164 / 262
第二章 似すぎている敵
喧嘩をしたなら
しおりを挟む
魔法少女を閉じ込める結界のような場所。
殺伐としたオーラが漂うそこに、三人の魔法少女の姿がある。
そのうちの一人が、苦しそうに顔を歪めた。
「うっ……ぐぁ……っ」
「結衣様!? ――な、なんですか……この空気。まるで“毒”が混ざっているような――」
そこまで言って、ガーネットはハッと気づく。
“人の願い”によって黒く濁る神の光。
それはつまり、願いが強ければ強いほど黒く濁りまくるということであり。
黒く濁りまくれば、魔法少女にとって最悪の毒となる――!
「結衣様! ここは危険です! はやくここから去った方が――」
「……だめ、だよ……」
今にも死にそうな顔で、掠れた声を出して言う。
もう、歩く力すら残っていないのかもしれない。
「な、何言ってるんですか! なんなら私が結衣様を飛ばしますから……っ!」
ガーネットは今にも泣きそうな声で叫ぶ。
それは己がマスターのために、ガーネットができる最大限だった。
だが、それでも結衣は首を横に振る。
「……だめ。二人を……置いてっ……いけない……からっ……!」
そこで、カスミと魔王はハッとした。
自分が危険にさらされていても。
相棒がどんなに自分を心配していても。
人のため……いや、自分たちのために立ち上がっている――!
それに気づいたカスミと魔王は、気まずそうに互いの顔を見やる。
「……結衣サン、ソーリー……デス」
カスミが結衣の頬に手を当てる。
すると、やけに黒かった空に光が見えてきた。
この光は、月だ。
優しく包み込むような光を受けて、少し調子が戻ってきた結衣が呟く。
「……綺麗……」
「改めて、ソーリーデス……結衣サン。ケド、これだけは言わせて欲しいデス。――ミーは、結衣サンに出会えて……ホントに……よ、良かっ……」
途中からカスミの涙腺が崩壊し、滝のように涙が出てくる。
カスミは罪悪感を感じているらしい。
だが、なぜカスミが泣いているのかわからない結衣は、わたわたと慌てた。
「えっ……? う、うん……それはわかってるよ? それでも自分の願いが大事なんでしょ? そういう気持ちわかるから……大丈夫だよ」
「うっ……ひっく……結衣サンは優しすぎマス。もっと怒ってもいいと思いマス」
「え、なんで責められてるの??」
「こういう展開も面白くていいですねぇ! もっと責めてやってくださぁい!」
「ちょっ! ガーネット!?」
久々のギャグっぽい雰囲気に、結衣たちは笑い合う。
喧嘩をしたなら、仲直りをすればいい。
そのあとでたくさん笑えば、それでいい。
それが、少女たちの結論のように思えた。
そしてその結論が、少女たちにとっての幸せ……なのである。
殺伐としたオーラが漂うそこに、三人の魔法少女の姿がある。
そのうちの一人が、苦しそうに顔を歪めた。
「うっ……ぐぁ……っ」
「結衣様!? ――な、なんですか……この空気。まるで“毒”が混ざっているような――」
そこまで言って、ガーネットはハッと気づく。
“人の願い”によって黒く濁る神の光。
それはつまり、願いが強ければ強いほど黒く濁りまくるということであり。
黒く濁りまくれば、魔法少女にとって最悪の毒となる――!
「結衣様! ここは危険です! はやくここから去った方が――」
「……だめ、だよ……」
今にも死にそうな顔で、掠れた声を出して言う。
もう、歩く力すら残っていないのかもしれない。
「な、何言ってるんですか! なんなら私が結衣様を飛ばしますから……っ!」
ガーネットは今にも泣きそうな声で叫ぶ。
それは己がマスターのために、ガーネットができる最大限だった。
だが、それでも結衣は首を横に振る。
「……だめ。二人を……置いてっ……いけない……からっ……!」
そこで、カスミと魔王はハッとした。
自分が危険にさらされていても。
相棒がどんなに自分を心配していても。
人のため……いや、自分たちのために立ち上がっている――!
それに気づいたカスミと魔王は、気まずそうに互いの顔を見やる。
「……結衣サン、ソーリー……デス」
カスミが結衣の頬に手を当てる。
すると、やけに黒かった空に光が見えてきた。
この光は、月だ。
優しく包み込むような光を受けて、少し調子が戻ってきた結衣が呟く。
「……綺麗……」
「改めて、ソーリーデス……結衣サン。ケド、これだけは言わせて欲しいデス。――ミーは、結衣サンに出会えて……ホントに……よ、良かっ……」
途中からカスミの涙腺が崩壊し、滝のように涙が出てくる。
カスミは罪悪感を感じているらしい。
だが、なぜカスミが泣いているのかわからない結衣は、わたわたと慌てた。
「えっ……? う、うん……それはわかってるよ? それでも自分の願いが大事なんでしょ? そういう気持ちわかるから……大丈夫だよ」
「うっ……ひっく……結衣サンは優しすぎマス。もっと怒ってもいいと思いマス」
「え、なんで責められてるの??」
「こういう展開も面白くていいですねぇ! もっと責めてやってくださぁい!」
「ちょっ! ガーネット!?」
久々のギャグっぽい雰囲気に、結衣たちは笑い合う。
喧嘩をしたなら、仲直りをすればいい。
そのあとでたくさん笑えば、それでいい。
それが、少女たちの結論のように思えた。
そしてその結論が、少女たちにとっての幸せ……なのである。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
百合ハーレムが大好きです!〜全ルート攻略開始〜
M・A・J・O
大衆娯楽
【大衆娯楽小説ランキング、最高第7位達成!】
黒髪赤目の、女の子に囲まれたい願望を持つ朱美。
そんな彼女には、美少女の妹、美少女の幼なじみ、美少女の先輩、美少女のクラスメイトがいた。
そんな美少女な彼女たちは、朱美のことが好きらしく――?
「私は“百合ハーレム”が好きなのぉぉぉぉぉぉ!!」
誰か一人に絞りこめなかった朱美は、彼女たちから逃げ出した。
……
ここから朱美の全ルート攻略が始まる!
・表紙絵はTwitterのフォロワー様より。
ばじゅてんっ!〜馬術部の天使と不思議な聖女〜【完結済み】
M・A・J・O
キャラ文芸
馬が好きな女子高生、高宮沙織(たかみやさおり)は伝統のある星花女子学園に通っている。
そこは特段、馬術で有名な学校……とかではないのだが、馬術部の先生が優しくて気に入っている。
どこかの誰かとは大違いなほどに――
馬術の才能がある沙織は一年生にもかかわらず、少人数の馬術部員の中で成績がずば抜けていた。
そんな中、沙織はある人が気になっていた。
その人は沙織の一つ先輩である、渡島嫩(おしまふたば)。
彼女は心優しく、誰にでも尽くしてしまうちょっと変わった先輩だ。
「なんであんなに優しいのに、それが怖いんだろう……」
沙織はのちに、彼女が誰にでも優しい理由を知っていくこととなる……
・表紙絵はくめゆる様(@kumeyuru)より。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。



とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる