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宿探し
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「アイツ・・・、いいのか?」
その場に立ち止まり迷うツクヨの様子を見て、ツバキは追わなくていいのかと彼に言う。ヘラルトとは旅の途中で出会い、お互いの目的地であったこの港町グラン・ヴァーグまで同行させて欲しいと言われ連れて来たのだと、ツバキに彼とのなりゆきを簡潔に話すと、ツクヨが頭の中で考えていたことを一蹴するとても単純で明確な答えを返してくれた。
「ふーん・・・。じゃぁこれでいいんじゃねぇの?アイツにこの町でやりたい事があったんだろう?人の目的に他人がとやかく言うもんじゃねぇさ・・・」
そう言った彼の表情も、どこか他人に触れられたくない何かを抱えているかのようだった。彼の言う通り、ヘラルトにはヘラルトのやるべき事、やりたい事があるのだ。いき過ぎた余計なお節介は、かえって当人を怒らせることにもなり兼ねない。
「そう・・・だね。あまり詮索するもんでもないか。ごめん・・・」
「なんでアンタが謝んだ?・・・それに・・・ありがとよ、さっきは」
目を合わせず拗ねた様子でお礼を言うところを見ると、彼もまだ素直ではない子供なんだと、ツクヨの心を和ませ表情を緩めさせた。
「何にやけヅラしてんだ!そういやぁ宿探しに行ってたんじゃなかったのかよ。いいのか?こんなところで道草食ってて・・・」
ツバキの言葉に、転寝の中で落下する夢でも見たかのように、しなければならない事が出来ていない現実に引き戻されると、焦りでツクヨの顔から血の気が引いていく。
「しまったッ!!マズイぞ・・・このままじゃ彼らに合わす顔がない・・・。それだけならまだしも、ミアが酒にでも酔っていたりしたら・・・」
場面はシンとミアのパーティへと移り、突然彼女がくしゃみをした。それを見たシンが気を使ってか、ミアのくしゃみの口実を頼んでもいないのに、代わりに次々と連ね始める。
「流石は港町だ、潮風が冷たい・・・。それに日も暮れて来たとなれば尚更だ。酔いも少し覚めてきたんじゃないか?酒を呷って身体が温まるのは一時的なものらしいから、早くツクヨ達と合流して宿でゆっくり休もう」
鼻をすすりムスッとした様子で、上着のポケットに手を突っ込むミアが、急に饒舌になって喋り出すシンの方を見て、彼の気遣いを受け取る。
「別にそんなんじゃないさ、こんなもんいつでも出るもんだろ?・・・でも、ありがと・・・。キミも飲んでたろ?お互い、体調を崩さないようにしないとな・・・」
先程まで暴れていた人間とは思えない落ち着きぶりに、彼女も酔いが覚めたことで冷静さを取り戻し、自分の行いを改めているかのようだった。
「どんな宿だろう。港町だもんな・・・、やっぱり海の幸とか出て来るのか?」
「その前に宿が取れてればいいがな・・・。話によればイベント事で人が集まってるって言うじゃないか。みんな他所から来てるだろうし、宿がいっぱいになっててもおかしくない・・・」
ミアは分析は的確だった。酔っていてもちゃんと得た情報は頭の中に入っていたということだろう。そして彼女のその言葉が、宿での過ごし方に妄想を膨らませていたシンに暗い影を落とし、玩具を取り上げられた子供の様に眉を潜ませた。
「ま・・・まさかぁ~・・・。ウィルさんから教えてもらった宿屋なら案外穴場もあるんじゃないかな?・・・・・野宿なんて、ないよね・・・?」
彼の問いに彼女からの返事はなかった。
再び場面は、ヘラルトと別れた後のツクヨとツバキへと戻る。責任重大のツクヨの役目が滞り、頭を抱える彼にツバキは助けて貰ったお礼代わりと、ある提案を持ち掛ける。
「宿・・・、決まってないならウチ来るか・・・?無駄に広さだけはある家だから、数人だったら全然狭くも感じないだろうし。・・・まぁ、アンタらがそれで良いんなら・・・だけどな・・・」
