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旅する作家の少年ヘラルト
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「こんなに貰っちゃ悪いですよ!そんなに大したことは・・・」
「何を言っているんだ。私を助けてくれただろ?これはそのお礼だよ」
村に戻った一行はクエストの報酬を受け取ると、各々自分の懐に入れる中ツクヨは、モンスターからの一撃を救ってもらったお礼として、レラルトに報酬の分け与えていた。
「どうでもいいが、私達も決して余裕がある訳じゃないんだ。後で足らないから貸してくれなんて言われても、私は貸さないからな」
「え!?お金は共通のモノじゃないのかい?」
まだパーティー加わって日の浅いツクヨに、ミアの意地悪な部分が顔を見せる。彼らは報酬や金を共通のモノとはしていなかった。それというのも、それぞれが就いているクラスによって必要となる物資も違えば装備も違い、それらに掛かる金額も変わってくる。
シンは投擲を沢山行おうとするならば、投擲用の武器やアイテムなどに金がかかり、節約して近接だけを行うことも可能だ。だが、ミアの戦闘を担当するクラスであるガンスリンガーは、基本銃弾を使うため、常に弾をキープしておかなければならない。一発一発の金額は大したことないが、塵も積もれば山となるとはよく言ったモノで、消費に見合った戦果を挙げ、購入金額以上の報酬を常に気にかけていかなければならない。
故に共通の財産とした場合、仲間の負担になってしまうと彼女は報酬や金をそれぞれに分けようと提案していたのだった。
「それぞれで使い道も金額も違うからな。ミアは俺達に気を使ってくれているんだよ。自分が仲間の負担にならない様に・・・てね」
シンがツクヨに事情を話すと、ミアの鋭い視線が突き刺さり余計なことを言うなといった表情を一瞬だけ見せる。悪かったと歩み寄るシンに背を向けながら酒を呷る彼女に、空いたグラスに新たな酒を注ぎ、まるで目上の者に接待でもするかの様にこびを売るシンの姿を見送りながら、ツクヨは微笑ましい表情をする。
「何だか・・・いいね、こういう関係って。いい仲間に出逢えて良かった」
「・・・え?」
物思いにふけるように遠い目をするツクヨに、まだ幼いヘラルトは言葉の表面上の意味でしか理解出来ず、思わず彼の顔を見上げて意味を問う。
「言葉に出さずとも、お互いがお互いに気を遣い合っている関係がね。それも互いに相手の気持ちを汲み取っているからこその気遣いだ。息苦しくなるタイプの気遣いでは無い」
「気遣い・・・ですか?相手の顔色を伺うっていうやつの事です?」
ヘラルトくらいの年齢の少年から聞くその台詞に、思わずツクヨは笑いを堪えきれなかった。大きく笑い出す彼に、自分がまた可笑しなことでも言ったのかと心配になる少年は慌てふためいた。
「違う違う。君の言う気遣いも、それはそれで合っているよ。寧ろ世の中には、そっちの意味の方が多く出回っていると思うよ。彼らの方が珍しいんだ・・・」
そう言うと、手の中にあるグラスの中で氷が溶け、角度の変わったグラスと氷がぶつかって音を立てる。グラスを回しながら氷を酒に溶かすとそれを一口、口に運び難しく考えていた頭を冷やすツクヨ。そして今度は彼のことについて聞いてみる。
「君は・・・ヘラはどうして一人で旅をしているの?」
それまで誰も触れてこなかったが、ヘラルトくらいの年齢の子供が一人で旅をしているのは、あまり良くあることとはいえないだろう。普通なら家族や故郷の大人達が止めていてもおかしく無いはずなのに、こんなに多くの荷物を持って旅とは、何か事情があるのではないだろうか。
「僕は、いろんな世界を周って、いろんなものを見て・・・。教えてあげたいんです故郷の友達に、世界には僕達が夢に見たような、不思議でキラキラしたものが溢れているって」
「世界を・・・教えてあげたい?」
不思議なことを言う少年だなという印象だった。旅に出るのであれば友達と行ってもいい筈。彼は故郷の友達とは違った境遇にでもあるのということなのだろうか。そして同時に不安にもなった。彼の夢見る世界はきっと綺麗なものばかりではない。それこそツクヨが初めてこの世界に降り立った聖都のように、想いを同じくしても争わなければならない人の姿や、人を騙し利用する醜い姿など、目も背けたくなるような凄惨なものを目にした時、彼はどうするのだろうか。
「だから作家をやっているのか・・・?」
彼の荷物にある画材道具や書物を見ながら、ツクヨは彼の旅路を想像した。この絵画達は彼が今までに旅して周って来た景色を描いたものなのだろうかと。
「えぇ、僕に出来ることは見てきたものを絵にして残すこと、聞いてきたことを文字にして残すこと。知らないことを知るのはとても楽しくてワクワクします。最近のお気に入りは古文書なんですよ!まるで御伽話みたいですごく楽しくて・・・。物流の盛んなところに行けば、他にもお目に掛かれるかなって」
