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【4】全力を出す必要なんてなかった
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俺の放った最上級魔法によって、世界には二つの意味で激震が走った。
一つ目はもちろん俺の魔法そのものだ。
どうやら威力がありすぎて、世界全体にまで衝撃が広がってしまったらしい。
おかげで世界は大混乱だ。
二つ目はそんな魔法を使える者が存在するという事実だ。
俺の存在を知らない連中は魔王が魔法を使ったと思ったようだが、その魔王本人はといえば、絶対的な力の差を見せつけられて、玉座で盛大に漏らしたそうだ。
まあ、大の男が漏らしたのなんて見たくないから、俺は自分で事実確認をしようとは思わないが。
「……本気なんて出すもんじゃないな」
腰を抜かした勇者達を尻目に、俺はそう結論した。
つまり、俺が前の世界で力を抑えていたのは正しかったわけだ。
もしも全力を出していたら、今頃は前の世界がどうなっていたかわからない。
魔法が使えるようになったのはこの世界に来てからだから前の世界が滅ぶことはなかっただろうが、きっと他の奴らが絶望するような歴史的偉業をいくつも達成してしまっていただろう。
そうなった、マスコミが二十四時間態勢で張り付くような生活になっていたに違いない。
「恐ろしい生活だな……」
俺はそんな生活を想像してぞっとした。
目立つのが好きな奴ならいいが、あいにくと俺はひっそりと生きるのが好みだ。
つまり力を抑えて生活するのが正解だったわけだ。
そういう意味でも、どうやら俺は本能的に最善手を選んでいたらしい。
「な、なんて威力なんだ……」
女戦士のアルマはついたままで呆然とつぶやいた。
どうやら他の三人は、もう言葉も出ないらしい。
というかアルマは盛大に漏らしてしまったらしく、スパッツが見事に濡れているのだが……。
(本人も気がついていないみたいだし、黙っておいてやるか)
それよりも、問題はこれからだ。
このままだと世界は俺を放ってはおかないだろう。
きっと俺を味方陣営に引き入れるために、スカウトが殺到するはずだ。
受け入れれば、きっと優雅な暮らしと引き換えに、周囲から四六時中ずっと注目され続ける毎日を送ることになってしまう。
「よし、逃げるか」
俺は目立つのが好きな性分じゃない。
今ならそんなに顔を知られていないだろうから、今のうちに逃げることにした。
一つ目はもちろん俺の魔法そのものだ。
どうやら威力がありすぎて、世界全体にまで衝撃が広がってしまったらしい。
おかげで世界は大混乱だ。
二つ目はそんな魔法を使える者が存在するという事実だ。
俺の存在を知らない連中は魔王が魔法を使ったと思ったようだが、その魔王本人はといえば、絶対的な力の差を見せつけられて、玉座で盛大に漏らしたそうだ。
まあ、大の男が漏らしたのなんて見たくないから、俺は自分で事実確認をしようとは思わないが。
「……本気なんて出すもんじゃないな」
腰を抜かした勇者達を尻目に、俺はそう結論した。
つまり、俺が前の世界で力を抑えていたのは正しかったわけだ。
もしも全力を出していたら、今頃は前の世界がどうなっていたかわからない。
魔法が使えるようになったのはこの世界に来てからだから前の世界が滅ぶことはなかっただろうが、きっと他の奴らが絶望するような歴史的偉業をいくつも達成してしまっていただろう。
そうなった、マスコミが二十四時間態勢で張り付くような生活になっていたに違いない。
「恐ろしい生活だな……」
俺はそんな生活を想像してぞっとした。
目立つのが好きな奴ならいいが、あいにくと俺はひっそりと生きるのが好みだ。
つまり力を抑えて生活するのが正解だったわけだ。
そういう意味でも、どうやら俺は本能的に最善手を選んでいたらしい。
「な、なんて威力なんだ……」
女戦士のアルマはついたままで呆然とつぶやいた。
どうやら他の三人は、もう言葉も出ないらしい。
というかアルマは盛大に漏らしてしまったらしく、スパッツが見事に濡れているのだが……。
(本人も気がついていないみたいだし、黙っておいてやるか)
それよりも、問題はこれからだ。
このままだと世界は俺を放ってはおかないだろう。
きっと俺を味方陣営に引き入れるために、スカウトが殺到するはずだ。
受け入れれば、きっと優雅な暮らしと引き換えに、周囲から四六時中ずっと注目され続ける毎日を送ることになってしまう。
「よし、逃げるか」
俺は目立つのが好きな性分じゃない。
今ならそんなに顔を知られていないだろうから、今のうちに逃げることにした。
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