上 下
2 / 4

何かが起こるかも!

しおりを挟む
 それから数ヶ月。
 ブランは一通り仕事が出来るようになっていき、何気ない平穏な日々を過ごしていた。

 ――それがある時一変する。

 いつものように玄関の掃除を終え、戻ろうとした時。
 ふと振り向くと、そこには黒髪黒目の狼耳を持った人が立っていた。

(狼族かな……? 珍しい……)

 狼族は、数がとても少ないから凄く珍しい。
 それにしても……一体何をしに来たのだろうか。

「ボス……いや、田神という者を見なかったか?」
「田神……ですか……」

 そんなことを考えていると、ブランは声をかけられた。
 田神……そんな名前の人が来ていただろうか。
 事務の仕事はあまりした事が無いため、ブランにはわからない。

「――ちょっと調べてみます!」

 そう言うとブランは、事務の人に確認を取りに行った。
 だが、何かおかしい。
 何が……とも言えないが、何となくブランの野生の勘がそう警告している。
 急いで振り返ると、狼族の人の髪は変わらなかったが、目の色が赤色になっていた。

「もしかして、戦闘個体……!?」

 戦闘個体――戦闘に特化した、あらゆる自然現象の一つを操る事が出来る人。
 数が非常に少なく、滅多に見られるものではない。

 ブランはそう聞いていたが、この人がその戦闘個体なのだろうか。
 ブランは驚くばかりだった。

 耳を澄ませ、目を閉じて音を聞く。
 ――やはりこの人は戦闘個体だ。
 呼吸音も荒いし、血流も速いし、心拍数も高い……
 人探しだから、多少はそうなるだろう。

 だが、ブランには違いがハッキリと分かる。
 なんせブランは耳がとても良い。
 良いというレベルではない、もはや人知を超えている。

 音を調べ終わった後、ブランはハッと我に返る。
 ――こんな事をしている場合ではなかった。
 ブランはすぐさま事務に確認を取りに行き、話を聞くと、狼族の人がいた場所へと戻る。

「昨日来てたみたいです……」
「本当か!!」
「はい、お相手を……した方? が来て証言してくれました」

 そうなのだ。
 ブランが事務の人に話を聞いていたら、ちょうど田神の相手をした人が通りかかって、わけを話してくれた。
 なんでも珍しいお客さんだったようで……

『なんかねー、髪の毛が凄く短くてねぇ、ほとんど無かったよぉ? あー、それにぃ、翼が生えてたのぉ』
『つ、翼……!?』
『そぉ。それにねー、耳が無かったのぉ。不思議だよねぇ』

 ……というやり取りをした後に、狼族の人に報告をしたのだが、なんと不思議な人なのだろう。
 耳が無く……翼が生えている……
 考えても答えが出るわけではないのは分かっているのだが……どうしても気になってしまう。
 そこで、狼族の人に聞こうと思っていたのだが……

「そうか。来ていたのか……すれ違ってしまったのかな……」

 そう言うと、ものすごいスピードで帰ってしまった。
 もうその人がいた形跡すら残っていない。

(この中、探さなくても良いのかな)

 お相手をするのがどうしても夜になってしまうので、その後疲れ果ててお泊まりをする人が大半なのだ。

(まあ、あの人がそれで良いなら良いけど)

 冷たく聞こえるかも知れないが、ブランにはどうしようも出来ないから仕方が無い。
 あの人が自力で田神とやらを探してくれるなら、それはそれでブランも楽だから。

 人探し――その程度だったはずの出来事が、まさかあんな事になるなんて……
 この時のブランは、知る由もなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

百合ハーレムが大好きです!〜全ルート攻略開始〜

M・A・J・O
大衆娯楽
【大衆娯楽小説ランキング、最高第7位達成!】 黒髪赤目の、女の子に囲まれたい願望を持つ朱美。 そんな彼女には、美少女の妹、美少女の幼なじみ、美少女の先輩、美少女のクラスメイトがいた。 そんな美少女な彼女たちは、朱美のことが好きらしく――? 「私は“百合ハーレム”が好きなのぉぉぉぉぉぉ!!」 誰か一人に絞りこめなかった朱美は、彼女たちから逃げ出した。 …… ここから朱美の全ルート攻略が始まる! ・表紙絵はTwitterのフォロワー様より。

魔法少女になれたなら【完結済み】

M・A・J・O
ファンタジー
【第5回カクヨムWeb小説コンテスト、中間選考突破!】 【第2回ファミ通文庫大賞、中間選考突破!】 【第9回ネット小説大賞、一次選考突破!】 とある普通の女子小学生――“椎名結衣”はある日一冊の本と出会う。 そこから少女の生活は一変する。 なんとその本は魔法のステッキで? 魔法のステッキにより、強引に魔法少女にされてしまった結衣。 異能力の戦いに戸惑いながらも、何とか着実に勝利を重ねて行く。 これは人間の願いの物語。 愉快痛快なステッキに振り回される憐れな少女の“願い”やいかに―― 謎に包まれた魔法少女劇が今――始まる。 ・表紙絵はTwitterのフォロワー様より。

霊感少女はえっちが苦手!?

M・A・J・O
恋愛
自作小説、「ゆうちゃんねるにはホラーがいっぱい!?」のR-18百合小説です。 より楽しみたい方は本編も読んでいただければと!本編も短編ですのでぜひ! カクヨム https://kakuyomu.jp/works/16816927861416328680 ・表紙絵はフリーイラストを使用させていただいています。

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

百合ハーレムが大好きです!

M・A・J・O
恋愛
黒髪赤目の、女の子に囲まれたい願望を持つ朱美。 そんな彼女には、美少女の妹、美少女の幼なじみ、美少女の先輩、美少女のクラスメイトがいた。 そんな美少女な彼女たちは、朱美のことが好きらしく――? 「私は“百合ハーレム”が好きなのぉぉぉぉぉぉ!!」 誰か一人に絞りこめなかった朱美は、彼女たちから逃げ出した。 ・表紙絵はTwitterのフォロワー様より。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

処理中です...