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幕間 少女たちの過去(前編)

せーちゃんの過去

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「おおお! 西園寺家のご令嬢とは……!」
「ささっ、こちらに。最高のディナーをご用意しておりますので……」

 昔からそうだった。
 “西園寺家の令嬢”というだけで、ちやほやされてきたのだ。
 だけど、そんな生活に嫌気がさす。

 せーちゃんを取り巻く人々は、全て西園寺家からお零れをもらおうと必死なのだ。
 それが薄々わかっているから、ちやほやしてくる人たちが嫌いだ。

 汚い目で、自分を見ているのがわかるから。
 せーちゃんはそんな人たちを適当にあしらい、その場を逃れた。

 ☆ ☆ ☆

「おい、星良」
「……なんですか、お父様」

 低く唸るような声を出した父親に、せーちゃんは冷めた声で応える。
 父親から愛情を貰ったことはない。
 だからまた、“くだらない”を言われるのだろうと察した。

「そのドレスはなんだ。みっともないぞ」

 ほらやはり、“くだらないこと”だった。
 せーちゃんのドレスは、シンプルイズベストという感じで、ひざ丈まである純白のもの。

 金持ちの一人娘が着るには、少し質素かもしれない。
 だが、言うほど庶民っぽくなく、清楚なオーラが放たれている。
 それなのに、父親はなぜかせーちゃんの衣装が気に食わないようだ。

「さっさと着替えてこい」
「……はい」

 父親はそう言い捨てて、どこかへ去っていく。
 せーちゃんはそんな父親の背を見て、

「――クソ親父」

 密かに、暴言を吐いた。

 せーちゃんは、父親のことをあまり好ましく思っていない。
 ……というより、父親が自分を好いてくれないから好かないのだ。

 誰でも、自分を嫌うものとは仲良くしたくないだろう。
 それと同じなのだ。
 父親がせーちゃんを少しでも好いていたなら、せーちゃんもここまで父親を嫌うこともなかっただろう。

「……ほんと、うざい……」

 そう小さく呟き、徐々に父親への不満を募らせていった。
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