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第一章 少女たちの願い(前編)
無茶は程々に
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「はぁ……はぁっ……」
「結衣? って! 傷だらけじゃない! これ、もしかして――」
「そ、そう……あの子に、やら……れ――」
「ゆ、結衣様! もう喋らないでください! 治癒魔法をかけますからぁ!」
結衣はあまりの痛みと疲労で、その場に倒れてしまった。
血が身体の所々からじわりと滲み、手足に力が入らない。
短時間での戦闘だった筈なのにこの疲労度は一体――?
しかし、もう考える気力すら残っていない。
友と相棒の叫び声をどこか遠くに聴きながら、結衣は意識を投げ捨てた。
――…………
……しばらくすると、治癒魔法が効いてきたのか、結衣は再び目を開ける。
「あ……良かった。気がついたんだね……」
「も~、心配させないでくださいよぉ……」
友と相棒の安堵の声を聴いて、結衣はゆっくりと身体を起こした。
「えっと……二人とも、ありがとう……」
なんだか照れくさくなった結衣は、口元を手で覆いながら口角を上げる。
しかし、ガーネットは納得いかなかったのか。
「なんであんな無茶したんですかぁ! 空間転移なんて魔法少女の力で全身が覆われているとはいえ肉体にどれだけ負荷がかかるか……!」
ものすごい気迫で、結衣を責めた。
「え、いや……そんなこと言われても……あの時はああするしかなかったかなって……」
ガーネットの気迫に気圧されながらも、結衣はなんとか言葉を絞り出して答える。
だが、ガーネットはぺしぺしと軽く結衣の頭を叩きながら言った。
「いいですかぁ? 本来人間の身体は点と点で移動出来るものではないのです。増幅魔法でも物理限界は超えられないように、肉体に負荷がかかりすぎることは避けているんですよ。――避けるように出来ているんです!」
ガーネットの剣幕に押されて、結衣は言葉に詰まる。
「そ、そうなんだ……だからマッハのようなスピードは出ないんだね……」
「……前々から思ってましたが、結衣様って飲み込みが早すぎませんか? どこか魔術に長けているような……」
ガーネットは、結衣の言葉に答える代わりに疑問を口にした。
「あー……まあ、知識があるだけだよ。オカルト系の本はだいたい網羅してるし……」
そう、今まで難なく戦ってこられたのは本で得た知識のおかげだ。
普通は突然、何かの超能力が目覚めたら混乱するのだろう。
しかし結衣は、そういう超能力とか魔法とか。
そう言った類のものに興味があり、知識だけは常人の倍はあった。
「そうですか……でも、だったらわかるはずです。空間転移とは人外の所業だと」
一応、結衣の飲み込みの早さに納得はしたらしいガーネットだったが。
今回の無茶については不服だったようだ。
確かに、結衣は自分自身でも、なんであんな事をしたのか謎だった。
そんな時、これまで結衣とガーネットの一連のやり取りを見ていたせーちゃんが口を開く。
「あの、さ……結衣がそこまでしなきゃならなかったのって、真菜が強かったからよね? だったら、私も手伝うわ。このままあの子を放っておくわけにもいかないもの」
「せーちゃん……」
せーちゃんは笑顔で、結衣の力になると言ってくれた。心強くて、頼もしい助っ人が出来た。
結衣は感極まって泣きそうになりながらも、必死で抑え……
「ありがとう、せーちゃん。じゃあ、傷も癒えたことだし、早速行こうか! 三人で!」
「はぁ……結衣様は疲れを知らないんですかねぇ……ま、いいですけどぉ」
渋々了承したガーネットが、結衣の元気な呼びかけに応える。
せーちゃんはもう何も言わず、ただ結衣の決定に従った。
そんな二人を見て結衣は頷き、外に出ると、せーちゃんを抱きかかえて飛んだ。
「結衣? って! 傷だらけじゃない! これ、もしかして――」
「そ、そう……あの子に、やら……れ――」
「ゆ、結衣様! もう喋らないでください! 治癒魔法をかけますからぁ!」
結衣はあまりの痛みと疲労で、その場に倒れてしまった。
血が身体の所々からじわりと滲み、手足に力が入らない。
短時間での戦闘だった筈なのにこの疲労度は一体――?
しかし、もう考える気力すら残っていない。
友と相棒の叫び声をどこか遠くに聴きながら、結衣は意識を投げ捨てた。
――…………
……しばらくすると、治癒魔法が効いてきたのか、結衣は再び目を開ける。
「あ……良かった。気がついたんだね……」
「も~、心配させないでくださいよぉ……」
友と相棒の安堵の声を聴いて、結衣はゆっくりと身体を起こした。
「えっと……二人とも、ありがとう……」
なんだか照れくさくなった結衣は、口元を手で覆いながら口角を上げる。
しかし、ガーネットは納得いかなかったのか。
「なんであんな無茶したんですかぁ! 空間転移なんて魔法少女の力で全身が覆われているとはいえ肉体にどれだけ負荷がかかるか……!」
ものすごい気迫で、結衣を責めた。
「え、いや……そんなこと言われても……あの時はああするしかなかったかなって……」
ガーネットの気迫に気圧されながらも、結衣はなんとか言葉を絞り出して答える。
だが、ガーネットはぺしぺしと軽く結衣の頭を叩きながら言った。
「いいですかぁ? 本来人間の身体は点と点で移動出来るものではないのです。増幅魔法でも物理限界は超えられないように、肉体に負荷がかかりすぎることは避けているんですよ。――避けるように出来ているんです!」
ガーネットの剣幕に押されて、結衣は言葉に詰まる。
「そ、そうなんだ……だからマッハのようなスピードは出ないんだね……」
「……前々から思ってましたが、結衣様って飲み込みが早すぎませんか? どこか魔術に長けているような……」
ガーネットは、結衣の言葉に答える代わりに疑問を口にした。
「あー……まあ、知識があるだけだよ。オカルト系の本はだいたい網羅してるし……」
そう、今まで難なく戦ってこられたのは本で得た知識のおかげだ。
普通は突然、何かの超能力が目覚めたら混乱するのだろう。
しかし結衣は、そういう超能力とか魔法とか。
そう言った類のものに興味があり、知識だけは常人の倍はあった。
「そうですか……でも、だったらわかるはずです。空間転移とは人外の所業だと」
一応、結衣の飲み込みの早さに納得はしたらしいガーネットだったが。
今回の無茶については不服だったようだ。
確かに、結衣は自分自身でも、なんであんな事をしたのか謎だった。
そんな時、これまで結衣とガーネットの一連のやり取りを見ていたせーちゃんが口を開く。
「あの、さ……結衣がそこまでしなきゃならなかったのって、真菜が強かったからよね? だったら、私も手伝うわ。このままあの子を放っておくわけにもいかないもの」
「せーちゃん……」
せーちゃんは笑顔で、結衣の力になると言ってくれた。心強くて、頼もしい助っ人が出来た。
結衣は感極まって泣きそうになりながらも、必死で抑え……
「ありがとう、せーちゃん。じゃあ、傷も癒えたことだし、早速行こうか! 三人で!」
「はぁ……結衣様は疲れを知らないんですかねぇ……ま、いいですけどぉ」
渋々了承したガーネットが、結衣の元気な呼びかけに応える。
せーちゃんはもう何も言わず、ただ結衣の決定に従った。
そんな二人を見て結衣は頷き、外に出ると、せーちゃんを抱きかかえて飛んだ。
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