ツバキの思わぬ申し入れに、ツクヨは藁をも掴む勢いで彼の肩を掴み、この世に神はいたのだというように目を輝かせた彼に懇願した。
「いいのかい!?是非とも・・・是非ともお願いしたい!あぁ、助かるよ。助けられたのは私の方だ。ありがとう、ありがとう!」
九死に一生を得たツクヨは、彼をウィリアムのところまで送り届けるついでに、彼の家まで連れて行ってもらう事となった。泊まるところが見つかっただけではなく、宿代まで浮いたと成ればきっとミアも喜ぶだろうと浅い考えを思いうかべ、誇らしい気持ちになっていた。
暫く歩いて行き、シン達と別れたウィリアムの作業場に帰って来ると、邪魔にならないよう端の足場を渡って行きウィリアムも作業机に荷物を置くと、そこにあった呼び鈴を鳴らし、そそくさとその場を後にする。
ツクヨはツバキに荷物の配達が完了したことをウィリアムに伝えなくていいのかと尋ねるが、彼はジジィならすぐに気がつくと言って、そのまま作業場の外へ出ると、彼らをまとめて案内すると言ってツクヨに仲間と連絡を取るよう伝える。彼もそれに従って二人にメッセージを送る。
ツクヨからの吉報を期待し、すっかり待ち惚けを喰らっていたシンとミアに漸く彼からメッセージが届くと、急いで内容を確認するシンと、座って彼の反応を伺っているミア。
「ツクヨからだ!・・・・・泊まるところが見つかったって!」
そう言うとホッとした様子でシンがミアのほ方を向いて嬉しそうに伝える。それを彼女はまるで、子供の楽しかった遊びの話を聞く母親のように聞いていた。だが、彼の反応はそこで終わらず、表情は何か不思議なことに直面したかのように呆気にとられたものへと変わった。
「・・・・・ん?ミア、宿じゃなくてウィルさんの店に来てくれって・・・。そこで落ち合おうってことか?」
「まぁ、進展があったことに変わりはないだろう。行ってみよう」
立ち上がったミアはそのままウィリアムの店へと向かって歩き出し、シンもメッセージに返信を送ると小走りで彼女の横について歩き始めた。
その場に立ち止まり迷うツクヨの様子を見て、ツバキは追わなくていいのかと彼に言う。ヘラルトとは旅の途中で出会い、お互いの目的地であったこの港町グラン・ヴァーグまで同行させて欲しいと言われ連れて来たのだと、ツバキに彼とのなりゆきを簡潔に話すと、ツクヨが頭の中で考えていたことを一蹴するとても単純で明確な答えを返してくれた。
「ふーん・・・。じゃぁこれでいいんじゃねぇの?アイツにこの町でやりたい事があったんだろう?人の目的に他人がとやかく言うもんじゃねぇさ・・・」
そう言った彼の表情も、どこか他人に触れられたくない何かを抱えているかのようだった。彼の言う通り、ヘラルトにはヘラルトのやるべき事、やりたい事があるのだ。いき過ぎた余計なお節介は、かえって当人を怒らせることにもなり兼ねない。
「そう・・・だね。あまり詮索するもんでもないか。ごめん・・・」
「なんでアンタが謝んだ?・・・それに・・・ありがとよ、さっきは」
目を合わせず拗ねた様子でお礼を言うところを見ると、彼もまだ素直ではない子供なんだと、ツクヨの心を和ませ表情を緩めさせた。
「何にやけヅラしてんだ!そういやぁ宿探しに行ってたんじゃなかったのかよ。いいのか?こんなところで道草食ってて・・・」
ツバキの言葉に、転寝の中で落下する夢でも見たかのように、しなければならない事が出来ていない現実に引き戻されると、焦りでツクヨの顔から血の気が引いていく。
「しまったッ!!マズイぞ・・・このままじゃ彼らに合わす顔がない・・・。それだけならまだしも、ミアが酒にでも酔っていたりしたら・・・」
場面はシンとミアのパーティへと移り、突然彼女がくしゃみをした。それを見たシンが気を使ってか、ミアのくしゃみの口実を頼んでもいないのに、代わりに次々と連ね始める。
