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最終章 全ての元凶

ガーネットは道具じゃない!

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「……ふん、そうか。なら仕方ないのう。わしとお主はいずれにせよ戦う運命にあるということじゃ」

 ルリはそう言い、マントを大きな翼の形に変えた。
 その翼は、魔央と同じような蝙蝠デザインだ。
 だが、魔央のマントよりも大きく、ガーネットが見せた堕天使の翼のような威圧感がある。

「ノーネーム、お主は眠っているがいい」

 ルリが自分の手に持っている本――ガーネットに呼びかけると、ガーネットの周囲にどす黒い霧が発生した。
 ガーネットを眠らせて、一体何がしたいのだろう。

「……ねぇ、ルリさん。あなたはどうして“ガーネット”って呼ばないんですか?」
「はぁ?」
「ガーネットはガーネットです……ガーネットは、あなたの道具じゃない!」

 結衣が叫ぶと、みんなはハッとしたような顔を浮かべる。
 そうだ……ガーネットは結衣の、一番の相棒なのだ。
 結衣は願いを叶えてくれるための道具としてではなく、友だちのような想いで接していた。
 そのことを、ここにいる誰もが知っている。
 ……ただ一人を除いて。

「何を言ってるんじゃ、お主は。こやつはわしのもの――お主こそ、勝手にわしのものに名前をつけるな」

 ルリは結衣を睨み、ガーネットを檻に入れる。
 漆黒の――魔法でできた檻は、何よりも頑丈そうに見えた。
 だけど、ルリの手に収まるようなサイズのため、極大魔法でもぶっぱなせば何とかなりそうにも見える。

 でも、本気の魔女の力を見たことがないため、あの檻がどれだけ頑丈なのかがわからない。
 それに、その魔法がガーネットに当たってしまうかもしれない。

「……そう、そっちがその気なら……仕方ないよね……」

 そう呟き、結衣は魔央に近づく。
 突然結衣に近寄られた魔央は、驚いて目を見開いている。

「魔央……そういえば前に、私の中に入ったことがあるよね?」
「……は? いきなり何の話だよ……」
「あの魔王モード……緋依さんと戦った時の……魔央が入ってたんでしょ?」
「あ、あー……まあ……そうだけど……」

 確信を得た結衣は、魔央にとんでもないお願いをする。

「――もう一度、私の中に入ってくれない?」
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