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第一章 少女たちの願い(後編)
宝探しはまた今度
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「――って、ダメじゃん!」
まずは魔法と変身を解かないと。
結衣は人目のない所に降り立ち、静かに変身を解除する。
そして、結衣は明葉の元へと走る。
「明葉ちゃーん!」
「結衣さん? そんなに息切らして……どうしはったん?」
結衣が勢いよく明葉に駆け寄ると、明葉は大層驚いた様子で目を見開く。
だが結衣は、そんな明葉に目もくれず、
「宝の地図、見つけたの!」
と叫んだ。
目を輝かせて、意気揚々と喋る結衣は。さしずめ、ご飯を前にしたわんこのようだ。
「へぇー、すごいやないの!」
明葉はそんな結衣を目の当たりにして、すごく頭を撫でたい気分になる。
だが我慢し、言葉を放つだけに留める。
「でしょ!? でも……もう帰らなきゃいけない時間だから……宝探し明日でもいいかな?」
「ん? 別にええよ? 明日が楽しみやわ」
突如、結衣たちの周りに暖かい光が満ちた。
というより、明葉に後光が差した。
「ていうか、うちが結衣さんを付き合わせたんやし……これ以上無理言えへんよ」
「明葉ちゃん……」
確かに、事の発端は明葉だったかもしれない。
だけど、結衣はそれなりに楽しんでいた。
だから、時間がもっとあればいいのに。と思うほどだった。
「まあ、うん。とりあえず帰ろっか」
「せやねぇ。一緒に帰ろ」
だがしかし……こういうのもいいかもしれないと、結衣は思っている。
友人と一緒に下校することが楽しいことを、つい最近知ったから。
そうして結衣と明葉は、大人しく一緒に下校した。
☆ ☆ ☆
「うーん……胡散臭いですねぇ……」
「ガーネットがそれ言う!?」
事の詳細をガーネットに話すと、胡散臭いという言葉が返ってきた。
ガーネットは、胡散臭さを体現した塊のようなものなのに。
「心外ですねぇ! こーんなに素直なステッキですのにぃ!」
「……うーん、そういう問題じゃないような気が……」
素直は素直なのだろうが、何かが違う気がする。
もっとこう、別問題のような……
「ていうかさ……話がズレたよね……」
「おっとぉ! これは失礼――っていうか、結衣様がツッコんだせいで話がズレたような気もしますけど?」
「あーもう、悪かったよ……」
全然話が進まない。
まあ、こういうやり取りは今までもたくさんしてきたから、今更といえば今更だが。
結衣はベッドにダイブしながら考える。
今までの経験からして、明葉は怪しい。
おそらく、多分、きっと。
この騒動を起こしたのは、明葉だろう。
だが、一体なんのために?
動機が全く見えてこず、明葉の狙いがわからない。
「はあぁ……お風呂入ってこよ……」
「入浴シーンですねぇ!? では私も~!」
「もう好きにして……」
結衣がどれだけ「ノー」と言っても、ガーネットはついてくるのだろう。
だったらもう、腹を括るしかない。
まずは魔法と変身を解かないと。
結衣は人目のない所に降り立ち、静かに変身を解除する。
そして、結衣は明葉の元へと走る。
「明葉ちゃーん!」
「結衣さん? そんなに息切らして……どうしはったん?」
結衣が勢いよく明葉に駆け寄ると、明葉は大層驚いた様子で目を見開く。
だが結衣は、そんな明葉に目もくれず、
「宝の地図、見つけたの!」
と叫んだ。
目を輝かせて、意気揚々と喋る結衣は。さしずめ、ご飯を前にしたわんこのようだ。
「へぇー、すごいやないの!」
明葉はそんな結衣を目の当たりにして、すごく頭を撫でたい気分になる。
だが我慢し、言葉を放つだけに留める。
「でしょ!? でも……もう帰らなきゃいけない時間だから……宝探し明日でもいいかな?」
「ん? 別にええよ? 明日が楽しみやわ」
突如、結衣たちの周りに暖かい光が満ちた。
というより、明葉に後光が差した。
「ていうか、うちが結衣さんを付き合わせたんやし……これ以上無理言えへんよ」
「明葉ちゃん……」
確かに、事の発端は明葉だったかもしれない。
だけど、結衣はそれなりに楽しんでいた。
だから、時間がもっとあればいいのに。と思うほどだった。
「まあ、うん。とりあえず帰ろっか」
「せやねぇ。一緒に帰ろ」
だがしかし……こういうのもいいかもしれないと、結衣は思っている。
友人と一緒に下校することが楽しいことを、つい最近知ったから。
そうして結衣と明葉は、大人しく一緒に下校した。
☆ ☆ ☆
「うーん……胡散臭いですねぇ……」
「ガーネットがそれ言う!?」
事の詳細をガーネットに話すと、胡散臭いという言葉が返ってきた。
ガーネットは、胡散臭さを体現した塊のようなものなのに。
「心外ですねぇ! こーんなに素直なステッキですのにぃ!」
「……うーん、そういう問題じゃないような気が……」
素直は素直なのだろうが、何かが違う気がする。
もっとこう、別問題のような……
「ていうかさ……話がズレたよね……」
「おっとぉ! これは失礼――っていうか、結衣様がツッコんだせいで話がズレたような気もしますけど?」
「あーもう、悪かったよ……」
全然話が進まない。
まあ、こういうやり取りは今までもたくさんしてきたから、今更といえば今更だが。
結衣はベッドにダイブしながら考える。
今までの経験からして、明葉は怪しい。
おそらく、多分、きっと。
この騒動を起こしたのは、明葉だろう。
だが、一体なんのために?
動機が全く見えてこず、明葉の狙いがわからない。
「はあぁ……お風呂入ってこよ……」
「入浴シーンですねぇ!? では私も~!」
「もう好きにして……」
結衣がどれだけ「ノー」と言っても、ガーネットはついてくるのだろう。
だったらもう、腹を括るしかない。
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