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新たな船出と理想郷
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シンが現実世界に渡ってから、ミア達のいるWoFの世界では三日ほどの時間が経過していたという話を彼女らから聞いたシンは、彼にとって空白の三日間について大まかな内容をミアとツクヨ、それぞれの視点で聞いた。
彼が現実に戻るという知らせを受けたミアはその日、シャルロットと共に復興のため急遽設けられた救援キャンプで過ごし、その初日にシンのログアウトを確認したという。
彼女はシャルロットの指示に従いながら、復興活動の手伝いをし、空いた時間で聖騎士の城へ行くとリーベと面会し、その日にあった事や仲間達の様子、他愛のない語りなど、主に明るい話題で話し続けた。だが、それでもリーベは言葉を返してくることはなかったが、その表情はどこか健やかにも見えたらしい。
一方のツクヨは、シンがWoFの世界へ戻って来る一日前に目を覚ましたようだ。まだ思い通りに身体が動かなかったツクヨは大事を取り、目覚めたキャンプ地で養生していたらしい。そこで彼は自分が気を失っている間の出来事や、復興の進み具合などの情報を集めながら時を過ごした。
そしてシンも現実世界での出来事と、白獅から聞いた現状知り得た情報を二人と共有する。サラのプレイヤーについての話や、バグの影響は自分達だけではないのかもしれないといった話、そして現実の世界にアサシンギルドがあったことなど、それこそ話だしたらキリが無いほどの情報量だった。
ミアがもし知っていれば事態が好転するかも知れないサラについての情報だったが、彼女はそのプレイヤーについては何も知らず、心当たりもないと言う。
「何故、私が知っているのかもしれないと思ったのかは分からんが、そもそもサラとの付き合いが長いのはシンの方なんじゃないのか?クエストの存在こそ知ってはいたが、あの子の名前までは知らなかったぞ・・・」
慎や白獅には知る由もなかったが、ミアはシンと会う以前からパルディアの街でサラが発注していた異常なクエストについて調べており、調合の知識やサラにコンタクトを取れる店主の女性、偽りの名でミアに協力していたメアリーの存在。彼女こそシン達と同じく、バグによりWoFの世界へ来ることとなったプレイヤー、颯來その人であったのだ。
白獅の期待していた情報を得ることは叶わず、そしてミアも嘘偽りなく話してくれたことに間違いはない。彼らが、サラに起きていた現象について知るのは、まだ先の話になる。
シンの持ってきた情報の中には、ツクヨに希望を持たせるようなものも含まれていた。それはアサシンギルドの者達のように、異世界から現実世界に転移して来たという存在だった。彼らはWoFに良く似た世界からやって来たと言っていた。断定こそはしなかったものの、それがWoFの世界であるとツクヨは信じ、彼の仮説でもある十六夜と蜜月がこちらの世界に来ているのなら、現実世界へ連れて帰ることも出来るのではないかという期待が生まれた。
ミアもツクヨも、WoFの異常について調査すること承諾し、彼らに情報提供をする代わりに自分達に有益な情報を流してもらえることとなり、ツクヨの目的へと近づき、ミアの慎重な性格を満たす結果となったことを素直に喜んだ。
そしていよいよ本題とも言える、次の目的地についてへと話は進む。白獅から聞いた人が多くいて情報が集まる港町、グラン・ヴァーグを二人に提案すると異論もなくこれを承諾し、次なる地は商業都市でもある港町【グラン・ヴァーグ】に決定した。
一行は出発の準備を進めると共に、ミアはシャルロットに、シンはイデアールにこの事を伝える。
「グラン・ヴァーグか・・・。確かにあそこなら 様々な国や大陸から多くの情報が集まるだろうな。だが、気をつけることだシン。あの町はイベントで出品される景品目当てに、様々な輩が集まる。賊やゴロツキ、ギャングに賞金稼ぎや金に困った犯罪者、参加に身分も歳も経歴も・・・制限の無い誰でも参加できる自由なイベントが数多くあるが故に、素性の知れない者が集まる治安の悪い町としての一面も持っている」
