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アーテムの正義
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シンとミアの表情から察し、アーテムは話をまとめてくれた。
「要するに、だ。 この聖都ユスティーチにいる間は、犯罪行為は勿論のこと、迷惑行為の禁止、それに自分でも意識しないような、他人に迷惑や不快感を与える行為をしないことだ」
彼の言葉にシンは、我に帰る。
「・・・あぁ、そうだな。 ユスティーチのことについては、よく分かったよ、ありがとう」
噂に聞いていた平和と秩序の都市とは、国民に平和を約束する代わりに、秩序を守ってもらうという意味が込められている。それが今の聖都ユスティーチである。
「アンタらは、ここに何しに来たんだ? 冒険者っていうなら、そんなに長居することもねぇだろ・・・」
アーテムが目的について二人に聞いた。
このしつもんには、今まで口数の少なかったミアが答えた。シンは少しこの国について考え過ぎているとミアは悟り、本来の目的と、みすみす危険に首を突っ込まないようにと、シンに言い聞かせる様に話した。
「あぁ、そのつもりだ。 私らはギルドを探してる。 そこで必要な物資やスキル、それにちょっとしたクエストを済ませたらユスティーチを発とうと思ってる。 なぁ?シン」
ミアが突然話を振ってきたことに驚いたシンは、ミアの顔を見ると、何か言いたそうなミアの目を見て、すぐに察しがついた。またメアの時の様な異常事態に巻き込まれたら、次は助かるか分からない。死んだらどうなるか分からない以上、危険は避けるべきだ。
「あぁ・・・そうだ、そうだった・・・。 俺はシーフのギルド、ミアは調合士のギルドを探してる。 街には詳しいんだろ? よかったら何処にあるか教えてくれないか?」
シンは二人の本当のクラスを隠しつつ、ちゃんと各々が専門とするクラスのギルドが、この広い街の何処にあるのかをアーテムに聞いた。
「シーフと調合士・・・ねぇ・・・」
アーテムはシンの質問に、机に肘をつき、二人をジロッと見ながら答える。
「調合士のギルドは、市街地の中央、聖騎士達の本拠地にあたる聖都の中にある。 シーフのギルドについてだが・・・、仮にも平和と秩序を掲げる国だからな・・・。そういう類のクラスギルドは無いんだ・・・」
あの話をされた後だから、尚更シンはシーフギルドが無いことに納得した。
「そう・・・だよな。 まぁ、分かるよ」
アーテムは次にミアの方を向くと、道案内について話した。
「それと・・・、聖都へなんだが・・・。 俺たちは聖都“まで”の道しか案内出来ない。 聖都内は自分で探してもらうことになるとだけ、伝えておこう」
「・・・? どうしてだ?」
アーテムの含む言い方に、ミアが疑問を投げかける。
「俺らルーフェン・ヴォルフの活動は、市街地の極地的な・・・南部にだけ認められている。 だから、俺らが聖都に着いていっても、他の市民達と変わらず助けることもできなければ、庇い立てすることも出来ない。 それに俺たちは聖都の連中にあまり良く思われていない」
聖都ユスティーチの王にして、聖騎士隊のリーダーであるシュトラールの創り出した正しい者が正しく生きられる都市。そんな彼のやり方に反発するルーフェン・ヴォルフの活動は、シュトラールを信仰する聖都で暮らす者達にとっては、良いものではないだろう。
きっとシュトラールが、アーテム達の聖都入りを許そうとも、聖都で暮らす者達が、それを許さない。アーテム達が守ろうとする者達に、疎ましく思われるのは、彼らにとっても辛いものがあるのだろう。
「聖都までは、ナーゲルに案内させよう」
通信機を使ってナーゲルを部屋へ呼び戻すと、アーテムは次にシンの今後について提案を出してくれた。
「シーフのギルドはないが、シーフでも扱える短剣や短刀、それに刀のスキルを習得できる場所なら案内してやれる。 それに、そこなら誰でも受けられるクエストなんかもあるかもな」
