上 下
56 / 239
幕間 様々なイフ

もしも葉奈が朔良をからかったら

しおりを挟む
「そういや、今日瑠衣が風邪引いたんだってさ」
「そうなんすか。珍しいっすね。瑠衣が風邪引くなんて」
「だよなー。馬鹿は風邪引かないって言うのにな」
「何気にひどいっすね」

 今日は朔良の家で遊ぶ予定だったのだが、当日になって瑠衣が風邪を引いたらしい。
 葉奈と瑠衣と三人で遊ぶはずが、二人になってしまった。

「何する?」
「そりゃ、ロリショタゲームっすよ」
「何だそれ」

 ロリショタゲームとは、画面に出てくる人物が「ロリ」か「ショタ」か当てるだけ。
 一部のマニアの間で大人気なスマホゲームなのだ。
 だが、当然朔良は知らない。

「朔良がやりたくないなら別にいいっすよ」
「いや、あたし知らないだけなんだけど」

 葉奈は面白くなさそうに拗ねる。
 元々やるつもりもなかったのか、朔良にどんなゲームなのか説明しない。

「あ、そうっす。二次創作の小説の方は順調っすか?」
「それがさー、あんまいい構想が浮かばないんだよなー」

 葉奈の問いかけに、一瞬ドキリとする朔良。
 いい構想が浮かばないのは本当である。
 ただ、その……なんと言うか……朔良は小説を書くことをサボっていたのだ。

「まあ、その、なんて言うかさ、リアリティーってのがどうにも苦手でさ」
「リアリティーっすか?」
「そうそう。共感とかも大事だと思うし……あんまかけ離れた設定だと読者がついていけないだろうし……」
「まあ、大変っすよね。物語を作るのは」

 そう言うと、葉奈は何を思ったのか。
 葉奈の目の前まで歩いて、いつものふざけた顔のまま頬を赤らめた。

「リアリティーが欲しいなら、うちを利用してみるっすか?」
「……は?」

 朔良の口から、間の抜けた声が出る。
 葉奈が何を言い出すかと思えば――『うちを利用してみるか』?
 わけがわからない。

「な、何言ってんだよ……葉奈」
「嫌なら別にいいっすよ」
「いや、別に嫌ってわけじゃないけど……」

 むしろ小説のネタとなるならありがたいことこの上ないのだが……

「けどさ、あたしと葉奈で何しようって――うおっ!」

 朔良が言い終わらないうちに、葉奈が朔良を押し倒した。
 朔良は何がなんだかわからず狼狽えている。
 当の葉奈はというと……表情が読めない。

「“体験”してみれば、リアリティー出るんじゃないっすか?」
「た、体験って……具体的に何すんだよ……」
「例えばこんな……」

 そう言い、葉奈は朔良に近づく。
 運動神経のいい朔良は、その気になれば運動音痴の葉奈のことを払いのけられるはずだ。
 それなのに、されるがままになっている。
 これの意味することは――

「なーんて、冗談っす☆」
「……はへぁ?」

 葉奈はすごくいい笑顔を浮かべている。
 この顔は、いたずらが成功した時の満足そうなものだ。
 ……朔良はからかわれたらしい。

「な、なんだよ……! タチ悪すぎだろ……」

 本気で何かされると思っていた朔良は、顔を赤くしながら抗議する。
 葉奈はすごくいい笑顔を崩さないまま、「ごめんっす」と謝った。

「……本当は冗談じゃなかったんすけどね」

 そんな意味深な声は、顔の赤い朔良には届かなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アンタッチャブル・ツインズ ~転生したら双子の妹に魔力もってかれた~

歩楽 (ホラ)
青春
とってもギャグな、お笑いな、青春学園物語、 料理があって、ちょびっとの恋愛と、ちょびっとのバトルで、ちょびっとのユリで、 エロ?もあったりで・・・とりあえず、合宿編23話まで読め! そして【お気に入り】登録を、【感想】をお願いします! してくれたら、作者のモチベーションがあがります おねがいします~~~~~~~~~ ___ 科学魔法と呼ばれる魔法が存在する【現代世界】 異世界から転生してきた【双子の兄】と、 兄の魔力を奪い取って生まれた【双子の妹】が、 国立関東天童魔法学園の中等部に通う、 ほのぼの青春学園物語です。 ___ 【時系列】__ 覚醒編(10才誕生日)→入学編(12歳中学入学)→合宿編(中等部2年、5月)→異世界編→きぐるい幼女編 ___ タイトル正式名・ 【アンタッチャブル・ツインズ(その双子、危険につき、触れるな関わるな!)】 元名(なろう投稿時)・ 【転生したら双子の妹に魔力もってかれた】

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

BUZZER OF YOUTH

Satoshi
青春
BUZZER OF YOUTH 略してBOY この物語はバスケットボール、主に高校~大学バスケを扱います。 主人公である北条 涼真は中学で名を馳せたプレイヤー。彼とその仲間とが高校に入学して高校バスケに青春を捧ぐ様を描いていきます。 実は、小説を書くのはこれが初めてで、そして最後になってしまうかもしれませんが 拙いながらも頑張って更新します。 最初は高校バスケを、欲をいえばやがて話の中心にいる彼らが大学、その先まで書けたらいいなと思っております。 長編になると思いますが、最後までお付き合いいただければこれに勝る喜びはありません。 コメントなどもお待ちしておりますが、あくまで自己満足で書いているものなので他の方などが不快になるようなコメントはご遠慮願います。 応援コメント、「こうした方が…」という要望は大歓迎です。 ※この作品はフィクションです。実際の人物、団体などには、名前のモデルこそ(遊び心程度では)あれど関係はございません。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る

マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。 思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。 だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。 「ああ、抱きたい・・・」

6年生になっても

ryo
大衆娯楽
おもらしが治らない女の子が集団生活に苦戦するお話です。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

人生で1番「かわいい」と言われて

たゆま
青春
実際に体験したことなどをほぼ織り交ぜて。 途中の会話にうろ覚えなところがありますが、 本人に確認を取りつつ辻褄があうように補正しております。

処理中です...