上 下
200 / 262
番外編

運動会日和……?

しおりを挟む
「わーい! 今日は運動会だー!」

 今日は晴れ晴れとした、雲一つない青い空。爽やかな風。
 とてもいい運動会日和だ。
 だが、真菜は乗り気ではないのか、浮かない顔で――

「ねぇ、結衣。運動会……って、そんなに……楽しい?」
「え? どうしたの、真菜ちゃん?」

 結衣はそうやって純粋に訊いたことを激しく後悔した。

「だって、私……親が……いないから……」

 乾いた笑みで結衣の疑問に答えた真菜に、結衣は罪悪感が芽生える。
 だが、結衣は真菜の手を取って握ると、

「私がいるよ! 今日は二人で一緒に楽しもう?」

 と恥ずかしいセリフを言って、真菜を元気づかた。
 真菜も、今度は心の底から嬉しそうに笑う。

 ……今まで言い忘れていたかもしれないが、せーちゃんと緋依は学校が違うので今回は出番はない。

「ちょっと! 私の声マネしてさらっとメタいこと言わないでよ!」
「へっへーん! 結衣様は隙が多すぎですよぉ」

 久々のどんちゃん騒ぎを、結衣は他人事のように懐かしいと思ってしまっていた。
 何だかんだ言って、こういうのも悪くないかもと思っている。

 すばしっこく動き回るガーネットをやっとの思いで捕まえた時、運動会の開会を宣言するアナウンスが響いた。

「結衣……っ!」
「うん! 急がなきゃ!」

 運動会の会場――グラウンドから少し離れた人気のない場所にいたので、走らなければ間に合わない。
 だけど――

「結衣様!」
「うん! 真菜ちゃん!」
「わ、わかっ……た!」

 ガーネットを掴み、真菜を背負うと。

「――認識阻害《シャットアウト》!」

 そう紡ぎ、私たちは飛んだ。

 ☆ ☆ ☆

 私の出る種目は、50m走、組み体操、騎馬戦、玉入れだ。
 真菜もだいたい同じ。
 というか、種目決めの時に「一緒にやろう」とお互い決めていたからだ。

「わー! なんだかわくわくするね!」

 開会宣言が終わり、いよいよ運動会が始まる。
 保護者席に既にお父さんとお母さんが座っていた。
 結衣が軽く手を振ると、二人が気づいて、それぞれ手を振り返してくれた。
 自分でやっておいてなんだが、小っ恥ずかしくなってきまようで、目線を変える。

「第一競技、学年別リレーです」

 そのアナウンスにハッとする。
 50m走はリレーの部類なので、結衣の出番が早くも回ってきた。

「緊張するなぁ……」
「うっふっふ。私の出番ですかねぇ……!」
「は!?」

 運動会の会場に似合わぬ、どす黒い声が聞こえる。
 思わぬ声に、結衣は全身が飛び上がった。

「急になんなの……?」

 自覚はなかったようだが、結衣の目にはじわりと涙が浮かんでいる。
 そんな結衣をスルーし、ガーネットは認識阻害魔法をかけながら目の前に現れた。

「私を使ってみませんかぁ?」

 嬉々とした声色でそんなことを言っていたが、結衣は嫌な予感がし。

「いや、いいや」

 ばっさりと断った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン… 紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢 座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!! もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。 全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。 作者は極度のとうふメンタルとなっております…

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ
ファンタジー
 2020.9.6.完結いたしました。  2020.9.28. 追補を入れました。  2021.4. 2. 追補を追加しました。  人が精霊と袂を分かった世界。  魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。  幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。  ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。  人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。  そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。  オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...