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第二章 高校二年生(一学期)

がっしゅく5(美久里)

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 目覚めのいい朝。
 みんなで早起きして朝風呂に入ったあと、大広間で朝食をとった。
 和食のよさを改めて実感できた朝だった。

「ふーっ、今日も食べた食べた」
「朝からたくさん食べちゃったね~」
「うち、もう動けねぇっす……」
「さすがに昨日に続いてここまで食べると体重が気になっちゃうなぁ……」
「う……それは言わないでください……」

 萌花は耳が痛いというふうに頭を抱える。
 確かに、普段あまり体重を気にしない美久里でも気になってしまうから、元から気になっている人はもっと気になってしまうだろう。

「ふぅ……ちょっと休憩……」
「そうだね~。休まないとやってられないよ~」

 美久里と紫乃は部屋に戻る気力もないようで、その場を動かずまったりしている。
 他の三人は、食後の運動だとかでさっき出ていった。
 比較的大人しめな二人が残り、少しばかり沈黙が流れる。
 その空気に耐えかねてか関係ないのか、紫乃がゆっくりと口を開く。

「……そういえば、美久里ちゃんって僕が小学校時代に救われた子に似てるんだよね~」
「え、そうなの? っていうか、救われたってどういうこと?」

 どこか遠くを見つめながら紫乃は話し続ける。
 その子の特徴や一緒にやったこと、救われた理由など、たくさんのことを教えてくれた。
 話している時の紫乃はいつになく嬉しそうで、聞いている美久里も思わず嬉しくなった。

「紫乃ちゃんは、その子のこと本当に大好きなんだね」
「……そうだね。その子だけが僕の味方だったから~」

 と、そこでドタバタと騒がしい足音が響く。
 おそらくみんなが帰ってきた音だろう。
 二人で顔を見合わせて、少し笑いあって、この話はおしまいにする。

「もー、萌花ちゃんうちの贅肉つまむのやめてほしいっす!」
「だって気持ちいいんですもんー」
「萌花ちゃんが葉奈ちゃんの贅肉でだめになる図……ちょっとシュールだね」
「柚は冷静に分析してないで助けてくれっす~!」

 ……なんだかものすごく賑やかなことになっている。
 できれば他人のフリをしたい。
 美久里と紫乃はそそくさとその場を離れようとした。――が。

「おー! 美久里と紫乃ちゃん! ただいまっすー!」
「あ、待っててくれたんですね。先にお部屋戻ってもよかったのに……」
「二人は優しいもんね。お礼にご褒美を進ぜよーう!」
「清々しいほどに上から目線っすね……」

 葉奈が声をかけてきたことで、それは叶わなかった。
 仕方なく諦めて、紫乃と一緒にみんなの近くへ寄っていく。

「で、なにくれるの~?」
「よくぞ聞いてくれた、紫乃ちゃん! このボク直々になでなでされる権利をあげよう!」
「うわ、はてしなくどうでもいい権利っすね……」

 柚への当たりがきつくなっている気がするのは気のせいだろうか。
 一晩一緒に過ごしてなにかあったとか。
 それともさっきの運動の時に仲を深めたのか。

 経緯はわからないが、明らかに態度が変わっている気がする。
 気がする、というだけだけど。

「あのですね、今日は姐御と瑠衣ちゃんへのお土産を買いたいと思っているのですが……みなさんはなにがいいと思います?」
「はいはーい。手羽先がいいと思います~!」
「うちはうなぎがいいと思うっすー!」
「私は五平餅がいいと思うっ!」
「ボクは野沢菜漬けかな」

 萌花はみんなの意見を、うんうんと首を縦に振りながら聞いている。
 そして言いたいことが決まったのか、ゆっくりと口を開く。

「なるほどなるほど。――って、全部他の県の名物じゃないですかぁ!」

 なにはともあれ、五人ともとても充実した合宿を送れたようだ。
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