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第一章 少女たちの願い(前編)

敵襲のはずが……

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「――様、結衣様!」

 ガーネットの声が結衣の耳に響く。
 結衣が目を開けると、そこには先程の図書館の天井とガーネットが映った。

「えっ!? ガーネット!?」
「よかったぁ……! 目を覚ましたんですねぇ!」
「あ、うん……じゃなくて! なんで??」

 そう、相手はガーネットの願いを叶える力を欲しているはずだ。
 だからこそ奇襲してきたのだろうと、結衣は思っていたのだが……

 現にガーネットは結衣の眼前にいる。声も姿も違わない。
 ということは、つまり――

「それが……あの方、私に結衣様への伝言を託された後すぐに消えてしまって……」

 結衣の思考を肯定するように響いた声に、結衣は納得した。
 そして、気になった部分を訊く。

「伝言って?」
「ええ……『あの子が起きたらこう伝えておいてね。――あなたに魔法少女は荷が重すぎると思うわよ』と。言い捨てられた後、私が反論しようとしたら既に消えた後でして……」

 そうやって、心底悔しそうに語るガーネットを見て結衣は悟った。
 これは、一筋縄ではいかなさそうだ。と。

「分かった……つまりあの人――何故お前が選ばれたのか――って文句を言いに来たってことだね……」
「まあ……そんな感じはしましたねぇ……」

 俯いてそう零した結衣を見て、何を感じたのか。ガーネットはいつもになく弱々しい声を零した。
 だが、結衣は内心嗤っていた。
 “魔法少女は荷が重い”?  ああ、まさしくその通りだ。
 その上なりたくてなったわけでもないし、結衣の“願い”なんてちっぽけなもの。

 だが、それでも。この力を、ガーネットを手放すわけにはいかないのだ。
 私欲のためじゃない……と言えば嘘になるが、それだけではないから。

「は――ははっ。あははははっ」

 無邪気とは程遠く、魔法少女らしからぬ獰猛な笑みを浮かべる。
 ガーネットは、そんな結衣の様子に酷く困惑した様子で立ち尽くした。

「あー、うん。やってやろーじゃん。私をナメた罰だよ。償ってもらおうか――」

 そう言い捨てると、魔法少女に変身してその場をあとにした。
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