「それは助かる。 それじゃぁ俺はそこに案内を頼みたい」
アーテムは二人の目的地が別々になってしまうことに対して、気にかけてくれた。
こういう所がきっと仲間達に慕われるのだろうか。
「別行動になっちまう様だが・・・、大丈夫か?」
「あぁ、それは構わない。 シン、お互い用事が済んだらまた合流することにしよう。何かあればメッセージを送ってくれ」
彼の心配を振り払う様にミアが答える。
「分かった。 それじゃぁまた後で」
ミアは戻ってきたナーゲルと共に部屋を後にする。
アーテムもそれを任せたぞと言う様に送り出す。
「さぁ、それじゃぁ俺らも行くとするか!」
シンはアーテムの申し出に驚いた。
まさかリーダーが直々に案内をするというのだろうか。
「アーテムが自ら!?」
「実はこれから案内するところは、俺の師匠の道場なんだ。 たまには顔を出しておかないとな」
そういうと豪快に手招きをし、道場があるという場所へとシンを案内する。
「アーテムさん、何方へ?」
部屋を出てすぐ、地下広間に居たルーフェン・ヴォルフのメンバーに話しかけられた。
「おう! 道場に行ってくる。 何かあれば幹部連中に知らせろ」
「了解です! お気をつけて!」
アーテムは入ってきた階段とは別方向へと向かっていく。
「その道場とやらは、何処にあるんだ?」
「市街地の南部も南部、端っこにある道場だ!」
それはシン達が、この聖都ユスティーチへと入ってきた城壁の方だろうか。だとしたら随分と端にあるのだなと、シンは少し不思議に思った。
地下通路を通り、南部の果てへと向かう道中、アーテムは聖都のギルド事情について話してくれた。
「この都市は何度も話した通り、騎士により統治されてる都市だ。だから騎士に必要な戦闘スキルを習得できるギルドが主にある」
騎士ということは、クラスはナイトになるのだろうか。
剣士よりも守りに重視したクラスで、主に戦闘では仲間を守り、敵の攻撃を受け止めるタンク役として活躍するクラス。
「と、いうことは戦士ギルドや剣士ギルド、それからナイトギルドとかか?」
シンの予想を聞いて、アーテムは嬉しそうに首を横に振った。
「ふふふ・・・、まぁ普通ならそう思うだろうな。 だがユスティーチの騎士には沢山種類があって、それによって違ったスキルが必要になってくる。簡単に言えば武器の種類によって違うってこった。剣だけじゃねぇ、槍や弓、素手による武術に盾術。それにサポートでも必要になる調合のスキルや簡単な魔法なんかも必要になったりするんだ」
ユスティーチにおける騎士というのは、一般的に言われるナイトに必要なスキルだけではなく、様々な武器種による戦闘に備えたスキルが必要になるということだろうか。
「まぁ、騎士になるのに全てが必要になる訳じゃねぇ。 自分が何処の所属に入りたいかで必要なスキルが変わってくるんだ。だから道場に通ったりして力を身に付けていくんだが、勿論戦う術を学ぶのもタダじゃねぇ・・・」
ここからの話は、アーテムの幼少期の話だろうか。
これから向かう道場と彼の繋がりについてシンは知ることになる。
「貧乏人には厳しいもんがある。 ましてや孤児なんかには到底払える額じゃねぇ。これからいく道場の先生は、そんな金のねぇ奴でも、誰彼構わず受け入れてくれる変わり者の道場だ・・・」
そういうと彼の声のトーンは、急に落ち着き出す。
「そこで俺は、大事な仲間と、本当の正義について学んだと思ってんだ・・・。だから・・・、シュトラールのやり方は間違ってる・・・・。あんなんじゃただ、自分の認められないものを“悪”と決めつけ排除してるだけに過ぎねぇ。どこかでまた“悪”を育てることになっちまう。だってそうだろ?誰だって人は間違いや過ちを犯すもんだ。それの何がいけなかったのか、何が人に迷惑をかけているのか教えて、間違いを正してやりゃぁ、そいつの中にある“悪”を取り除いてやることだって出来るはずなんだ・・・」
彼は彼なり正しいと思う正義をもって行動している。
そしてそれはシュトラールとは違った正義であり、きっといつかぶつかってしまう日が来てしまうのだろうか。
