176 / 262
第二章 似すぎている敵
次の約束
しおりを挟む
魔力を回復した少女は、自分の身体を確かめるように見回す。
ボロボロだった服は元通りになり、無数の軽い傷や汚れが消えている。
試しに手を閉じたり開いたりして、ちゃんと正常に動くかを確認する。
「……すげぇ……」
少女は思わず感嘆の声を零す。
先程まで激痛に苛まれていた身体が嘘のようだ。
「ふぅ……よかった……」
「あははぁ。危ないところでしたねぇ」
結衣が安心したようにそう言うと、ガーネットも笑いながら話し出す。
いつものように、ふざけた感じで。
「結衣様が助けなかったら、今頃は――アレでしたからねぇ~」
なんでもないことを語るように言ったガーネット。
だが、少女はそれほど戦慄していないようだ。
というより、自虐的な笑みを浮かべている。
「……別に、だって俺そもそも……」
少女が呟いた声はだが、誰にも拾われることはなかった。
そして、少女は結衣に向き直り、ぺこりと頭を下げる。
「……助けてくれてありがとう。感謝はしてる。だが……」
「……うん。わかってる。いいよ、ちゃんと話してくれるまで待つから」
少女が気まずそうに言うと、結衣は天使のような笑顔を浮かべる。
その言葉に、偽りはない。
そうと分かると、少女は少しだけホッとしたような表情になる。
それを感じ取った結衣は、満足そうに少女の近くから立ち去ろうとした。
その時。
「……次こそ、ぜってぇ負けねー」
健全な殺意を滲ませて、笑顔を浮かべながら呟いた少女。
その言葉を受けて、結衣は――
「……楽しみにしてる」
と、不敵に笑った。
その少女たちにもうわだかまりはなく、お互いを好敵手と認識し始めている。
そんな二人を見て、お母さんはどこか満足そうにしていた。
ボロボロだった服は元通りになり、無数の軽い傷や汚れが消えている。
試しに手を閉じたり開いたりして、ちゃんと正常に動くかを確認する。
「……すげぇ……」
少女は思わず感嘆の声を零す。
先程まで激痛に苛まれていた身体が嘘のようだ。
「ふぅ……よかった……」
「あははぁ。危ないところでしたねぇ」
結衣が安心したようにそう言うと、ガーネットも笑いながら話し出す。
いつものように、ふざけた感じで。
「結衣様が助けなかったら、今頃は――アレでしたからねぇ~」
なんでもないことを語るように言ったガーネット。
だが、少女はそれほど戦慄していないようだ。
というより、自虐的な笑みを浮かべている。
「……別に、だって俺そもそも……」
少女が呟いた声はだが、誰にも拾われることはなかった。
そして、少女は結衣に向き直り、ぺこりと頭を下げる。
「……助けてくれてありがとう。感謝はしてる。だが……」
「……うん。わかってる。いいよ、ちゃんと話してくれるまで待つから」
少女が気まずそうに言うと、結衣は天使のような笑顔を浮かべる。
その言葉に、偽りはない。
そうと分かると、少女は少しだけホッとしたような表情になる。
それを感じ取った結衣は、満足そうに少女の近くから立ち去ろうとした。
その時。
「……次こそ、ぜってぇ負けねー」
健全な殺意を滲ませて、笑顔を浮かべながら呟いた少女。
その言葉を受けて、結衣は――
「……楽しみにしてる」
と、不敵に笑った。
その少女たちにもうわだかまりはなく、お互いを好敵手と認識し始めている。
そんな二人を見て、お母さんはどこか満足そうにしていた。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
(完結)獅子姫の婿殿
七辻ゆゆ
ファンタジー
ドラゴンのいる辺境グランノットに、王と踊り子の間に生まれた王子リエレは婿としてやってきた。
歓迎されるはずもないと思っていたが、獅子姫ヴェネッダは大変に好意的、素直、あけっぴろげ、それはそれで思惑のあるリエレは困ってしまう。
「初めまして、婿殿。……うん? いや、ちょっと待って。話には聞いていたがとんでもなく美形だな」
「……お初にお目にかかる」
唖然としていたリエレがどうにか挨拶すると、彼女は大きく口を開いて笑った。
「皆、見てくれ! 私の夫はなんと美しいのだろう!」
[全221話完結済]彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる
野花マリオ
ホラー
ーー彼女が語る怪異談を聴いた者は咲かせたり聴かせる
登場する怪異談集
初ノ花怪異談
野花怪異談
野薔薇怪異談
鐘技怪異談
その他
架空上の石山県野花市に住む彼女は怪異談を語る事が趣味である。そんな彼女の語る怪異談は咲かせる。そしてもう1人の鐘技市に住む彼女の怪異談も聴かせる。
完結いたしました。
※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。
エブリスタにも公開してますがアルファポリス の方がボリュームあります。
表紙イラストは生成AI
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
お母さんに捨てられました~私の価値は焼き豚以下だそうです~【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公リネットの暮らすメルブラン侯爵領には、毎年四月になると、領主である『豚侯爵』に豚肉で作った料理を献上する独特の風習があった。
だが今年の四月はいつもと違っていた。リネットの母が作った焼き豚はこれまでで最高の出来栄えであり、それを献上することを惜しんだ母は、なんと焼き豚の代わりにリネットを豚侯爵に差し出すことを思いつくのである。
多大なショックを受けつつも、母に逆らえないリネットは、命令通りに侯爵の館へ行く。だが、実際に相対した豚侯爵は、あだ名とは大違いの美しい青年だった。
悪辣な母親の言いなりになることしかできない、自尊心の低いリネットだったが、侯爵に『ある特技』を見せたことで『遊戯係』として侯爵家で働かせてもらえることになり、日々、様々な出来事を経験して成長していく。
……そして時は流れ、リネットが侯爵家になくてはならない存在になった頃。無慈悲に娘を放り捨てた母親は、その悪行の報いを受けることになるのだった。
ちょっと神様!私もうステータス調整されてるんですが!!
べちてん
ファンタジー
アニメ、マンガ、ラノベに小説好きの典型的な陰キャ高校生の西園千成はある日河川敷に花見に来ていた。人混みに酔い、体調が悪くなったので少し離れた路地で休憩していたらいつの間にか神域に迷い込んでしまっていた!!もう元居た世界には戻れないとのことなので魔法の世界へ転移することに。申し訳ないとか何とかでステータスを古龍の半分にしてもらったのだが、別の神様がそれを知らずに私のステータスをそこからさらに2倍にしてしまった!ちょっと神様!もうステータス調整されてるんですが!!
セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました
今卓&
ファンタジー
その日、魔法学園女子寮に新しい寮母さんが就任しました、彼女は二人の養女を連れており、学園講師と共に女子寮を訪れます、その日からかしましい新たな女子寮の日常が紡がれ始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる