔法の才能があったようで、入隊を間も無くしてその頭角を現した。他国との争いが盛んだったその国で、彼は幾度となく戦場へ駆り立てられた。
その中で、同じ時を共にした親友とまではいかなかったが、それなりに仲の良い者達との別れを経験して来た。彼とその者達の違いは恐らく、戦闘に関しての知識の差だろう。ヴォルテルは、幼い頃より父親から生き残るための術を学んできた。だが不幸にも、そのことが彼を孤独にして行く。
「親父のせいで俺は不幸になる・・・。奴のやり方では駄目だ、俺には俺のやり方がある筈だ」
ヴォルテルは父親の戦い方であり教えであった“攻撃は最大の防御”というやり方を捨て、別の方法を模索して行く。その中で才を発揮し始めたのが、盾を使った防御術だったのだ。
父親の戦いが“剣”であるならば、ヴォルテルの戦いは“盾”と言わんばかりに、鉄壁の防御を身につけて行く。
「何が“攻撃は最大の防御”だ。結局、攻撃じゃ何も守れやしない。本当に守りたいものは“防御”じゃなけりゃ守れねぇッ!」
圧倒的な防御戦術で力を付けたヴォルテルは軍を抜け、剣闘士の世界へ戻ることで、自分の力を試そうとした。彼の防御戦術は凄まじい成果を上げ、一躍注目の剣闘士としてその名を広めていった。
父親とは真逆の戦闘スタイル。奇しくもそれが彼の最も適した戦い方だったのだ。凡ゆる攻撃を悉く打ち崩し、勝利を収めると剣闘士の世界で順風満帆の日々を過ごしていた。
そんなある日、彼の名を聞きつけその腕を買いたいと言う貴族の男が現れた。
「剣闘士の世界に留まらず、己の見聞を広めるべきだ。世界を巡り、好きなものを好きなだけ、欲しいものを欲しいだけ手にしたくはないか?強い者が全てを手に入れ、敗者は全てを失う。それは剣闘士だけのモンじゃねぇ、世界も同じなんだぜ?」
彼の才能を見出し、彼だけの中にあった父親のしがらみに満ちた世界を切り開いたのは、海賊になりまだその名を轟かせる以前のロッシュだったのだ。
現実の世界にもあったとされている、見世物としての闘技会で戦ってきた戦士達。ローマ軍団の剣闘士達の間で主要な武器とされていた、グラディウスという刀剣がその名の由来ともされている。
円形の闘技場、アンフィテアトルムで行われていた剣闘士同士、或いは猛獣やモンスターとの戦いが繰り広げられていた。また闘技場内で様々な場面を想定した模擬戦を行う場所もあったとされ、人工池を使った海上戦や、木材を使って森での戦闘を模した闘技場などもあった。
武器も刀剣だけに留まらず、槍や弓、銃や大筒などWoFでの闘技場では凡ゆる武器が用いられた。対戦相手、武器、環境、凡ゆる場面を想定し最強の戦士を創り上げる目的もあったという。
「攻撃は最大の防御だ。攻めて攻めて、攻め倒すことで相手に何もさせない。それが俺の防御術だ」
ヴォルテルの父親は剣闘士だった。
今の彼とは真逆の、攻撃に特化した戦闘スタイルで当時の闘技場を大いに盛り上げていた。剣闘士達の訓練も兼ねていたが、当然見世物としての闘技ということもあり、会場には多くの観客がいた。
そして彼の行う死合いは、分かりやすく豪快で観る物を燃え上がらせるような戦いだった。剣闘士の行う闘いは、ただ勝つだけでは意味がないのだ。観客を盛り上げ、注目を集める、観ていて爽快で気持ちのいいものが好まれた。
それは様々な国からも人を集め、一つの競技ともなり、如何に名勝負を繰り広げたかで国の品格が印象付けられるものへとなっていく。故に例え負けようと、会場を沸かせることこそが彼らに求められていた。
多くの人々を魅了し人気を集める剣闘士達には、国から多くの手厚い施しが与えられた。ヴォルテルの父親は、当時では相当な腕前を持った剣闘士として人気であり、彼の家族は他の家柄に比べ、とても裕福であった。
特別な武器や訓練道具、当時では高価な食事や広い屋敷、多くの者達が彼を慕い共に切磋琢磨していた。
だが、当然闘いの中で負ければ命の保証はない。負けを認め棄権する事も出来るが、それは同時にその国や近隣諸国、闘技の文化がある場所で生きていけなくなる事を意味していた。恥知らずの臆病者として国を追放された者達に、最早未来などなかった。
人気の高い剣闘士には、多くの対戦申し込みが寄せられる。各国の屈強な強者や、珍しいモンスターなど、その闘い観たさに更に人が集まるのだ。
そんな父親の姿に憧れ、ヴォルテルも剣闘士の道を目指し始めるが、彼は父親からその才能を受け継いでおらず、剣闘士としての試験すら受かることがなかった。