海といえばそう言った話はつきものなのかも知れない。海域には明確な国の領土を表す境目はなく、行動に制限がかかる海上では、物資の強奪や資源の違法入手などが多く行われ、海を主な活動場所にしている海賊や組織の横暴が蔓延っている。制圧しようにも、どこから得てきているのか彼らの船や海上移動手段は巧みで、その上地の利を活かした戦闘技術に政府も頭を悩ませている。
「だが、そう言った場所であるからこそ、お前のクラスギルドももしかしたらあるかも知れないし、仮になかったとしても何かを知る人物には会えるかも知れないな」
「そうだな。・・・ありがとう、イデアール。短い間だったけど世話になった」
「何を言う。お前達に助けられたのはこっちの方さ。それに、折角ユスティーチに来てくれたというのにこんな事に巻き込んでしまって悪かった・・・」
シンは白獅の言っていた、プレイヤー達の性の話を思い出した。彼らの出会ってきたプレイヤー達は、危険と分かっていても異常なクエストや面倒事に首を突っ込んでいく。それは現実世界で後悔してきた者達が、自分を変えるために壁を乗り越えようとするのと同じことなのかもしれない。シン達もまた、アーテムや朝孝、イデアールやシャルロットなどと出会い、彼らのことが放っておけなくなったのも、何か不思議な力によって引き付けられた因果なのだろう。
「何かあれば俺達は、お前達の味方だ。聖都を・・・俺を新たな光へと進ませてくれた恩は忘れない。シュトラールの・・・彼の残した教訓を胸に我々は立ち上がり、新生聖都ユスティーチとして新たに歩き始める。また近くに来ることがあれば是非寄って行ってくれ、歓迎しよう」
シンが現実世界に行っている間にイデアールは、聖騎士や騎士達、そして国民達から復興のリーダーとして頼りにされ、次期ユスティーチの王にはイデアールが相応しいのではないかと、多くの声が上がっていたようだ。
朝孝の意志に共感を得ていた彼ならば、きっと人々を正しい道へと導けることだろう。彼の悩みや理想、大志を知り、直接刃も交えたシンには彼が正に聖人のように映った。シュトラールの目指した黄金郷とは異なるが、彼ならば正しく生きる者達が、正しい人生を送れる理想郷を築けるのかも知れない。
二人は固い握手を交わし、数奇な出会いと、共に激動の数日間を過ごした盟友を得たことと、自分の中の何かを変えられたという成長に感謝した。
彼が現実に戻るという知らせを受けたミアはその日、シャルロットと共に復興のため急遽設けられた救援キャンプで過ごし、その初日にシンのログアウトを確認したという。
彼女はシャルロットの指示に従いながら、復興活動の手伝いをし、空いた時間で聖騎士の城へ行くとリーベと面会し、その日にあった事や仲間達の様子、他愛のない語りなど、主に明るい話題で話し続けた。だが、それでもリーベは言葉を返してくることはなかったが、その表情はどこか健やかにも見えたらしい。
一方のツクヨは、シンがWoFの世界へ戻って来る一日前に目を覚ましたようだ。まだ思い通りに身体が動かなかったツクヨは大事を取り、目覚めたキャンプ地で養生していたらしい。そこで彼は自分が気を失っている間の出来事や、復興の進み具合などの情報を集めながら時を過ごした。
そしてシンも現実世界での出来事と、白獅から聞いた現状知り得た情報を二人と共有する。サラのプレイヤーについての話や、バグの影響は自分達だけではないのかもしれないといった話、そして現実の世界にアサシンギルドがあったことなど、それこそ話だしたらキリが無いほどの情報量だった。
ミアがもし知っていれば事態が好転するかも知れないサラについての情報だったが、彼女はそのプレイヤーについては何も知らず、心当たりもないと言う。
「何故、私が知っているのかもしれないと思ったのかは分からんが、そもそもサラとの付き合いが長いのはシンの方なんじゃないのか?クエストの存在こそ知ってはいたが、あの子の名前までは知らなかったぞ・・・」
慎や白獅には知る由もなかったが、ミアはシンと会う以前からパルディアの街でサラが発注していた異常なクエストについて調べており、調合の知識やサラにコンタクトを取れる店主の女性、偽りの名でミアに協力していたメアリーの存在。彼女こそシン達と同じく、バグによりWoFの世界へ来ることとなったプレイヤー、颯來その人であったのだ。
