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第二章 高校二年生(二学期)

かわいい(朔良)

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 また、見られている。
 朔良がそう気づいたのは何度目だろう。
 だれに見られているかまではわからないが、視線を感じることが多い。

「毎日毎日、よく飽きずにつけ回せるよな……」
「どうしたんですか?」

 誰に言うでもなく呟いたのだが、近くにいた者に聞かれてしまったようだ。

「あー、いや、なんでもねぇよ」
「なんでもなくなさそうでしたけど……」

 隣を歩いている者――萌花は訝しげな様子で首を傾げた。
 萌花は少し心配性なところがある。
 ここは話をそらさないと、首を突っ込んできそうだ。

「萌花って可愛いよな」
「……ふぇっ!? い、いいいいきなりなんなんですか!?」

 萌花の顔の温度だけが急激に沸騰した。
 その証拠に、真っ赤ないちごみたいに熟している。

「ははっ。おもしれーな」

 朔良が口を開けて大きく笑うと、萌花はむぅと頬をふくらませた。
 その様子もなんだか面白くて、朔良はお腹を痛めてしまった。

 ただ意識をそらそうと思って出した言葉だったのだが、実際萌花は可愛い。
 特に背が低くて幼児体型なところが。
 しかし、出るところは出ていて、どう育ったらそうなるのかぜひ訊いてみたいものだ。
 朔良も出ている方だが、萌花には及ばない。

「ん、あれ……違う……?」

 どういうものを食べて育ったのか訊こうとすると、後ろの方から戸惑うような声が聞こえてきた。
 視線も後ろから感じたから、おそらく声の主と視線の主は同じだろうと思う。

「どうかしたのか?」
「ふぇっ?」

 声をかけようかどうか迷ったが、害はなさそうだと思って行動した。
 「違う?」と戸惑い気味だったから、おそらく朔良か萌花のどちらかを誰かと間違えたのだろう。
 朔良はそう推測した。

「えっ、あ、え……? 気づいていた……んですか?」
「まあ、視線感じることは普段からあって慣れてるし」
「そ、そうなんですか……」

 ストーキングしていたであろうその人は、黒髪ボブの女の子だった。
 どこかの学校の制服を着ているから、おそらく中学生か高校生だろう。

「えと、その、すみません……そちらの方を知り合いだと勘違いしてしまって……制服違うし、おかしいなとは思っていたんですが……」
「なるほど……」

 そちらの方……というと萌花だろう。
 萌花に似ている人なんていたんだと、朔良は興味深く見つめる。
 視線を受けた萌花は、恥ずかしそうに目をそらす。

 そのあと、その子は必死に謝って帰っていった。
 しかし、萌花に似ているといっていた知り合いをつけ回しているのだと思うと、恐怖で少し肩が震えるのだった。
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