しかし、父親は厳しい人でもあったがそんな彼を見捨てるようなこともなく、強くなりたいと望むヴォルテルに、空いた時間を使って稽古をつけてくれていた。剣闘士は命の危険が付きまとう厳しい世界。それ故に稽古では別人のように厳しくヴォルテルに接し、身の守り方をその身と心に刻みつけた。
父親の厳しい指導があっても、一行に結果を出せないでいる中で、周囲は彼を哀れんでいった。折角の天賦の才を受け継いでいないヴォルテルには目もくれず、別にもう一人子を儲けるべきだという声も少なくなかった。
彼を取り巻く周囲の環境が、徐々に彼の心を蝕んでいくことで、父親への憧れは少しずつ憎しみへと変わっていく。何処で何をしようとも父親と比べられ、才能がないことで蔑まれ、息の詰まる思いだった。
ある日、挑戦の多い父親はいつものように闘技場へ赴き、死合いを行いに向かった。ヴォルテルは一人、父親の授かった訓練道具を使い身体を鍛えていた。だが、いつになっても父親が帰ってくることはなかった。
ヴォルテルの父親は、その日の死合いで命を落としたのだ。
家族を守るため、名誉を守るため。父親は攻めの姿勢を変えることなく、攻めて攻めて攻め続けた。それでも勝ち続けることが難しい時というのは、必ずいつかやって来るものだろう。
そして国や世間はあまりに残酷だと、ヴォルテルは悟った。父親の死が知らされて間も無く、彼に与えられていた物は全て押収され、生活は一変した。家を追い出され、住む場所もなく、父親を慕っていた者達も彼らから去っていった。
父親がいなければ、彼らに存在価値など無い。世界からそう言われているような気がした。実際、彼らへの扱いもそうだった。
「守ってくれないじゃないか・・・。誰が俺や母さんを守ってくれるって言うんだ。アンタが居なくなって残ったものは、プラスで得た分のマイナスだ・・・」
大きな栄誉を授かっていた分、ヴォルテルと母親を襲ったのはその分を取り戻すかのようにやって来る、不幸や災難ばかり。環境の急変で体調を崩した母親は、不幸にも不治の病にかかり、彼を置いてこの世を去ってしまう。
残されたヴォルテルは国を後にし、誰も彼の事を知らない遠い地で生きていくことを決める。そこで鍛えた身体を活かし、軍隊へ加入する。そこでは魔導を中心とした戦闘を主に戦う訓練が行われており、彼が今まで観てきた戦いとは真逆と言っていいほどの戦い方だった。
だが驚くことに、剣闘士としての才能は無かったが魔法の才能があったようで、入隊を間も無くしてその頭角を現した。他国との争いが盛んだったその国で、彼は幾度となく戦場へ駆り立てられた。
その中で、同じ時を共にした親友とまではいかなかったが、それなりに仲の良い者達との別れを経験して来た。彼とその者達の違いは恐らく、戦闘に関しての知識の差だろう。ヴォルテルは、幼い頃より父親から生き残るための術を学んできた。だが不幸にも、そのことが彼を孤独にして行く。
「親父のせいで俺は不幸になる・・・。奴のやり方では駄目だ、俺には俺のやり方がある筈だ」
ヴォルテルは父親の戦い方であり教えであった“攻撃は最大の防御”というやり方を捨て、別の方法を模索して行く。その中で才を発揮し始めたのが、盾を使った防御術だったのだ。
父親の戦いが“剣”であるならば、ヴォルテルの戦いは“盾”と言わんばかりに、鉄壁の防御を身につけて行く。
「何が“攻撃は最大の防御”だ。結局、攻撃じゃ何も守れやしない。本当に守りたいものは“防御”じゃなけりゃ守れねぇッ!」
圧倒的な防御戦術で力を付けたヴォルテルは軍を抜け、剣闘士の世界へ戻ることで、自分の力を試そうとした。彼の防御戦術は凄まじい成果を上げ、一躍注目の剣闘士としてその名を広めていった。
父親とは真逆の戦闘スタイル。奇しくもそれが彼の最も適した戦い方だったのだ。凡ゆる攻撃を悉く打ち崩し、勝利を収めると剣闘士の世界で順風満帆の日々を過ごしていた。
そんなある日、彼の名を聞きつけその腕を買いたいと言う貴族の男が現れた。
「剣闘士の世界に留まらず、己の見聞を広めるべきだ。世界を巡り、好きなものを好きなだけ、欲しいものを欲しいだけ手にしたくはないか?強い者が全てを手に入れ、敗者は全てを失う。それは剣闘士だけのモンじゃねぇ、世界も同じなんだぜ?」
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