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第一章 高校一年生(二学期)

らっきー(葉奈)

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 下校時刻を報せるチャイムが鳴る。
 もう家に帰らなくてはならない時間だ。
 だけど、もう少しここにいたいような気もする。
 授業が終わればすぐ家に帰ってしまう葉奈にしては珍しかった。

「お、朔良……っ!」

 葉奈は廊下から、見知った姿が教室にあるのを捉えた。
 明るく茶色に色付いた長い髪の毛が、微かに揺れる。
 窓から差し込んだ光が、朔良の存在をより一層輝かせている。

「……え?」

 ――だが、何か様子がおかしい。
 茶色の瞳は力なく開いており、机に向かって何かぶつぶつ喋っているように見える。

 もしかしたら、調子でも悪いのかもしれない。
 葉奈は朔良に駆け寄り、声をかけた。

「朔良ー! 大丈夫っすか?」
「おわっ!?」

 葉奈は、その光景に唖然とした。
 紺色の短いスカートから、純白の清楚な下着がタイツ越しに一瞬見えたから。

「あ……っ」

 下着に釘付けになっていた葉奈に気づいたのか。
 朔良はすぐさま、バッとスカートを押さえる。

「な、なんかごめん……その……見苦しいもの見せちゃったな……」
「……へ、え? い、いや、別に! うちとしてはご褒美――じゃなくてっすね……! ほんと大丈夫っす……」

 顔を赤らめて、何やらもじもじしている様子の朔良に。
 あやうく本音が出そうに――いや、実際出てしまった言葉を必死に誤魔化す葉奈。

 どこか気まづい雰囲気になってしまった二人の間に、沈黙が流れる。
 それを吹き飛ばすように、朔良は努めて明るく言い放った。

「じ、じゃあ、帰るか。葉奈」
「そ、そっすね……帰ろうっす」

 と、ここで気になっていたことについて思い出す。

「そういえば、どうしたんすか? さっき思い詰めたような顔してたっすけど」

 葉奈は下駄箱に向かって歩きながら訊く。
 朔良もそれに続き、葉奈の隣を歩きながら答える。

「あー……美久里と喧嘩しちゃってさ。どう謝ればいいのかってずっと考えてたんだ」
「なるほどっす。それで今まで残ってたんすね」

 朔良がそこまで思い詰めるなんて、よほどのことがあったのだろう。
 葉奈はその件に関しては何も出来ないが、励ますことぐらいは出来る。

「ま、頑張れっす。美久里ならきっと許してくれるっすよ」

 そうやって、朔良の肩をバンバン叩いた。
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