そうなれば騎士隊も、ルーフェン・ヴォルフも。
ファウストやナーゲル、地下にいた彼らも無事では済まないだろう。
和解することが出来なければ、いずれ争うことになるかもしれない事を、彼らは分かっているのだろうか。
ミアとは危険に首を突っ込まないと約束したが、彼らのことを知れば知るほど、シンは彼らのことを放っておくことが出来なくなりそうで、どうしたら良いのか分からなくなってきた。
「要するに、だ。 この聖都ユスティーチにいる間は、犯罪行為は勿論のこと、迷惑行為の禁止、それに自分でも意識しないような、他人に迷惑や不快感を与える行為をしないことだ」
彼の言葉にシンは、我に帰る。
「・・・あぁ、そうだな。 ユスティーチのことについては、よく分かったよ、ありがとう」
噂に聞いていた平和と秩序の都市とは、国民に平和を約束する代わりに、秩序を守ってもらうという意味が込められている。それが今の聖都ユスティーチである。
「アンタらは、ここに何しに来たんだ? 冒険者っていうなら、そんなに長居することもねぇだろ・・・」
アーテムが目的について二人に聞いた。
このしつもんには、今まで口数の少なかったミアが答えた。シンは少しこの国について考え過ぎているとミアは悟り、本来の目的と、みすみす危険に首を突っ込まないようにと、シンに言い聞かせる様に話した。
「あぁ、そのつもりだ。 私らはギルドを探してる。 そこで必要な物資やスキル、それにちょっとしたクエストを済ませたらユスティーチを発とうと思ってる。 なぁ?シン」
ミアが突然話を振ってきたことに驚いたシンは、ミアの顔を見ると、何か言いたそうなミアの目を見て、すぐに察しがついた。またメアの時の様な異常事態に巻き込まれたら、次は助かるか分からない。死んだらどうなるか分からない以上、危険は避けるべきだ。
「あぁ・・・そうだ、そうだった・・・。 俺はシーフのギルド、ミアは調合士のギルドを探してる。 街には詳しいんだろ? よかったら何処にあるか教えてくれないか?」
シンは二人の本当のクラスを隠しつつ、ちゃんと各々が専門とするクラスのギルドが、この広い街の何処にあるのかをアーテムに聞いた。
「シーフと調合士・・・ねぇ・・・」
アーテムはシンの質問に、机に肘をつき、二人をジロッと見ながら答える。
「調合士のギルドは、市街地の中央、聖騎士達の本拠地にあたる聖都の中にある。 シーフのギルドについてだが・・・、仮にも平和と秩序を掲げる国だからな・・・。そういう類のクラスギルドは無いんだ・・・」
あの話をされた後だから、尚更シンはシーフギルドが無いことに納得した。
「そう・・・だよな。 まぁ、分かるよ」
アーテムは次にミアの方を向くと、道案内について話した。
「それと・・・、聖都へなんだが・・・。 俺たちは聖都“まで”の道しか案内出来ない。 聖都内は自分で探してもらうことになるとだけ、伝えておこう」
「・・・? どうしてだ?」
アーテムの含む言い方に、ミアが疑問を投げかける。
「俺らルーフェン・ヴォルフの活動は、市街地の極地的な・・・南部にだけ認められている。 だから、俺らが聖都に着いていっても、他の市民達と変わらず助けることもできなければ、庇い立てすることも出来ない。 それに俺たちは聖都の連中にあまり良く思われていない」
聖都ユスティーチの王にして、聖騎士隊のリーダーであるシュトラールの創り出した正しい者が正しく生きられる都市。そんな彼のやり方に反発するルーフェン・ヴォルフの活動は、シュトラールを信仰する聖都で暮らす者達にとっては、良いものではないだろう。
きっとシュトラールが、アーテム達の聖都入りを許そうとも、聖都で暮らす者達が、それを許さない。アーテム達が守ろうとする者達に、疎ましく思われるのは、彼らにとっても辛いものがあるのだろう。
「聖都までは、ナーゲルに案内させよう」
通信機を使ってナーゲルを部屋へ呼び戻すと、アーテムは次にシンの今後について提案を出してくれた。
「シーフのギルドはないが、シーフでも扱える短剣や短刀、それに刀のスキルを習得できる場所なら案内してやれる。 それに、そこなら誰でも受けられるクエストなんかもあるかもな」
