魔法少女になれたなら【完結済み】

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第一章 少女たちの願い(後編)

遊園地にも現れるのかな……

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「へー、遊園地ねぇ……うちも行ってみたかったんどす」
「ホント!? やっぱり遊園地って楽しいもんね~!」

 給食の時間。
 それは、多くの学生にとっては至福の時間だ。
 今日の献立はカレーのようで、いい匂いが教室中を漂っている。

 カレーの匂いと楽しい話題。
 その二つが組み合わさると、すごくテンションが上がる。

「遊園地かぁ……あ、そうだ! 明葉ちゃんはどういうアトラクションが好き?」
「ん? うーん、せやなぁ……やっぱ大きな観覧車やろか。あそこで見る景色がすごく好きやわぁ……」

 観覧車。あそこから見る景色は格別である。
 結衣も明葉と同じで、その魅力に取り憑かれたもののひとりである。

「わかる……! 私もなぜかすごく惹かれるんだよね~」

 結衣は顔を上気させながら言う。
 楽しいことを考えていると、こんなに胸が躍るのはどうしてだろう。
 高鳴る胸を抑えきれず、結衣は変なことを考え始める。

「うふふふ……いいですねぇ~。小学生の子どもがキャッキャしている姿……たまりませぇん!」

 ……ガーネットも、別の意味でいつもよりテンションが高い。
 そんなガーネットの、変態しゅ……事案臭漂う怪しげな言葉は。

 結衣のランドセルの中にいるからか――幸いなことに――誰にも訊かれることはなかった。

 ☆ ☆ ☆

 そして夜になり、子どもが就寝しなくてはならない時間になる。
 結衣は興奮しすぎて、とても寝られそうにない。

 明日は休日。しかも、遊園地に行くのだ。
 目が冴えてしまうのも、無理はないだろう。

「最近色々あったし……気分転換になるかもね……」
「あっははぁ。最近の色々なんて、遊園地に行けば記憶にも残ってないかもですよぉ?」
「うーん……それはさすがにないと思うけど……」

 さすがにそんなことになったら、もはや記憶喪失と呼ぶべきものだ。
 普通に生きていたら、そうそう記憶喪失になんてならない。……と思う。

「……はぁ、遊園地では何もないといいな……」

 憂鬱そうに零した結衣の言葉に、ガーネットが空気を読まずに食いつく。

「結衣様ぁ……遊園地には夢があるんですよぉ? 大人も子どもも関係なくはしゃぐ。まさに滑稽な……おっと、愉快な場所なんですからぁ!」
「わざわざ言い直したのに何も変わってないね!?」

 というか、遊園地そのもののことで、こうして呟いたわけではないのだ。
 結衣は賢い。ゆえに、ある程度、次の展開が予測できてしまう。

「私は……遊園地っていう楽しい場所に、敵が現れないのかなって思ったんだよね……」
「あー……なるほどぉ。そうですねぇ……“現れない”とは、限りませんしぃ……」
「……うん……」

 だが、もし。もしそんなことになったとしても、結衣はきっとその子を助けるのだろう。
 きっと、助けられるのだろう。

 ガーネットはそう思い、静かに窓の外を眺める。
 星が懸命に輝く姿を見て、期待と不安を紛らわせた。
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