110 / 1,646
消えた聖騎士
しおりを挟む
アーテムの国際指名手配の噂を耳にしたシンとミアは、足早に城内へ入ると真相を確かめる為にイデアールを探す。
城内には、人がほとんど出払っているようで閑散としており、城への出入りをしているのは、ごく一部の人間のようだった。
誰もいないのをいいことに、廊下を走りながら人の気配や声がする部屋を探して行く。
廊下の壁には、アーテムが訪れた際に聖騎士の鎧と戦った戦闘の痕跡、刃で刻まれた壁の傷や照明の破損、床に散らばる鎧の部品や破片があちこちに見受けられる。
シンは城内に入るのが初めてなので、ミアについて行き、迷わないよう彼女から目を離さないでいた。
上層階へと向かっていくミアの様子から、彼女はアーテムとシャーフの決闘の舞台であった玉座の間を目指しているのだろう。 他の部屋には目もくれず、真っ先に向かって行く。
階段を登り終え、角を曲がると廊下の奥の方で一際大きな扉が破損しているのが目に入り、開けっ放しのその部屋へとミアが先に入って行く。
後に続きシンも扉を曲がり、中に入ろうとすると立ち止まっているミアがおり、危うく彼女にぶつかりそうになると、咄嗟に身体を捻り避けるシン。
立ち尽くすミアの顔を振り返って見たシンは、彼女が真面目な表情で先を見つめているのを見ると、彼も同じく彼女の視線の先を追う。
すると・・・・・。
そこには、バルコニーから各国へ伝書を持たせた聖騎士を送り出す、イデアールの姿があった。
用事を終えると二人の気配に気づいたイデアールが、彼らの方を振り向く。
「もう、動けるようになったのか・・・二人共」
まだ身体中を包帯で巻いている状態のイデアールが、共にシュトラールと戦った仲間と面会を果たす。
「イデアール、アンタも無事・・・だったんだよな?」
シンの舐め回すような視線に気づいたイデアールが、自分の身体を見てその理由を悟ると、まだ少し不便があるのだという様子でシンに返す。
「あぁ・・・コレか? まだ痛みや痺れは残ってるんだがな・・・」
「!? それじゃぁまだ動かない方が・・・」
彼の身体を気遣い、心配するシンだったが、イデアールはじっとしていられないのだと首を横に振る。 いや、じっとしていられないのではなく、彼はじっとしている訳にはいかなかったのだ。
「国が大変な状態なんだ・・・。 それに、今部隊を指揮できる人間がいないとなれば尚更、寝ている訳にはいかない」
彼の責任も最もなもので、現在国の王であり聖騎士隊のトップであるシュトラールは死亡が確認されており、シャーフやリーベも重傷を追っている為、動くことができない。
そしてシンは、イデアールの発言に些か疑問に思うことがあり、彼にそれを確かめる。
「隊長クラスの者でなくても、聖騎士の者達で指揮を取ることは可能なんじゃないのか? 俺の印象だが、聖騎士の数も騎士に比べて決して少なくないと見えるが・・・」
シンの疑問に、イデアールは表情を曇らせる。
その反応を見てから気がついたのか、シンは入ってきた扉の外へと視線を送り、耳をすますと、ミアも同じくキョロキョロと辺りを見渡し、何かを探し出そうとしている。
しかし、どうにもおかしい。
皆が出払っているとはいえ、妙に人の気配が少なすぎるように二人は感じた。
「イデアール・・・聖騎士隊はみんな出払っているのか? 何か・・・人の気配が少な過ぎやしないか? 幾ら何でも、城を無防備に・・・ん?」
話の途中で振り返ったシンは、俯いて表情を曇らすイデアールに、何か良からぬ事情があるのではないかと悟る。
「・・・イデアール・・・? 何か、あったのか・・・?」
彼らが聖都に来た時には、警備で上空を飛び回る者や、街中を巡回する者、各要所要所で滞在し、作業にあたる者など、それこそ数え切れないほどの聖騎士がいたのにも関わらず、いくら動乱で犠牲者が出たとはいえ、あまりにも数が減り過ぎている。
そう、動乱を境に・・・。
「・・・まさか・・・」
いち早く察したのはミアの方で、動乱を境に数を減らしたことから、ある男の関与があったのではないかと疑い始める。
なんでもその男は、奇怪な術で鎧を動かしていたのだから、範囲を広め数を増やすことも可能なのではないだろうか。
「・・・?」
まだミアの思っているようなことに、辿り着けずにいるシンは、ミアとイデアールの顔を交互に見ると、冷や汗をかいている様子のイデアールが口を開いた。
「あぁ・・・ミア殿の思っている通りで合っていると・・・思う。 実は・・・」
少し気持ちを落ち着かせた彼は、話すのをためらうかの様に話す。
「聖騎士の過半数以上が・・・、シュトラールの起こした動乱後から姿を消したんだ・・。 いや、消したというより・・・鎧だけとなったような・・・」
その異様な出来事を、イデアールもミアも、身を以て体験していることから、消えてしまった過半数の聖騎士というのは・・・。
シュトラールの息のかかった私兵、つまり中身のない聖騎士であり、彼の式神だったのだ。
城内には、人がほとんど出払っているようで閑散としており、城への出入りをしているのは、ごく一部の人間のようだった。
誰もいないのをいいことに、廊下を走りながら人の気配や声がする部屋を探して行く。
廊下の壁には、アーテムが訪れた際に聖騎士の鎧と戦った戦闘の痕跡、刃で刻まれた壁の傷や照明の破損、床に散らばる鎧の部品や破片があちこちに見受けられる。
シンは城内に入るのが初めてなので、ミアについて行き、迷わないよう彼女から目を離さないでいた。