「流石は港町だ、潮風が冷たい・・・。それに日も暮れて来たとなれば尚更だ。酔いも少し覚めてきたんじゃないか?酒を呷って身体が温まるのは一時的なものらしいから、早くツクヨ達と合流して宿でゆっくり休もう」
鼻をすすりムスッとした様子で、上着のポケットに手を突っ込むミアが、急に饒舌になって喋り出すシンの方を見て、彼の気遣いを受け取る。
「別にそんなんじゃないさ、こんなもんいつでも出るもんだろ?・・・でも、ありがと・・・。キミも飲んでたろ?お互い、体調を崩さないようにしないとな・・・」
先程まで暴れていた人間とは思えない落ち着きぶりに、彼女も酔いが覚めたことで冷静さを取り戻し、自分の行いを改めているかのようだった。
「どんな宿だろう。港町だもんな・・・、やっぱり海の幸とか出て来るのか?」
「その前に宿が取れてればいいがな・・・。話によればイベント事で人が集まってるって言うじゃないか。みんな他所から来てるだろうし、宿がいっぱいになっててもおかしくない・・・」
ミアは分析は的確だった。酔っていてもちゃんと得た情報は頭の中に入っていたということだろう。そして彼女のその言葉が、宿での過ごし方に妄想を膨らませていたシンに暗い影を落とし、玩具を取り上げられた子供の様に眉を潜ませた。
「ま・・・まさかぁ~・・・。ウィルさんから教えてもらった宿屋なら案外穴場もあるんじゃないかな?・・・・・野宿なんて、ないよね・・・?」
彼の問いに彼女からの返事はなかった。
再び場面は、ヘラルトと別れた後のツクヨとツバキへと戻る。責任重大のツクヨの役目が滞り、頭を抱える彼にツバキは助けて貰ったお礼代わりと、ある提案を持ち掛ける。
「宿・・・、決まってないならウチ来るか・・・?無駄に広さだけはある家だから、数人だったら全然狭くも感じないだろうし。・・・まぁ、アンタらがそれで良いんなら・・・だけどな・・・」
ツバキの思わぬ申し入れに、ツクヨは藁をも掴む勢いで彼の肩を掴み、この世に神はいたのだというように目を輝かせた彼に懇願した。
「いいのかい!?是非とも・・・是非ともお願いしたい!あぁ、助かるよ。助けられたのは私の方だ。ありがとう、ありがとう!」
九死に一生を得たツクヨは、彼をウィリアムのところまで送り届けるついでに、彼の家まで連れて行ってもらう事となった。泊まるところが見つかっただけではなく、宿代まで浮いたと成ればきっとミアも喜ぶだろうと浅い考えを思いうかべ、誇らしい気持ちになっていた。
暫く歩いて行き、シン達と別れたウィリアムの作業場に帰って来ると、邪魔にならないよう端の足場を渡って行きウィリアムも作業机に荷物を置くと、そこにあった呼び鈴を鳴らし、そそくさとその場を後にする。
ツクヨはツバキに荷物の配達が完了したことをウィリアムに伝えなくていいのかと尋ねるが、彼はジジィならすぐに気がつくと言って、そのまま作業場の外へ出ると、彼らをまとめて案内すると言ってツクヨに仲間と連絡を取るよう伝える。彼もそれに従って二人にメッセージを送る。
ツクヨからの吉報を期待し、すっかり待ち惚けを喰らっていたシンとミアに漸く彼からメッセージが届くと、急いで内容を確認するシンと、座って彼の反応を伺っているミア。
「ツクヨからだ!・・・・・泊まるところが見つかったって!」
そう言うとホッとした様子でシンがミアのほ方を向いて嬉しそうに伝える。それを彼女はまるで、子供の楽しかった遊びの話を聞く母親のように聞いていた。だが、彼の反応はそこで終わらず、表情は何か不思議なことに直面したかのように呆気にとられたものへと変わった。
「・・・・・ん?ミア、宿じゃなくてウィルさんの店に来てくれって・・・。そこで落ち合おうってことか?」
「まぁ、進展があったことに変わりはないだろう。行ってみよう」
立ち上がったミアはそのままウィリアムの店へと向かって歩き出し、シンもメッセージに返信を送ると小走りで彼女の横について歩き始めた。
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