完全な人

もとち きい

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砂漠の住人

ひろくん

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ボクは「ひろくん」そうよばれている。
みんながだいすき。
はしるのがだいすき。

きょうはみんなこわい顔。
「ひろくんは走らせないでいいじゃないか!」
かずくんがおこってる。
「少しの距離ならいいんじゃない?」
ほんださんがなにかいってる。
「俺たち毎年負けてるじゃねーか!」
「6年生になったのに思い出にならないわ!」
「ひろくんのせいだ!」
ことば。ことば。ことば。
ぼくのこと?ぼくはどうしたらいいの?
「あぁ、、」。
みんなこわいよ。

そのときいちばんこわいのはケイくんだった。

バンってつくえをりょうてでたたいた。
そしてこんなことをいった。

「おい!お前ら本気で言ってんのかよ!ひろくんが6年間この2組で一緒で思い出がなくなる?ふざけんなっ!文句ある奴はおれが相手するぞ、ひろくんは誰がなんと言おうと俺の大事なクラスメートだ!!」

またケイくんおこってる。
でもケイくんこわくない。
ケイくんいつもまもってくれる。
こないだもズボンぬがされたときたすけてくれた。ぎゅうにゅうのふたもあけてくれた。

「少し落ち着きましょう」。
せんせい。

「だいたい先生だってこんな話し合いする時点であたまおかしいよ!ひろくんの前で運動会のリレーにひろくんを出すか出さないかなんて!」
ケイくん。

「ケイくん、あなたの言うことはわかるわ、でもみんなが同じ考えで同じ想いでいる事は難しいのよ、だから話し合いで大人は解決するのよ。その練習だと思ってちょうだい」
せんせいはおこってない?

「ケイの言う事おれは賛成だ」
このクラスでいちばんつよいこ。
しょうへいくんだ。
「ひろくんがさ、いてさ俺たちいちばん仲がいいクラスになれてんじゃん?クラスマッチでも負けたし合唱でも負けたけど、どのクラスよりも練習したし放課後残って残業するの許されてたのも俺たちだけでさ、楽しかったじゃん」

「しょうへい。ありがとうな、そうだよ今回はもっともっと練習してひろくんが走って優勝できるクラスになろう!」
ケイくん。

「しょうへいまで言うんならしかたねーな」
かずくん。

ほんださんは。
「ひろくんどれくらい走るの?6年生は運動場半周するんだよ。いくらなんでも長すぎるよ」

ケイくんが。
「ひろくん。半周だっておれと一緒に走れるよな?ひろくんのペースでいいんだよ。どうかな?」。
きいてきた。

「はい」
ぼくはケイくんとならなんでもできるよ。

「じゃあケイくんはひろくんと一緒に走る練習をしてくれるかしら?リレーはバトンを繋ぐスポーツです。バトンを託した仲間を信じましょう。きょう皆さんは素晴らしい事を決めました。この6年2組緑組は32名全員で走る事になりました。私はこの組の担任で本当に誇りに思います」。
せんせいないてる。なかないで。

「泣かないで」。
「あなた」。

「タカコ、、ごめん」。

「ひろくん、、?」。

「うん」。

「ひろくん元気かなぁ」。

よく見る夢ベスト3に入る夢だった。
ひろくんの気持ちが流れ込む。子供達の心が流れ込む。先生の大人の安堵が流れ込む。涙目で俺はタカコを抱いた。

「おれ、こんなんなっちまってさ、ひろくんもうたすけられねーよ」。

午前三時少し前。
追加の睡眠薬を砕いて飲み俺はやがてねむった。
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