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プロローグ
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薄暗い遺跡の中、鉄と鉄のぶつかり合う音が響く。
壁に掛けられた灯の炎が大きく揺れる程に、開けた
一室を駆け回る男。
そしてその男の前には、この遺跡には似つかわしくない程の大柄なモンスターがいた。
男の放つ投擲武器を巨大な斧で弾いていくモンスター。しかし全ては捌き切れない。
無数に放たれる武器は、弾かれながらもモンスターの振るう斧を掻い潜り、その屈強な身体へと突き刺さる。
投擲が止むとモンスターが攻勢に出る。巨大な斧を縦横無尽に振り回すが、男は素早い身のこなしで攻撃を避けていく。
だが、このままでは男のジリ貧でいつか攻撃は当たってしまうだろう。
立派な身体つきとは言えないその身でモンスターの攻撃を食らえば1撃で致命傷になるのは明らかだ。
男は決死の行動に出る。
モンスターの股下を滑り込むように移動しながら脚の腱を斬った。
モンスターは思わず膝をつくが、背後に行った男を目掛けて斧を勢いよく振るった。
しかし、そこに男の姿はなく気配も消えていた。
先ほどまでの戦いが嘘のように静まり返る室内。
音もなく風もない。モンスターの息遣いだけが聞こえる中、辺りを見渡し男を探す。
男は天井にいた。
逆さまの状態でしゃがんでいる。足の裏が天井に張り付いているのだ。
そして、その手には何処から出したのか、投擲用の槍が握られていた。
男は少しの音を立てることもなく、槍を投げる態勢をとるために上半身を大きくひねる。
限界まで溜められた投擲のための態勢、男は狙いを定め遂に動き出す。
槍を握る手に力が入り、一気に振り下ろさせた。
槍は凄まじい速さで放たれ、そしてモンスターの頭部を貫き、腹部に至るまで突き刺ささる。
モンスターは声をあげることも出来なかった。
壮絶な1撃はそれ程までに一瞬の出来事で苦痛すら感じさせないものだった。
モンスターはゆっくりと消滅しいく。
【ミッションを 達成しました。10秒後にエリアから移動します。】
視界にミッション達成の演出が現れると共にアナウンスが流れた。
男は大きく息を吸い、1度だけ深呼吸をした。
まもなくして男は遺跡の一室からワープした。
ワープした先は、どこかの地下にアリの巣のように様々な部屋を築き上げた、秘密基地のような構造をした場所の一室のようだ。
部屋にはワープしてきた男とは別に、もう1人いた。黒いコートにフードを深く被った者。
手には羊皮紙でできた紙とカップを持っていた。
カップからは湯気といい香りがした。
男が好んで飲んでいるものだろう。部屋の食器棚の隣に同じような香りがする粉末の入った袋がいくつもあった。
ミッションを終えた報告をしに、男は歩き彼に近づいていった。木製の床がギシギシと軋むと、彼は男の存在に気がついた。
「戻ったか、ご苦労だった。」
彼は労いの言葉を男に贈った。飲んでいたカップを机に置くと、もう片方の手で持っていた紙を巻物のようにクルクルと巻き、紙の裏側に付いていたボタンに糸をまきつけて閉じた。
紙を机に置く、彼は男の方を向くと話を続けた。
「ここまでの君の功績からすれば、必ずこなせると思っていた。」
はっきりは見えなかったが、彼の口元は少し笑っているように見えた。
「信頼に預かり、光栄でございます。」
男は少し皮肉ったように、手を胸に添え頭を下げた。
彼は男に近づき横に並ぶ。そして、肩に手を乗せて言う。
「すまないと思っているんだ、実際。君以外に適任がいなかった。新人の者達には経験が足りないだろうし、幹部組は出払っていた。」と、申し訳なさそうな声色で事情を話した。