「それでグラン・ヴァーグに?」
「はい。あそこにはいろんな大陸や国から物が流通していると聞きます。そして僕の目的は海にあるんです!海には人が知り得ない物が沢山眠っているそうなんですよ。その一つが僕の探している“死海文書”という物なんです!」
「何を言っているんだ。私を助けてくれただろ?これはそのお礼だよ」
村に戻った一行はクエストの報酬を受け取ると、各々自分の懐に入れる中ツクヨは、モンスターからの一撃を救ってもらったお礼として、レラルトに報酬の分け与えていた。
「どうでもいいが、私達も決して余裕がある訳じゃないんだ。後で足らないから貸してくれなんて言われても、私は貸さないからな」
「え!?お金は共通のモノじゃないのかい?」
まだパーティー加わって日の浅いツクヨに、ミアの意地悪な部分が顔を見せる。彼らは報酬や金を共通のモノとはしていなかった。それというのも、それぞれが就いているクラスによって必要となる物資も違えば装備も違い、それらに掛かる金額も変わってくる。
シンは投擲を沢山行おうとするならば、投擲用の武器やアイテムなどに金がかかり、節約して近接だけを行うことも可能だ。だが、ミアの戦闘を担当するクラスであるガンスリンガーは、基本銃弾を使うため、常に弾をキープしておかなければならない。一発一発の金額は大したことないが、塵も積もれば山となるとはよく言ったモノで、消費に見合った戦果を挙げ、購入金額以上の報酬を常に気にかけていかなければならない。
故に共通の財産とした場合、仲間の負担になってしまうと彼女は報酬や金をそれぞれに分けようと提案していたのだった。
「それぞれで使い道も金額も違うからな。ミアは俺達に気を使ってくれているんだよ。自分が仲間の負担にならない様に・・・てね」
シンがツクヨに事情を話すと、ミアの鋭い視線が突き刺さり余計なことを言うなといった表情を一瞬だけ見せる。悪かったと歩み寄るシンに背を向けながら酒を呷る彼女に、空いたグラスに新たな酒を注ぎ、まるで目上の者に接待でもするかの様にこびを売るシンの姿を見送りながら、ツクヨは微笑ましい表情をする。
「何だか・・・いいね、こういう関係って。いい仲間に出逢えて良かった」
「・・・え?」
物思いにふけるように遠い目をするツクヨに、まだ幼いヘラルトは言葉の表面上の意味でしか理解出来ず、思わず彼の顔を見上げて意味を問う。
「言葉に出さずとも、お互いがお互いに気を遣い合っている関係がね。それも互いに相手の気持ちを汲み取っているからこその気遣いだ。息苦しくなるタイプの気遣いでは無い」
「気遣い・・・ですか?相手の顔色を伺うっていうやつの事です?」
ヘラルトくらいの年齢の少年から聞くその台詞に、思わずツクヨは笑いを堪えきれなかった。大きく笑い出す彼に、自分がまた可笑しなことでも言ったのかと心配になる少年は慌てふためいた。
「違う違う。君の言う気遣いも、それはそれで合っているよ。寧ろ世の中には、そっちの意味の方が多く出回っていると思うよ。彼らの方が珍しいんだ・・・」
そう言うと、手の中にあるグラスの中で氷が溶け、角度の変わったグラスと氷がぶつかって音を立てる。グラスを回しながら氷を酒に溶かすとそれを一口、口に運び難しく考えていた頭を冷やすツクヨ。そして今度は彼のことについて聞いてみる。
「君は・・・ヘラはどうして一人で旅をしているの?」
それまで誰も触れてこなかったが、ヘラルトくらいの年齢の子供が一人で旅をしているのは、あまり良くあることとはいえないだろう。普通なら家族や故郷の大人達が止めていてもおかしく無いはずなのに、こんなに多くの荷物を持って旅とは、何か事情があるのではないだろうか。
「僕は、いろんな世界を周って、いろんなものを見て・・・。教えてあげたいんです故郷の友達に、世界には僕達が夢に見たような、不思議でキラキラしたものが溢れているって」
「世界を・・・教えてあげたい?」
不思議なことを言う少年だなという印象だった。旅に出るのであれば友達と行ってもいい筈。彼は故郷の友達とは違った境遇にでもあるのということなのだろうか。そして同時に不安にもなった。彼の夢見る世界はきっと綺麗なものばかりではない。それこそツクヨが初めてこの世界に降り立った聖都のように、想いを同じくしても争わなければならない人の姿や、人を騙し利用する醜い姿など、目も背けたくなるような凄惨なものを目にした時、彼はどうするのだろうか。
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「それでグラン・ヴァーグに?」
「はい。あそこにはいろんな大陸や国から物が流通していると聞きます。そして僕の目的は海にあるんです!海には人が知り得ない物が沢山眠っているそうなんですよ。その一つが僕の探している“死海文書”という物なんです!」
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