「それは助かる。 それじゃぁ俺はそこに案内を頼みたい」
アーテムは二人の目的地が別々になってしまうことに対して、気にかけてくれた。
こういう所がきっと仲間達に慕われるのだろうか。
「別行動になっちまう様だが・・・、大丈夫か?」
「あぁ、それは構わない。 シン、お互い用事が済んだらまた合流することにしよう。何かあればメッセージを送ってくれ」
彼の心配を振り払う様にミアが答える。
「分かった。 それじゃぁまた後で」
ミアは戻ってきたナーゲルと共に部屋を後にする。
アーテムもそれを任せたぞと言う様に送り出す。
「さぁ、それじゃぁ俺らも行くとするか!」
シンはアーテムの申し出に驚いた。
まさかリーダーが直々に案内をするというのだろうか。
「アーテムが自ら!?」
「実はこれから案内するところは、俺の師匠の道場なんだ。 たまには顔を出しておかないとな」
そういうと豪快に手招きをし、道場があるという場所へとシンを案内する。
「アーテムさん、何方へ?」
部屋を出てすぐ、地下広間に居たルーフェン・ヴォルフのメンバーに話しかけられた。
「おう! 道場に行ってくる。 何かあれば幹部連中に知らせろ」
「了解です! お気をつけて!」
アーテムは入ってきた階段とは別方向へと向かっていく。
「その道場とやらは、何処にあるんだ?」
「市街地の南部も南部、端っこにある道場だ!」
それはシン達が、この聖都ユスティーチへと入ってきた城壁の方だろうか。だとしたら随分と端にあるのだなと、シンは少し不思議に思った。
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「ふふふ・・・、まぁ普通ならそう思うだろうな。 だがユスティーチの騎士には沢山種類があって、それによって違ったスキルが必要になってくる。簡単に言えば武器の種類によって違うってこった。剣だけじゃねぇ、槍や弓、素手による武術に盾術。それにサポートでも必要になる調合のスキルや簡単な魔法なんかも必要になったりするんだ」
ユスティーチにおける騎士というのは、一般的に言われるナイトに必要なスキルだけではなく、様々な武器種による戦闘に備えたスキルが必要になるということだろうか。
「まぁ、騎士になるのに全てが必要になる訳じゃねぇ。 自分が何処の所属に入りたいかで必要なスキルが変わってくるんだ。だから道場に通ったりして力を身に付けていくんだが、勿論戦う術を学ぶのもタダじゃねぇ・・・」
ここからの話は、アーテムの幼少期の話だろうか。
これから向かう道場と彼の繋がりについてシンは知ることになる。
「貧乏人には厳しいもんがある。 ましてや孤児なんかには到底払える額じゃねぇ。これからいく道場の先生は、そんな金のねぇ奴でも、誰彼構わず受け入れてくれる変わり者の道場だ・・・」
そういうと彼の声のトーンは、急に落ち着き出す。
「そこで俺は、大事な仲間と、本当の正義について学んだと思ってんだ・・・。だから・・・、シュトラールのやり方は間違ってる・・・・。あんなんじゃただ、自分の認められないものを“悪”と決めつけ排除してるだけに過ぎねぇ。どこかでまた“悪”を育てることになっちまう。だってそうだろ?誰だって人は間違いや過ちを犯すもんだ。それの何がいけなかったのか、何が人に迷惑をかけているのか教えて、間違いを正してやりゃぁ、そいつの中にある“悪”を取り除いてやることだって出来るはずなんだ・・・」
彼は彼なり正しいと思う正義をもって行動している。
そしてそれはシュトラールとは違った正義であり、きっといつかぶつかってしまう日が来てしまうのだろうか。
そうなれば騎士隊も、ルーフェン・ヴォルフも。
ファウストやナーゲル、地下にいた彼らも無事では済まないだろう。
和解することが出来なければ、いずれ争うことになるかもしれない事を、彼らは分かっているのだろうか。
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