「それにしたって、あんな奴を相手にするなんて俺らの仕事じゃないですよ。他のギルドの奴等にやらせればよかったんだ。1発でももらったら危ないような、生きた心地がしなかった。」
男は、身振り手振りつけ心情を表した。それを頷きながら、わかったわかったというように男の愚痴を聞き、机の方へとゆっくり歩いていった。
「大体…」
男の止まらぬ愚痴を遮るように彼は言った。
「他のギルドには頼めない、折り入った事情があるようだった。あの遺跡は帝国領土にあるもの。そして依頼者の提示してきた報酬が、内容の割には破格のものだった。近隣の国が何か企てているんだろうな。」
真剣な顔で話した彼は依頼の話を終えると、空気を変えるように続けた。
「まぁ、俺たちは依頼された仕事をこなすだけだ。深入りはするもんじゃない。」
少しの間があった後、何か穏やかに彼は話した。
「俺はな、君を特に信用している。ウチのギルドの誰よりもだ。散々、無理難題を押し付けたかもしれないが、君を成長させるのと同時に、他の者には頼めなかったからだ。」
確かに彼の依頼の中には、よくわからない行動が含まれていたり、依頼とは直接関係ないものがある場合が多かった。
これ以上愚痴をこぼすのも悪いと思い、男は話を本筋へと戻す。
「…えぇ、わかりました。とりあえず今回はこの辺で。ミッションの報酬を…」そう、続けようとした時、視界にノイズが走りだした。
見ていた景色は時間を止められたかのようにピタッと止まり、ノイズは始めは小さく、そして徐々に大きくなり、オーディオにもノイズが起こる。
激しくなるノイズにより、頭が割れそうなくらい痛くなる、とても立っていられず、頭を抱えながら男は倒れた。
止まった世界の中、床に倒れ、薄れゆく意識の中で見た、ノイズの広がる世界に突如としてその姿を現したもう1人の誰か。
さっきまで話をしていた男と彼の他に、もう1人。
黒いローブを羽織り顔は見えない。そもそも人であるかも分からない。
そのモノは倒れた男にゆっくり近づくと、態勢を低くして、こう囁いた。
「ようこそ、ワールドオブファンタジア へ」
壁に掛けられた灯の炎が大きく揺れる程に、開けた
一室を駆け回る男。
そしてその男の前には、この遺跡には似つかわしくない程の大柄なモンスターがいた。
男の放つ投擲武器を巨大な斧で弾いていくモンスター。しかし全ては捌き切れない。
無数に放たれる武器は、弾かれながらもモンスターの振るう斧を掻い潜り、その屈強な身体へと突き刺さる。
投擲が止むとモンスターが攻勢に出る。巨大な斧を縦横無尽に振り回すが、男は素早い身のこなしで攻撃を避けていく。
だが、このままでは男のジリ貧でいつか攻撃は当たってしまうだろう。
立派な身体つきとは言えないその身でモンスターの攻撃を食らえば1撃で致命傷になるのは明らかだ。
男は決死の行動に出る。
モンスターの股下を滑り込むように移動しながら脚の腱を斬った。
モンスターは思わず膝をつくが、背後に行った男を目掛けて斧を勢いよく振るった。
しかし、そこに男の姿はなく気配も消えていた。
先ほどまでの戦いが嘘のように静まり返る室内。
音もなく風もない。モンスターの息遣いだけが聞こえる中、辺りを見渡し男を探す。
男は天井にいた。
逆さまの状態でしゃがんでいる。足の裏が天井に張り付いているのだ。
そして、その手には何処から出したのか、投擲用の槍が握られていた。
男は少しの音を立てることもなく、槍を投げる態勢をとるために上半身を大きくひねる。
限界まで溜められた投擲のための態勢、男は狙いを定め遂に動き出す。
槍を握る手に力が入り、一気に振り下ろさせた。
槍は凄まじい速さで放たれ、そしてモンスターの頭部を貫き、腹部に至るまで突き刺ささる。
モンスターは声をあげることも出来なかった。
壮絶な1撃はそれ程までに一瞬の出来事で苦痛すら感じさせないものだった。
モンスターはゆっくりと消滅しいく。
【ミッションを 達成しました。10秒後にエリアから移動します。】
視界にミッション達成の演出が現れると共にアナウンスが流れた。
男は大きく息を吸い、1度だけ深呼吸をした。
まもなくして男は遺跡の一室からワープした。
ワープした先は、どこかの地下にアリの巣のように様々な部屋を築き上げた、秘密基地のような構造をした場所の一室のようだ。
部屋にはワープしてきた男とは別に、もう1人いた。黒いコートにフードを深く被った者。
手には羊皮紙でできた紙とカップを持っていた。
カップからは湯気といい香りがした。
男が好んで飲んでいるものだろう。部屋の食器棚の隣に同じような香りがする粉末の入った袋がいくつもあった。
ミッションを終えた報告をしに、男は歩き彼に近づいていった。木製の床がギシギシと軋むと、彼は男の存在に気がついた。
「戻ったか、ご苦労だった。」
彼は労いの言葉を男に贈った。飲んでいたカップを机に置くと、もう片方の手で持っていた紙を巻物のようにクルクルと巻き、紙の裏側に付いていたボタンに糸をまきつけて閉じた。
紙を机に置く、彼は男の方を向くと話を続けた。
「ここまでの君の功績からすれば、必ずこなせると思っていた。」
はっきりは見えなかったが、彼の口元は少し笑っているように見えた。
「信頼に預かり、光栄でございます。」
男は少し皮肉ったように、手を胸に添え頭を下げた。
彼は男に近づき横に並ぶ。そして、肩に手を乗せて言う。
「すまないと思っているんだ、実際。君以外に適任がいなかった。新人の者達には経験が足りないだろうし、幹部組は出払っていた。」と、申し訳なさそうな声色で事情を話した。
「それにしたって、あんな奴を相手にするなんて俺らの仕事じゃないですよ。他のギルドの奴等にやらせればよかったんだ。1発でももらったら危ないような、生きた心地がしなかった。」
男は、身振り手振りつけ心情を表した。それを頷きながら、わかったわかったというように男の愚痴を聞き、机の方へとゆっくり歩いていった。
「大体…」
男の止まらぬ愚痴を遮るように彼は言った。
「他のギルドには頼めない、折り入った事情があるようだった。あの遺跡は帝国領土にあるもの。そして依頼者の提示してきた報酬が、内容の割には破格のものだった。近隣の国が何か企てているんだろうな。」
真剣な顔で話した彼は依頼の話を終えると、空気を変えるように続けた。
「まぁ、俺たちは依頼された仕事をこなすだけだ。深入りはするもんじゃない。」
少しの間があった後、何か穏やかに彼は話した。
「俺はな、君を特に信用している。ウチのギルドの誰よりもだ。散々、無理難題を押し付けたかもしれないが、君を成長させるのと同時に、他の者には頼めなかったからだ。」
確かに彼の依頼の中には、よくわからない行動が含まれていたり、依頼とは直接関係ないものがある場合が多かった。
これ以上愚痴をこぼすのも悪いと思い、男は話を本筋へと戻す。
「…えぇ、わかりました。とりあえず今回はこの辺で。ミッションの報酬を…」そう、続けようとした時、視界にノイズが走りだした。
見ていた景色は時間を止められたかのようにピタッと止まり、ノイズは始めは小さく、そして徐々に大きくなり、オーディオにもノイズが起こる。
激しくなるノイズにより、頭が割れそうなくらい痛くなる、とても立っていられず、頭を抱えながら男は倒れた。
止まった世界の中、床に倒れ、薄れゆく意識の中で見た、ノイズの広がる世界に突如としてその姿を現したもう1人の誰か。
さっきまで話をしていた男と彼の他に、もう1人。
黒いローブを羽織り顔は見えない。そもそも人であるかも分からない。
そのモノは倒れた男にゆっくり近づくと、態勢を低くして、こう囁いた。
「ようこそ、ワールドオブファンタジア へ」
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