白獅の期待していた情報を得ることは叶わず、そしてミアも嘘偽りなく話してくれたことに間違いはない。彼らが、サラに起きていた現象について知るのは、まだ先の話になる。
シンの持ってきた情報の中には、ツクヨに希望を持たせるようなものも含まれていた。それはアサシンギルドの者達のように、異世界から現実世界に転移して来たという存在だった。彼らはWoFに良く似た世界からやって来たと言っていた。断定こそはしなかったものの、それがWoFの世界であるとツクヨは信じ、彼の仮説でもある十六夜と蜜月がこちらの世界に来ているのなら、現実世界へ連れて帰ることも出来るのではないかという期待が生まれた。
ミアもツクヨも、WoFの異常について調査すること承諾し、彼らに情報提供をする代わりに自分達に有益な情報を流してもらえることとなり、ツクヨの目的へと近づき、ミアの慎重な性格を満たす結果となったことを素直に喜んだ。
そしていよいよ本題とも言える、次の目的地についてへと話は進む。白獅から聞いた人が多くいて情報が集まる港町、グラン・ヴァーグを二人に提案すると異論もなくこれを承諾し、次なる地は商業都市でもある港町【グラン・ヴァーグ】に決定した。
一行は出発の準備を進めると共に、ミアはシャルロットに、シンはイデアールにこの事を伝える。
「グラン・ヴァーグか・・・。確かにあそこなら 様々な国や大陸から多くの情報が集まるだろうな。だが、気をつけることだシン。あの町はイベントで出品される景品目当てに、様々な輩が集まる。賊やゴロツキ、ギャングに賞金稼ぎや金に困った犯罪者、参加に身分も歳も経歴も・・・制限の無い誰でも参加できる自由なイベントが数多くあるが故に、素性の知れない者が集まる治安の悪い町としての一面も持っている」
海といえばそう言った話はつきものなのかも知れない。海域には明確な国の領土を表す境目はなく、行動に制限がかかる海上では、物資の強奪や資源の違法入手などが多く行われ、海を主な活動場所にしている海賊や組織の横暴が蔓延っている。制圧しようにも、どこから得てきているのか彼らの船や海上移動手段は巧みで、その上地の利を活かした戦闘技術に政府も頭を悩ませている。
「だが、そう言った場所であるからこそ、お前のクラスギルドももしかしたらあるかも知れないし、仮になかったとしても何かを知る人物には会えるかも知れないな」
「そうだな。・・・ありがとう、イデアール。短い間だったけど世話になった」
「何を言う。お前達に助けられたのはこっちの方さ。それに、折角ユスティーチに来てくれたというのにこんな事に巻き込んでしまって悪かった・・・」
シンは白獅の言っていた、プレイヤー達の性の話を思い出した。彼らの出会ってきたプレイヤー達は、危険と分かっていても異常なクエストや面倒事に首を突っ込んでいく。それは現実世界で後悔してきた者達が、自分を変えるために壁を乗り越えようとするのと同じことなのかもしれない。シン達もまた、アーテムや朝孝、イデアールやシャルロットなどと出会い、彼らのことが放っておけなくなったのも、何か不思議な力によって引き付けられた因果なのだろう。
「何かあれば俺達は、お前達の味方だ。聖都を・・・俺を新たな光へと進ませてくれた恩は忘れない。シュトラールの・・・彼の残した教訓を胸に我々は立ち上がり、新生聖都ユスティーチとして新たに歩き始める。また近くに来ることがあれば是非寄って行ってくれ、歓迎しよう」
シンが現実世界に行っている間にイデアールは、聖騎士や騎士達、そして国民達から復興のリーダーとして頼りにされ、次期ユスティーチの王にはイデアールが相応しいのではないかと、多くの声が上がっていたようだ。
朝孝の意志に共感を得ていた彼ならば、きっと人々を正しい道へと導けることだろう。彼の悩みや理想、大志を知り、直接刃も交えたシンには彼が正に聖人のように映った。シュトラールの目指した黄金郷とは異なるが、彼ならば正しく生きる者達が、正しい人生を送れる理想郷を築けるのかも知れない。
二人は固い握手を交わし、数奇な出会いと、共に激動の数日間を過ごした盟友を得たことと、自分の中の何かを変えられたという成長に感謝した。
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