上層階へと向かっていくミアの様子から、彼女はアーテムとシャーフの決闘の舞台であった玉座の間を目指しているのだろう。 他の部屋には目もくれず、真っ先に向かって行く。
階段を登り終え、角を曲がると廊下の奥の方で一際大きな扉が破損しているのが目に入り、開けっ放しのその部屋へとミアが先に入って行く。
後に続きシンも扉を曲がり、中に入ろうとすると立ち止まっているミアがおり、危うく彼女にぶつかりそうになると、咄嗟に身体を捻り避けるシン。
立ち尽くすミアの顔を振り返って見たシンは、彼女が真面目な表情で先を見つめているのを見ると、彼も同じく彼女の視線の先を追う。
すると・・・・・。
そこには、バルコニーから各国へ伝書を持たせた聖騎士を送り出す、イデアールの姿があった。
用事を終えると二人の気配に気づいたイデアールが、彼らの方を振り向く。
「もう、動けるようになったのか・・・二人共」
まだ身体中を包帯で巻いている状態のイデアールが、共にシュトラールと戦った仲間と面会を果たす。
「イデアール、アンタも無事・・・だったんだよな?」
シンの舐め回すような視線に気づいたイデアールが、自分の身体を見てその理由を悟ると、まだ少し不便があるのだという様子でシンに返す。
「あぁ・・・コレか? まだ痛みや痺れは残ってるんだがな・・・」
「!? それじゃぁまだ動かない方が・・・」
彼の身体を気遣い、心配するシンだったが、イデアールはじっとしていられないのだと首を横に振る。 いや、じっとしていられないのではなく、彼はじっとしている訳にはいかなかったのだ。
「国が大変な状態なんだ・・・。 それに、今部隊を指揮できる人間がいないとなれば尚更、寝ている訳にはいかない」
彼の責任も最もなもので、現在国の王であり聖騎士隊のトップであるシュトラールは死亡が確認されており、シャーフやリーベも重傷を追っている為、動くことができない。
そしてシンは、イデアールの発言に些か疑問に思うことがあり、彼にそれを確かめる。
「隊長クラスの者でなくても、聖騎士の者達で指揮を取ることは可能なんじゃないのか? 俺の印象だが、聖騎士の数も騎士に比べて決して少なくないと見えるが・・・」
シンの疑問に、イデアールは表情を曇らせる。
その反応を見てから気がついたのか、シンは入ってきた扉の外へと視線を送り、耳をすますと、ミアも同じくキョロキョロと辺りを見渡し、何かを探し出そうとしている。
しかし、どうにもおかしい。
皆が出払っているとはいえ、妙に人の気配が少なすぎるように二人は感じた。
「イデアール・・・聖騎士隊はみんな出払っているのか? 何か・・・人の気配が少な過ぎやしないか? 幾ら何でも、城を無防備に・・・ん?」
話の途中で振り返ったシンは、俯いて表情を曇らすイデアールに、何か良からぬ事情があるのではないかと悟る。
「・・・イデアール・・・? 何か、あったのか・・・?」
彼らが聖都に来た時には、警備で上空を飛び回る者や、街中を巡回する者、各要所要所で滞在し、作業にあたる者など、それこそ数え切れないほどの聖騎士がいたのにも関わらず、いくら動乱で犠牲者が出たとはいえ、あまりにも数が減り過ぎている。
そう、動乱を境に・・・。
「・・・まさか・・・」
いち早く察したのはミアの方で、動乱を境に数を減らしたことから、ある男の関与があったのではないかと疑い始める。
なんでもその男は、奇怪な術で鎧を動かしていたのだから、範囲を広め数を増やすことも可能なのではないだろうか。
「・・・?」
まだミアの思っているようなことに、辿り着けずにいるシンは、ミアとイデアールの顔を交互に見ると、冷や汗をかいている様子のイデアールが口を開いた。
「あぁ・・・ミア殿の思っている通りで合っていると・・・思う。 実は・・・」
少し気持ちを落ち着かせた彼は、話すのをためらうかの様に話す。
「聖騎士の過半数以上が・・・、シュトラールの起こした動乱後から姿を消したんだ・・。 いや、消したというより・・・鎧だけとなったような・・・」
その異様な出来事を、イデアールもミアも、身を以て体験していることから、消えてしまった過半数の聖騎士というのは・・・。
シュトラールの息のかかった私兵、つまり中身のない聖騎士であり、彼の式神だったのだ。
0
お気に入りに追加
297
あなたにおすすめの小説
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
全校転移!異能で異世界を巡る!?
小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。
目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。
周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。
取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。
「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」
取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。
そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる