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光の剣と時の刀
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朝孝の振るう剣技は、確かにシャーフのものによく似ていた。
シュトラールも彼との手合わせを、擬似的な朝孝攻略に役立てようとしていたのも事実。
彼が刀を一振りすれば、それはただの一撃に非ず。
シャーフの使っていた技、残月のようにその場にしばらくの間残る斬撃であり、重ねて使う雨夜月でそれを目視し辛くする。
彼の師である朝孝の手にかかれば、その数はシャーフの比ではない。
しかし、シュトラールはそのカラクリを知っている上に、冷静であった。
自身の剣を、細かく角度調整しながら辺りに残る斬撃の位置を正確に読み取り、巧みに躱していく。
「それもッ・・・、彼から教わったのですかッ・・・?」
手を休めることなく振り続ける朝孝は、シュトラールの見事な動きに素直に感服していた。
「簡単な仕組みだ・・・。 だが、流石と言うべきか・・・シャーフの比ではないな。 数が多く、確認するのが一苦労だッ・・・」
「謙遜・・・というのも心得ているのですねッ・・・」
通常の刀の振りに加え、その場に残る斬撃に手を焼いているシュトラールだが、朝孝は彼の発言が、ただの謙遜でないことを感じていた。
並大抵の者では擦り傷一つ受けることなく、これを捌ききるなど到底できる技ではなく、シュトラールの持つ剣一つで斬撃の位置を全て把握していることに違和感を感じた。
「剣だけではない・・・、何か・・・別のもの?」
朝孝が攻撃の手数を増やそうとも、速度を上げようとも、シュトラールはその悉くを捌いてみせる。
それならばと、彼は攻撃のバリエーションを増やし、更にその妙技による攻勢に拍車をかける。
防戦に徹し、彼の知られざる攻撃に備え集中力を高めるシュトラール。
だが、戦況は漸く動きを見せる。
シュトラールに初めて、擦り傷がついた。
「ッ・・・?」
単純に目測を誤ったのかと思っていたシュトラールだが、徐々に身に纏った衣服が斬れ、傷が増え始めたことで、漸く事態の異変に気付く。
「何ッ・・・!? これは明らかに私の目測の誤り・・・ミスによるものではないッ・・・! 何をしたのだッ・・・?」
朝孝の刀を振る攻撃動作に、速度の変化こそあれど、他に変わった動きは観れなかった。
つまり彼自身や、彼の刀を振る動きに変化はないということ。
「・・・変わったのは、この斬撃の方かッ・・・!」
シュトラールはその観察眼から、すぐに自身を追い詰める攻撃の変化に気がつくと、彼は朝孝の攻撃後に残った斬撃に向けて、剣を構え、防御体勢を取る。
すると、その場に固定され、残っているだけだった斬撃が動き出し、シュトラールの構えた剣目掛けて飛んできたのだ。
「見えない斬撃をその場に固定するだけではなく、時間差で動かしたのかッ・・・!?」
彼の推理を聞いて、朝孝はシュトラールの底知れない戦闘のセンスに、目を見開いて固唾を呑んだ。
「・・・まさか・・・、こんなに早く看破されるなんて。 貴方という人は・・・」
後ろへ飛び退き、距離をとった朝孝は、次の一手の算段をする。
だが、自身の間合いで大したダメージを与えられず、後退したということが、シュトラールを勢い連せることになってしまう。
「お前の間合いに入って戦ったのに、この程度か・・・? 驚かされることはあっても窮地に陥ることはない・・・」
シュトラールは手にした剣を掲げる。
「光の剣ッ!!」
彼がスキルを使うと、掲げた剣が強い光を放ち、刀身が光を纏い輝き始める。
「次は、私の番だッ・・・」
シュトラールが剣を振ると、光の斬撃が衝撃波となって朝孝の元へと放たれる。
刀で弾こうと思っていた朝孝だが、衝撃波が直ぐそこにまで近づいた瞬間、高密度のエネルギーでできていることを悟ると、咄嗟にこれを避ける。
朝孝を通り過ぎた光の衝撃波は彼の後方で、どこまで飛んで行ったのか確認できない程、綺麗にその跡を残しながら建物を突き抜けていった。
シュトラールはその後も、攻撃の手を緩めることなく光の斬撃を飛ばし続ける。
アーテムのように身軽な動きで朝孝はコレを躱して行く。
朝孝は幼き頃の人斬り時代、どちらかというとアーテムのように機敏な動きで相手を翻弄する戦い方をしていた。
故にアーテムの師であり、彼のあの動きは朝孝から会得した技術だということが分かる。
しかし、避け続ける彼には一つ気がかりなことがあった。
「建物がッ・・・」
後ろを振り返る朝孝の目に、無残にも建物が破壊されて行く様が映る。
彼の思い出の地、日本の建物を模してわざわざ作った建造物が、徐々に瓦礫と化していくのを目の当たりにし、朝孝は別の手段にて打開策を見つける。
朝孝の残していた、まだ固定されたままの斬撃がシュトラールの光の斬撃に触れると、範囲を狭め少し縮小し、威力を弱めていたのだ。
これに気づいた朝孝は、より見えづらい斬撃を一箇所に集中させ固定する。
朝孝の小細工に気付くも、御構い無しに光の斬撃を放つ。
そしてそれが朝孝の斬撃に当たると、固定されていた斬撃が一気に動き出し、連撃が発動し、シュトラールの光の斬撃を消滅させた。
「だがそんなこと、いつまで続けられる? 何かを守りながら戦えるほど、私は甘くないぞッ・・・!」
「心配には及びません・・・。 これは、守りのためだけの技ではありませんッ・・・!」
その瞬間、シュトラールの懐で何かが炸裂する。
「うッ・・・!?」
咄嗟に後ろへ飛び退くが間に合わず、見えざる斬撃の集合体が連撃となりシュトラールに命中する。
そして後退した背後からも斬撃を食らう。
「何ッ・・・、一体何故ッ・・・!?」
朝孝の斬撃は、飛ばすことは勿論のこと、固定・集結・加速に減速と、時間差攻撃まで可能であり、その発動タイミングも任意に行える。
それ故、朝孝が飛ばした斬撃をシュトラールが避けたと思っていても、彼の背後でピタリと動きを止め、固定されていたのだ。
「まさかッ・・・斬撃の時間を操れるのかッ・・・?」
シュトラールの中で考え至った朝孝のクラス、それは近接職の剣士系クラスに加え、時を操るクラスの“時魔道士”の可能性。
しかし、時を操るという強力なスキルが故に、そのデメリットも大きく、単純に魔力消費が非常に多く、連続使用は疎か、他のスキルさえ使えなくなってしまい、自分の首を絞める結果になることも多い。
「だが何故だ・・・。 何故、何度も・・・いくつもの斬撃の時間を操れるッ・・・!?」
シュトラールが考える朝孝最大の謎が、彼の“斬撃の時を操る”スキルの連続使用とい点であった。
シュトラールも彼との手合わせを、擬似的な朝孝攻略に役立てようとしていたのも事実。
彼が刀を一振りすれば、それはただの一撃に非ず。
シャーフの使っていた技、残月のようにその場にしばらくの間残る斬撃であり、重ねて使う雨夜月でそれを目視し辛くする。
彼の師である朝孝の手にかかれば、その数はシャーフの比ではない。
しかし、シュトラールはそのカラクリを知っている上に、冷静であった。
自身の剣を、細かく角度調整しながら辺りに残る斬撃の位置を正確に読み取り、巧みに躱していく。
「それもッ・・・、彼から教わったのですかッ・・・?」
手を休めることなく振り続ける朝孝は、シュトラールの見事な動きに素直に感服していた。
「簡単な仕組みだ・・・。 だが、流石と言うべきか・・・シャーフの比ではないな。 数が多く、確認するのが一苦労だッ・・・」
「謙遜・・・というのも心得ているのですねッ・・・」
通常の刀の振りに加え、その場に残る斬撃に手を焼いているシュトラールだが、朝孝は彼の発言が、ただの謙遜でないことを感じていた。
並大抵の者では擦り傷一つ受けることなく、これを捌ききるなど到底できる技ではなく、シュトラールの持つ剣一つで斬撃の位置を全て把握していることに違和感を感じた。
「剣だけではない・・・、何か・・・別のもの?」
朝孝が攻撃の手数を増やそうとも、速度を上げようとも、シュトラールはその悉くを捌いてみせる。
それならばと、彼は攻撃のバリエーションを増やし、更にその妙技による攻勢に拍車をかける。
防戦に徹し、彼の知られざる攻撃に備え集中力を高めるシュトラール。
だが、戦況は漸く動きを見せる。
シュトラールに初めて、擦り傷がついた。
「ッ・・・?」
単純に目測を誤ったのかと思っていたシュトラールだが、徐々に身に纏った衣服が斬れ、傷が増え始めたことで、漸く事態の異変に気付く。
「何ッ・・・!? これは明らかに私の目測の誤り・・・ミスによるものではないッ・・・! 何をしたのだッ・・・?」
朝孝の刀を振る攻撃動作に、速度の変化こそあれど、他に変わった動きは観れなかった。
つまり彼自身や、彼の刀を振る動きに変化はないということ。
「・・・変わったのは、この斬撃の方かッ・・・!」
シュトラールはその観察眼から、すぐに自身を追い詰める攻撃の変化に気がつくと、彼は朝孝の攻撃後に残った斬撃に向けて、剣を構え、防御体勢を取る。
すると、その場に固定され、残っているだけだった斬撃が動き出し、シュトラールの構えた剣目掛けて飛んできたのだ。
「見えない斬撃をその場に固定するだけではなく、時間差で動かしたのかッ・・・!?」
彼の推理を聞いて、朝孝はシュトラールの底知れない戦闘のセンスに、目を見開いて固唾を呑んだ。
「・・・まさか・・・、こんなに早く看破されるなんて。 貴方という人は・・・」
後ろへ飛び退き、距離をとった朝孝は、次の一手の算段をする。
だが、自身の間合いで大したダメージを与えられず、後退したということが、シュトラールを勢い連せることになってしまう。
「お前の間合いに入って戦ったのに、この程度か・・・? 驚かされることはあっても窮地に陥ることはない・・・」
シュトラールは手にした剣を掲げる。
「光の剣ッ!!」
彼がスキルを使うと、掲げた剣が強い光を放ち、刀身が光を纏い輝き始める。
「次は、私の番だッ・・・」
シュトラールが剣を振ると、光の斬撃が衝撃波となって朝孝の元へと放たれる。
刀で弾こうと思っていた朝孝だが、衝撃波が直ぐそこにまで近づいた瞬間、高密度のエネルギーでできていることを悟ると、咄嗟にこれを避ける。
朝孝を通り過ぎた光の衝撃波は彼の後方で、どこまで飛んで行ったのか確認できない程、綺麗にその跡を残しながら建物を突き抜けていった。
シュトラールはその後も、攻撃の手を緩めることなく光の斬撃を飛ばし続ける。
アーテムのように身軽な動きで朝孝はコレを躱して行く。
朝孝は幼き頃の人斬り時代、どちらかというとアーテムのように機敏な動きで相手を翻弄する戦い方をしていた。
故にアーテムの師であり、彼のあの動きは朝孝から会得した技術だということが分かる。
しかし、避け続ける彼には一つ気がかりなことがあった。
「建物がッ・・・」
後ろを振り返る朝孝の目に、無残にも建物が破壊されて行く様が映る。
彼の思い出の地、日本の建物を模してわざわざ作った建造物が、徐々に瓦礫と化していくのを目の当たりにし、朝孝は別の手段にて打開策を見つける。
朝孝の残していた、まだ固定されたままの斬撃がシュトラールの光の斬撃に触れると、範囲を狭め少し縮小し、威力を弱めていたのだ。
これに気づいた朝孝は、より見えづらい斬撃を一箇所に集中させ固定する。
朝孝の小細工に気付くも、御構い無しに光の斬撃を放つ。
そしてそれが朝孝の斬撃に当たると、固定されていた斬撃が一気に動き出し、連撃が発動し、シュトラールの光の斬撃を消滅させた。
「だがそんなこと、いつまで続けられる? 何かを守りながら戦えるほど、私は甘くないぞッ・・・!」
「心配には及びません・・・。 これは、守りのためだけの技ではありませんッ・・・!」
その瞬間、シュトラールの懐で何かが炸裂する。
「うッ・・・!?」
咄嗟に後ろへ飛び退くが間に合わず、見えざる斬撃の集合体が連撃となりシュトラールに命中する。
そして後退した背後からも斬撃を食らう。
「何ッ・・・、一体何故ッ・・・!?」
朝孝の斬撃は、飛ばすことは勿論のこと、固定・集結・加速に減速と、時間差攻撃まで可能であり、その発動タイミングも任意に行える。
それ故、朝孝が飛ばした斬撃をシュトラールが避けたと思っていても、彼の背後でピタリと動きを止め、固定されていたのだ。
「まさかッ・・・斬撃の時間を操れるのかッ・・・?」
シュトラールの中で考え至った朝孝のクラス、それは近接職の剣士系クラスに加え、時を操るクラスの“時魔道士”の可能性。
しかし、時を操るという強力なスキルが故に、そのデメリットも大きく、単純に魔力消費が非常に多く、連続使用は疎か、他のスキルさえ使えなくなってしまい、自分の首を絞める結果になることも多い。
「だが何故だ・・・。 何故、何度も・・・いくつもの斬撃の時間を操れるッ・・・!?」
シュトラールが考える朝孝最大の謎が、彼の“斬撃の時を操る”スキルの連続使用とい点であった。
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